身勝手に征く月輪の刃   作:黒丸助

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やっぱり戦闘描写と言うものは、難しいものですね。私けっこう運動音痴なので、理想の動きを文章で書きながら脳内再現するのに、半端なく神経を持っていかれてしまいました。

今回は、月の呼吸改め月神ノ舞の説明がちょこっと出ます。


第 参 話

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……だぁーークソ!!一撃も当てられなかった!」

「はぁ…はぁ、当たり前だ小僧ぉ。はぁ…はぁ、いくら全集中の呼吸が僅かに出来るとは言え、毛が生えただけの素人の一撃を貰う程、俺の剣は甘くないわ!!」

 

息も絶え絶えになり大の字に倒れたボロボロの心一郎を、僅かに息切れをする槇寿郎は忌々しげに睨み付ける。宣戦布告を受けた槇寿郎は、何度も何度も倒されては数秒後に復活する度に、ほんの僅かに動きのムラが無くなっていく心一郎に驚かされつつも、元柱として、愛する妻が産んでくれた息子達の前に僅かに残っている父としての矜持などの幾つものも譲れない物の為に不摂生の身体に鞭を打った。その結果、約3時間もの間2人は休む事なく打ち合いを続けた。あまりの光景に、千寿郎は終始圧倒され、杏寿郎は時折過呼吸になるほど終始笑っていた。

 

「はぁはぁ、ちくしょう……ぜぇぜぇ、精々今のうちに休んでおけよ、ジジィ。次に俺が復活した時がお前の最期だ」

「ふん!大の字の状態から全く動けなくなっている青二才がほざくな!それと、杏寿郎…貴様はいつまで笑っている!!」

「うむ!互いを罵り合うものの父上と時透少年の打ち合いをしている時の2人の表情が余りにも楽しそうであったので、思わず釣られてしまいました!!申し訳ありません!!」

 

「「誰が楽しそうだ!!」」

「よもや!!」

「ぶふっ!!」

 

息をピッタリと揃えて否定の叫びを上げる心一郎と槇寿郎に、とうとう耐えきれなくなったのか千寿郎は噴き出し、顔を両手で覆い隠すものの両耳が真っ赤になっている事から相当笑っている様子であった。そして、何を思ったのか杏寿郎は突然立ち上がると、

 

「では、父上!俺と千寿郎にも稽古を付けて下さい!!」

「何故、そうなる!?」

 

「俺も今の貴方と剣を交えたいのです!!」

「えぇいっ!!人の了承を得る前に切り掛かる馬鹿者に育てた覚えはないぞ!

 

槇寿郎と剣を交え始める。叫ぶ槇寿郎を強引に自分の稽古の相手にする杏寿郎を千寿郎は、瞳に涙を浮かべつつ倒れている心一郎を連れて端へ避難する。その後、口ではなんやかんや言いながらも杏寿郎と打ち合いを止める気はなく、打ち合いの最中の最中に杏寿郎への癖の指摘やより力を入れるべき所を口悪くではあるが、厳し目に指摘していく。そんな2人の光景を眩しそうに見つめ瞳に涙を溜めながらプルプル震える千寿郎は、ようやく呼吸が落ち着いた心一郎にまだ使っていない手拭いを渡す。

 

「ありがとう、千寿郎くん。おかげで休憩できたよ」

「いえ、お礼を言いたいのは此方の方です。本当にありがとうございます、心一郎さん」

 

「いやいや、俺はムカつくジジィをぶち殺そうとしただけなので。まぁ、実際にできませんでしたけど」

「ふふふ、そうですね。心一郎さんの呼吸いえ、月神ノ舞でしたね。その剣舞と父上の打ち合いはとても素晴らしい物でした」

 

千寿郎の善意100%の笑顔に耐え切れなくなり、心一郎は赤くなっていく自身の顔を隠すため般若の面を被り、そっぽを向く。どうにかして、千寿郎の注意を逸らしたい心一郎は、どうにかして別のアクションを考えていると、見知らぬ人影(・・・・・・)が視界に入ってくる。

 

「玄関に誰もいないと思えば、コレはどう言う状況だ?」

 

側頭部と後ろ髪などの一部が赤くなっている黒髪を後ろに一本で纏めた美しい容姿をした可憐な女性が、少々困った様な表情を浮かべて、修練場へと足を踏み入れる。

 

「あ!お帰りなさい、姉上!!ご無事で何よりです!」

「ただいま、千寿郎。所でお前の隣にいるのが、知らせにあった預かり人か?」

「ど、どうも。コレからお世話になります、時透心一郎です!」

 

「宜しく、心一郎。私の名前は、煉獄美火(みか)。そこで、打ち合っている杏寿郎の1つ上の姉だ。見ての通り鬼殺隊の一員だ」

「ソレに姉上は、既に鋼柱(はがねばしら)を務めているんです」

「えぇ?!」

 

見た目は可憐で華奢な女性に見えるが、自分の想像以上にポテンシャルを美火が持っている現実に、心一郎は改めて驚きを露わにする。対して、千寿郎の言葉に何処か照れ臭そうに美火は、そっぽを向くものの頬が赤くなっていた。

 

「よしてくれ、千寿郎。私はまだまだ未熟者だ。今の段階では、上弦の鬼とまともにやり合っても、生き残れるかどうか怪しい所だ」

「いえ、姉上達は僕から見ても立派な剣士です!!それは断言できます!」

「ははは、良い弟さん達ですね。親は、出会い頭に人の頭に物ぶつけて来ましたけど」

「だまれ!!小僧!」

 

「父上……酒もほどほどにして下さい。飲み過ぎは肝臓に悪いと、友人のカナエも言っていましたよ」

「そうだそうだ。禁酒、禁欲、禁食しろ糞爺。

σ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┰ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ) ベー

「…どけ、杏寿郎。今すぐ、そこの塵屑を…叩き出す」

「む!それはダメです。千寿郎!今すぐ俺に加勢してくれ!」

「えっ?!は、はい!!わかりました!!」

 

溜め息を吐く美火の近くで、自分に向かって両下瞼の赤い部分を引き出し舌をダラシなく出して侮蔑の意を露わにする心一郎に対して、顔を茹蛸の様に真っ赤にしてにじり寄ろうとするものの、何処か嬉しそうな杏寿郎と千寿郎に行く手を阻まれる。千寿郎と杏寿郎の兄弟に、行く手を阻まれた槇寿郎は流されるまま2人の稽古へ発展する。そんな光景を美火は、かなり驚いた様子でいたが直ぐに気を落ちけて、呼吸を整えている心一郎へと向き合う。

 

「所で、千寿郎が言っていた『月神ノ舞』というのは、一体どう言うものなのか、教えて貰えないか?」

「わかりました。『月神ノ舞』は、代々一族の長男がこの月模様の耳飾りと紫色の刀身を持った刀と共に受け継がれて来た剣舞です。満月の夜、十の舞型を日の沈みから日の出まで、月神様に舞踊り続けると言うものです」

 

「……紫色の刀身を持つ刀…よかったら見せてくれないか、その刀を。もしかしたら、それは日輪刀かも知れない」

 

用意してもらった部屋に置いて来た刀を取り行こうとする心一郎と共に美火は杏寿郎達に一声かけた後、修練場を後にする。

 

 

 

 

 

そして、周囲に誰の気配もなくなると、

 

 

 

 

 

 

 

「所で、美火さん……貴方…何者ですか?」

 

 

「ほぉ、ふざけた面を付けていても、そういう顔(・・・・・)もできるようで安心したぞ」

 

突然険しい表情を浮かべた心一郎は、美火へずっと思っていた疑問を投げかける。対する美火は、余裕の表情を浮かべる。

 

「貴方は、俺と同じ(・・・・)なのですか?」

「その答えは、YESだ。そう私は、お前と同じ……魂の故郷…限りなく近く果てしなく遠い世界(・・・・・・・・・・・・・・・・)から来た存在。安心してくれ、私はお前と同じ様に大切な家族を護るために剣を振るう者だ。だから、私はお前の願いを身勝手とは思わない」

 

耀哉とあまねにしか話していない自身の身勝手な願いを目の前にいる会って間もない女性が知っているとは思っていなかった為、心一郎は頭が真っ白になるほどの驚愕する。

 

「っ?!」

「此処にいる以上、私はお前を全力で強くする。一緒に強くなろう。決戦の時まで」

 

そう言って微笑む美火の顔には、あまねの様に嘘偽りはなく暖かみを含まれていた。その笑みを見た心一郎は、先程の無礼な態度で接してしまった美火に対して頭を下げた。

 

 

「先程の態度は、大変申し訳ありませんでした。これから、ご指導よろしくお願い致します」

「此方こそ宜しく」

 

 

その後、心一郎の荷物が置かれた部屋へ行き、剣舞に使用される刀を美火は見定めると、彼女の予想通り日輪刀である事が判明した。美火曰く、普通の刀と日輪刀とでは僅かに色以外にも刃文が異なるため直ぐにわかったそうだ。だが、同時に前世の記憶を持つ美火と心一郎は、疑問に思った。

 

 

 

 

何故、全てを捨てた継国巌勝は子孫に日輪刀と共に、

自分の剣技を、教えたのだろうか?

 

 

 

しかし、考えても正しい答えが返ってくる訳でもないため2人は、一旦この疑問を頭の隅に置き、再び鍛錬場へと戻っていく。

 

2人が鍛錬場へと戻ると、大の字に寝転がっている千寿郎と座り込んでいる杏寿郎の近くで荒い息で呼吸を整えている槇寿郎を発見する。如何やら、3人の鍛錬は一旦終了した様子であった。千寿郎は、かなりバテバテな様子ではあるが。そして、無防備な槇寿郎の背中を発見した心一郎は直ぐ様立て掛けられていた木刀を手に取ると、

 

「スキアリィィ!!」

「げぼぉらぁ!!」

 

槇寿郎の背中目掛けてドロップキックを繰り出した。

 

「「えぇェェェェェェ?!」」

「よもや!!」

 

いきなりドロップキックをする心一郎に対して、煉獄家3人姉弟は揃って度肝抜かる。そんな3人を置き去りに、槇寿郎へのドロップキックが成功した事に深い達成感を味わいながらガッツポーズを取る。

 

「よし!!」

「……おい…小僧ォ…なにが『よし!!』だァ。貴様、先程あれほど俺に叩きのめされたのに、全く懲りていない様だなぁ!」

 

鼻で嗤う心一郎の目には全くと言いほど後悔のこの字もない事に槇寿郎は、血走った目を向けながら木刀を振り下ろす。対する心一郎は、ただでやられ続けていた訳ではなかったため槇寿郎の振り下ろされた木刀に添える様に自身の木刀を交える。そして、振り下ろされた木刀の勢いを心一郎は殆ど殺さないまま受け流す。

 

「(よし!何十回の打ち合いで漸く受け流される様になった)」

「……もう受け流すのか…」

 

振り下ろされた一撃をなんとか受け流した後、心一郎は背中を見せる槇寿郎の頸目掛けて木刀を振るうも、その一線は虚空を斬るだけだった。さすがに元とは言え、槇寿郎は長年鬼殺隊の“柱”を務めていただけあって、直ぐに冷静さを取り戻したため難なく心一郎の一撃を躱す。

 

炎の呼吸 伍ノ型 炎虎(えんこ)!」

月神ノ舞 六ノ式 常世孤月(とこよこげつ)無間(むけん)!!」

 

槇寿郎は、烈火の猛虎の闘気を生み出すが如く木刀を大きく振るい、咬みつくかのように斬撃を放つ。

対する心一郎は、木刀を力強い一振りで縦方向に無数の斬撃を乱れ撃つかのように槇寿郎の斬撃を迎撃する。

しかし、心一郎の無数の斬撃は槇寿郎の強大な斬撃によって掻き消されてしまう。心一郎は、まだまだ父から教えられた剣舞をモノに出来ていない現実に内心舌を打つものの慌てることは無かった。勢いが全く衰える事なく槇寿郎は、再度烈火ごとき斬撃を振るう。

 

 

『いいかい、心一郎。この式に必要なのは、自らの呼吸と身体の流れを見定めること。だからこそ、舞踊る時はよく自分の事を誰よりも見極めないといけないよ』

 

……全く、難しい限りだよ。

……大嫌いな者を見定め見極める事は。

 

対する心一郎は、木刀を両手の力を僅かに抜き、次なる剣舞の型を出すため体制を整える。

 

 

ホオオオオオオオオオオ

 

 

「(何だ?小僧の僅かに空気が変わった…)」

 

月神ノ舞 五ノ式 月魄災禍(げっぱくさいか)

「なに!?木刀を振らずにだと!?」

 

 

何と、心一郎は刀を全く振らずに無数の月輪を纏った竜巻の様な斬撃を出現させた。心一郎が物心ついた頃から学んできた月神ノ舞の中で、最も習得するのが難しく、最も扱いが難しい式。刀を振らず自らの身体の動きで斬撃を生み出すという常識では考えられ無い……正に型破りと呼ぶべきもの。咄嗟に防御の体制に回る槇寿郎であったが、無数の月輪を纏った斬撃によって僅かに後方へと押し切られることとなる。そして、畳み掛ける様に心一郎は木刀を振るおうとするものの、身体の内側から燃える様な痛みを感じ取り、僅かに視界がぼやけてしまう。そんな心一郎の致命的な隙を槇寿郎は見逃すはずも無く、直ぐ様間合いを詰めると、

 

「終わりだな、小僧」

「くそ…」

 

心一郎の手首に強烈な一撃を振り下ろし、木刀を叩き落とす。全集中を酷使し続けてた上に、まだまだ剣士として肉体が未熟すぎる心一郎にはあまりにも目に見えない疲労が蓄積された事で、とうとう限界を迎える。槇寿郎も既に心一郎が限界近い事は察知していたが、先程の月魄災禍を繰り出される前に打ち合いをやさせようとしていました。しかし、振らず斬撃を生み出す常識外れに驚かされたことで心一郎の身体は、とうとう限界値に達してしまったのです。

自分の身体が如何言う状態になっているのかを漸く理解した心一郎は、槇寿郎に軽く頭をどつかれるものの大人しく打ち合いに対しての礼として頭を下げます。

 

 

「ありがとうございました、ジジィ」

「ふん!その減らず口を叩く暇があるのなら、さっさと全集中の呼吸でのムラをなくせ。もっと効率よく呼吸をしていれば、まだまだ技を出せる。せいぜい無駄にやることだな」

 

 

相変わらずの憎まれ口を叩き合うものの、2人の表情にはそれ程敵意はなくなっていた。出逢い方は、確かに最悪なものではあったがなんだかんだで通じるモノが2人の間にあったのかは、この時の誰もが知るよしもない。

 

「スゴいです!心一郎さん!父上とアレ程打ち合えるなんて、とても素人とは思えませんでした!」

「うむ!父上も俺や千寿郎との鍛錬の後とは言え、あそこまで喰らいつくとは天晴れだ!」

「あの、煉獄さん…背中が無茶苦茶痛いので叩かないで下さい。あと、千寿郎くん。余りキラキラした目で見ないで色々、来るものがあるから」

「ふふふ、コレはコレで楽しい日々になりそうだ。小芭内の奴にも知らせておくべきだな」

 

杏寿郎にバンバンと背中を叩かれつつも、千寿郎のキラキラした眼差しに耐えられないのか心一郎は逃げる様に再び頭に付けていた般若の面を被ってしまう。そんな3人の光景を美火は可笑しそうに眺めながら、違う場所で鍛錬を積んでいるもう1人の弟の様な存在である少年の顔を思い浮かべる。落ちぶれたり自分の所為とは言え、子供達の笑顔を見て槇寿郎は何を思ったのかそそくさとその場を後にして行くのであった。

 

こうして、煉獄家預かりとなった心一郎の1日が始まったのであった。とは言ったものの既に心一郎は、満身創痍であるが。

 

 

 




大正コソコソ噂話。
煉獄美火さんは、同年代で友人であるカナエさんはおろか、その妹のしのぶさんにもバストのサイズが負けており、自分が貧乳である事を気にしている為指摘されると悪鬼のごときブチ切れます。今のところ被害にあったのが、宇髄さんと義勇さんの2人となっています。皆様も気をつける様に!おや、私の背後に凄まじい殺気を放つお方がいらっしゃ…………。

転生者である煉獄美火のイメージキャラは、半妖の夜叉姫に登場するせつなをベースにしています。性格はあまり似ない様に心掛けています。
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