ていうか小説検索でSAOにして総合評価で見ると拙作2ページ目にあって嬉しみ大爆発なんですわこれが。皆々様本当にご愛読ありがとうございます
「割と普通に間に合ったわね…」
「まだあまりプレイヤーはいないようですね」
ここは《トールバーナ》、噴水広場。
会議の行われるという円形劇場の最前席に、二人は座っていた。時刻は3:50。思いの外帰路はモンスターと遭遇せずにこの町まで辿り着けたのだ。
黄土の石材製の階段状席には現実では見ない鎧姿の男達が座っている。数にして30程だがこの劇場からすれば空の席が大いに目立っている。正面台座には青髪の好青年風なプレイヤーがおり、恐らく彼がこの会議の主催者なのだろう。
そして肝心の人探しだが、どこを見渡しても茶髪のフェンサーはおろか、女性プレイヤーの姿すら見かけない。その理由は男性比率が高いだけでなく、この時点で前に進む情報と意志を持った者が少ないからに違いない。もう少し時間がたてば追いつけるプレイヤーも増えるだろうが、まだ一ヶ月程度しか経っていない今では望みは薄だろう。
「まだ時間まであるから、もう少しは来るでしょうけどね。これでも多い方だと思うわよ」
「それは一体………なるほど。死の危険を覚悟したとて、それと結果は別という訳ですね」
「まあ、言っちゃ悪いけどそうね。実際、あなたはこのSAOで命の危険というものには遭っていないでしょ?恐怖に打ち克つだけじゃなくて効率や情報なんかも必要なのよ。悲しいことにね…」
目を伏せてそう吐き捨てるミト。危険を冒さなければ安全に生きられる。だが、強くなるには、先へ進むには否応なく死の危険に付き纏われる事になる。だが、情報も技術も平等ではない。こんな状況においても、こんな状況だからこそみんな力を合わせてというような綺麗事は難しい。全く世知辛いゲームだ。こんな所まで現実にしなくてもいいのに。
なんて、この世界をどこかから眺めているであろう
「おや、少し遅れそうとの事でしたが…我々より早く着いているとは」
「おおっ、その人が旦那のパーティーメンバーか?」
「やぁーっと間に合ったわい」
「ぃよしっ出遅れ回避っ!危ねー!」
決められた刻限を待っていると、新たに7人のプレイヤーが到着し、気さくにこちらに話しかけてくる。男所帯のそれに私はつい顔を隠すようにフードを被る。
と、情報共有をしているだけに私を知っているらしい赤い長髪の男の人が私に目を向ける。…何だろう、何処かで見たような気がする。
「そちらのレディはメッセージにあったミト…で宜しいですね」
「え、ええ。そちらは?」
「私はトリスタン。こちらのベディヴィエールとパーティーを組んでいる者です」
「ええ…私も、仲間がいることは聞いてるわ。こんなに多いとは思っていなかったけど…」
ちらと、トリスタンと名乗った彼の背後を見る。トリスタンは剣帯は腰に差し、何故か左手に竪琴を持っており、胸元の開いた白いシャツを着用している。しかし、その後ろは皆統一された赤に染められた道中合羽を羽織っていた。そのうちの一人が放った台詞から、恐らくこのベディヴィエールと別れた後に合流しているのだろう。
「ありがとうございます。あなた方が私の人探しを手伝ってくれたのですね」
立ち上がり、綺麗な礼を見事にこなすと、何に驚いたのか彼らは一様に見をこわばらせた。
「おっ、男おおぉぉぉっっ!?俺ゃあてっきりすんごい白人系美女だと…!」
「背ぇ高っ!?」
「が、顔面偏差値が高過ぎる…!?」
…何とも騒がしい、もとい賑やかなパーティーらしい。今の叫び声でプレイヤーの視線が集中した。
だけどまあ、気持ちは分かる。遠目で見たり、後ろ姿などは女性に映ることだろう。実際、銀の長髪は綺麗だし顔立ちは中性的で穏やか、背が高い事と体格が男性らしいといえばらしいが、鍛えている女性等、否定できる部分は少ない。更に今の姿は頭部以外は全身を金属鎧で固めており、体格が把握しづらかったのもある。
「ま、まさかこっちも男なんてことは…」
アフロ頭のふくよかな体型の男が私を指差す。割と失礼ね。
「残念だけど、私は普通に女よ。勿論ネカマでもないわ。…まあ、他MMOじゃネナベやってるんだけど」
そんな風に、ゲーム的冗談を言えば彼らの空気も和らいだらしい。
「では僭越ながら、私から自己紹介を。私はベディヴィエール。片手直剣と長槍を使用しております。以後お見知りおきを」
「私はミト。まあ、見れば分かると思うけど鎌使いよ。見た事は……ないわね。珍しい武器種だから無理もないわ」
今更ながら、このゲームで鎌使いを見かけた事はβ正式含めても一度もない。確かに扱いが他の武器とはかなり異なるし、長物の割には突く事が出来ず、攻撃判定の高い刃部分を当てる事すら難しい武器。……それでいて、手数はそこそこ、一撃の威力は並と、そんなにメリットがない。強いて言えば特殊な形状故の攻撃パターンがあるくらいで、それもどちらかといえばPVP向き。デスゲームと化したSAOでは然程活かせるものではない。
まあ、私も最初は
一歩踏み込んだ一人が胸を叩く野武士面の男。赤い頭髪に悪趣味なバンダナ。腰にはこの階層では結構強めの曲刀『スチールシミター』を下げている。他プレイヤーの反応から見て、きっと彼がリーダー格だろう。
「んじゃあ!俺はクライン!まあ、ある奴を追っかけようと頑張ってたところにトリの旦那がいてよ。レベル上げとかに付き合ってくれて来れたっつう訳よ。こいつらは俺のパーティーの一員で右からカルー、オブトラ、トーラス、ジャンウー、アクトだ。よろしく頼むぜミトさん!ベディヴィエール!」
「雑ぅっ!?」
「ええ〜っ、そりゃねえよリーダー!?」
「そんなついでみたいに!?」
「自己紹介くらい俺たちにやらせてくれよー!」
このやり取りだけでも彼らが気のいい間柄であることが伺える。
「俺らはリアルでもダチ同士でよぉ、ゆくゆくはギルド『風林火山』を立ち上げてやんだよ!」
リアルでの友達、という言葉に胸の奥がズキッと痛むが彼らは関係ない。一々目くじらをたてるのは筋違いだ。
「……そう。もうギルド設立を考えてるなんて余程仲がいいのね。風林火山というと、あの武田信玄が元ネタ?」
「武田信玄……ああ、日本の武将ですね。ええ、知っていますよ。甲斐の虎と呼ばれた英傑であったと聞きます」
ベディヴィエールが知っているのも中々興味深いが、彼らの様相的に中々合っている名前だと思う。フードを道中合羽風にカスタマイズしているのも武田信玄リスペクトだろう。
「ベディヴィエールさん、それでアスナっつうプレイヤーは見つかったのか?」
「……!」
何故それを…!?かっと頭に血が上りかけ、直前のベディヴィエールの台詞を思い出す。ああ、成程。このパーティーが、恐らくトリスタンと一緒に黒鉄宮にて名前を確認してくれた協力者なのだろう。ならば、ベディヴィエールからの依頼だと思って当然だ。
「いえ…実はまだなのです」
「おう…そうか。えと、そのアスナ…って人は知り合いか何かか?それとも…もしかして彼女とかだったり?」
恐る恐る、といった様子で伺うクライン。頬を描いて恥ずかしそうに問う彼は何やらだらしのない顔をしている。
眉を寄せた私を気遣ったのか、ベディヴィエールが口を開こうとするのを目で制する。
「アスナは私の……親友よ。5日前から連絡が取れないの。彼は私に付き合ってくれてるだけ」
そう言うと、クラインも流石に気がついたらしい。真面目な表情に戻って気まずそうに向き直る。
「その、なんか…悪ぃな。事情も聞かないでよ」
「…いえ、大丈夫。気にしないで」
言ったとて、それで中々切り替えられるものではない。この周囲だけが沈黙に支配される。その緊張を切ったのも、またクラインであった。
「……その、聞いちまったお詫びって訳じゃないけどよぉ。俺の話も聞いてくれねぇか?」
「……」
「俺よぉ、さっきある奴を追っかけようとしてるっつったろ?そいつはβテスターで、素人だった俺に戦い方をレクチャーしてくれたんだよ。あいや、俺が頼み込んだのもあるけどよ。SAOがデスゲームだって分かった時にも、そこ1、2時間程度の関係の俺を誘ってくれる様な奴でよ、でも俺は断っちまった。仲間がいるから先へ行ってくれってな。俺自身、その判断は後悔しちゃいねえけどな…。見た所、ミトさんと同年代くらいかもしれねえガキンチョに、大人の俺はあんな顔させちまったんだよ」
「それは…」
――私と真逆。
親友を有無を言わせず連れ出した私と、赤の他人を見捨てずに誘い、事情を聞いたその人物。積極的に手を差し伸べた彼と、助けを求めている彼女を利己的な理由で見捨てた私。
似ているようで、全然違う。方向性は似ているけど、その根幹にある思いの桁が違うのだ。だからか、だから、この人もそんなに沈んで……。
「多分、あいつもこの会議に参加すると思う。何たって、あいつは他のやつより頭一つ抜けて上手かったからな、別ゲーでもギルドの頭張ってた俺が言うんだから間違いねえ。そんであいつに言ってやんだよ。『お前があん時教えてくれたお陰で追い付けたぞ』ってな!」
そんな、考え方が…。
「絶対ぇあいつ目ン玉ひん剥いて驚くぜ、んでんでうちの奴らも紹介すんだよ。お前は間違っちゃいなかったって、分からせてやんだよ。守られるだけとか心配されるだけなんてカッコわりい。ゲーマー舐めんなよってな!だから、そのサプライズの為にこの道中合羽で顔を隠して……ってそれはいいか。その…つまり、俺が言いたい事はな……まあ、そんな気落ちすんなよって事だ」
「「「………」」」
「…それだけ?」
「へ?」
「それで終わり?」
「お、おう…」
今度は、先程の緊張を伴ったものとは別種の静寂が訪れる。その原因は主に呆れ。とうとう味方であるはずの彼らからもため息が上がる有様である。
「リーダー…それはいくらなんでもないでしょ…」
「だからモテないんだよ」
「そんな深く考えてたのかとか感激してた気持ちを返してくれよ〜」
「なっ、何だよお前ら!?あとモテないのは一緒だろうがぁ!」
何とも、締まらない人達だ。気づけば少し口角が弧を描いていた。
「ふふっ…ありがとう。私も、ちょっとは前向きに考えてみるわ」
「ち、力になれたんならよかったぜ!」
その後も軽い話を少し終え、彼らはまた離れた場所で腰を下ろした。残ったのはベディヴィエールの仲間のトリスタンというプレイヤーだ。
取り敢えず、こっちにも感謝と挨拶を…と思った所で時間が来たらしい。
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!」
実に堂々たる喋りが響き渡り、喧騒は一瞬で収まって中央に視線が集まった。
――会議が、始まる。
「私、もしかして空気なのでは…?」
「あ、寝ていた訳では無かったんですね」
…始まる。
クラインがこんな早く登場するなんて思ってなかったでしょう!多分こんな展開になってるのって拙作くらいじゃないですかね?
次話が欲しければ…
なんかこの上から目線懇願ネタなくなってきた。