漆黒の猟犬、静寂の摩天楼   作:エセダンディズム

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第12話 聖蹄祭、あるいは覇王のオペレッタ

 『秋のファン大感謝祭』――普段は関係者以外立ち入り禁止のトレセン学園を一般開放して行われる一大イベントだ。

 

 正式名称を『聖蹄祭』といい、一般の中学高校で言うところの文化祭に該当する立ち位置にあるが、その規模は日本最大のウマ娘養成機関というだけあって凄まじい。

 

 秋のGⅠ戦線が始まる少し前に行われることから、トゥインクル・シリーズに臨むウマ娘たちが春から夏にかけての己の走りを見つめなおし、心新たにするための区切りのイベント、リフレッシュするための休息とも位置付けられている。

 

 そしてファンたちは、普段はテレビや客席からでしか見ることのないレースウマ娘たちと間近で触れ合う機会を求めやってくる。

 普段自分たちを応援し、支えてくれてるファンたちの姿を見ることで、ウマ娘たちもまた自分のレースに向ける思いを一層強くするわけだ。

 

 あるウマ娘はもてなす側として模擬店や催しを営み、あるウマ娘はイベントの準備に奔走し、あるウマ娘は純粋にファンに混ざって一人の客として楽しむ。

 思い思いの姿勢で、ウマ娘たちはこのイベントの空気を満喫する。

 

  

 なぜ急にそんな話をするかというと、今日はその『聖蹄祭』当日だからである。

 

 

 

 

 

 

 「トレーナーさん、お待たせしました」

 

 「お疲れ様、マンハッタンカフェ」

 

 今年デビューしたジュニアクラスウマ娘たちが一堂に会して秋から来年のクラシックに向けての意気込みを語るイベントに出席していたマンハッタンカフェが、出番を終えて駆け寄ってきた。

 

 俺も客席から見ていたが堂々とした振る舞いで注目を集めていたと思う。今は脚の不調でトレーニングのみでレースに参加する予定はないが、来年のクラシックには間に合うこと。クラシック三冠路線に挑むといった、事前の打ち合わせ通りの内容を語ってファンを喜ばせていた。

 

 他にも、サスケハナ、アニマルポッケ、フレイムダーツといったこの世代のクラシック路線を引っ張ると目されているウマ娘や、ティアラ路線を標榜するテイエムマリンなど、今後のマンハッタンカフェのライバルになりうるウマ娘を見るという意味で俺にとっても意義のある時間だった。

 

 なお、アグネスタキオンは不在。マンハッタンカフェに聞いたところによると「そんな非生産的な些事に費やす時間があったら実験をさせてもらうよ」とのこと。マイペースな彼女らしい。

 

 マンハッタンカフェのクラスは有志が各々出し物をやっているらしいが、マンハッタンカフェは今回は特に企画をしなかったとのことなので、これで彼女の仕事はおしまい。後は自由時間となる。

 

 「サスケハナやアニマルポッケは? あの子たちと一緒に回ってきたらどうだ」

 

 「・・・・・・いえ、あの人たちはこの後他の方のお手伝いや応援に行かれるそうなので。トレーナーさん、私と回ってくれますか?」

 

 「そうか。それは残念だな。わかった、それじゃ一緒に行こうか」

 

 普段の賑やかさとはまた違う明るい喧騒に包まれた学園の中を二人で歩く。石畳の道は屋台が立ち並び、練習コースは子供たちがウマ娘と駆け回っている。広いトレセン学園がお祭りムード一色だ。

 

 何というか、自分も学生に戻ったみたいで楽しいなあ。

 

 マンハッタンカフェは楽しんでいるのかなと思って目を横にやると、なぜか俺の顔を見つめていた彼女と目が合った。

 

 「・・・・・・俺の顔、何かついてる?」

 

 さっき屋台で買って食べた焼きにんじんの欠片でもついていたのかなと口元を拭ってみる。

 

 「いえ、何もついてませんよ。ただ見てただけですので、お気になさらず」

 

 「流石に気になるかなあ・・・・・・」

 

 目線を逸らさない彼女を見続けるのが何やら気恥ずかしくなって、手元のパンフレットに視線を落とす。

 

 「ま、マンハッタンカフェはどこか行きたいところとかあるのか?」

 

 「そうですね・・・・・・騒がしいところよりは落ち着いたところがいいので、イベントよりは展覧系へ行ってみたいです。・・・・・・ああ、それと」

 

 一つ、ここには行ってみたいです。

 

 そう言いながらマンハッタンカフェが、パンフレット地図の一か所を指差す。そこは体育館。時間制で音楽だったり劇だったり、色々な催しを持ち回りで行う会場だ。

 今の時間帯だとここでやる予定の催しは・・・・・・。

 

 「『テイエム歌劇団 愛と憎しみの狂騒劇~生まれながらの覇王であるボクが世紀末覇王となって世界を席巻する栄光のテイエムオペラ王国興亡叙事詩風雲編~』・・・・・・? 落ち着いたところ・・・・・・?」

 

 清々しいまでの自己主張タイトルがすでに騒がしい。タイトルだけであらすじを語りつくす勢いだ。

 

 「いえ、ここは間違いなく落ち着いたところではないと思います。ですが、この名前に見覚えはありませんか、トレーナーさん」

 

 キャスト欄へと紙面をマンハッタンカフェの指がつつ、となぞる。

 

『企画・テイエムオペラオー』

『監督・テイエムオペラオー』

『脚本・テイエムオペラオー』

『構成・テイエムオペラオー』

『演技指導・テイエムオペラオー』

『振付・テイエムオペラオー』

『配給・テイエムオペラオー』

『主演・テイエムオペラオー』

『助演・テイエムオペラオー』

『エキストラ・テイエムオペラオー』

『ナレーター・テイエムオペラオー』

『愉快な仲間たち・アドマイヤベガ、ナリタハイウェイ、メイショウドトウ(五十音順)』

『主題歌(作詞・作曲・編曲)テイエムオペラオー』

『劇中歌(作詞・作曲・編曲)テイエムオペラオー』

『音響・照明・大道具・小道具・衣装・雑用・etc・トレーナー君』

 

 眩暈がするほどの名前の圧にクラクラする。聖蹄祭の演劇をどこに配給するんだとか、最後の最後で担当トレーナーに丸投げしているとか色々言いたいことはある。

 

 しかし、それを差し置いてもこの名前のインパクトはそれに勝るものだ。インパクトの意味は違うが。

 

 

 『テイエムオペラオー』

 

 

 今、トゥインクル・シリーズの本命であるクラシックレースすら差し置いてファンたちの視線を一身に受けるシニア級ウマ娘。

 

 今年初春のGⅡレース・京都記念を皮切りに、GⅠ含む重賞レースを破竹の4連勝。ファンの人気投票で出走が決まるグランプリレース・宝塚記念にも堂々の一番人気で選出され、期待に応え見事1着をとって見せたスターウマ娘だ。

 今度行われる京都大賞典、次いでその後の天皇賞秋にも既に出走表明をしており、連勝記録をどこまで伸ばすのか、いくつGⅠタイトルを獲得するのかが連日ファンたちの間で盛り上がりを見せている。

 

 そして、もしドリームトロフィー・シリーズへの移籍をしないのであれば、来年にはマンハッタンカフェの前に立ちはだかることとなるであろう大きな壁だ。

 

 「演劇というのも興味はありますが・・・・・・純粋に、トゥインクル・シリーズの強者を観察したいと思いまして」

 

 鋭く細められたマンハッタンカフェの視線が、イベント紹介ページになぜかドアップで高笑いする自撮り写真を掲載しているテイエムオペラオーを射抜く。

 

 強いウマ娘と戦いたい。

 

 マンハッタンカフェのレースにかける思いに今最も近しい存在は、間違いなくテイエムオペラオーだろう。

 

 俺も、レース以外の場で対戦相手を見たいという彼女の気持ちに異論はない。

 

 「わかった。それじゃあ、体育館に行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

 「な、なんだってー!?」

 

 体育館前まで差し掛かったところで、そんな声が聞こえてきた。何事かと、マンハッタンカフェと二人で声の元を探す。

 

 「アヤベさん、来られないとはどういうことだい!?」

 

 派手な衣装のウマ娘が、スピーカーモードのスマホへ焦りながら通話をしている。

 

 『ごめん、迷子の子供に泣きつかれて・・・・・・お母さんを探してあげないと・・・・・・あっ、泣かないで。大丈夫よ、私が貴女のお母さんを見つけてあげる。・・・・・・ほんと、ごめんなさい。できる限り早く駆け付けるつもり、ではあるけれど・・・・・・それじゃあ』

 

 「アヤベさん!? アヤベさーん! ああっ、何ということだっ! 晴れの舞台を目前に襲い来る苦難っ! 神はボクにこの壁を乗り越えろてみせろというのか!」

 

 「うぅ・・・・・・どうしましょう~オペラオーさん・・・・・・」

 

 「困りましたね。アヤベさんの代役、今から探します?」

 

 派手なウマ娘には見覚えがある。というか、さっき写真で見た。テイエムオペラオーだ。

 その周りで心配そうな顔をしているのは、メイショウドトウとナリタハイウェイだろう。いずれもテイエムオペラオーと鎬を削るシニア級の実力者だ。

 どうやら、何か劇の前にアクシデントがあったらしい。

 

 心配になって声をかけてみることにする。

 

 「ちょっといいかな? 何かトラブルでもあったか?」

 

 三人が怪訝そうな目で俺を見て、俺のスーツについたトレーナーバッジと、隣のマンハッタンカフェの姿を見て警戒を解いた。

 

 「学園のトレーナー君か。トラブル・・・・・・そう、これはボクに与えられた試練!」

 

 自分の世界にトリップするテイエムオペラオーを横に押しやったのは、長身でウマ娘の中でも一際目を引く端正な顔立ちの栗毛のウマ娘、ナリタハイウェイ。昨年の菊花賞ウマ娘だ。

 

 「どうも、トレーナーさん。それに、カフェさん。実は、私たちの劇の出演者が一人、時間までにこちらに来れそうにないんです」

 

 「もうすぐ開演なのに・・・・・・救いはないんですか~」

 

 なるほど。それは確かに一大事だ。開演時刻まで15分もない。後ろにも演目はある以上、引き伸ばすのも難しいだろう。

 

 「来れない人の代わりを、君たちがやるのは難しいのか?」

 

 「ドトウはかつてはボクの忠臣でありながらボクの王国の転覆を目論見、出奔した敵国の騎士。ハイウェイ君はボクの妻でありながら王座を狙いボクの毒殺を目論む美しき毒婦役だ。そんな二人に、ボクの命を虎視眈々と狙う貧民街生まれの暗殺者であるアヤベさんの代役までやらせるわけにはいかないだろう。観客が混乱してしまうからね」

 

 「いや、出てくる演者全員君の敵なのか!? どんな劇なんだ・・・・・・」

 

 「繁栄の絶頂を極める王国は常に内患外憂の危険に晒されるものさ! ああっ、テイエムオペラオーによるテイエムオペラオーのためのテイエムオペラオー劇場を心待ちにするファンたちが大勢押し寄せているのに、なんたる醜態! 建国史を語る前に亡国してしまいそうだ!」

 

 大げさな身振り手振りで感情を表現するテイエムオペラオー。まあ、彼女なりに焦ってはいるんだろう。

 

 「ふぅ、どこかにいないものですかね。アヤベさんの代役をやってくれそうな方」

 

 「そんな人、いるんでしょうか・・・・・・それに台詞と動きは、どんくさい私だと覚えるの、とっても大変で・・・・・・」

 

 「諦めるな! ハイウェイ君! ドトウ! 探せばいるはずさ! 短時間で台詞を覚えられて、人前で堂々と演技ができて、ボクの輝く覇気に目をくらませることのない、これからの予定が空いてる、そんな天より遣わされたウマ娘が!」

 

 「演技ができて・・・・・・」

 

 「予定が空いてそうなウマ娘・・・・・・」

 

 テイエムオペラオーの言葉に視線をさ迷わせたメイショウドトウとナリタハイウェイ。その二者の視線が一点で交わった。

 

 「いたね」

 「いました~!」

 

 「・・・・・・私、ですか?」

 

 

 

 

 

 

 「あーっはっはっは! 予定の空いている女優の君が、偶然あの場所へ通りかかるなんて、これは天の配剤というほかない! いや、はたまた甘美な悪魔の契約!? 何にせよ、感謝するよカフェさん! ボクの華麗なるテイエムオペラオー自伝を記す際には、君の貢献は見開き数ページで枠をとって語りつくそうじゃあないか!」

 

 「いえ、遠慮します・・・・・・」

 

 体育館の舞台袖で台本を読み込んだマンハッタンカフェは、動きの流れを二三質問して、大丈夫そうだと頷いた。

 

 「舞台は門外漢なんですけれどね・・・・・・ですが、今日は興行ではなくただの学園のお祭りですし、声を張って動きさえ大きくすれば問題はないでしょう」

 

 ボロボロの外套風の衣装を羽織ったマンハッタンカフェが、小道具のナイフをクルクルと指で回す。本番前なのに既に風格が凄い。

 

 「これは、プロのカフェさんは逆に演技が上手すぎて主役のオペラオーを食ってしまうのでは? 大丈夫ですか、オペラオー。オペラ王国クーデター、普通に成功しそうですよ」

 

 「何を言うんだいハイウェイ君! 光り輝くこのテイエムオペラオーは周囲全てをまばゆい光で照らす太陽のよう! そう、影が濃ければより光は際立つのさ!」

 

 「凄い自信・・・・・・ダメダメな私ですけど、脚を引っ張らないように頑張らなくちゃ・・・・・・」

 

 

 ブー!

 

 

 開演のブザーが鳴る。

 俺にできることは何もないが、舞台袖から成功を祈ろう。

 

 「さあっ、行くぞ皆の者! 高らかに衆目を魅せようじゃあないか!」

 

 

 

 

 

 

 劇は順調に進む。

 

 テイエムオペラオーの創り出す独特の世界観、空気感は既にファンたちを取り込んでいるかのようで、テイエムオペラオーの一挙手一投足に観客が湧きたつ。

 

 

 「ああ、我が友ドトウ! ボクを守ると騎士の誓いをしたその剣で、君はボクの命を散らそうというのか!」

 

 「うぅ~・・・・・・お、オペラオーさん・・・・・・こ、これが私の、オペラオーさんへの友情の証なんですぅ! お命頂戴させてくださーい!」

 

 

 「グフッ、ハイウェイ君・・・・・・なぜ君が・・・・・・」

 

 「フフフッ、これで至高の玉座は私のモノ・・・・・・愛していましたよオペラオー・・・・・・憎らしいくらいにね」

 

 

 迫りくる脅威を乗り越え、悲しみを振り払いテイエムオペラオーは征く。永久の楽土、テイエムオペラ王国を守るために。

 

 しかし絶頂を極めたテイエムオペラオーがテイエムオペラ王国の永遠の繁栄を宣言する式典を開催したその時、彼女に近づく影が!

 

 「はーっはっはっは! 民よ、テイエムオペラ王国は永遠だ! さあ、我が名を讃えよ! 諸君らの頭上に君臨する覇王の御名を!」

 

 オペラオー! オペラオー! テイエムオペラオー!

 

 「はーっはっはっは! っ!」

 

 キィン

 

 小道具のナイフがぶつかる瞬間に効果音が流れる。

 

 舞台袖から飛び出してきたマンハッタンカフェが突き出したナイフと、テイエムオペラオーの杖が交差した音だ。

 

 「何奴!」

 

 「覇王の治世は一片の希望も見えない暗黒の世界・・・・・・その躯で貴方が踏みつぶしてきた全てに詫びなさい・・・・・・!」

 

 「勇者を気取る痴れ者の暗殺者か! 面白い、君も我がテイエムオペラ王国の歴史の1ページにしてあげよう!」

 

 キィン、キィン

 

 臨場感溢れる剣戟に、劇だとわかっていても息を呑む。

 

 そして、ついに物語はクライマックス。

 

 追い詰められたマンハッタンカフェが罠を発動させ、一転テイエムオペラオーを窮地に追いやる。

 

 「くっ、このボクがここまで追いつめられるとは!」

 

 「はぁ、はぁ・・・・・・何という強さ・・・・・・ですが、これで終わりです。覇王テイエムオペラオー、時代の波に消えなさい・・・・・・!」

 

 「時代とはボク! 波とはボク! つまり時代の波とはこのボクのことさ!」

 

 武器を構えた二人が交錯するその瞬間、照明が消え暗転。そして暗闇の中でザシュッ、バタッとどちらかが凶刃に倒れる音がする。

 

 『ああ、テイエムオペラオー! 頑張れボク! 負けるなテイエムオペラオー! 覇王の千年王国のために! ボク、テイエムオペラオーの運命やいかに! この続きは、君たちがターフの上でその目に焼き付けたまえ、あーっはっはっは!』

 

 最後に舞台に立っていたのは果たしてどちらなのか。

 

 テイエムオペラオー主役の舞台だとわかっていても、俺はマンハッタンカフェの勝利を願った。

 

 

 

 

 

 

 「感謝するよカフェさん! ボクのオペレッタは大成功だ! お礼に君をテイエムオペラ王国の名誉国民にしてあげよう!」

 

 「いえ、結構です」

 

 「むぅ、歓喜にむせび泣くところだぞここは」

 

 袖にされたテイエムオペラオーを置いて、マンハッタンカフェがこちらへ歩いてくる。

 

 「お疲れ様、マンハッタンカフェ。かっこよかったよ」

 

 「ありがとうございます。トレーナーさん」

 

 マンハッタンカフェにペットボトルを渡して労う。

 

 「ありがとう、カフェさん。ご迷惑おかけしました」

 

 ぺこりと頭を下げるのはマンハッタンカフェが代役を務めた本来のキャストであるアドマイヤベガ。今はケガで療養中だがダービーウマ娘の栄光を勝ち取ったウマ娘だ。

 

 「私こそ、貴女の役を取ってしまって申し訳ありません」

 

 「いえ、それは、全く、全然惜しくないので。それを含めてありがとう」

 

 きっぱりと言い切るアドマイヤベガ。後ろで「アヤベさーん!?」とテイエムオペラオーがショックを受けている。

 

 「それでは、私はこれからトレーナーさんと会場を回るのに戻ります。お疲れ様でした」

 

 「ああ、カフェさん! ボクの王国民になりたければいつでも言ってくれていいからね! きっと君も、ボクの秋のレースを見れば気が変わるだろう、あーっはっはっは! 京都大賞典! 天皇賞秋! ジャパンカップ! そして有馬記念! 君は栄光の覇道の目撃者になるだろう!」

 

 「ちょっと、オペラオー。大言壮語は結構ですが、私たちもいるんですよ。後塵を拝しましたが、秋のレースは貴女に譲るつもりはありません。ね、ドトウ」

 

 「わ、私ですか~!? 私なんかが、そんな大それたことは・・・・・・どうしましょう~」

 

 「・・・・・・私だって、怪我が治りさえすれば・・・・・・くっ」

 

 覇王テイエムオペラオーとそれを追い落とそうとする挑戦者たち。彼女たちにもまた物語があり、ドラマがある。

 

 今日の舞台のようにその道がマンハッタンカフェと交わる時は、まだ先の話だ。

 

 

 

 

 

 

 『さあ、テイエムが! テイエムが! テイエムオペラオーが抜け出している! 一番人気のジンクスが何のその! 覇王は天皇賞の魔物すら飲み込んだ! テイエムオペラオーが一着でゴールイン! そして二着はメイショウドトウ! 三番人気ナリタハイウェイは五着に敗れました! 圧倒的! 天皇賞春秋連覇! 重賞6連勝! 4つ目のGⅠの栄光を掴んだテイエムオペラオー! 彼女の伝説はどこまで続くのかー!!』

 

 大きく息を吐きだすメイショウドトウ、膝から崩れ落ちたナリタハイウェイを見下ろすように、覇王は秋のGⅠでも高らかに歌った。

 

 「・・・・・・驚愕(ヤベェ)な。来年には、これと競争(ヤリアウ)ことになんのかアタシら」

 

 長い沈黙の末、ようやくアニマルポッケが一言、ポツリと口に出す。

 

 今はジュニア級の自分たちと、シニア級で連勝を重ねるテイエムオペラオー。その差はいかほどか。

 

 「テイエムオペラオー君か・・・・・・とんでもない怪物がいたものだ。だが、彼女の走りは、ウマ娘の限界のその先とはなんというか異質に思えるねえ。強さと限界は別の道の先にあるということか・・・・・・? いや、しかし私が求めるものは速さの限界の先。それならレースにとっては強さとは速さではないのか・・・・・・? ふむ」

 

 「Overlord・・・・・・。今ノチャンピオンハ、トンデモナイモンスター、デスネ」

 

 「テイエムオペラオーさん・・・・・・」

 

 覇王の首を狙うものは数知れず。しかし、未だその刃は彼女に一矢報いることすら叶わない。

 

 マンハッタンカフェは手の中に以前劇で握った小道具のナイフの感触を思い出す。

 

 あの時は小道具で、劇の結末はぼかされていた。

 

 願わくば、この手で・・・・・・あの再演を・・・・・・結末は当然・・・・・・。

 

 「ふふ・・・・・・ふふふ・・・・・・」

 

 「うわっ、『根暗』気色悪(キッメ)ェ! 何ニヤニヤしてやがんだ」

 

 「何でもありませんよ、ふふふ・・・・・・」

 




 アプリだと季節イベントは正月以外はシニア期しかやらないけど、実際は三年間毎年トレーナーと過ごす子もいるんだろうなと思いながら書きました。

 クリスマスとかバレンタインも、ネタさえ思いつけば色々やっていくつもりです。

 お付き合いいただきありがとうございました。
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