超天才魔法TS転生者ちゃん様監修@バカでもわかる究極魔法の使い方   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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こちらをご覧ください。


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すずてんさん(@suzuten1)から天才ちゃんの支援絵頂きました!
こう……この子はこういう感じで出待ちしている!!
生足が最高なんですよね。
AA職人として存じ上げていましたが絵も描けるとは……強い……!



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そして前回シガーキスでみんなの情緒を殺した先輩もつかささん(@Aitrust2517)に頂きました!
いや顔がいい……下半身の肉付きの良さが最高なんですよね。安産型。
(ふふふ……かっこいいポーズ!)とか思ってそう。

二枚とも前話更新直後くらいに頂いてたんですが、少々忙しく更新が滞っていたら


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まさかの鳥ちゃんも追加で頂きました。つかささん……! 
健康的なボディに淫も……刺青のギャップが最高ですね。背景が翼になってるのもセンスが凄い……まさかメインヒロイン4人揃えていただけるとは……!

すずてんさん、つかささん、ありがとうございます!


フォンー風の歌ー

「ひあー! 疲れた!」

 

 板張りの訓練室にフォンは大の字で倒れ込んだ。

 既に冬の盛りに近づいた外とは違い、学園の運動室は快適な気温に保たれているが、しかし運動後の火照った体には汗が滲む程度には暑かった。

 基本的に鳥人族には冬服という概念は無く、似たような衣装の長袖が≪王国≫の服屋で売っていたので、結局それの袖を切り落として運動服代わりにしている。

 下は肌に張り付く伸縮素材で太もも半ばまでなのは相変わらず。

 結局防寒具としての意味を失ってしまったので、概ね外ではロングコートを羽織り、下はゆったりとしたズボンを履くことでどうにかしていた。それらも屋内で暖かい部屋に入ればすぐに脱いでしまって「彼」に注意されるのだが。

 生まれ持った習慣というのはなかなか直せない。

 

「あ、主ぃー、ありがとー」

 

 「彼」がフォンに水筒を差し出してくれたので感謝をしつつ、冷たい水を喉に流し込む。

 

「わっぷ……にへへ、こっちもありがとっ」

 

 大き目のタオルも体に掛けてくれたので嬉しくて笑って礼を。

 はしたないよ、と「彼」は手を差し伸ばしてくれたのでその手を取り、胡坐に直って汗を拭く。

 そして、同じように半袖長ズボンという動きやすい恰好の「彼」が隣で座り、水を飲み始めた。

 

「へへっ」

 

 なんとなく、楽しいなと思う。

 「彼」と一緒に何かをするということが。

 

「んもぉー! 仲良しねぇ~!」

 

 そんな二人に声をかけたのは、2メートルもあろう巨躯のエルフだった。

 エルフといえば森に生き、草花や自然を愛し、長命で誇り高く、そして男であれば年をとっても美青年であり、女であれば美女だ。

 が、眼の前のエルフは訳が違った。

 筋骨隆々、本来華奢なエルフだとは到底思えない。裾が広いズボンには太ももの筋肉が張り付いてパツパツだし、胸の半ばくらいでボタンが開けられたフリルシャツから覗く胸筋は彫像のように隆起していた。

 最初見た時はエルフ……? となったが、尖った耳がエルフ族であることを証明している。

 おまけに男だが、人間種の女性がするような濃いメイクをしているので性別が良く分からない。

 都会は凄い人がいるんだなと、最初は驚いたものだ。

 彼、あるいは彼女は、しかしこれでも学園の教師であり、文化全般の授業の統括を行っている者だ。

 被服、ダンス、歌、楽器、さらには料理や掃除のような家事全般まで全てが一級品のオカマなのである。

 そのあたりの花嫁修業全般を修めていて、料理もいっそ本職でやれるのではないかと思わされる御影でさえ舌を巻くほどなのだから恐れ入る。

 ≪皇国≫王族認定エルフだ。

 ちなみにトリウィアは料理は出来るらしいのだが、やたらゲテモノ料理になるので厨房出禁である。

 

「ま、形に、なったんじゃ、なぁーいのぉ? 二人とも、センスはあるわぁ~~」

 

 やたらしなを作って話すのは癖があるが、まぁ慣れである。

 

「これなら、生誕祭と新年祭も十分すぎるほどでしょ」

 

「よかったぁー。地に足着けてダンスなんて初めてだったから、変な感じぃ」

 

 時はもうすぐ年越しである。

 そして≪王国≫では年末の少し前に生誕祭―――かつて初代国王の誕生日を祝う≪王国≫の記念日と、年の終わりと次の明けを祝う新年祭という行事が二つ控えている。

 ≪氏族連合≫では年末年始は冬の終わりなので、少し変な気分ではある。

 学園も冬休みに入り、王都も学園も祭りに向けて準備をしていく。

 

 ダンスの練習もその一環だった。

 新年祭はどんちゃん騒ぎらしいのだが、建国祭はわりとシックな感じらしく優雅な音楽に合わせてダンスイベントがあったりするらしい。

 これが若者にとっては誰と誰がペアになるかで戦争ものらしい。

 

「主殿は早かったね」

 

「モテモテねぇ。主席ちゃんは~。中々ないわよ、3人同時って」

 

 いやいやと、「彼」は苦笑しながら首を振る。

 3人、とは言うが実際の所はもうちょっと複雑だ。

 基本のペアを御影が秒で申し込み、その後学生代表ペアとして「彼」とトリウィアが選ばれたので建国祭でパーティーの来賓や生徒の前で踊ることになり、

 

「御影さんも流石の度量だよねー。私が1人だけ仲間外れじゃん! って言ったらお前も踊ればいい! とかダブルペア認めてくれたし」

 

 あの鬼姫様は一々カリスマがある。

 「彼」に対してはあまりにアグレッシブすぎるが、それ以外ではカリスマ皇女以外の何でもない。一人っ子の自分にとっては姉のような存在だ。

 トリウィアはちょっと何考えているかよく分らない。

 見ている分には面白いのだけど。

 

「ま、私はこれで。もう夜も遅いし、オイタはダ・メ・ヨ―――CHU・CHU♡」

 

 巨漢のオカマエルフが投げキッスをフォンと「彼」に連続で飛ばし、片足のつま先立ちで回転しながら運動室の外へ消えていった。

 地味に尋常じゃないバランス感覚だった。

 

「……ふぅ」

 

 自分と「彼」だけになってしまって息を吐く。

 窓の外を見れば真っ暗で、星が輝いている。

 かつての鳥人族の里とはまた少し違う。

 基本的に鳥人族は冬は比較的暖かい地域に移動し、暖かくなれば高地地帯に居を構えるといった『渡り』を行う種族だ。

 そのため、フォンにとって冬というのは新鮮だった。

 息を吐けば白くなり、頬を刺すような冷たい空気、乾きつつも澄んだ空。

 夜空のことはよく知っているけど、窓の外には知らない空が広がっていた。

 

「主ぃ?」

 

 ん? と、帰り支度をしていた「彼」が首をかしげながらこちらを向く。

 主の癖で、それを見るとフォンは何故か嬉しくなってしまう。

 勝手に頬が緩んでしまうのだ。

 なぜか荷物とは別に小包を持っているが、しかしそれよりも、

 

 

「今から、空行かない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははははははは!! さーっむーい! つめたぁーい!」

 

 眼下、巨大な王都の光がある。

 夜空を落下していけば冬の冷たい空気が手を繋いでいるフォンと「彼」の体を駆け抜けていく。魔法による保護も使わず、フォンも獣化を用いない純粋な高所落下だ。

 訓練所を出た後、「彼」の手を取ってそのまま限界高度まで飛翔して落下している。

 鼓膜に響く轟音は慣れたもの。

 隣、手を繋いだ「彼」が何かを叫んでいるが、

 

「え? 聞こえなーい! あははははは!」

 

 寒くなってきて、高所飛行はしばらく控えていたなぁと今さらながらに思い出す。

 鳥人族である自分からすれば信じられないことだ。

 それくらいに王都の、「彼」との日々は鮮烈だったから。

 鳥人族にとっての娯楽は飛ぶことであり、それ以外は亜人種族の文化的に発展していないというのは否めない。

 それを恥ずかしいとも残念とも思わない。

 飛翔こそが、鳥人族の全てだから。

 けれど、王都には、学園には多くのものがあった。

 石造りの街、沢山の人種、音楽や絵画、演劇、それらの他の国のもの。

 ≪連合≫の中でだけ生きているだけでは決して知ることができなかった。

 

 今は、「彼」個人の付き人としてフォンは学園に在籍している。

 そういう立場は左程珍しくはない。他国の王族や各国貴族も珍しくないのだ。そういう立場から入学条件を満たしていない者でも学園で暮すことが可能だ。

 当然、御影にもいるらしいのだが見たことがない。

 ≪皇国≫特有のニンジャ、というやつらしい。

 御影と一緒に入学しているらしいのだが、影すら見たことないので謎だ。

 世界は広い。

 

「――――ははっ」

 

 それでも、こうして風の中を舞うことこそが最高の瞬間だ。

 落ちる。

 落ちる。

 落ちていく。

 「彼」はもう何も言わなかった。

 頭から落下していく中で、落ち着いた様子で右腕に魔法陣を展開し握りしめる。そして、彼の体が淡く光った。

 それが嬉しかった。

 自分の我儘に付き合ってくれることが。

 種族が違っても「彼」はフォンのやりたいを尊重してくれる人だから。

 

「―――よぉし!」

 

 繋いだ手を引き寄せて、落下速度が上がる。

 大地への墜落は、まるで天からの飛翔のように。

 たった2人だけ、逆さまに反転した世界を昇っていく。

 そして天上が僅か十数メートルにまで達した瞬間、

 

「――――いぃぃぃぃよっ!!」

 

 服の下、背の入れ墨が淡く輝き――――濡れ羽色の双翼が広がった。

 

 後は一瞬だ。一度の羽搏きで二人は停止し、二度目では既に数十メートルは上昇している。

 そのまま漆黒の影は夜闇に溶けながら星空へと駆け上がる。

 さっきまでの逆再生のようであり、しかし速度が段違いだ。 

 仮に落下地点周辺に人がいても、常人であれば突風が吹いたとしか思えないだろう。

 

 鳥人族は数ある種族において最速だ。

 それは純粋な移動速度においてだけではなく、瞬間的・持続的な加速や速度の維持も含めて。遺伝子レベルにおいて骨格の作りや肉体の重量が加速と飛翔に特化している。

 

 そしてフォンは鳥人族において最速の鳥人である。

 

「―――掴まっててね、主」

 

 200メートルほど上昇したタイミングで、フォンはくるりと体を回した。「彼」の手を引き寄せ抱き合うように――というより、彼の腕を自分の首に回して抱き合うような体勢に。

 そして翼と腕、足の入れ墨が再度輝き――腕が翼に、ふくらはぎから下が鳥の趾状に変化した。

 闇夜の中に溶ける様に広がり、しかしその闇を切り裂く為の翼だ。

 背の翼は同時に消えたハーピー型。フォンにとっては第二加速形態ともいえる姿だ。

 

「―――はっ」

 

 犬歯をむき出しながら彼女は笑う。

 この瞬間が、一番快感だから。

 自由に、翼となった両腕を羽搏き―――音を置き去りにして加速する。

 

「―――!」

 

 超加速による急上昇は「彼」であっても肉体強化をしていなかったらとっくに意識を失っていただろう。

 飛翔は僅か十数秒だった。

 

「…………わぁ」

 

 夜闇を真っすぐに切り裂き、雲すら超えて天上に満月。青白い光で世界を優しく照らしていた。

 吐く息が真っ白になり、月光に輝いている。

 鳥人族は大半の魔法が得意ではないが、飛行に関する魔法は本能レベルで使用できる。そのために高高度における体温調整や酸素確保も無意識で発現していた。そうでなければゆっくり景色を楽しむことはできなかっただろう。

 

「むっ」

 

 急加速したせいか「彼」が自分にしがみ付き、その頭が丁度小ぶりながらもしっかりとある胸に押し付けられていた。

 そのことに気づいて急に恥ずかしくなり、腕を人のソレに戻して、背から翼を生やす。

 なるべく不自然でないように手をつなぎ直して、ゆっくりと翼を大きく広げて中空にホバリングする。

 鳥人族でも限られた者しかできない空を掴む、と表現される高等技法だ。

 「彼」も浮いていることに気づいたのか、腕からリングを生み出して足場代わりに展開していた。

 

 便利な魔法だなと思う。

 秋ごろに街のチンピラの喧嘩から王都裏社会のヤクザの抗争に巻き込まれた時はあのリングでチンピラもヤクザも冗談みたいに吹っ飛ばしていた。単純な格闘だけでなく移動にも使っていたし、実際今こうして空に浮かんでいるのだから。

 ちなみに流石に高速飛行はできないらしい。

 

 つまり――もしも「彼」が空を飛びたいと思うのなら、フォンの翼が必要だということだ。

 

「……ふふっ」

 

 それが嬉しくて思わず笑みが零れてしまう。

 「彼」が首をかしげるが構わずに、

 

「―――よぅし、踊ろう、主」

 

 滑る様に、二度目の落下を開始した。

 今度は先ほどのような高速の墜落ではなく、翼を広げながら螺旋を描くようにゆっくりと高度を下げていく。

 片手を放して、体を大きく広げて踊る様に。

 手を放して、一度離れてから握れば慣性によって互いの位置がくるくる変わっていく。

 

「ん? ――ってうわ!?」

 

 「彼」が何か思いついたように笑ったと思ったら、視界から当然消えた。

 中空に固定したリングに一瞬足を引っかけて落下が止まったのだ。

 

「……へへっ」

 

 翼を大きく広げて、ぶつかる様に彼の手を取る。

 うわっと「彼」が声を上げるが構わずに一度回転し、

 

「そりゃ!」

 

 手を放して、高速で斜め下に彼が滑り落ちていった。

 あ、という言葉がだんだん遠くなっていくのが面白かった。笑みを浮かべつつ、翼を広げて追い付き再び手を取る。

 

 そういうことを、何度も繰り返した。

 夜空に黒い翼と七色のリングが幾通りもの軌跡を描いていく。

 楽しいな、とフォンは心から思った。

 誰よりも速く飛べる彼女は、誰かと空を楽しむことなんてできなかった。

 「彼」についてきて色々なものを知ることができたけど、きっとこの喜びが一番大切なものかもしれない。

 

「―――a」

 

 ふと、喉から声が零れた。

 

「a――――」

 

 それは言葉になりきらない何か。

 ただ、胸から溢れたものをそのまま吐き出しているだけ。

 けれど、何故かは解らないけれど急に歌いたくなったのだ。

 

「aaa―――」

 

 そう、それは歌だ。

 どうしてかそう思えた。

 胸の中にあったもの―――これまでフォンが感じて来た全ての風が歌と声になってあふれ出してくる。

 歌を歌いたいなんてこれまで一度も思ったことはなかったのに。

 「彼」と空を舞っていたら急に歌い出したくなってしまったのだ。

 そういえば、故郷では自分よりいくらか年上の男女が歌いながら一緒に飛んでいることをたまに見たなと思いだした。

 良く分からないけれど。

 良く分からないことだらけだなと思わず笑ってしまう。

 だけど、これでいい。

 「彼」と一緒ならきっとこれから沢山のことを知ることができる。

 この風の歌も、もっともっと色々な音色を重ねることになるはずだ。

 

「aaa―――――」

 

 だから今は―――ただ、「彼」を想って歌うのだ。

 

 

 

 

 

 

「へっくち!」

 

 地上に降り立った途端、くしゃみが出た。

 

「うぅぅぅ……さ、流石にちょっと寒いなぁ」

 

 当然と言えば当然であるのだが。

 空を飛ぶために、飛んでいる間は無意識に様々な魔法を使っているフォンでも地上に降り立ってしまえばそれらは切れてしまう。残るのはもうそろそろ雪が降りそうな寒空でノースリーブにスパッツの少女だ。

 直前の空中舞踏で体が火照っていたのだから、動きを止めれば急に寒さを感じてしまう。

 夜も更けて誰もいない学園校舎の中庭を歩きながら震えていたら、

 

「わっ?」

 

 何か大きな布で頭が覆われた。

 驚きながら頭から取って、この場に一人しかいない他人を見た。

 彼はいつものように首をかしげながら笑い、言う。

 少し早い建国祭記念のプレゼントです、と。

 

「―――わぁ、凄い!」

 

 それは黒に近い紺――濡れ羽色のマフラーだった。

 初めて触れるような感触はさらさらとしていて何の素材でできているのか良く分からない。絹に近い気もするが軽く伸ばしてみれば伸縮性も高い。

 何より驚いたのはその模様だった。

 フォンの入れ墨と同じような風と翼を模した刺繍が全体に施されている。

 それは≪王国≫ではほとんど見ないものだ。特徴的な鳥人族の衣服だからか、似たようなものはあるがやはりどうしてもそれっぽい何かになってしまう。加えて亜人氏族の入れ墨模様は複雑であるせいか、それも似たような模様はあっても亜人から見れば違和感が生まれるようなものだ。

 けれど、このマフラーは違った。

 フォンから見ても再現度は極めて高く、鳥人族のそれに遜色ない。

 ぱっと見、鳥人族の里で作られたものと聞いても驚かないが、この手のマフラーを着ける文化はほとんどなかった。

 

「これ、どうしたの主! ――――自作ぅ!?」

 

 答えはまさかのハンドメイド。

 聞けば、「彼」が御影から刺繍を習い、模様はトリウィアがちゃんと調べて作ったものらしい。

 何でもできるお姫様だし、トリウィアの知識も流石だ。

 そして、「彼」も何かと一目見れば大体なんでもできるのは流石というべきか。

 

 ずっと寒そうだったから、と彼は笑う。

 それなら、ちゃんと鳥人族の入れ墨も見せられるかなと思って、と。

 

「――――主」

 

 言われた言葉に胸の奥が高鳴った。

 高位獣化能力者であるフォンにとって実際の所、獣化の為の服の露出というのは必要ない。背や腕の翼の為に露出度の高い鳥人族の服装は本来必要ないのだ。

 けれど、だからって、自分の氏族の衣服を着ないのはなんか違うかなとフォンは思う。

 亜人氏族にとって衣服も重要な文化の一つ。

 成人の証に入れ墨を施す以上、それを見せる為の露出も切っては切れないもの。

 だから、フォンはなるべく薄着で過ごしていたし、大体の亜人氏族は露出度の高い服を好む。大陸の西側が比較的温暖なことも要因の一つなのだろうが。

 後は単純に習慣もあってなんとなくというのもあったりなかったり。

 

 いずれにしても、ずっと薄着だった自分の為に「彼」が作ってくれたことが嬉しい。

 それも、鳥人族という種族の文化を尊重してくれる形で。

 

「っ―――」

 

 それが嬉しかった。

 思わず寒さ以外のことで体が震えてしまい、顔が真っ赤になるくらいには。

 なんだろう、病気かな?

 変に心臓も痛いし。

 息を整えつつ、マフラーを首に巻く。

 さらさらと肌触りは良く、保温性も高いのか首に巻くだけで急に暖かく感じた。

 

「…………へへっ、どうかな?」

 

 恐る恐る聞いてみれば―――似合っているよと、「彼」の即答だった。

 また顔が熱くなってしまう。

 嬉しさと恥ずかしさでマフラーに顔を埋めて、頬の緩みをなんとか隠そうと試みる。

 上手く行った気がしない。

 それくらいに笑顔が抑えきれなかった。

 また急に歌い出したくなってしまう。

 寒いからか、自分の輪郭がはっきりとして、体の中の、胸の奥の熱がはっきりと分かってしまう。

 あぁ、なんなんだろう。 

 自分は頭が良くないし、解らないことばかりだけど。

 

 ――――いつか、この気持ちに、この歌に名前を付けられたらいいな。

 

 




「彼」
掲示板でプレゼントを相談してマフラーにしてから御影とトリウィアに相談して完成させてた。
ダンスも裁縫も、一度見れば大体なんでもできる。
大ジャンプはできるけど流石に高速飛行はむずいらしい。

フォン
冬でも露出過多だが、主からのマフラーをゲットした!

鳥の歌
鳥人族の生態・求愛行動
原則的に飛行にしか興味ない鳥人族は子を為せる体に成長し、番にしたい相手、即ち恋の相手を見つけた時のみ飛行欲求ではなく歌唱欲求に支配される。
それは母音のみで構成される鳴き声に近いものであり鳥人族はそれまでの人生で感じた風を再現して歌うという。
離婚や再婚、浮気という概念がほぼ無いとされ一度結ばれると一生を添い遂げるのが鳥人族とされるが、それはこの求愛と婚姻の際にこの風の歌、即ちそれまでの人生(鳥人族にとっての飛行)の全てを伝えるが故とされている。
どれだけ言葉を重ねようともその歌を聴いて、自身の番に相応しいか本能で判断する。

鳥人族の本能ともいえる求愛行動であり、歌を歌い終わった者・既婚者があとから文化として知っているが、未婚の鳥人族には基本的に知られていない。(変にそれを意識した声を出さないようにするためとか繁殖期でないとそもそも思考から抜け落ちているからとも言われている)

オカマエルフ
武器はクソデカダブルアックスという噂がある。

天才ちゃん
マフラーの案とか掲示板のみんなで出してた
きっと彼の幸せにつながるんだろうなと思った

夏の肉欲の姫様、秋の情緒の先輩、冬の青春の鳥ちゃん、という構成でした。三者三様できてたらよかったかなと。

以下つかささんに頂いたおまけのロゴ無し刺青有り無し差分です。

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しかしどう見ても淫紋。
合わせて本小説の目次も少々リニューアルしております。


感想評価いただけたらモチベになります。

どれがよかったでしょうか

  • 夏の姫様
  • 秋の先輩
  • 冬の鳥ちゃん
  • 後書きの天才ちゃん

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