ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 空戦編③

 

 ロケットを撃ち尽くしたフライ・マンタ。目標のザクはショルダーシールドと利き腕を失うもまだ立っていた。それは背後を見せて何かから逃れようとし、貫かれ爆ぜた。マンタの特攻を受けたのだ。

 その様子に狼狽える者、いっそうの弾幕を放つもの、反応は様々だったが彼らにとって良いことは1つもない。

 

 今や飛行場は別のマンタが放ったクラスター弾によって完全に破壊され、辛うじて飛び立てた直掩機もフライアローとTINコッドの()()()()により残骸となって降り注いだ。頼みのザクは最優先目標として真っ先に排除され、ときおり統括機が放つビームに関しては為す術がない。

 

 応戦を続けていた火点も徐々に潰され、指揮所が瓦礫に埋もれ、HLVは傾いて射出不能となり、本当にどうしようもなくなった所で基地は降伏のシグナルを発した───

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「これが緒戦の記録だ。いい仕事をしてくれたと思っている。使い潰せというのは酷な話だったかもしれんが……()が攻撃的な運用をした場合の実戦データを欲しがったものでな」

 

「ああ…その、大丈夫ですよ。弊社の戦闘機が弾丸となる姿に思うところはありますが、できることなら何でも想定しなくては。とくに戦場では」

 

 ジャブローの一室で向かい合うのは(くだん)の士官とハービック社の担当者。記録映像を肴に語るのはどのようにJCBを次期戦闘機へと仕立て上げるか、加えてそれらの改良案について。

 

「しかし、良い動きです。これが無人機とは……以前お話した時はミサイルキャリアとしての運用が主だと考えていましたが、それ以上の働きができていますね」

 

「過去の蓄積だ。連邦には人類史上初の世界大戦から統合戦争までの歴史が、戦争の記録が残っている。そこで培われた無人機のデータを引用したまで……彼はそう言っていた。実際、連邦の物持ちの良さは私も評価している。逆に建国幾ばくかの奴ら(ジオン)にはそれがなかったのだ」

 

 既存の機体を短期間で無人機へと転用できたのは前例(歴史)があってこそだった。かつて有人機の先駆けとして空を駆けたそれが、埋もれた過去の遺物が新世紀の戦争で息を吹き返したのだ。

 それはベテランのパイロットに準じる働きをし、エース級には劣るも及第点の働きをすると評価されていた。ジャミング技術が発達し有人化の流れに飲まれるまでは───

 

「そして統括機、JCB本体だな。もっと早く出会えていれば、との言葉を貰っている。いいものだと」

 

「嬉しい言葉ですが、彼らが()()()JCBを手にすればガッカリするでしょう。これはもう別物です。全体の性能は1.8倍、構造材にルナチタニウム…ウイングマン・システムのために強力な電子戦ポッドとレーザー通信装置を搭載…」

 

 量産向けの間に合わせに近かった機体構造はより洗練され鋭角的なものとなり、機体バランスの変更と機首へのメガ粒子砲搭載によりキャノピー位置は若干後退。

 メインノズルは上下に分割されたうえ推力偏向式となり、ベクトル偏向スラスターは大型化し突き出ている。全体的に旧世紀の戦闘機然とした姿へと生まれ変わっていた。

 

「とくに機動性は大きく上昇しましたね。機体バランス変更によりカナードの効果が上昇したこともありますが、メインノズルの推力偏向化とベクターノズルの増設がかなり効いたようです」

 

「第1に攻撃を回避するため、次に主武装(メガ粒子砲)を当てるためだ。威力射程ともに跳ね上がったとはいえ、直線にしか飛ばないビームは機銃よりも照準が難しい。とくに遠方の目標を狙うならなおさら。砲に数度の()()を与えたのは正解だったな」

 

 士官は記録映像を巻き戻し、ザクがメガ粒子砲の一撃を受け機能停止した場面を映す。素晴らしい機動性で90mmの弾幕を翻して迫るJCB、その機首が光ったのを見て回避行動に移るザク。射角のない固定兵装ならば躱すこともできただろうそれは意味がなく、緑の巨体は降り注いだ熱線に貫かれた。

 この時点でも申し分のない性能、すぐにでも正式量産を始めたいところだが。

 

 

「…だが、これらは()()()に過ぎん。本命への布石だ。納入された機体は名をジェット・コア・インターセプターとし限定配備に留める。事前の約束通りな」

 

 事前の約束、取り決め通りに。追加の生産はなく、同機体は高性能要撃機としての余生を送る事になる。その意志を継ぐ本命に後を託して。

 

「本命…ですか。仰る通り決まっていたことです。しかし現行の機体でも充分なスペックがありますし、もう少し様子を見ても……」

 

「試験飛行も1度きり、全力の戦闘機動を行ったデータはまだ取れていません。ウイングマン・システムもブラッシュアップが必要です。新型誘導弾についても…ええと、その」

 

 士官が険しい顔をしていることに気が付き、担当者は口をつぐむ。しかし彼の言わんとすることも正しくはあった。士官は真剣な表情で分かっている、と呟く。

 

「強引なやり方だと分かっている。そちらには無理をさせるだろう。しかし、戦闘機が戦場に居場所を持ち続けるには今やらなければならないのだ。焦らなければならないのだ」

 

 

 士官は新しい図面を取り出し、担当者に手渡した。

 

「…これは、本命の」

 

「連邦の空を永劫に守り続ける機体。推進部を換装すれば宇宙にも対応できる。既存の航空機の大半を入れ替える究極のマルチロール・ファイターだ。そう聞いたよ」

 

 さらに増設されたベクターノズルに底上げされたペイロード、姿勢制御を補助する埋め込み式スラスター、対潜哨戒や電子戦を可能とする多彩なミッションポッド、機体上部の構造強化。これに至ってはフル装備のジムが乗っても問題のない耐荷重があり……

 

「これは…これは…!?」

 

「垂直離陸どころかホバリングも可能、方向転換も自在。シミュレーションでは高速ヘリにも劣らない機動ができると。推力で無理矢理飛ばすのは航空機メーカーのプライドが許さんかもしれんが、それができれば手広く仕事をこなせるようになるだろう」

 

「ゆくゆくは新型で旧い機体を入れ替えることになると、それがこの…本当に全てを入れ替えるとは…しかし継戦能力は…そうか、核融合炉にプラズマジェットの燃費ならば…」

 

「与太ではないということだ。我々()()()は本気でね。重ねて酷な話をするが、ウイングマン・システムにあわせて旧式機をまとめて使い潰すつもりでいる。新型航空機の敵はジオンではなく旧型機なのだ。貴社ならそれを────」

 

 

 沈黙。それに関しては担当者が、ハービック社がよくわかっていた。もともとジェット・コア・ブースターの改修の話は願ったり叶ったりだったのだ。

 

「JCBの…いえ、コア・ファイターの受注キャンセル。それに慌てて改修機を作って、それも納入数は僅か。余った部品の処分に簡易量産型を作ってもやらせることが爆撃任務。すでに飽和した分野でした。そんな折にこの話を頂いて……救われたと、そう思いました」

 

 

 担当者はつばを飲み込み、続ける。

 

「完成させましょう。そして空を我々の手に」

「うむ」

 

 がっしりと握手。

 

 

 優れた機体が時代に埋もれぬため、旧い兵器が戦場に居場所を残すため。巨大な汎用兵器では埋め切れないニッチを補うための、別分野の汎用機。

 その開発は陸の王者の復権よりも強く戦場を揺さぶり、時代に飲まれていたはずの企業の運命すら変えようとしていた……

 

 




JCBカスタム(仮)はジェット・コア・インターセプターとなりました。ジャブロー上空に近づくとコアブースターインターセプトタイプの代わりにこいつが飛んできます。外見はジェットコアブースターとF-35とYF-23を足して3で割った感じです

・メガ粒子砲の限定旋回
エスコンとかのフライトシューティングで照準が敵に張り付くアレ。大雑把な追尾でも当てられる便利機能。
・守旧派
61式の改修が大成功したことで研究員を信奉する士官を中心に形成された派閥。モビルスーツ一辺倒の戦術を否定し、旧兵器の適切な運用で頑丈な外堀を作ることを目指す。
・『本命』
究極の汎用機。大型輸送機以外のごちゃごちゃした連邦航空機群をぜんぶこれに入れ替える計画らしい。Gスカイ?そうかもね。
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