隻腕の騎士、浮遊城に立つ   作:食卓の英雄

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ヒャッハァー!原作突入したから筆が軽いぜぇ!
サブタイトルは詐欺だってはっきりわかんだね


攻略会議――二人の騎士――

「今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう!知っている人もいると思うけど、改めて自己紹介しておこう!オレは《ディアベル》、職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

 溌剌とした耳障りのいい声で声を投げかけるのは青髪のイケメン。ふわりと助走もなく壇上に登った事から筋力、敏捷ともに高水準に達していることが伺える。

 彼こそがこの会議の発起人であり、このコンタクトからでも良い人柄とユーモアが目立っている。壇上に立つ彼には口笛や泊手が少なくない数向けられ、中には軽い冗談の応酬も続いた。会議の滑り出しとしてはこれ以上ないほどによい場面が整えられているだろう。

 職業システムのないSAOにて、自称《騎士(ナイト)》は言葉を重ねていく。

 

「今日、俺のパーティーが、あの迷宮区の最上層に続く階段を発見した。つまり、明日か、遅ければ明後日には、第一層のボス部屋に辿り着けるってことだ!」

 

 どよどよと、プレイヤーがざわめく。20階から連なる第一層迷宮区はその名の通り迷路じみた地形とその層の多さによりマッピングが困難で、上へと登る階段はプレイヤー間で共有する程と言えば、その大変さが伝わるだろう。

 

「へえ…早いわね。でも会議を開くからにはそのくらいなきゃね」

「あの青年…青髪…何かこう、最後の場面で致命的な間違いを起こしてしまうような予感が…」

「トリスタン卿、流石にそれは偏見が過ぎるというものでは…」

「…はい。悪ふざけが過ぎました」

 

 言っている間にも、また喝采が上がる。今度は彼の知り合い以外にも多くが声を出したらしい。見れば、集まったほとんどがそのカリスマあふれる言様に共感しているらしい。次第に拍手も大きくなり始め、それを察したディアベルが制そうと手をかざした所で、低い声が流れた。

 

「ちょお待ってんかナイトはん」

 

 異を唱えるその台詞に、何故そんな事を…と疑問を抱きながら顔を向ける。階段型の席をいくつか飛ばしに降りてゆく。

 

「蝶が舞っているのですか?」

「ベディヴィエール卿、あれは関西弁です。少し待ってくれないかという……。テレビなどで見かけるでしょう?」

「そ、そうなのですか…。申し訳ありません、我が家にはテレビを配置していないのでなんとも…」

 

 何とも恥ずかしそうに答えるベディヴィエール。このSAOでは表情を隠すのが難しく、頬は朱に染まっている。

 それにしても、今のこの時勢でテレビを持っていないなんて珍しい、と思う。いかに一人暮らしとはいえスペックに拘らなければ安いものはあるものだが…そもそもあんまり興味がないのかもしれない。

 

 小柄ながらがっちりした体格の男は前に立つと、ディアベルの美声とは正反対の濁声で唸った。……あのサボテンみたいなトゲトゲの頭はどういうファッションなのだろうか。

 

「わいは《キバオウ》ってもんや。ボス戦の前にこいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな。こん中にも五人か十人、侘びいれなぁあかん奴らがおるはずや」

 

 唐突な乱入に、周囲のプレイヤーも困惑しているようだ。しかし、ディアベルはそれまでと変わって真剣な様相を作って尋ねた。

 

「侘びとは…誰にだい?」

 

 確かに、この状況下でも冷静に務められる彼はリーダーとして優秀なのだろう。彼に促されたからか、少しは威勢の落ちたキバオウが、しかし憎々しげに叫ぶ。

 

「決まっとるやろ!これまでに死んでいった千五百人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、たった一ヶ月でこないに死んでしもたんやろが!!」

 

 途端、静かに場を見守っていた五十人近くの聴衆が、皆一様にぴたりと押し黙った。やっと理解できたのだ。キバオウが言っているのが元βテスターの事であることに。もちろん、私も不意に放たれたそれに萎縮してしまった。今を生きる希望と、過去の失態は往々にして両立してしまう。この場にいる殆どのプレイヤーも、思うところが無いわけではないだろうが、もしこの状況で立ち上がったら…。そう不安が湧いている。

 ざわめきは却って奇妙な静けさを呼び、罪人を告発する現場の如き緊迫した空気が重い。皆、どうしたものかと顔を見合わせているのが現状。

 その沈黙を打ち破ったのも、またディアベルだ。

 

「――キバオウさん。つまり、君の言う奴らとは……元βテスター達の事、かい?」

「そうや。β上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。 奴らはウマい狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。……こん中にもちーっとはおるはずやで。β上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間にしてもらおかと考えとる小狡い奴らが。そいつらに土下座させて貯め込んだコルとアイテムをこん作戦の為に軒並み吐き出してもらわな。パーティーメンバーとして命は預けられんし預かれん!わいはそう言っとるんや」

 

 鋭い糾弾が途切れても声を出す者はいなかった。否、出せなかったと言っていいだろう。言い返したいという衝動はあるだろう。現に、不満げな顔で眺める者や、今まさに飛び出そうとしているクラインの姿だって見える。

 私も、その気持ちはある。元βテスターだからといって神でもGMでも何でもない。少しでも油断すれば死ぬし、むしろ先を行くことに焦って駆け出した一部のβテスターは、知識と経験があるという、その驕りから足元をすくわれている者も多いのではないか。――本当に、驕りだ。その千五百という数の中にどれ程のβテスターが入っていた事だろう。割合にすればそっちの死亡率が高いのではないだろうか。……本当に守りたいものも守れないのでは意味がないだろうに。

 

 ただ、こんな場でこんな小娘がしゃしゃりでたところで彼を納得させられる筈もない。何より私は…他を見捨てて生き延びたβテスターなのだから、言い返せるものがない。ここは黙って耐えるしかないのだ。

 

 ギロリと、目つきの悪い視線がさながら猛犬を想い起させる。そして――隣の彼が立ち上がった。

 

 

 

 

 

「発言をお許しください」

 

 誰もが躊躇う中、凛とした声が響き渡った。その美声と共に立ち上がったのはこれまた目を引く美青年。ディアベルは溌剌とした、いわゆる学年に一人はいそうな陽気なイケメンだったが、こちらはまた違う種類だ。

 ディアベルに続いて、どうしてこんな奴がVRMMOをと思わざるを得ない。銀に染められた長髪と中性的な顔、そして全身に纏う白銀の鎧の輝き。

 俺は知っている。…この階層のNPCが作れる装備の限界を。つまり、プレイヤーメイドの一品物だとあたりをつける。腰に下げる剣もよく見たらβ時代にも見たことがないものだ。白いマントは中々堂に入っており、素直に言うのも悪いが、ディアベルよりもよっぽど騎士らしい姿だ。ただ、どこかで見覚えがあるような気がするが……。さて、どこだったか。

 

 俺が内心で唸っていると、プレイヤー達のざわめきが強まった。その数は約10名ほどで、明らかに動揺している。そうでないにしても、反応している者は多く、そのざわめきも一入だ。顔がいいだけでは、ここまではならない。どうやら俺が知らないだけで、何か有名なプレイヤーなのかもしれない。

 

 抑えていた好奇心が刺激される。隣のフェンサーさんも知らないようで、俺が仲間外れというわけでもないらしい。

 

 優男に見えた人物だが、前に出て見ればかなりの高身長であることが伺える。190cm程だろうか。キバオウと並べばかなりの差が開けられ、キバオウも少したじろいだ。

 

 果たしてこの状況をなんとかする策でもあるのかと、皆が男へ注目していると――予想もしない行動に出た。

 

「皆様、私が彼の言う通り、元βテスターです」

「なっ…」

 

 自らがβテスターであると明かし、土下座を始めたのだ。これには会場も驚愕……してないな。確かに一部プレイヤーは俺と同様に目を開いているが、他多数はどちらかといえば何故という疑問に彩られている。

 

「はっ、ジブンから名乗り出てくれるんなら都合がいいわ!どや、他のやつらを踏みつけにして強なった気持ちはっ!」

 

 おいおい、そこまで言わなくても…。なんなら、自分から言い出すなんて時点で相当に勇気のあることだろうに。

 

「ええ、返す言葉もございません。私は残ろうと思えば残れた。それを分かってなお自らの強化の為に街を出たのは確かです」

「今更後悔しても遅いわボケ!死んだ千五百人は戻ってこんのやぞ!」

 

 不味い。このままだと余計にヒートアップしてβテスターと新参プレイヤーとの罅が出来かねない。流石に声を上げようかと逡巡すると、青髪のナイト様が割って入る。

 

「そこで待ったキバオウさん!そもそもβテスターって言っても沢山いるし、この人だけに千五百人の命が掛かっている訳じゃあない。このままだと私刑になってしまう」

 

 そう諭されると騒然とした雰囲気が戻り、キバオウもバツが悪そうな顔をする。

 

「……まあええわ。名乗り出たっちゅうだけで他のコソコソ隠れてる奴よりはマシやな。……今回は勘弁したる」

 

 どこかホッとしたような空気が流れたのは気の所為ではないだろう。コソコソ隠れている奴の一人である俺も遅ればせながら胸をなでおろしている。隣のフェンサーさんは相変わらず真剣な顔で眺めているだけで、その心中は察せられないが、人柄を見た感じだと少なからず安堵していることだろう。

 

「ただし!それとこれとは話が別や。コルとアイテムを提供して貰うことには変わらん!」

 

 キバオウは諦め悪くそう言い切ると、壇上の銀髪がストレージを開いて次々とオブジェクト化していく。俺ならば到底耐えられない。後でいくつか必要な物を譲ってやろうかな…。等と考えているとまたもや叫びが木魂した。

 

「んな訳あるかい!今更誤魔化そうったってそうはいかんぞ!」

 

 癇癪にも等しいそれだが、言わんとする事は分からなくもない。何故なら彼の足元に転がるアイテムは店売りのPOTが五つと少しの素材アイテム。コルに至っては掌サイズの袋――確か300コル未満の場合にのみ適応される最小サイズのものだ。

 

「誤魔化している訳ではありません。それが私の全財産なのです」

「あくまでシラ切る気か。ストレージ可視化してみろや」

 

 キバオウの追求にも堪えた様子はなく、手元で数度操作をし、キバオウがそれを脇から覗く。一瞬驚いたような表情をした後、わなわなと手を震わせる。それを怪訝に思ったのかディアベルも見たが、顔を近づけ…何度も顔とストレージを見合わせる。

 

「…これで分かってもらえたでしょうか」

「嘘や…嘘つけぇっ!どうせそん装備の強化に使い切っただけに決まっとるやろ!」

 

 尚も噛みつく姿には呆れを通り越して感嘆を覚えるが、あまりその態度を続けていると反感を持つプレイヤーも出てくるのではないだろうか。殺されるとは言わなくとも多少の妨害程度ならば通常のMMOでもまま有ることだ。

 

「キバオウさん、俺も発言いいか」 

 

 その時、豊かな張りのあるバリトンボイスが横から出てきた。身長は土下座を続ける彼同様に大きく、完全なスキンヘッドと浅黒い肌。堀の深い顔立ちはもう一人とはまた違った意味で日本人離れした……と言うより、同じく日本人ではないのかもしれない。

 

 巨漢は前に進み出るとキバオウに向き直り、腰ポーチから簡易な本を取り出した。あれは俺も持っているアルゴ謹製の攻略ガイド。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろう。行く先の道具屋で無料配布しているんだからな」

 

 ……無料配布だと?俺はわざわざ500コルという決して少なくはない額を払って購入しているんだが…。聞けば、隣のフェンサーさんも無料でもらったというではないか。

 

 続いて放たれる言葉も至極堂々としており、論旨もこの上なく真っ当だ。それ故にキバオウも言いあぐねているらしい。

 

「それにキバオウさん。少なくともこの人には俺らの大半は世話になっている筈だ。……なあアンタ、顔を上げてくれ」

 

 どういう事だ?あの人物が何をしたというのだろうか。もしやアルゴの協力者とか…。

 顔を上げた彼の顔をまじまじと眺めたキバオウが奇妙な声を出した。

 

「んな…!」

「あんたも気がついたようだな。まあ、一ヶ月も前に遠目で見ただけなら今の姿に気付けないのも無理はないがな」

 

 それを皮切りに、沈黙を保っていた30名近くがざわめきだした。

 何だ?一体何の話を…

 

「あ、あんたもしかして!初日に演説してた人か!?」「あの!?」「序盤ガイドを配布した人か!」「あっ…!そういえば確かに!」

 

 アルゴから聞いた事だが、俺たちが去った後に混乱する一万人近くのプレイヤーを収めた人物がおり、そいつが序盤でのレクチャーガイドなんかを配っていたとも。

 次々に声が上がり、その人物への擁護や助けて貰ったという報告が告げられる。最早キバオウのペースは完全に崩されただろう。

 そこを好機と見たのか、騎士ディアベルは注目を集めた。

 

「キバオウさん、君の言うことも理解は出来る。オレだって右も左も分からないフィールドを死にもの狂いでここまで来たんだからさ。でも、そこのエギルさんの言うとおり、今は協力すべき時だろ?元テスターだからって…いや、元テスターだからこそ、その戦力が必要なんだ。彼らを排除して、結果失敗したら意味がないじゃないか。それに、元テスターだって人間なんだ。いい人もいれば悪い人もいる。それはどんなゲーム、どんな世界でもおんなじ筈だ」

 

 それにはうんうんと同意する聴衆だって何人もいる。元テスターを悪しように言う雰囲気は霧散し、元の調子が戻ってきていた。

 

「みんな、それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破するために力を合わせてほしい。どうしても元テスターと一緒に戦えないって人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。ボス戦では、チームワークが何より大事だからさ」

 

 その視線を受けたキバオウは不承不承ながらも引き下がり、斧使いエギルは自分の役目は終えたとばかりに元いた場所へと戻る。

 はてさて、もう一人の騎士様はどうするのかと見れば、彼も前列付近の仲間と思わしき二人組に合流する。

 

 会議も終わり、解散の号令がかかるとみな散り散りに去っていったり、当の騎士様に礼を言ったりしている。

 とりあえず俺はボス戦に向けたアイテムの購入などを検討しようとして、隣のフェンサーさんがある一点を眺めているのに気づいた。

 視線の先は渦中にいた三人組。声をかけようとしたが、何とも言えない複雑な感情が籠もっているそれに思わず手を止める。

 

「ミト……」

 

 その二文字の羅列にどんな意味が込められているのか、それは俺には推し量れなった。




Q.何が変わった?
A.ちゃんといいβテスターとよくないβテスターを認識した。効果の程は「俺がビーターだ(キリッ)」と同じくらいヘイトを分散出来てる。

主人公サイドがほぼないんだよね。主人公なのに。

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