まだ、短すぎるプロローグにも関わらず、お気に入り登録だけでなく評価にも投票してくださった皆様ありがとうございます!
ご期待に添えれるかは分かりませんが、よろしくお願いします!
読む前の注意と言うか補足です。
主人公の心一郎は、前世の記憶を取り戻して日がまだ浅いのでかなり情緒が不安です。
あまねとの話し合いの後、心一郎は有一郎と無一郎に鬼狩りになる事を告げた。
「お前達は、これからあまね様が用意してくれた場所で暮らせ。鬼狩りには、俺がなる」
「はぁっ!?」
「えぇっ!?」
うん。可愛い反応するな。
仰天する2人を見て、心の中で割と場違いな事を考える心一郎であったが、ソレを一切悟らせず、父から受け継いだ剣舞に使う刀を腰にさす。割と前世の記憶の所為で余裕がない心一郎は、弟達の困惑顔で一旦ココロを冷静に保たせつつも、これから自分が2人にする
「俺達は始まりの剣士の血族だ。いつ、鬼達にお前達が狙われるかは分からない。なら、鬼狩りが管理する場所で守って貰え」
「ふざけるなよ!心一兄さん!!なんで、この家を簡単に捨てて、そんな訳の分からない奴らの場所に行かないといけないんだよ!!」
「待ってよ、心一兄さん。僕も、僕も一緒に鬼狩りになるよ!」
自分の腰に詰め寄る有一郎と無一郎を心一郎は冷たい表情のまま2人の顔を容赦なく拳で殴り飛ばした。あまりにも突然の心一郎の行動に、彼の後方にいたあまねは瞳を限界近くまで見開くほどに驚きを露わにする。
「家長である俺が決めた事だ。お前達の意見は認めない。お前達はあまね様の下で暮らせ。それと無一郎……次、鬼狩りになると言ってみろ。コレだけでは済まさないぞ」
「……っ?!心一兄さん…なんで?」
「っ?!なんでだよ!!なんで心一兄さんが、赤の他人の為に命を張るんだよ!だったら、鬼とは関係も無く死んだ父さんと母さんは何なんだよ!!」
心一郎にはじめて殴られた2人は瞳に涙を溜める。
いつも優しく笑顔の絶えない兄とはあまりにもかけ離れた冷たい表情をする目の前の人物に、無一郎は恐怖を感じる。
いつも何かに理由をつけて頭を撫でくれた優しい兄の手から血が垂れる程に強く握り締めていたことに気付いた有一郎は、行き場の無い怒りを発してしまう。
「父さんは、俺に受け継が無ければならないモノを受け継がせてくれた。母さんは父さんに負けないくらい深い愛情で俺達をここまで育て上げてくれた。鬼狩りになる俺が為すべき事は全ての鬼を殺すことだ。2人は、既に俺に果たさなければならない役目を繋げてくれた。2人の死を無意味みたいな事を言うな!!」
恐怖と憤怒の感情が、最愛の2人から向けられても、心一郎は動じる事はなく、敢えて憤怒の様な形相を出し、自らの心を殺して、今度は部屋の柱へ拳を振り抜く。すると、激しい破壊音とともに破壊された柱の木片が有一郎と無一郎の周りに転がる。
「俺程度に怯える様な奴等に、人を喰う鬼を殺せると思うのか?これ以上……俺の邪魔をするな。有一郎、無一郎
……何も出来ない子供のお前達は、あまね様の下で暮らせ。二度も言わせるな」
自分達に殺気をぶつけてくる兄に、有一郎と無一郎は今まで味わった事がない恐怖によって身を震わせる。それ以降、無一郎と有一郎は何も言葉を発する事もなく心一郎の指示に従い、身支度を済ませて行く。自身が来た事によって、目の前の兄弟達が仲違いしていく現実に、あまねは深い罪悪感と自己嫌悪を抱く。あまねも5人の子供を持つ母親でもあるため2人の兄である心一郎が
2人の弟を戦いから遠ざけるため、
2人の安全を守るため、
自らの修羅の道を歩もうとする決意を先程の会話から察知していた。まだ13歳にも関わらず、小さき背中で2人の弟を護るべく修羅となろうとしている心一郎を止める資格は自分にはない事を改めて、あまねはその胸の中に痛みを覚える。その後、身支度を済ませた無一郎と有一郎をあまねとその護衛へ送り出した。2人が預けられる場所は、蝶屋敷と言う鬼殺隊の医療所であると同時に孤児院にもなっている。そして、自分は彼女が遣わせてくれた喋るカラス———鎹鴉に案内された場所へと向かう準備に取り掛かる。
『心一郎さん、行きましょう』
「あぁ、だが少しだけ待ってくれ。もう……俺は逢えないと思うから」
首元に紫色の飾り紐をマフラーのように巻き流暢に話すカラスを肩に乗せた心一郎は、父と母の墓へ戻る。そして、今はもう亡き両親に手を合わせる。
「……父さん、母さん………ごめんなさい、おれ……あんな風にしか言えなかった…」
「…2人を護るって言う勝手な自己満足の為に…2人をなぐっちゃった。
おれのことは…ずっと許さなくていいです。
もうおれのことを息子と思わなくていいです。
でも…どうか!どうか2人だけは守ってください!」
さっきまで心の奥に溜め込んでいた感情が、一気に溢れ出してしまったのか心一郎は瞳から大粒の涙を流し、弟達への仕打ちを思い出し血が出るほど下唇を噛み締める程に、怒りと哀しみが入り乱れた表情へと変わっていく。
誰かの為に無限の力を発揮できる無一郎を鬼狩りさせないため、
家族を失わないために他を拒絶し
冷徹で冷酷にまるで鬼にでもなったかのように振る舞い、2人を両親が眠る場所から出て行かせしまった心一郎は、亡き両親に向けて深く懺悔する。
涙を流し続けていく心一郎の脳裏には、
幼い頃から過ごした想い出がふつふつと蘇る。
2人の弟が生まれてきてくれた日のこと。
父と共に受け継がれてきた剣舞を舞い家族から暖かい拍手喝采を貰った日のこと。
春になって緑が生い茂る森を2人と手を繋いで駆け回った日のこと。
夏になって捕まえて来たデッカい虫を無一郎と有一郎に見せてビックリさせた日のこと。
秋になって家族全員で焼き芋を食べて自分の屁の臭さで皆が悶絶し、盛大に皆で笑い合った日のこと。
冬になって寒さに震えてでも家事をしてくれる母をまだ小さかった3人で必死に暖めようとした日のこと。
数え切れないほどに掛け替えない想い出が涙を流す心一郎の頭の中をよぎっていく。やがて、体感で数時間だが、実際には30分ほどの長い祈りと別れを両親を贈った心一郎は、涙と血を拭き取ると家の中にあった節分に使っていた般若の面を持ち出す。般若の面を頭につけた心一郎は自分を待ってくれていた鎹鴉の下へ戻る。
『何故、鬼の面を?』
「俺は、もう…あの子達からすれば、この面と同様に鬼だ。なら、コレを戒めとして俺は鬼を殺す」
『……さようですか。ここから少し先に鬼殺隊の隊士が貴方を待っております。その隊士と共に、申し訳ありませんが産屋敷亭へと赴いて、産屋敷と会合していただきます』
「わかった。では、行こう」
さようなら。父さん、母さん。
きっと俺は、
振り返る事なく、2人の墓に背中を見せたまま心一郎は歩き出していく。
……いってらっしゃい、心一。
「……………っ!」
微かに聴こえてしまった声に振り返りそうになるものの心一郎は、少々鼻水が垂れかけ瞳に涙を再び溜めつつも全力で走り出していく。その背を優しげな表情で見守る2人の人影があったが、木々の間から差し込んできた日の光に照らされると、まるで霞が晴れるかのように消えていった。
場所は変わり産屋敷亭。
道中やたらと声のデカい金髪の隊士に案内された心一郎は、陽が沈みかける夕方に産屋敷亭に到着した。そして、現在心一郎は、鬼殺隊のお館様と呼ばれる産屋敷耀哉と会合を果たす。目の前の男性の顔の上半分が焼け爛れており、見るに痛々しい姿を垣間見た心一郎は、驚きを欠かせなかった。
「はじめまして、私の名前は産屋敷耀哉。よろしく、心一郎」
「……はじめまして、耀哉さま。この度は、私の様な者の我儘を聞いて下さり誠に有難うございます。深く感謝いたします」
深々と頭を下げて礼を述べる心一郎に、耀哉は終始穏やか表情で首を横に振る。
「いや、お礼を言うのは此方の方だよ。そして、私は君には謝らなければならない。いくら、始まりの剣士の血筋を継ぐ者とは言え、君はまだ子供だ。本来なら、戦いの場に行くべきなのは私の方だ」
「ですが、申し訳ありませんが貴方のお身体では剣を振ること所か、日常生活にも支障があるのではないでしょうか?」
割と失礼を承知の上で心一郎は、今にでも身体に無茶をしてまでナニカをしそうな雰囲気でいる耀哉を心配げに見つめる。そして、自分が赤の他人である筈の耀哉に対して、全く警戒心を抱いていない事に不思議な感覚を覚える。
「……そうだね。私は、心一郎の言う通り呪いを受けている身なんだ。一族から始まりの鬼……鬼舞辻無惨を生み出してしまったことで私の一族は長くは生きられない」
なるほど、これが産屋敷耀哉か。
直に声を聞いてわかった。この人の声が、笑みが俺の心に安らぎを与えてくれているかの様な錯覚を覚えるほどに、穏やか森の静けさと、陽の光の暖かさを持っている。悪い気は全く無い。
「鬼舞辻無惨……そいつを殺せば、すべて終わるのですか?」
「終わる。それは間違いないと断言する。でもね、心一郎。君は、君の
「っ?!」
「死を覚悟した者のチカラは大きなモノとなる。けどね、それに負けないくらい生きようとするチカラも大きなモノとなる。忘れてはいけないよ、心一郎」
私が言えないけどね…と先程の穏やか笑みとは異なる少しお茶目っけさを感じさせる笑みを耀哉は、自分の心情を看破されたことで手一杯な心一郎へと送る。
「……俺は…弟を死なせたくありません。例え、俺より才能があって、人を助ける事の出来る凄い人間になれる素養を持っていたとしても。俺は、赤の他人より弟を選びます。貴方方の人を鬼から護る理念から外れた身勝手な者です、俺は」
「……いや、それは違うよ。心一郎」
何処か死んだ父を思い起こさせる耀哉に心一郎は、不思議と嘘をつきたくないと思い、自分の気持ちを打ち明けていく。どれだけ軽蔑され、罵られるのも覚悟の上で。しかし、帰ってきたのは、全くの真逆の返しであった。それどころか、耀哉は心一郎の目の前まで座り直すと、何を思ったのか心一郎の頭を慣れた手つきで撫で始めた。
「鬼殺隊には、お金のために、復讐のために、力を高めるためにと皆それぞれの想いで剣を取っている。でもね、皆違っていいんだよ。人は、決して、他の人にはなれない。どんなにその人に憧れ、真似ようともね。私も、心一郎の様に愛する人に嫌われようとも剣を取る様な事は、できない。君は、君の譲れないもののために生きなさい。其れが、やがて他の人を助け、君の大切なものを護ることへと繋がるはずだ。決して、心一郎の想いは身勝手なんかじゃないよ」
「…………でも、俺は。助けられるかもしれない命を見捨てようとしているのですよ!それは絶対に許される事じゃない!」
「それを言うのなら、弟達と心一郎を引き離し、死と隣り合わせの場に君を送り出そうとしている私は……とても罪深いよ」
「それは……っ!」
慌てて耀哉の言葉を否定しようとする心一郎よりも早く耀哉は、心一郎の自分の額を合わせてた。突然の行動に言葉を失ってしまった心一郎は、そのまま耀哉の流れに飲まれてしまう。
「心一郎に辛い事ばかりさせている私を怨んでくれていい、憎んでくれても、軽蔑してくれてもいい。でもね、心一郎。君は、神や仏でも、ましてや鬼でも修羅でもない。君や、やがて成長する有一郎と無一郎にも、救えない命はある。そして、救えない事は罪では無い。人は神には、絶対になれないのだから。だから、心一郎は、自分の心の声に従いなさい。其れが、どの様な事になろうとも、私の子供である君が為す事は、私が背負おう」
「…………はぃ…」
……酷い人だよ。そんな事を言われると、許された気になってしまう。本当に、お館様は人を、その気にさせるのが、うますぎる。
耀哉の言葉を聴いたことで、静かに涙を流す心一郎の心の中に掬っていた黒き霞は少しずつ晴れていく。
その後、心一郎は無一郎と有一郎が無事にあまね共に蝶屋敷に到着した知らせを受けて安心する。そして、明日から代々鬼狩りを生業とする家で修行する事を耀哉に聴かされた後、精神的疲労から気絶するかの様に眠りについてしまう。
「おやすみ、心一郎。どうか、君も皆の運命を変える剣士となってくれ」
大正コソコソ裏話〜
今回登場した鎹鴉は珠世様を産屋敷と言うか鬼殺隊に協力要請を申し込みに行ったカラスです。なので、めちゃくちゃ流暢に喋ります。
次回には、あの皆大好きわっしょい!さんが登場します。