レース場で逢おう。たっただけ約束ここに紡いであて満足。
過去に
あてら幼年結束これにて終わりて新装一身これにて始まる。幼年の名は過去に、今の名果てへ。
つまり! あてらは次へと! とと? なりて!
「ご、ぐふぅ……」
「はぁ……はぁ……。エンリカ、なんで最後にあんな、加速できるんですか……」
「回復スキルよ……くくく……」
「……じゃあ、今やってくださいよ、それ……ボクに……」
「ごめんむり……」
三者三様それぞれごろごろねんごろり。ゴールの芝の、上にも三人。
んん、ふふふ……。あてら三人揃って合わせて三人衆。欠ける事無く駆ける事、それ約束叶えたぞ!
中央トレセン目標違い? それはそれ、これはこれ。なりて、ここに成る。
……んゆ。雪降るる? 降り始め。
あてに触れ、けれどされとてほとぼり冷めぬや熱狂乱なる
おお、聞こえるぞ! ならば観よ我が姿! ピース!
が……つかれた……。
まどろみまろびてまだ終わらじて……。
「ぜぇ……はー……。もう、ファンサなんてエッタさんは元気ですね……」
「ぅううおえ! えげ、ごぼ……み、水……!」
あての元気は観客声援その言葉、の、為には何度でも!
立ち上がる! 疲れたが!
「三人ともお疲れさん」
トレーナ! 観覧せなんだら褒めよあて!
とぅ!
「うわっとと、抱き着くな登るな」
エンリカ横取りさせぬぞジョゼは。聞きおりましてや小屋話。
に、して。さておきあてらの順位はば? レースなられば決めようぞ。
決着すなわち勝負事、上下でしょう? 違います。順位は必要この後の為に!
「あ、そっか……レースだからそこまでやる予定なんですね……」
「……うぉええ……げげ、ごぼ、ごほ……!」
「結果は今確かめてる所だ。全員ほぼ同着だったからな」
ならば御覧くださいそのビデオ!
御覧くださいこのビデオ! かもん!
「なんでお前が仕切って──ほんとに映像出たわ」
我が父ならればこのタイミング、あての指揮待ちあて為に。
どうでしょう? 結果はどう!
「同着だが……頭半分のハナ差って所でエンリカトップか。エッタ、ラベリテと続いてる」
「なんと!」「えっ」
「……ぐぼ、水……、み、みず……!」
ななななんと! エンリカ勝利かウマ相手!
よもやその身で勝ち取るなるか、さらば仕方なし。
ステージライブのメインを譲ろうそれが勝者への手向け!
そう! レースにライブは付き物なので!
「はー……、お水ありがとうラベっち。生き返ったよ」
「もう。水分が欲しいからって芝に付いた雪を舐めようとしないでください」
「……で、誰が勝ったの?」
聞き覚えよその名前、電光掲示板には! ……あれ。
「一着がサニティエッタで、ニコルラベリテが二番。あたしはビリかぁ~」
ち、違いぞて! なぜ故か? なぜ故に!
ジョゼ!
「へー、登録名はエンリカレヴニールなんだ。これって本名?」
「そこでなく! 写真を観なせよあの通り!」
「……見るべきは、コースだと思う」
コース観よ?
「確かにタイム的にはエンリカの勝ちなんだけど、色々巻き散らすのは降着だそうで」
「あわや憐憫ふがいなし。変な恰好勝負服捨てそれルール無用のエンリカめ」
「エッタパパとラベリテパパが乗り込んでわーきゃー言ってたしな……うちの子が一番だって……」
んふふふふ。親バカめ! あてに分からじ思うてか!
「はっはっは! なんだ、なんだそんな! わっはっは!」
「何を笑ってるんですかエンリカ」
これでは、駄目ではなかろうか!?
「エッタさんが無効試合って言ってもっかい走る危険があるんですよ」
「わっはっは……。……え……」
「いやはや」
「え……ちょ、エッちゃん? あたし、流石に二回目は無理かなぁ~」
「いやはやいはや」
心配無用。さすがのあても限界ぞ……。
ずりずり落ちるぞジョゼ背中。ずりずり。
「っとと、エッタもちょっと休め。楽しいからって体力使い過ぎだ」
支え直してありがた道化。
すまぬな!
「楽しい顔してますね」
「舌出して小悪魔顔してるね」
「横取りすんなって感じだよね」
さあ行こう! 舞台の準備へ舞台裏!
時間もないぞや撤収しすれば時点へ移ろう三人衆!
ジョゼよ、ゴー!
「はいはい」
「……次の用意?」
ラベリテは膝立ちとなりエンリカへ背を向ける。
先程レースの最中に見せた厳しく優しいものではなく、それは恐らく癖ゆえに。
「何してるんですか? 置いていきますよエンリカ」
「ラベっち。あたしはもうおんぶしなくたって──ほら立てる」
「……あ」
「えへへ、でも乗っかっちゃうもん!」
「もうっ」
「お前ら急にいちゃつくなよ」「んふふふふ」
「それジョゼの旦那が言う……?」
さしてもエンリカレヴニール? 疑問符を浮かべしたらりやりたらなり?
エッタ背中のジョゼ聞くおんなじ問いに、やはり首を傾げたり。
まさかままさか知らぬのか、まささかまさか!
「あ、そうそう。何かするの? もしかして回らない寿司とか!?」
やはり。
あてらのレースをいつもいつでも観てましょう! 観ています? あてを観よ!
なれば分かろうその後の台本進行舞台の流れ!
「なにさ。みんなのレースはちゃんと観てるよ? ちゃんとライブも……さ……」
「どうして歯切れが悪くなろう? もしや舞い舞いミラビリス!」
「いやいやいや、いやいやいやいや!」
「うわ、暴れないでください、重いんだから」
「あたしゃ重くねぇ!」
暴れ牛、の如くがエンリ。パワー自慢なラベリテ流石に元々重量加えて樹付きを背負いてぶんぶん暴れてんふふふふ。
我がレージョゼよ、説得任せるエンリカ立たせよ舞台。
最後の輝き約束完遂!
「あ、てかでもあれか。あたし、降着で最下位じゃん。ライブ参加しないじゃん。よかったぁ」
「三人中の最下位だから三着。つまり入着。というわけなのでライブ出ろエンリカ」
「逃げ道がねぇ!? いやいやいや、旦那。良く考えて? あたしは一般ピーポーよ? ピーポーらしく世界はピーポーだし超ムゲンMIXは踊れないしパラパラはノーでセンキューよ?」
「何言ってるのか全く分からんが、ここまでやったんだから何とかなるだろ」
「無責任な!」
だけどだけれどこれラスト。エンリカ観念覚悟を決めよ。
これはこういう約束なのだ!
「いやさ、レースの約束はしたけどライブまではちょっと契約に入ってませんというか……」
「は?」「んゆ?」
「しまった! ウマっ娘にとっちゃ
んふふふふ。我が友エンリカプロ根性ゴー切り抜けよ!
「まぁまぁ安心しろエンリカ。駄目な所はフリを出しとけば本業のふたりが上手いこと拾ってくれるはずだから」
「マジ? オナシャス!」
うむ。骨は拾いてやるから頑張るがよい。
「拾うのは骨なの!? 見捨てないで!?」
「エンリカ、死人に口なしですよ」
「ツッコミがやかましいってか!?」
死して屍拾うものなし。
「前言撤退してる!?」
「まぁ落ち着けエンリカ。こうなるからお前を一着から外したんだと思うから」
「一着……あ」
「伝説のセンター棒立ちを再現したくなかろう?」
むぅ。あてとてセンターメインでやって欲しくもあり。
なぜならば! 此度の話はエンリカ主役のゲスト話。しばなゲト。
「ならあたし、後ろで楽器弾いてていい? エンリカさんハープならできるから」
「あてはできますヴァイオリン!」
「そんなライブ観た事も聞いた事もないから素直に踊っとけ」
さぁここは控室!
伝説は目前! なぜならば!
歌をセットしせりは「うまぴょい伝説」なりて!
「よりによってうまぴょいかチクショォオオオ!」
──阿賀町三人衆の結束。その顛末はインターネットを騒がせた。
ウマ娘とレースへ出る約束をした一人の人間が苦悩しながら自分を誤魔化しながらも立ち上がり、立ち向かい、そして最後は人の身という事を明かしウマ娘相手にレースという舞台で実質的な勝利を収めたのだ。
ルールの都合で結果としては降着だけれども、人間がウマ娘に勝った。しかも相手の一人は秋華賞を取った重賞ウマ娘なのに。
ネットニュースやSNSではあっという間に「人間がウマ娘に勝利する!?」という情報が出回り、エンリカは衣装を脱ぎ捨てはしたが邪魔をした訳ではないから慈悲をという声も見られたが……。
そういう声は大体、ライブ映像を観た後に撤回されていく。
センターではないとはいえ三人しかいないライブでは一人ひとりがとてもよく目立つ。
振り付けも歌も分からない、舞台に立つのも当然初めてで緊張もマックスなエンリカがどうなったかは明らかだ。
もし一着の記録のままセンターへ立っていたら、伝説の棒立ち以上の伝説になっていた事だろう。みんな慈悲深く接して欲しい。
「いやね、あたしも勝負服で歌って踊るのは分かるんですよ。そういうもんだし? 分かるんだけど、ありゃ羞恥攻めってもんですわ」
とはライブを終えたエンリカの言。
エンリカの着こんでいた
顔を真っ赤にして初々しい下手なダンスをしながら、震えてたり上ずってたりな歌を披露する。とても可哀想。
しかも中身はウマ娘の課題曲こと電波なうまぴょい伝説だからな。やはり可哀想。
ラストの走る所とか死にかけてたもん。恥ずかしさと疲れとハイタッチする余力の無さに。
ラベリテが阿吽の呼吸的な手さばきで指揮を出して何とかして仕上げていたのが仲の良さを物語っていた。
ちなみにサニティエッタはアドリブのアクションを要求してたり中々鬼畜。フリが出たら拾ってくれとは言ったがフリをしろとは言ってない。
「お! ジョゼの旦那ここに居た」
「ようエンリカ。今日はお疲れさん」
夜。エッタハウスにラベリテ一家も招いた宴会の途中、縁側へ出て月明りに照らされる雪を眺めてたらエンリカがやってきた。
「エッちゃんはいないの?」
「どうせ聞こえる距離にいるだろ。最近はなんだか距離感が近いというか、なんだかなって感じだし」
「ふーん?」
エンリカが俺の横に座る。
車椅子を使わず、ウマ娘と偽る勝負服も付け耳も装備してない人間の姿でだ。
直接見た訳ではないが今までの嘘については話がついてるんだろう。今更俺が何か言う必要もない。
「もしかして秘密基地の時も聞かれてた?」
「こいつが聞いてたから俺は動いた」
「そっか。んひひ、恥ずかしいなぁ……」
つまりのイコールでエンリカの告白も聞いた事になると知り、顔を真っ赤にして照れた。
「ねぇジョゼ……常禅寺さん」
「なんだ?」
「答えを聞いていい?」
答えって、なんの──?
「──すぐに答えられなかった、二択の」
それは……。それは、告白の話か……?
俺が答えを詰まらせて、答えられなかった……。
「あたしはヒトかウマかをはっきりさせた。さぁ後はあなただけ」
「……それ、答えないと駄目?」
「何でこういう時は男らしくなくなっちゃうかなぁ」
「冗談で大人をからかうんじゃないよ」
「ふーん。冗談だって思ってたんだ」
え。
それは、エンリカは、本気で?
「ほれほれ、早く言っちゃいなよ」
「ああ。じゃあ言ってやろう」
にししと笑う顔と目を見ながら、はっきりと口にする。
エンリカへ、すまないと。
「……そっか」
俺はエッタのトレーナーだ。
あいつ以外に今は、見る気はしない。
「そっかぁ……」
立ち上がったエンリカが振り向かずに去っていく。
答えを間違ったとは思わない。思わない、が。言葉の正しさは分からない。
告白は逃げ場のない答えの袋小路。エンリカとて分かっている筈だ。望まない答えに直面する事も。
再び一人でしばらく庭を眺めていると、何やらを抱えたエンリカが戻ってきた。
畳まれているが、あれはいつも着ていた勝負服では?
「もっかい横をば失礼?」
「どうぞ。で、今度はどうした」
「色々決別できたからね。これを処分しようかと」
ばさっと広げて見せてれた自前の勝負服はとてもくたびれてぼろぼろだ。
森に住まうエルフの服と言われて納得できる雰囲気を持ったそれは、今回の勝負で役目を終えたと言わんばかりにぼろぼろと繊維が崩れて落ちている。
もう着ないし、もう着られない。エッタとラベリテへ幼い頃からの呼び名を続け、過去に縋りつくのはもう終わりだ。
「どう処分するんだ?」
「どうって、燃やして」
指差した庭の一角、ゴールドシップがドラム缶で焚火をしてた。
何であいついるんだよ。なんで新潟にいるってか、なんでこの家にいるんだよ。
そういや宴会の初めの時もビールジョッキで樽酒を粉砕してたな。何してんだこいつ。
「エルフらしく植物繊維たっぷりのお手製で手間も愛着もあるし勿体ないけど、よ……っと」
雑に投げた勝負服がドラム缶へ入り、燃えていく。
記念に持っておくとかはないらしい。
だが、あれを燃やして無くすことで吹っ切れる事もあるんだろう。
その証拠としてエンリカの表情は非常に清々しい。
「……ところであの人、なんでこの家にいるし焚火してるの……?」
「おまえが聞いて来いよ……」
で、エンリカ。用はこれだけか?
まさか目の前で燃やすためだけに来たわけではあるまい。
「うん、こっちが本命なんだけどさ」
マントも投げてドラム缶に入れつつ言葉を続ける。
「常禅寺さんはサニティエッタって
「……面白いウマ娘。距離感がおかしいウマ娘。落ち着きの無さも今や慣れた」
「それだけ?」
言いたい事は分かる。
最近のエッタが露骨にラベリテやエンリカ相手にも威嚇をするというか、こいつは自分のだぞと主張してるけどって話だ。
恋愛沙汰には疎いが俺とて好意に気が付かない訳じゃない。エンリカのように即日の告白って訳じゃなくて、もうエッタとは二年の付き合いになる。
あいつの俺に対する感情がどこからか変化したのは分かってるさ。
最初に見つけたトレーナーを他のウマ娘に横取りさせないって意志もあっただろうし、もっと自分を観て評価して貰いたかったとかそういうので存在を主張していた。
だが最近は、そういうのとは違う感情が動いて俺を離さないようにしてる。
ウマ娘が担当しているトレーナーへそういう感情を抱くのは何も珍しい事じゃない。
過去に例をあげればキリがないし、それが理由で双方ともに引退したという話もよくある。
「ふーん。何にも気が付かない訳でもないか」
「トレーナーになるための勉強中、メンタルケアって項目でこの手の話はよく出るからな」
「じゃあ答えはマニュアル通りにする?」
「……どうしようかな」
マニュアル的な答えは無機質というか、それは正解だろうけどって具合の中身になる。
俺としては一対一で向き合ってるという環境に加えてエッタというキャラクター上を考えて接していきたい。
「ま、ちゃんと答えは考えておいてね。おねーさんからのアドバイス!」
「忠告ありがとう。やっぱりいつかは向き合わないとだよな」
「そう。気が付かないフリや誤魔化しはどこまでも通用しないよ。いつかその日がくる」
最後に杖のように長い木の棒を持って焚火に近付き差し込むと、そのままの足で背を向けた。
今度こそこの場を去るようだ。
「あたしの親友を泣かしたら、ただじゃおかないよ」
ああ、任せろ。
──なんて勇ましい台詞は中々出せず、誤魔化すように出たのはため息だけだった。
ニコルラベリテのヒミツ
実は、作者の過去作品のキャラが下地になってる。
エンリカのヒミツ
実は、作者の過去作品のキャラとほぼ同一人物。