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「あの、トレーナーさん・・・・・・。少しよろしいですか?」
デビュー戦も間近に迫ったある日の、トレーニング終了後。
機材の片づけをしていると、トレーニングウェアのままのマンハッタンカフェが少し遠慮がちに声をかけてきた。
「ん? どうしたんだ? もしかして、トレーニングの延長がしたいとか?」
「あ、いえ。そういうわけではなく・・・・・・。あの、今日この後、お時間ありますか?」
「俺の? うーん」
今日は一応この後、沖野トレーナーに飲みに誘われている。
以前、アニマルポッケやサスケハナに襲撃された日の夜は、沖野トレーナーの誤解も解くためにとても骨が折れた。
しかし、それからも定期的に俺の相談だったり、沖野トレーナーの愚痴を聴いたりと、男二人で飲みに行くことが増えたのだ。
「あ・・・・・・ご予定はあるのでしたら大丈夫です。大した用ではありませんから」
「・・・・・・。いや、大丈夫。俺の方が大した用じゃないから。この後だよな? 機材を片付けてからなら大丈夫だ」
あっちには断りのメッセージを入れておけば大丈夫だろう。
というか、行くと結構な確率で俺が奢ることになるからな。あの人との飲み。
別にお金には困ってないし、あの人との会話はトレーニングの参考になることばかりだから授業料と思えば安いものなのだが、担当ウマ娘からの相談に優先するものでもない。
たまには自分の酒代くらい自分で出してもらおう。
頭の中で天秤の上下を結論付けて、マンハッタンカフェにそう返す。
「そう、なのですか? ・・・・・・ありがとうございます。では、一時間後に校門前に集合でいいでしょうか」
「いいけど、用って外なのか。どこに行くんだ?」
すると、マンハッタンカフェが少し困ったような、言い淀むような面持ちになる。
「・・・・・・私の知り合いに、トレーナーさんに一度どうしても会いたいとおっしゃる方がいまして、その人に会っていただければ、と」
「俺に会いたいなんて変な人もいるんだなあ。どんな人なんだ?」
「私にとっては第二の父であり母のような人・・・・・・私の所属する芸能事務所の、社長です」
◇
「おー、大きいビルだ」
マンハッタンカフェの呼んだタクシーに運ばれ到着した、都内某所。
目の前には、見上げるほどの長大なビルが鎮座している。
横には、帽子とサングラスで変装したマンハッタンカフェ。こういう姿を見ると、本当に芸能人さんなんだなあと改めて実感する。
どうぞ、とマンハッタンカフェに先導されて、関係者専用の入り口から中へ入ったそこは、人も建物も何というかオーラがあるというか、キラキラしていて、まるで不思議の国にに迷い込んだように錯覚してしまう。
「こちらです、トレーナーさん。はぐれないようしっかりついてきてくださいね」
そんな世界を、まるで物おじせず我が物顔で闊歩するマンハッタンカフェ。
俺が知っている彼女は芝の上で汗を流すアスリートの姿だけだが、学生で担当である年下の彼女は、既に俺と同じように仕事をしていて、多種多様な経験を積み重ねている大人でもあるんだな、と不思議な感覚を覚えながら、マンハッタンカフェの背中を追う。
名前は知らないが、多分テレビか映画で見たような覚えがある人たちと次々すれ違うと、彼らは皆次々とマンハッタンカフェに親しげに声をかけ、続いてその後ろを所在なさげに歩く俺を胡乱な目で見てくる。。
その度にマンハッタンカフェが上手く取りなしてくれるので不審者扱いは免れているが、正直なところ居心地が悪すぎて早く帰りたいのが本音だ。
興味のある人にとっては天国のような場所なんだろうが、俺はそういうのに疎すぎて何のありがたみも感じられないから、それに関しては少し勿体ない気がしなくもない。
マンハッタンカフェの担当になったのだし、少しは芸能界にも興味を持つべきかもしれないな、と今更ながらに感じながら歩を進めた。
「着きました。ここです、トレーナーさん」
事務所の一番奥、一際豪奢な扉をマンハッタンカフェがノックした。
「アリスさん。マンハッタンカフェです。トレーナーさんをお連れしました」
「ご苦労様、入っていいわよ」
・・・・・・アリスさん?
「失礼します。トレーナーさん、どうぞ」
「し、失礼します」
若干緊張しながら、マンハッタンカフェが開いてくれた扉を抜けて部屋へと立ち入る。
来客用の机とソファーの奥に、大きな机に向かい事務をしている人の姿があった。
「いらっしゃい、カフェちゃんのトレーナーさん。不躾な呼び出しをまずは謝らせてちょうだい」
濃い目の化粧と、派手な色使いと露出度の高いデザインの服に身を包んだ、しかし決して下品とは思わないいで立ちのこの人が、俺を今日ここに呼んだ張本人。カフェの事務所の有栖川社長らしい。
年齢は・・・・・・ぱっと見ではわからないな。
「いえ、そちらの大事な女優さんでもあるマンハッタンカフェさんを預からせていただいているわけですから。むしろ、今日まで挨拶に赴かず申し訳ありません」
「ふふ、真面目ちゃんねぇ。どうぞかけて頂戴。今お茶を淹れさせるわ」
そう言って、マンハッタンカフェの方を見る有栖川社長。
「というわけでカフェちゃん。ちょっと外して、コーヒーでも淹れてきて。アンタ得意でしょ。10分くらいしたら持ってきてくれていいから」
「えっ。それは私に、この部屋にトレーナーさんとアリスさんを二人きりにしろと・・・・・・?」
どこか怯えたような視線で有栖川社長を見るマンハッタンカフェ。
俺も・・・・・・この空間にこの人と二人きりは、ちょっと怖いな。
「なぁに、妬いてるのぉ? 小娘がいっちょ前に色づいちゃって。心配しなくても、アンタの男に手を出すほど私は男に飢えてないの! わかったらさっさと出てく! ほら! 大人同士の秘密のお話があるんだから!」
「・・・・・・トレーナーさん。襲われそうになったら、すぐに大声をあげてください。私がすぐに駆け付けて、この人の息の根を止めます」
「本当にこの兄ちゃん襲われたくなかったらさっさと動け! お前の目の前でチューすんぞ!」
えっ。
「・・・・・・わかりました。トレーナーさん。もし、・・・・・・チュー、されたら、この人の唇をえぐり取りますから安心してくださいね。では、お気をつけて」
そもそもチューをされたくないから、そんな血なまぐさい解決を提案されても安心できないんだが。
縋る俺の視線も空しくマンハッタンカフェが本当に出て行ってしまい、テーブル越しにソファに腰かけた俺と有栖川社長がサシで対面する形になる。
「改めまして、当プロダクションで代表取締役を務めている有栖川と申します。気軽にアリスちゃんって呼んでね、トレーナーちゃん」
ウインクをスルーして挨拶を返す。
「ご存じとは思いますが、私がマンハッタンカフェさんの専属トレーナーをさせていただいているものです。若輩者ですが、よろしくお願いします、有栖川社長」
「・・・・・・身持ちが固いのね。ふふ、カ~ワイイ。さっきはああ言ったけど味見したくなっちゃう」
ゾワッ
開幕一分で訪れる貞操の危機。帰りたい。
「ジョークよジョーク。場を和ませようとしただけなのに、傷ついちゃうわねもうっ」
プリプリと怒った様子を見せた後、真面目な面持ちに直る有栖川社長。
「それじゃ、本題入らせてもらうわね」
スッ
俺の前に横長の紙が差し出される。
「ここに小切手があるわ。好きな金額を書いて持っていってちょうだい。それで、もうあの子に関わらないで」
・・・・・・は?
◇
「あの子はね、この事務所を背負って立つスターなの。今もドラマや映画のオファーがバンバン来ているわ。海外からだってお呼びがかかってる。かけっこのトレーニングなんかで撮影のスケジュールに穴は開けられないの。それに、そんな子が過酷なレースでキズモノになっちゃったら、貴方どう責任を取ってくれるの? 損害賠償億の世界よ」
タバコを吹かしながら、淡々と有栖川社長がマンハッタンカフェの価値を説く。
マンハッタンカフェにオファーが来ているという作品は、俺でも名前を聞いたことがあるようなアクション作品やミステリーが並んでいる。
「・・・・・・しかし、有栖川社長。トレセン学園に入るということはそういう世界に足を踏み入れることだと、あなたもわかっていたのでは?」
「トレセン学園は日本最高峰の学園。だからこそ、入るまでも国内最難関。そして、そんな才能溢れる地元じゃ負け知らずのすごーいウマ娘がいざ入学できても、トレーナーにもついてもらえずデビューすることすらなく学園を去る子も珍しくはない・・・・・・そうなんでしょ? トレセン学園のトレーナーさんなら、その辺は私よりよーくご存じのはずよね」
嫌味たらしい声色で、トレセン学園の抱える暗い側面をあげつらう。
トレセン学園は、ウマ娘の数に対して在籍するトレーナーの絶対数が足りなすぎる。
それは、中央トレーナーという厳しい基準を求められる専門職の持つ問題点として、ずっと前から議論され続け、そしてそれでも未だに解決されない課題なのだ。
だからこそ、俺はその挑発を否定することができない。
「・・・・・・そういった学生がいることも、間違いではありません」
そんな俺を心底バカにしたように鼻で笑い、そして憎々しげに俺をにらむ有栖川社長。
「だから、私はトレセン学園なら目指してもいいわって許可を出したの。だって、あの子は母親譲りの演技の才能はあっても、レースの才能まで継いでるなんて思わなかったもの。なのに、あっさり入学決めちゃうから困っちゃったわ。それでも、デビューできないうちはまだよかった。『トレセン学園にもいたことのあるスター女優』は、テレビ用の肩書としては十分使えるし・・・・・・あとは、あの子がさっさと見切りをつけて退学するか、何もないまま卒業するのを待つだけだったのに、あの子をスカウトするなんて、本当に余計な事してくれたわねぇ」
「それは、マンハッタンカフェにあなたの予想を遥かに超えるレースの才能があり、それはトゥインクル・シリーズでも戦い抜けるほど素晴らしいものだった。それだけのことです。彼女の、アスリートとしての才能も尊重してあげてください」
「女優には無用な才能ね。とにかく、私はあの子に『商品価値』の下がる危険が万が一にもあるレースデビューなんてされたら困るの。でも、私が無理に辞めさせるようなコトしたら、せっかく時間をかけて信用させたあの子に嫌われちゃう。だから、トレーナーちゃん。貴方があの子を捨てて、傷つけて、嫌な思い出になったレースの道を自主的に諦めるように仕向けたいの。協力してくれたらお金でも女でも何でも見繕ってあげるわ。だから、協力してちょうだい」
「お断りします」
こんな話、悩む必要すらない。
彼女を物扱いするこんな人とは、早く会話を終わらせたいという怒りもある。
「・・・・・・わからない坊やねぇ。貴方があの子を担当するのも、つまるところはあの子が凄いレースに勝てばトレーナーの貴方にも相応のマネーの分け前があるからなんでしょ? なら、その分を私が即金で立替えてあげるって言ってるの。あの子が勝てるかなんてわからないんだし、こっちの方が確実じゃない」
「俺は、お金が欲しくてあの子を担当しているわけじゃありません。そんなことはないと信じていますが、もし彼女が一度もレースに勝てなくたって、彼女がレースを辞めるその日まではいつまでだって支えるつもりです」
「なら、『女優』マンハッタンカフェのトレーナーっていう名声がお望み? それなら、代わりに私が貴方を手取り足取り専属マネジメントしてあげるわ。テレビでチヤホヤされるカリスマなんてお金さえ使えば簡単に作れるのよ」
「そういう話じゃないんです!」
見当違いの話を続ける社長に嫌気が差し、つい声を荒げてしまう。
「俺は『マンハッタンカフェ』の走りに惚れたんです! 金とか名声とか、そんなものはどうでもいいんだ」
白紙の小切手を破り捨て、紙屑となったそれを有栖川社長の目の前で落として見せる。
「・・・・・・後悔するわよ? マスコミなんて、私の声一つでいくらでも貴方を悪し様に書けるわ。その時貴方は世間の目に耐えられるかしら」
「彼女が自由に走れるなら、そんなことは俺が気にしなければいいだけのことです」
これ以上はどれだけ話しても平行線だろう。
俺はマンハッタンカフェに走ってほしい。この人はマンハッタンカフェを走らせたくない。
互いの利益と感情が重なるところを、今の俺には見いだせない。
「・・・・・・失礼させていただきます。俺にはどれだけ嫌がらせでも何でもしてくれていいですが、やるならマンハッタンカフェにはわからないようにやってくださいよ。彼女はあなたを信用しているようですから、あなたのそんな姿を見たらショックを受けてしまう」
立ち上がり足をドアへと向ける。
マンハッタンカフェを見つけて、さっさと帰ろう。それから、理事長やたづなさんに相談をして、今後の対策もしなければ。
俺は俺でやれることは全部やって、マンハッタンカフェを守らないと。
「・・・・・・そうね。でもごめんなさい。貴方を今返すわけにはいかないの」
俺とドアの間に立ちふさがり、進路を塞ぐ有栖川社長。
身長差で見下ろされるような形になり、威圧感に思わずたじろぐ。
「・・・・・・まだ、何か?」
引き止められるとは思わなかったので少々困惑する。
まさか、言葉で説得できないなら暴力でということか・・・・・・? この体格差は厳しいぞ。
有栖川社長は身構える俺の肩をガシっと掴み、
「ええ。だって――
カフェちゃんのせっかく淹れてくれたコーヒー、まだ飲んでないじゃな~い! 美味しいケーキもあるのよ! あの子の学校でのお話とか、レースの面白いお話とか、たっくさん聞かせてちょうだい!」
・・・・・・は?
・・・・・・・・・・・・は?
◇
つまるところ、有栖川社長の話は全部嘘だった。
申し訳なさそうにコーヒーを持ってきたマンハッタンカフェに謝られながら説明を受けたところによれば、可愛がっているマンハッタンカフェについた専属トレーナーの人となりを自分の目で確認したいという社長の意向で、一芝居を打ったらしい。
私も中々の役者ねぇ〜とドヤ顔をされた時には流石にイラッとした。
「そもそも、この子にトレセン学園行くように勧めたのは私なのよ~」
「へぇ! でも、これは俺が言うことじゃないですけど、さっき有栖川社長が言われた通り女優業をする上では、必ずしもトゥインクル・シリーズに参加することはメリットばかりではないんじゃないですか?」
さっきの雰囲気から一転。三人でコーヒーとケーキに舌鼓を打ちながら、和やかに会話が進む。
「そりゃ、女優としてはね。だから、これは私のわがまま。ウマ娘しか味わえない、レースの世界っていう特別な時間を経験して人として一皮もふた皮も剥けてほしいの。社長として、経営者としては落第ね。稼ぎ頭で事務所のエースを開店休業状態にするんだもの」
開店休業?
俺のそんな疑問を浮かべた顔に答えるように、先ほど俺に見せた作品タイトルの羅列を指でなぞる。
「これね、ぜーんぶ断るつもりの作品よ。映画とかドラマは拘束時間が長過ぎるから、少なくともこの子がレースをやってる間はこういう仕事はとらないつもり。CMとかバラエティとかそういう単発で済むお仕事の営業は増やすけどね」
本当の意味で休んじゃったりしたら復帰も難しくなるし。そう、あっけからんと惜しげもなく語る姿は、とても数億円規模の仕事を切って捨ててる様には見えない。
「・・・・・・可能な限り、お仕事と両立できるように配慮したスケジュールを組むこともできると思いますが――」
「トレーナーちゃん」
ピシャリと、叱りつけるような強い口調に言葉を止められる。
「気持ちは嬉しいけど、貴方の仕事は芸能事務所のマネージャーじゃなくて、レースのトレーナーでしょ? なら、一番に優先すべきはレースのこと。いらない気を回して本分を忘れちゃダメよ」
「有栖川社長・・・・・・」
「優しいのは美徳だと思うわ。でも、私達のこの業界は生き馬の目を抜く因果な世界・・・・・・『誰にでも優しい』は、そういう悪い奴らに真っ先に食い物にされる悪癖よ」
クソみたいな世界よね、と吐き捨てる有栖川社長。
「そうね。それじゃ、これが私が貴方にカフェちゃんを預ける条件。貴方はその優しさを、『マンハッタンカフェ』だけに向けてちょうだい。『マンハッタンカフェ』にとってだけは底抜けにいい人で、それ以外の全ての人にとって悪い人になるくらいの心づもりでいて」
ポン、と自分の横に座るマンハッタンカフェの頭に手を置きぐりぐりと揺らす。
マンハッタンカフェは嫌そうな顔をするが、決してはね除けることはせず、されるがままに身体を揺らされている。
「この子・・・・・・カフェちゃんの親と私は親友でね。あの子の事は、それこそ文字通り生まれた時から知ってるの。・・・・・・子供を産めない私にとっては、実の娘も同然。その私が、貴方を信頼してこの子を預けるの。その意味、貴方ならわかるわよね」
マンハッタンカフェのことを語る口調と視線は柔らかく、有栖川社長がマンハッタンカフェのことを深く愛しているのが伝わってくる。
マンハッタンカフェも、この人の事を父のようにも母のようにも慕っていると言っていた。
二人の間には誰にも立ち入れない強い信頼がある。その関係はとても尊く、そして羨ましいものがある。
俺とマンハッタンカフェも、トレーナーとウマ娘としてそんな強い信頼関係をいつか結びたいものだ。
そして、そんな人から彼女のことを任された。
その事実に、ずっしりとした重みを感じる。しかし、それは決して嫌な重さではない。
「はい、有栖川社長。約束します」
「・・・・・・うん。この子が選んだ人だから心配はしてなかったけど、直接この目で見れてよかったわ。真面目そうで、この子の見た目や芸能人としての地位に目がくらんだあんぽんたんでもないってしっかりわかったし。貴方みたいな人があの子のトレーナーさんになってくれたなら安心」
「・・・・・・ですから、心配ないと説明したじゃないですか。アリスさんは、心配しすぎです」
どこか拗ねたような口調のマンハッタンカフェを見て、くすっと笑う有栖川社長。
どこか大人びたマンハッタンカフェも、この人の前では歳相応の子供っぽさを隠し切れないらしい。微笑ましい物を見た。
「親心ってそういうものなのっ。少しくらい私にもそういうケイケンさせてくれたっていいじゃない! まっ、お仕事のことは心配しないでね、トレーナーちゃん。私の事務所は、こんな小娘一人の稼ぎが減ったくらいで潰れるほどヤワじゃないし、この子一人におんぶに抱っこの情けないメンバーじゃないんだから。だから、カフェちゃん、アンタもいらない気は回さないで、思いっきりブチかまして、こい!」
バンッと背中を思いきり叩かれたマンハッタンカフェが、目尻に涙を浮かべて有栖川社長を睨む。
「アリスさん・・・・・・痛いです」
「あらやだ! 私の感動的な愛に泣いちゃった!? そんな涙なんて浮かべちゃって、嬉しいわよん!」
バンッバンッ
「ですから、馬鹿力で叩かれて、痛いんです・・・・・・!」
マンハッタンカフェから怒気が溢れているのが幻視され、慌てて止めに入る。
その後、暴走した社長に間に入った俺も張り倒されるのだった。
◇
『じゃあね、トレーナーちゃん。これ私の名刺! いつでも連絡してきてちょーだい。トレーナーちゃんなら24時間365日いつでもウェルカムよん。それと、次はちゃんと『アリスちゃん』って呼んでよね!』
◇
それから数時間後、すっかり暗くなった夜の東京の街を、タクシーの車窓から眺める。
帰り際に渡された有栖川社長の名刺を眺めながら、今日の出来事を思い返す。
半日以下の滞在とは思えない、濃密すぎる時間だった・・・・・・。
「トレーナーさん、すいませんでした・・・・・・」
「いや・・・・・・いろいろと貴重な体験ができたし、あの人と話せてよかったよ」
単純に私人としてもそうだし、これからマンハッタンカフェとトゥインクル・シリーズを走っていく上で、あの人との繋がりはきっとプラスになる。
デビュー戦を前にしたこのタイミングでよかった。
「しかし、濃い人だね、あの人」
「・・・・・・初見で、あの人への感想が濃いで済むトレーナーさんって、意外と大物だと思います」
なぜか呆れたような尊敬するようなマンハッタンカフェの視線に、そうかな、ちょっとびっくりしたけど滅茶苦茶いい人だったし・・・・・・と答えながら、名刺に記載されたその名前と番号をスマホに登録した。
「有栖川重秋、っと」
有栖川重秋社長。
父であり、母であるというマンハッタンカフェの言葉通りの・・・・・・父性と母性と兼ね備えたパワフルな――男性だ。
社長のキャラは叙述トリック的なノリをやりたかっただけの一発ネタです。あとは、作品の都合上女の子ばかりになるので男キャラを増やしたかったのと、作者が個人的にオカマキャラが好きだからです。
オリキャラなのであまり出しゃばらないようにしつつポジション的にたまに出番があると思います。お好きな二次元オカマの声で再生してやってください。
タキオンが一言も発しないままジュニア期に突入し、やっとレースも始まります。
お付き合いいただきありがとうございました。
また次話もよろしくお願いします。
オリウマ娘の名前はどちらが好みですか?
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アニメ・シングレ風 例)キンイロリョテイ
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史実そのまま 例)ステイゴールド