ていうか高評価多くて一人で眺めてはニマニマ気持ちの悪い笑みを浮かべております。これも皆々様のおかげであります。本当にありがとうございます!(感謝を告げることで誤魔化そうとする作者の屑)
「俺は一体、何をやってるんだ…?」
第一層、迷宮区。
最南端にある《はじまりの街》の真反対、北の果てに聳え立つ巨塔。次の階層へとつながるボスフロアのある、第一層における最前線。その一角にて、その少年は頭を抱えていた。
青いポロシャツに、最低限の守りさえあればいいと言わんばかりの軽装は、さながらAGI型のプレイヤーに見えるが、その実バリバリに前線を張るソードマンである。背には、見るものが見ればよく鍛えられていると分かる幅広の片手直剣、《アニール・ブレード》が下げられており、この迷宮区をたった一人で、ごく自然体で歩めているという事実にはこの少年の実力の高さが伺える。
「ぬおおおおぉぉっ…!」
しかし、少年は今、おおいに顔を盛大に歪ませていた。見れば、何か大きな物体を引きずっているではないか。ソロ攻略に於いて、両手が武器以外で塞がってしまうような状況はご法度。ましてやそのまま迷宮区を進むなど、論外である。
では何故、その様な行動に出たか。それは少年が運んでいるモノにあった。
ずりずり、ずりずりと、摩擦を受けて土煙を上げるのは、少年がすっぽり収まってしまいそうな長方形の物体――結論から言うならば寝袋だ。彼の趣味に合わせた黒色の外時の寝袋を連れ歩く様は、見ようによっては一昔前のRPGに酷似しているだろう。
本来ならば無人であるはずの寝袋にはなだらかな膨らみが浮かび、その口からは綺麗な栗色の髪を持つ少女が、死んだように眠っているのが伺える。この状況でも全くの反応が無いのは、肝が座っているからか、はたまたそれほど疲れていたと取るべきか。
ある意味では某国民的RPGと同じだと言ってもいいが、その状況とは明確に異なる点が二つあった。
一つ、この世界がデスゲームである事。ゲーム内での死が現実の体にも死を与える。当然、教会に連れて行っても生き返らない。…というより、そもそも中の人物は死んでない。
二つ、この少女は少年の仲間でも何でもない、たまたまこの場で出くわしただけの他人だということだ。
全くもってらしくない事をしている自覚はある。だが、あのまま見過ごすというのも目覚めが悪い。
こんな序盤では装備重量やストレージ容量を抜きにしてもプレイヤーを抱えるというのは難しい。STR一極型でも無ければ要求値が圧倒的に足りないのだ。
よって、苦肉の策というか、現状出来る唯一の方法、寝袋に入れて引き摺るという通常ならば考えすらしない暴挙に出たのだ。
「もう、少し…!」
視界端に映るマップから、迷宮区の終わりが近づいているのを認識し、速度を上げる。そのままの勢いで外へ飛び出すと、陰気な迷宮区とは一線を画す、生命力あふれる樹林が目についた。思わず一仕事終えたとばかりに出もしない汗を拭う仕草をしてしまった程である。
「とりあえず…ここはまだ危険だな」
最も危険な迷宮区から脱したはいいものの、まだ危険は潜んでいる。何より、前線プレイヤーが何度も出入りする入口でこの様な姿を晒すのは、精神衛生上俺にも彼女にも悪いだろう。
もしこれが現実ならば、こんな強硬策は取れなかった。……いや、ゲームじゃなきゃこんな状況に出くわすなんて無いんだけど…。
そんな風に言い訳がましい事をつらつらと考えていると、そこそこ良さげな場所についた。取り敢えず寝袋をストレージに収納し直し、護衛を兼ねて近くの木陰に蹲る。
2,30分くらいだろうか。暫し待っていると、物音が聞こえた。視線を右に戻すと、件の細剣使いが体を起こしてこちらを見つめている。その表情は、お世辞にも好意的とは言えないものであったが…。
「余計な……ことを」
目覚めて一言目がこれだ。普通なら、この状況に対する疑問などが湧くだろうに。頭の回転は早いらしい。
「あんたを助けたわけじゃない」
「……なら、何で置いていかなかったの」
「助けたかったのはあんたが持ってるマップデータさ。最前線近くで四日もこもってたなら未踏破エリアもかなりマッピングしたはずだ。それがあんたと一緒に消えるのがちょっと勿体無くてね」
一応、嘘は言ってない。助けたいという気持ちがなかったとは言わないが、それと同等には今言った内容が惜しくもある。何なら、この細剣使いの身のこなしを見るに、将来的には突出したプレイヤーになるべきセンスを持っていた。…そんな剣士を見てみたいという想いも、少しはあったのかもしれない。
表面上は理論と効率を矢面に出した合理的な主張には流石の細剣使いさんもつっけんどんにとはいかないらしい。
無言で手を翳し、慣れた仕草でメニュー画面を表示すると、映し出されたマップデータのホログラムが羊皮紙風の巻物にたちまち変わる。
無駄に正確に投げられたそれを難なくキャッチし、見事にマップデータを入手、そして俺のデータが更新される。やはり読み通り、俺すら通っていない道や分岐路の多い道も埋められている。四日籠もったというのは伊達ではない様だ。
「…マップデータは手に入れたでしょ。もう行っていい?」
言って、再び踵を返して迷宮区へと向かおうとする彼女を呼び止める。
「待てよ、フェンサーさん。あんたも、基本的にはこのゲームをクリアするためにがんばってるんだろ?なら《会議》には顔を出してみてもいいんじゃないか?」
「………会議?」
問い返す細剣使いに俺は今朝手に入れた聞きたてホヤホヤの情報を披露する。
「ああ、今日夕方、迷宮区最寄りの《トールバーナ》の町で、一回目の《第一層フロアボス攻略会議》が開かれるらしい」
◆◆◆◆◆
「…一度戻りましょう」
「……いいえ、もう少しだけ粘りましょう」
「ですがこれ以上は《会議》に遅れてしまいます」
「でも…」
所変わり、迷宮区上層。群がるコボルドを一掃し、意見を違える二人組がいた。
後ろで結んだ銀髪の騎士風の男と、薄紫の髪と赤眼の鎌使い。いわずもがな、ベディヴィエールとミトである。
あれから四日、アスナが行ったことのあるダンジョンを虱潰しに見て回り、最後に残ったのがここ迷宮区であるのだが…。
正直に言ってここが最も可能性としては薄かった。何故なら、同じ階層に於いては迷宮区というものは基本的には難易度が高く、ソロ攻略も容易ではないからだ。
当然、最も大きいダンジョンなのだからそれだけ各所各所の移動に時間がかかり、自然と遭遇戦も増える。いくらなんでもあのアスナがそんな無謀な真似をするはずがない、という先入観からあの場所からは二番目に近いのにも関わらず捜査の手が及んでいなかったのである。
そして、迷宮区探索も二日目の今でも広さ故に特定個人を見つけるというのは難しく、移動しているかもしれない相手では何とも運任せだ。
「……いえ、そうね。戻りましょう。もしかしたら会議の噂を聞きつけて顔を出してるかも…」
希望的観測だが、もしかしたらという気持ちは拭えない。そして万が一、当のアスナがいなくとも、そこに集っているのは日夜ダンジョンやフィールドに繰り出す最前線プレイヤーなのだ。ルート、時間帯が多様な彼らの内ならば、目撃情報くらいはあるかも知れない。
アスナの所在が不明なまま四日が立ち、流石にこれほど生きながらえているからにはリスクヘッジはきちんとされていると判断した二人。
若干の安心とそれなりの余裕を取り戻したミトは、当時と比べれば相当に回復してきていた。
「今は…3:20分。うん、急げば間に合うかも…」
「では参りましょう」
一度クールダウンさせた頭はそう簡単に熱されない。あくまで知的に冷静に。二人は即座に反転すると、戦闘が即座に可能な範囲の最速で駆け出した。
『グアアァァッ!』
「とうっ!――スイッチ!」
「やあぁぁっ――!」
当然、狭い通路では遭遇戦は免れない。慎重に機を待てば最低限抑えることは可能だが、今は急ぎの用がある。逆に言えば、回避よりも倒した方が早いという強さの裏付けに他ならない。
「残党は!?」
「背後に二、無視が得策かと!」
「じゃあいいわ!直進!」
そう叫び、迫るコボルドを引き離す。このペースならば5、6秒後にはタゲが外されるだろう。白い外套はためかせ、迷宮区を共に疾走する姿には、どこか懐かしさを感じられる。
そう、β時代の、まだSAOが死の危険のないただのゲームだった頃の記憶だろう。
「っ、前にコボルドの群れ!先行するわ!」
「続きます!」
前に位置する五匹のコボルドをノックバックさせ、道を切り開く。抜けた先で相方の様子を確認すると、丁度ソードスキルを発動させる直前の斧を側面から強打し、不発による硬直と仰け反りを同時に発生させる瞬間であった。
「こちらは大丈夫です!先へ進みましょう!」
瞬時に身を翻し戦闘から離脱する。躊躇なく分岐路を右に曲がるのは慣れを感じさせる。
―――やっぱり、強い。
ミトはこの四日間の交流でベディヴィエールを観察していた。
剣筋の実直さ、回避と防御、パリィの使い分けがやたらとうまく、立ち回りも何処までも堅実で確実だ。傍目から見れば、突出した点はないが確実なスタイルにも見えるが、その全てにおいて完璧というに相応しい動きをしていた。
攻めと守りが完全に両立し、連携や撤退も、全てに対応可能な理想形。そして小柄なモブと人型に対しては、今までに見たどのプレイヤーをも凌駕する技巧を有していた。
はっきり言って、今見せている動きも、私との連携を重視している様に見え、全力を出している風ではない。
だからこそ、βでもあれだけの余裕があったのだろうが…。本人のゲーム歴はMMOはおろか、そもそもゲーム自体をしていなかったという。そんな人物が何故SAOβに抽選しようと思ったのかが甚だ疑問だが、何やら事情があるようで詮索はしていない。
一体何故、ここまで強いのか。確かに、実際に体を動かしていた人の方がアクション性に慣れやすいとは聞くが、武道を齧っている人ならば、現実では出来ない挙動などに無意識に忌避感を抱く事が多いらしい。
それだけで判断するのはあまりに早計だが、結局この男の謎が更に深まるだけだったのは間違いない。大体、今この時世でこんな態度の人間自体絶滅危惧種だろうに。
と、まじまじと見ていると流石に疑問に思ったらしく、こちらに顔を向ける。
「レディ、私の顔に何か?」
「いえ、あなたの事を考えていただけだから、気にしないで」
――それがいわゆる、『そういうこと』と誤解されかねない応答であることに気がつき、全身が熱感に包まれるのはまた後の話。
あっれれー、おかしいぞー?なんでまだディアベルはんとモヤっとボールさん出てこないんですかね?
…はい。作者が変に引き伸ばしてるからですね。はい。
続きが欲しければ感想高評価を寄越せ!いいな!押してくれれば次話書くモチベ湧くから…BOXイベいつもより控えめにするから…!