「さっさと死に晒せェェェェェェ!!酒浸りの八つ当たりクソジジィィィィィ!!」
「黙れェ!日の呼吸の継承者がぁ!」
「だから違うっつってんだろ!!このクソハゲがぁ!脳味噌の代わりに酒樽でも入れてんのかァ?」
「貴様ぁ…言わせておけば!!図に乗るなよ、クソガキがぁ!!」
額にいくつもの青筋またの名を怒りマークが浮き出た心一郎は、まさに悪鬼羅刹のごとし形相で木刀を目の前にいる相手に振り下ろす。心一郎と相対する相手もまた彼に負けず劣らずのまさに悪鬼羅刹のごとし憤怒の形相で、木刀を振るう。
「うむ!!隊士になる前から、これ程の太刀筋になるとはあっぱれだ!!」
「あ、兄上っ!?父上と心一郎さんを止めなくて宜しいですか?!」
オロオロした様子で心一郎と打ち合いをする父親を見る弟と共に、彼の兄は何処か嬉しそうな様子で、もはや殺し合いに発展しかねない雰囲気を出す2人を眺めるのであった。
「くたばれ!!クソジジィィィ!!」
「貴様がくたばれ!!」
こうなったのには、数時間ほど刻を遡ることとなる。
産屋敷亭にて一晩過ごした心一郎は、次なる場所へと向かうべく身支度を済ませていく。そして、ちょうど借りていた部屋の片付けを終えた所で襖が勢いよく開かれた。
「おはよう!!いい朝だな!迎えに来たぞ!!時透少年!!」
「…………オハヨウゴザイマス。煉獄サン」
「うむ!!では、行こうか!」
「ショウチしました」
何処か死んだ魚の様な目になった心一郎は、目の前にいる特徴的な毛先が赤い金髪にめちゃくちゃ威圧感のある瞳をした青年の名前は、煉獄杏寿郎。いずれは、鬼殺隊の最強の一角———『柱』となる男。2人は、既に産屋敷亭に来る前に出逢っていた。鎹鴉に案内され、待機していた隊士こそ杏寿郎である。また、心一郎は杏寿郎の様な熱い人間を少々苦手としている。理由は、主に眩しすぎるから。
そして、杏寿郎と共に心一郎は耀哉のいる部屋へと行く。
「おはようございます!お館様!あまね様!」
「おはようございます。耀哉様、あまね様」
「うん、おはよう。杏寿郎、心一郎、今日もいい朝だね」
「おはようございます、お二人とも」
耀哉はあまねに支えられながら立ち上がると、心一郎の側へと歩み寄ると突然何を思ったのか心一郎の頬に手を優しく当てた。突然のことに、思考が追いつかない心一郎は、瞳が限界近くまで見開くほどに衝撃を受けている。
「よく眠れた様で、安心したよ。顔色が良くなっているね。これから、辛い日々が続くだろうけど、よく寝て、よく食べて、元気で、他の子達と仲良くするんだよ。いいね、心一郎」
「っ?!は、はい!」
「うむ!美味い飯をよく食べ、休むべきときに休めば、きっと君も強い剣士なれる!」
咄嗟に頬を撫でられているものの杏寿郎のような覇気のある声で父と同じ優しい笑顔を向けてくれる耀哉に返事を返す。
「ありがとうございました、あまね様、お館様。では、お身体に気をつけてください」
「……心一郎さん…私が貴方に出来る事はこれくらいしかできませんが、お二人の事は私どもが責任を持って御守り致します。必ず」
「うん、いってらっしゃい。心一郎、杏寿郎…彼の事をよろしくね」
「はい!お任せください!!お館様!」
あまねと耀哉への別れの挨拶を終えた心一郎は、杏寿郎と共に産屋敷亭を後にする。そして、あまねと耀哉は杏寿郎と心一郎の背中が見えなくなるまで、2人を見送り続けるのであった。
代々煉獄家は、鬼狩りを生業とする家系でもあり、鬼殺隊との歴史も長く心一郎の先祖(正確には違う)が創ったとされる始まりの呼吸について調べられる事があるかもしれないため、心一郎は煉獄家で剣士としての修行をすることとなった。
数時間ほどで心一郎は、目的地である煉獄家の屋敷に到着した。
「おかりなさい、兄上!」
「うむ!!今帰ったぞ!千寿郎!」
「(くりそつゥゥ、無一郎と有一郎を思い出すゥゥ)」
すると、扉から出迎えに来てくれたのは、杏寿郎を殆ど幼くした容姿をした心一郎よりも年下の少年————煉獄千寿郎。千寿郎は、杏寿郎を笑顔で出迎えると直ぐに心一郎の存在に気づいて頭を下げ出迎える。
「はじめまして、心一郎さん。兄上からある程度のお話は聞いております。煉獄千寿郎と申します。これから宜しくお願いします」
「これはご丁寧にありがとうございます。俺は、時透心一郎といいます。此方こそ、よろしくお願いします」
「うむ!お互いの紹介ができた様だな!所で、千寿郎。父上と
えぇえっ?!姉っ!?居なかった筈だろ!確か!
「姉上はもうすぐ遠征から帰ってくると報告がありましたけど…その……父上は、先ほど…お酒を買いに行かれました…」
「…うむ。そうか、では時透少年!家を俺達で案内しよう!」
「よろしくお願いします。とても立派なお屋敷ですので、俺1人だと迷子になると思いますから」
自分の前世の記憶には存在しない者困惑する心一郎を、杏寿郎はまだ見慣れない場所に緊張して困惑しているのだと勘違いしつつ千寿郎と共に屋敷を案内して行く。厠、修練場、台所などと様々な場所を案内された心一郎は、荷物を部屋に置くと早速、杏寿郎と共に修練場へと赴き、木刀を振るう。木こりとして斧を振るう心一郎は、もともと筋力はしっかりとしている上に、
「時透少年は、どんな剣士になりたい?」
「…えっ?どんなと、言われましてもねぇ〜」
「あ、兄上。いきなりその質問は唐突過ぎませんか?」
咄嗟の問いに口籠る心一郎と、返答が来る事をワクワクした様子で待つ杏寿郎の間に挟まれた千寿郎は、どうすれば良いのか分からずオロオロした様子で慌て始めていく。そして、頭を傾ける程に自身の答えを考えていると、急に後頭部に凄まじい衝撃が走った。完全に周りに警戒をろくにしていなかった心一郎は、後頭部の衝撃に流されるまま倒れてしまう。
「がぁっ!?」
「時透少年っ!?」
「し、心一郎さんっ!?」
杏寿郎から死角となっていたため、心一郎の後頭部に
「父上……何故、時透少年に、こんな事をなさるのですか?」
「あぁぁ、しし心一郎さん!?大丈夫ですかっ?!」
「杏寿郎ぉ……何故、
杏寿郎の問いかけがまるで耳に入っていない槇寿郎は、倒れている心一郎…正確には心一郎の花札の様な耳飾りへと憎悪に染まった眼差しを向ける。千寿郎が慌てて心一郎の後頭部に怪我は無いのか確認している中、杏寿郎と槇寿郎との間に緊張した空気が立ち込めていく。
「その耳飾りは、日の呼吸の使い手の証…そうなんだろ!!さっさと出ていけ!!」
「ってぇなぁぁ!!さっきから何処のどいつと勘違いしてやがるんだぁ、この耄碌クソジジィ。1つ教えてやる、俺がお前みたいなゴミクソよりも最高の父さんから教わったのは、
「よもや!!」
「あぁダメです!!心一郎さん!父は元柱です!」
原因が槇寿郎にあるとはいえ自分の父をここまでボロクソにこけ下ろす心一郎に、杏寿郎は心底驚いた様子で、驚愕の声を上げる。そして、近くに落ちていた(千寿郎の)木刀を槇寿郎に向けて投擲し、心一郎は千寿郎の静止も聞かずに木刀を持って走り出してしまう。
「ふん、図に乗るなよ。日の呼吸の使い手がぁ!!」
「ぐぉっ!?」
しかし、威勢よく木刀を振るうも、剣術を殆ど知らない素人である心一郎はあっさりと投擲していた筈の木刀を持った槇寿郎によって吹き飛ばされる。腹に重い一撃を喰らい、一瞬呼吸が止まるほどの衝撃によって顔を苦痛に歪ませつつも頭に完全に血が昇っている心一郎は、すぐさま起き上がると、又もや槇寿郎に突撃を再開する。まるで猪の様に真っ直ぐ突っ込んで来る心一郎に対し、槇寿郎は鼻で笑うかの様に嘲笑を露わにする。そして、槇寿郎は一切の容赦無く木刀を振り下ろす。だが、ほぼ同時のタイミングで心一郎は、幼い頃から教わって来た剣舞の式の内の1つを繰り出す。木刀を力強く両手で握り強烈な力で素早く繰り出す抉り斬るような横薙ぎの一閃を放つ。
「月神ノ舞 八ノ式
「なにっ?!」
予想外の一撃に対し元柱を務めていた槇寿郎は、すぐさま同等の力で対抗するものの咄嗟に入れた力が僅かに足りず、二歩ほど後退させられる。あまりの予想を超えた光景に、千寿郎と杏寿郎は瓜二つの顔がそろってポカンと空いた口が塞がらなかった。
「日の呼吸だっけ?知るかよ。お生憎、凡人の俺はこの剣舞を覚えるのに6年もかかって、結果がコレだ。アンタが
何に絶望し、何に怒っているのかは分からないし、
マジで心底どーーーーでもいい!!でもな、アンタは、
「はぁぁ!?」
「はっはははははは!!!」
余りにも身勝手極まりない心一郎の言動に、槇寿郎は心の中にある日の呼吸に対する悪感情が、置き去りになるほどの衝撃を受け、呆気にとられる。そして、会った時よりも心一郎の瞳が真っ直ぐなものになっていることに気づいた杏寿郎は、腹を抱えて笑った。
母を喪ってから、これほどなまでに心から、腹が痛くなる程に笑うことができた。
あぁ、母上見えていますか?
僅かにですが、本当に小さなモノですが、父上の心に炎が灯り始めましたよ。
「ふざけるなよ、小僧ぉ!貴様なんぞの糧になってたまるか!!」
「唯我独尊、天元突破、有言実行だコラ!これから俺は毎日、いついかなる時でもお前に勝負を吹っかけてやる!!覚悟しろや!!酒浸りのクソジジィ!!」
わりと無茶苦茶な事を言いながら、槇寿郎を罵る事は決して忘れない心一郎は、怒りで顔を真っ赤に染め始める槇寿郎を盛大に挑発する。
青筋を額にいくつも浮かび上がらせる両者は、獲物を手に取り、走り出す。
そして、時は戻り、現在。
「さっさと死に晒せェェェェェェ!!酒浸りの八つ当たりクソジジィィィィィ!!」
「黙れェ!日の呼吸の継承者がぁ!」
十数回目の槇寿郎と心一郎の罵り合い込みの打ち合いが、再開された。
心一郎本人にその気は、全く、これぽっちもないものの、1人の男の運命を僅かに変える結果となった。
大正コソコソ噂話。
心一郎は、既に月神ノ舞のおかげで全集中の呼吸が僅かばかりできます。しかし、意図して出来るものではなく、無茶苦茶キレている時か、極限に集中している時くらいしか成功しません。なので、それくらいしか呼吸ができない心一郎は縁壱さん並みに謙虚を通り越して卑屈なほどに自己評価が非常に低いです。
13歳で、月の呼吸がかなりの精度で再現出来ている時点で、凄いのですけど、前世の知識に上に元々謙虚な性格だったのでより拍車がかかってしまっています。お労しやが聴いたら、多分キレます。