超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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前回の天才ちゃんのがんばれの一言で読者の皆さんがてぇてぇを感じ取っていて強火の波動を感じて笑ってました


フォンー翼の意味ー

 フォンにとって生きるということは空を飛ぶということだった。

 

 それはフォンにとってではなく、鳥人族にとって共通認識と言える。

 一般的に鳥人族は考え無し、脳足らず、鳥頭、などと揶揄されることが多い。実際のところそれはそうだとフォン自身も思う。物忘れは激しいし、計算は苦手、一通りの簡単な読み書きができれば御の字、三歩進めばそれまで考えていたことを忘れるというのも誇張ではなく経験済み。

 ただ、あえて訂正するのならば、だ。

 

 鳥人族にとって、最優先は羽根を広げ、翼をはためかせ、空を飛ぶということに他ならないのだ。

 

 何かを覚える暇があれば、空模様を覚える。

 計算はできなくても空気の湿り気、温度から天気が分かる。

 読み書きはできなくても、風を読むことは容易く。

 何かやろうと思っていても、良い風が吹けばそれに乗ってしまう。

 鳥人族とはそういう種族なのである。

 

 空に生まれ、空に生き、空に死ぬ。

 

 亜人族において、唯一生態的特徴から自由自在な飛行を行えるからこそ、それが最も強みであるからこそ、鳥人族はそういう進化と文化を重ねて来た。

 別に地頭そのものは決して悪くはない、という話を聞いたこともある。年を取り、翼が衰えた老人は決して物忘れはないし、計算や言語も巧みに操る。年老いたものが氏族の未来を考え、若者は飛べる限りに飛んでいく。そういうものなのだ。

 

 だから、鳥人族は決して翼の恩は忘れない。

 自分たちにとって翼というのは命よりも大事といっても過言ではない。単なる生命以上の存在理由なのだから。

 だからこそ、フォンは「彼」のものになることに決して抵抗などない。

 己の未来を救ってくれたのだから。

 そして、氏族の未来も救ってくれようとしているのだから。

 

 氏族の10年間を決める戦い―――≪七氏族祭(ドロ・ナーダム)≫。

 

 たかだか10年、されど10年である。

 七氏族祭では他国との貿易や氏族内の物流を取り仕切る為に、その10年を有効に活用したとしたら大きな利益も出せる。その上ここ20年では≪王国≫の≪魔法学園≫への留学優先権さえも勝者に得られるために、その勝利の価値は極めて大きくなっている。鳥人族は20年前は中堅の結果で可もなく不可もなく。10年前は大敗して最下位。当時、政治を担う長老たちがタイミング悪く逝去したために、祭りの後の交渉もうまくいかず、これまででも最悪の10年と言っても過言ではなかった。

 当時まだ三つだったフォンは10年前の記憶は薄い。

 けれど、それから10年間高位獣化能力者(メタビースト)として、この日の為に研鑽を重ねて来た。

 かつては各氏族で異端と扱われてきたメタビーストは、しかしここ20年の間に地位を変え、重宝されるものとされている。亜人種族だけではなく人間種との交流も増えたことによるのが大きいらしい。

 細かいことは分からないが、状況に応じて鳥、鳥人、人間の姿に好きに変われるのはアドバンテージである。

 今現在の各氏族にも合わせて数人しかいないらしい。

 だからこそ、期待された。

 速度を第一に置く鳥人族で、13歳にして一番速く飛ぶことができた。

 戦い方が一番強い―――というわけではないのだが。それでも、鳥人族においては速さこそがステータスだ。

 

 そう呼ばれることになるのに10年の全てを掛け、鍛錬を重ねて来た。

 

 言葉にすればそれだけのことだけれど。

 それなりに大変なこともあった。高位獣化の能力は鳥人族において現在フォンだけのもの。

 鳥と半鳥人と人間、それらの体を効率的に動かす技術を自分で編み出さなければならない。

 来る日も来る日も研鑽と修練、失敗とわずかな進歩。

 まぁ、悪くはなかった。

 色々な形で飛ぶ練習と思えば楽しく感じることができた。 

 とにかく、飛ぶことと紐づければ大体どうとでもなるのが鳥人族の良い所だ。

 

 けれど、流石に≪七氏族祭(ドロ・ナーダム)≫前日に翼をもがれたのには堪えた。

 

 10年の積み重ねが無駄になったことも。

 これから10年間の可能性が潰えたことも。

 なにより、飛行不能になるほどの翼へのダメージは絶望だった。

 「彼」らが助けてくれなかったら、きっと死んでいた。

 命を落とすという意味でも、飛べなくなるという意味でも。

 生まれて初めて、恐怖と悔しさで泣きそうになってしまった。

 

 そして、今、

 

「うおおおおおおお!!! 主様! いいぞ! 凄いぞー! かっこいいぞ!」

 

 フォンは拳を振り上げ、弾けるような笑顔で「彼」を応援していた。

 

 

 

 

 

 

 ≪七氏族祭(ドロ・ナーダム)≫、最終幕である。

 石と木で僅か数日で、しかししっかりと装飾もされた観覧席。数百人が正方形の縁に座る形になる。席に着くのは種族様々。七氏族は言うまでもなく観光に来ている人間種も多い。

 その一角、フォンは御影とトリウィアと並び「彼」の応援をしていた。

 正方形の中央、「彼」を始めとした各氏族の代表が素手と最低限の衣服だけで円形に集まっている。

 角度的に、ここから見えるのは「彼」の背中。

 上半身は裸で、ズボンだけの軽装だった。

 

「くぅぅぅ……!」

 

 隣を見れば片角の鬼族が「彼」の背中を見ながら盃を呷り息を吐く。

 脇に酒瓶を抱え、隣の空いた座席には同じものがいくつも転がっている。

 鬼族の姫、天津院御影。

 おっぱいの大きい美人だ。

 

「……」

 

 逆側、真ん中に座るフォンを通して御影を一瞥しながら煙草を吸っているのは帝国の才女、トリウィア・フロネシス。

 強めの日差しがある晴天にわりと暑いにも関わらず、レザーパンツに長袖シャツ、白衣だが汗1つかく様子もない。

 足と眼鏡がセクシーな、オッドアイの美人だ。

 出会ってからほとんどの間無表情の彼女だが、御影の酒瓶の山にほんのわずかに眉を顰め、

 

「それ、ドワーフ製の火酒でしょう。火が着くもので、人間からすれば消毒薬の」

 

「鬼からすれば実に良い酒だ。体が燃える。学園ではこれだけ強いものは飲めなかったし、これはドワーフの酒の中の一級品だ」

 

「どこで手入れたんですか」

 

「昨日、ドワーフたちと飲んでた―――潰して、賭けに勝って、沢山貰ったのさ」

 

「……笊通り越して枠ですね」

 

 呆れたようにトリウィアが息を吐く。

 それには構わず御影は酒を盃に注ぎ、

 

「フォン、お前も飲むか?」

 

「あ、ううん。鳥人族はお酒飲まないんだ。だから大丈夫。空飛べなくなっちゃうしね」

 

 酒も煙草も若い鳥人族はやらない。

 やるとすれば飛べなくなってからの楽しみだ。

 

「ふむ、残念」

 

「怪我の調子はいかがです? 先ほどからかなり叫んでいますけど」

 

「うん! かなり良くなったよ。戦ったり、長距離で長時間飛ぶのは難しいけど羽根を出さなければとりあえずは問題ないかな」

 

「それはよかった」

 

「うむ、後は婿殿の勝利を待つだけだな!」

 

 御影は盃は掲げ、そして「彼」の背中を見て、酒を流し込み、

 

「くぅぅぅ」

 

 息を吐く。

 ほのかに赤く染まった頬と漏れる吐息が艶めかしい。

 

「……何を肴にしているんですか」

 

「婿殿の上裸。良いものだろ、あれ」

 

「…………まあ、否定はしませんが」

 

「結構鍛えてるんだね、主殿! あ、こっち振り向いたよ。おーい、主殿!」

 

 フォンは大きく手を振り、御影は何度目かの盃を掲げ、トリウィアは小さく手を振った。

 「彼」も軽く手を振り返し、真っすぐに前を向いた。

 そして、司会の話を聞いている。

 これで七度目。

 代理を立てたせいで、鳥人族が最も得意とする短距離走種目は省かれていた。

 このあたり、各種目がそれぞれの氏族の最も得意な競技なのである意味よかったのかもしれない。

 エルフならば的当て、魚人族なら水泳、ドワーフなら丸太割りといった具合。

 「彼」はこれまでの全ての種目で2位を収めている。

 そして、これが最後であり、本番ともいえるバトルロイヤルだ。

 

「主殿、勝てるかな」

 

「勝つさ」

 

「勝ちますよ」

 

 フォンの問いに御影とトリウィアは同時に答える。

 それは確信した物言いだった。

 御影は笑みと共に息を吐き、トリウィアは煙を吐く。

 

「婿殿は私よりも強い、私が見込んだ男だ、そうそう負けないよ」

 

「事実だけを述べるのならば」

 

 煙草を挟んだ指で眼鏡を押し上げたトリウィアは、しかし「彼」から目を離さずに、

 

「過去の≪七氏族祭(ドロ・ナーダム)≫、300年分の結果に目を通しましたが、30回7人の代表で210人。そのうち、重複もありますが、氏族以外の種族が代表になったのは10人。そのうち人間は3人」

 

「へぇ」

 

「よく調べたな、先輩殿。確かか?」

 

「エルフ族の記録を見て、代表戦初回から見て来たエルフ族の方に聞いたので確かでしょう。最初はあまり歓迎されませんでしたが、文献を調べているうちに打ち解けましたし確かでしょう」

 

「ははは、流石だな。……しかし、3人か。多いのか少ないのか良く分からん」

 

「300年に3人、というから多くはないでしょう。大体の場合が、族長の子との婚姻を懸けたとか優勝したら当時出場していた他6人の代表を嫁にするとかその手の話でしたね」

 

「えぇ……? 凄い、剛毅だねその人」

 

「ま、≪連合≫では混血は珍しくないしな。それで、その3人に何か共通点でも?」

 

「あります―――その3人は、三人とも20以上の系統保有者であったということ」

 

「ほう」

 

「へぇ、すっごい」

 

 7系統しか持っていないフォンからすれば雲の上の話だ。

 鳥人族は基本的に風属性に特化し、おまけに雷か水というのが種族特性だ。

 フォンの場合は風の5系統に雷の≪落下≫と水の≪潤滑≫。≪落下≫と≪潤滑≫は飛行中の加速と空気抵抗の軽減にもなるのでそれで十分だと思っている。

 これは鳥人族としては大体平均値である。

 

「亜人種族は概ね、1、2属性の系統を網羅し、いくつかの副系統を持つ傾向にあります。20超えるのはそうそう聞かないですね。10超えれば多い方です。それ故にいわゆる≪究極魔法≫が希少なわけですが」

 

「私の14系統も多い方だしな」

 

 えぇと、彼女は頷き、

 

「その分、魔法以外の種族特性が強みになるわけですが。対して人間種の系統はばらばらで一桁もあれば十後半もあり、種族特性なんて繁殖力くらい」

 

 ですが、と紫煙を長く吐いた。

 

「――――洗練された20を超える系統保有者は、人間種でありながら上位種である、という見方をする者もいます。……というか、帝国ではそういう感じですね」

 

「自慢ですか、先輩殿」

 

「事実です」

 

 御影は笑いながら盃を傾け、トリウィアは肩をすくめた。

 

「うぅむ」

 

 難しい話を両脇でしてるなと、フォンは思った。

 20、というか全属性全系統持ちの人間なんて当然初めて見た。

 28種持ちのトリウィアでさえ驚いたのだから。

 飛べれば良くないか? と思うのが正直な所。

 思えば怪我をしたせいで24時間は空を飛んでない。

 これはフォンの人生的にあり得ないことだ。

 

「加えて、あの術式。あれは素晴らしい。本当に素晴らしい。未だに術式構築を解明できていません。本当に天才のものです」

 

 拙い。

 

「あぁ、うん。あれは凄いな。かっこいいし」

 

 飛びたくなってきた。

 

「術式の精度は言うまでもなく、応用性と発展性が素晴らしいんですよね。後輩君は誰かに教えてもらったそうですが、その人は本当に素晴らしい。天才で、その上教え子思いです。私もそのような師が欲しいですし、私もそのような師になりたい。あぁ、一度はお会いして話を聞いてみたいものですね」

 

 最高速でぶっ飛ばしたい。

 

「あぁ、うん。その()()なぁ」

 

 一瞬くらいだったら翼も大丈夫じゃないだろうか。

 ちょっとだけ、ちょっとだけ。

 これから戦う主殿への景気づけの意味を込めて。

 

「なぁ、フォン」

 

「え!? 何!? 8回転空中螺旋捻り!?」

 

「………………匂いで酔ったのか?」

 

「何の曲芸ですか」

 

 そうではなくて、と御影がフォンの肩に手を回し、()()()と引き寄せた。 

 琥珀の瞳と艶めかしく赤く火照った顔が至近距離に。

 うわっ、顔が良いとフォンは思った。

 

「覚えておけよ、フォン。今後我が婿殿と関わるのならば「先生」とやらが最大のライバルだ」

 

「先生? えーと、主殿の師匠か何かってこと?」

 

「らしい……が、私も先輩殿も会ったことはない。というか婿殿も会ってはないらしいんだ」

 

「……私は馬鹿だからよく理解できてないんだろうけど、どういうこと?」

 

「さぁ、私たちにも良く分かっていません。ただ彼には会ったことがない師匠がいて、術式を教えてくれて、生き方の道しるべになってくれたということだけ」

 

 くすりと、漏れた声が聞こえた。

 出会ってから1日だが、一度だって表情を変えなかった彼女から。

 驚いて視線をずらせば、確かに小さく、けれど柔らかく笑っていた。

 

「きっと、本当に素敵な人なんでしょう。あの彼が、あんな笑顔を浮かべるんですから」

 

「ふふん、それが婿殿の魅力でもあるのだが」

 

 まじか、とフォンは思った。

 聞く限りだと主殿には滅茶苦茶大切な師匠さんがいるらしい。

 それを御影は魅力といい、トリウィアは笑っている。

 ねとられだかねとりだとかそういう性癖を聞いたことあるが、そういう手合いなのだろうか。

 世界は広い。

 どんな人なのだろう、とは思うが、しかしピンと来ない。

 

「ま、主殿に後で話を聞けばいいか」

 

「うむ。胸焼けしないように気を付けろ」

 

「ブラックコーヒーを準備しておきますね」

 

 そして――――「彼」の闘いが始まる。




「彼」
上裸スタイルで戦闘待機。

フォン
アホの子……というより飛行欲求が強すぎる。
NTR趣味があるのかと両脇に戦々恐々としている。
13歳と年下系。人間ならば背骨に罅レベルだかいけるんじゃね……?と思っている。
鳥にもなれるし、ハーピーにもなれるし、人間体にもなれる。

御影
ドワーフ族と飲み比べして潰しまくって大量の酒をゲットした。
亜人族は飲酒の法律が緩いので飲みたい放題。
この後酒瓶のうちどれを持って帰るか滅茶苦茶悩むことになる。
「彼」の勝利を確信している。


トリウィア
一晩でエルフの文献を漁ってついでに仲良くなって、ついでに魔法も教えてもらったらしい。
さらにいえば煙草の葉も貰った。
「彼」の勝利を確信している。

鳥人族
アホというか思考の脳みそが飛ぶことに特化しすぎてそれ以外を疎かにしがち。
風を主軸にした属性系統、空気抵抗の低い装飾が控えめか長めの裾、つまりはチャイナドレス系統の服を着ていることが多い。
フォンの場合は肉体変化が著しいため、胸と腰以外はほぼ露出している。

嗜好品の類をほとんど必要とせず、飛んでいるだけで満足している者が多いため、概ね氏族間の序列は低めだが飛行というアドバンテージは強力。

アホ、鳥頭、脳足らずと言われがちだが、翼に関する恩も恨みも決して忘れない。

年齢を重ねると普通に思考に長けた者もあらわれる。

七氏族祭(ドロ・ナーダム)
七氏族でないのもいれれば数百年以上続くお祭り。
それぞれの氏族が提案した7つの競技とバトロワで順位をづける。
大体の競技は提案した氏族が優勝をもぎ取るので実質バトロワが優勝決定戦。
競技そのものは種族の特徴や長所を他種族にアピールするという意味合いの方が強い。
バトロワが素手なのは種族特性を最大限に生かす為に。
武器防具禁止。


ちょっと長くなったので分割に。
次回は>1のバトル素手編

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