正直今回話進みませーん!
昨夜の雨の名残もすっかり消え失せ、水気一つない快晴を伺える。のどかな様相の村落は朝日が出る頃には幾人かの人影が伺えた。とはいっても、それらは全て定められたルーチンワークに則って行動する心を持たないNPCであるのだが…。
第一層、階層全体から見て北西寄りの小村。村中央の広場には、決して大きいとはいえない質素な造りの噴水が景観を彩り、固められただけの土の道がなんとも牧歌的な雰囲気を作り出している。が、それだけだ。
一応《スタッド》という固有名称こそあるものの、プレイヤーの大半は一時的な休息程度にしか立ち寄らない為、名前を覚えているプレイヤーは少ない。
現在、この村にプレイヤーが殆ど滞在していない。ここが前線に近い場所ならともかく、今は《トールバーナ》が最前線の宿である。当然、前線から下がりかつ小規模な村に滞在する物好きはいない。
「嘘、そんな!?」
その物好きの一人、薄紫の髪に赤い瞳、濃紫の服を身にまとう少女の動揺に彩られた声音が響き渡る。その声は早くにクエストを終えて帰ってきたベディヴィエールに届いていた。
「どうされました?」
先日と変わらない態度で接してくる彼に話す。起床し、一時の無駄も許さないとばかりに手早くホロキーボードを叩き、アスナへとメッセージを送信したが、メッセージの届かない場所にいるという無機質な回答のみが残された。
「それは…フレンド・メッセージではないのですか?」
「ええ、それは間違いないわ。本サービスで仕様が変わってでもいない限り、届くはずなのよ」
これがインスタント・メッセージならば、まだ屋内にいると考えることも出来た。あれだけの事があったのだから、安全圏に閉じこもっている、あるいはまだ寝ているかと一時の納得は可能だろう。
一方、フレンド登録している相手のみ送れるフレンド・メッセージだとすれば、話は変わる。前者よりも文章が送れ、屋内や他階層でもメッセージが届く。
しかし、それでも送信不可能な場所にいる。そこから導き出される答えはSAOプレイヤーならば直ぐに行き着くことが出来た。
「「ダンジョンに潜っている……」」
そんな筈があるものか。そう叫びたい気持ちはあったが、隣の彼を見て抑える。表面上は何事もないように見えるが、頭の中で渦巻く疑問は止まらない。
何故、何故このような時間にアスナがダンジョンに潜っているのだ…と。
「ご友人…アスナ殿はいつもこの時間帯に狩りを?」
「た、確かにフィールドに出るのはこのくらいだったけど、でも彼女は一人でそんな危険な真似をする訳ないわ!才能はあったけど、まだ初心者の域を出ない。SAOの事だってロクに知らないのよ!?一人でダンジョンに向かう筈が…」
そう強く否定しようとしたが、言葉尻を窄める。目の前に浮かぶメッセージ画面が、何よりもその推測を現実たらしめていたのだから。
「第一層にあるダンジョンはそう多くない。……でも、どうして…」
困惑と悲観の入り交じる複雑な視線で射止めるのはフレンド欄に唯一存在するAsunaの黒文字。それは何よりもアスナの生存を知らせるものであったが、いつ灰色になるか分かったものではない。
「レディ、落ち着いて考えましょう。闇雲に探し回っても、却って逆効果となります。ひとまず、今日一日様子を見ましょう」
そんな悠長に待っていられない!感情はそう訴えるが、頭の冷静な面を働かせる。
ダンジョンを手あたり次第に探ったとて、迷宮構造になっているものなどもあり、同じダンジョンに居ても行き違いになる確率はそう低くない。それに、まだ潜っているダンジョンを特定出来ていないのだから、むしろフレンド・メッセージが送れなくなってしまう。
「……そうね。確かに、それが一番合理的だわ。……ごめんなさい。私、冷静じゃなかった」
そう、何も今すぐに死ぬという可能性だけではない。あの準備のいい彼女の事だ。ポーションや予備の武器だってしっかり用意している筈だし、ダンジョンには安地部屋だってある。引き際は弁えている筈だ。
そう頭を振るい、今後の話へとシフトする。
「そうですね…。一時間おきにメッセージを送り、我々は別の作業をする…というのはどうでしょう。場所が分からない以上、この程度の案しかありませんが…」
「いえ、闇雲に探すよりはマシよ。流石にトラップなんかは警戒していると思うから、多分、余程の下手を打たなければ……大丈夫だと思うわ」
最後の一文にはそうであって欲しいという希望が大いに込められていたが、気づいていても口にはしない。皮が引きつるほどに強く拳を握っている様子から、やはり我慢を強いているのだろう。その事実がベディヴィエールの胸を刺すが、すぐに切り替える。
「ここはスタッドだから、そうね。この近くにPOPするモンスターに少し用があるの。……今までありがとう。アスナに会えたら報告するわね。……それじゃあ、さようなら」
そう言って身を翻すと、早速とばかりに駆け出そうとする。けれど、彼はこう続けた。
「この周辺ということは、アスナ殿に送るウインド・フルーレ。狙いはワスプとコボルドでしょうか?」
「…ええ、そうだけど」
「私もお付き合いしましょう。仲間と合流するまでは時間は空いていますのでお気になさらず。勿論、素材は全て譲渡しますとも」
流石にそこまでしてもらう訳にはいかないと訴えたが、二人で乱獲した方が早いのも事実。まさかPKではあるまいと自分に言い聞かせ、こちらが折れる形で手伝って貰う事となった。
パーティー申請は、送らなかった。
「まだ届かないの…?」
「……一日中籠もっているのでしょうか?聞く限りではそういった危険な橋は渡らない人物の様に伺えましたが」
強化素材をある程度以上集め、狩りも一段落した頃には西陽が水平線に沈みかけていた。
夕闇が空の境目を別ち、緑々しい若木に影が落ちる。時刻は7:00、早朝の狩り開始から実に13時間、毎回欠かすことなく送り続けているが、ただ一度たりとて届いていない。
「夜遅くまでのプレイは危険って教えたわ。集中力は落ちるし、眠気や疲労も溜まるもの。それに、帰路だってソロなら探知スキル無しでは厳しいし…」
考えられるのは、早朝から今この時まで、ずっとダンジョン内から出ていない事だ。一応、ダンジョンに泊まり込むという事も無くはない。ちゃんと準備さえ整っていれば何の問題も無く日を跨ぐことは可能だろう。
しかし、それが今までの習慣から遠く離れた行動であるならば危険と言わざるを得ない。いかに安全地帯があり、命の危険が無いとはいえ、その周囲ではモンスターの蠢く音が絶え間なく響き、却って気力を持っていかれる事もあり得る。
VRMMO初心者がいきなり慣れさせもせずに始めるのは得策でない事だけは確かだろう。
「やっぱり、私探しに…!」
「安全地帯で一夜を過ごすという選択も無いわけではありません。あなたの安全の為にも、明日まで待つべきです。もしかしたら、翌日には抜け出しているかもしれません。どうか、今は抑えてください」
そう告げると、彼女は不承不承といった様子で引き下がっていった。
「…ごめんなさい。私、もう寝るわ。明日に備えなきゃ…」
覇気のない顔に影が浮かんでいるのは見間違いではないだろう。実物以上に小さく見える背中は幽鬼の如く、そのままの様子でNPC民家に姿を消した。
…無理をさせてしまったのかもしれない。昨夜の失意からの復活、今朝の困惑。今夜での心配と、感情の起伏が激しい部分が多すぎた。
その様子を、ただ見ていることしかできない自分が情けなくて仕方がない。こんな時だからこそ、安心が必要だというのに。
「ままならないものですね…」
ちらと、防具の下に存在する無機質な輝きを放つ腕を撫で、呟いた一言は電子の風に攫われていった。
予想より進まなかったでしょ?
作者も予想外だよ畜生!
また気が向いたら怪文書書こっかな。
さて、続きが欲しければ高評価、及びに感想を送るが良い。さすれば汝の金運、ガチャ運が爆上がりすること間違いなしであるのでどうかお願いします!
とはいっても、話進まなかったから送れといっても書くことないんでしょうけど。