ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
それではよろしくお願いします。
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キン、キン、キン、ガキン!
夜のトールバーナの噴水広場、そこから剣戟の音が聞こえていた。
対峙するのは一組の男女。
お互い紫色の髪と赤い目をしていた。
顔立ちも似ており、兄妹もしくは姉弟だと想像がつく。
そんな2人が何をやっているかと言うと
「この!バカ姉貴!」
「うっさい!アホ弟!」
姉弟喧嘩である。
姉のミトは鎌で力強く薙ぎ払い、弟のツキノワは曲刀を軽やかに切りつけていた。
姉の鎌を刃で滑らせていなしながらカウンターを入れるツキノワに対し、弟の連撃を全て防ぎ切り体勢を崩させた後、強力な一撃を叩き込む。
そんな攻防を繰り返す事10分、2人は仕切り直しを図るため、同時に距離をとった。
「ねぇ、なんで
正直な話、ミトとしては1ヶ月ぶりの再会なのだ。
もっと感動的なものになると思っていた。
そんな事を言える立場ではないがそう考えていた。だが、現実にはこうなってしまった。
そんなツキノワの答えは
「今のミトが1番嫌だろうやり方を選んだ」
ツキノワは、嫌がらせをやる時は徹底的にやる性格だ。
確かにこんな事、実の姉弟でやるべきことでは無い。
そう思うが
「やりたくないのはあなたもでしょ?」
それはツキノワだって一緒だ。
そう見透かすと、歯ぎしりしながら斬りかかってくる。
「…!うるさい!だいたい何で、アスナ先輩を見捨てたんだ!?一番の親友だったろうが!!」
その速さはミトには辛うじて見える程度でしかなく、ガードが間に合わず、クリーンヒットこそしなかったがまともに受けてしまう。
「それはっ!?」
そのまま連撃に持ち込まれ防戦一方になるミト。
必死に鎌で応戦するも先程の動きは無くなっており、少しずつツキノワの攻撃が通るようになる。
「どうせ!私が守るだとか何とか言ったんだろ!?自分がベータテスターだから先輩1人なら守れるって思ったんだろ!?」
そう言いながらさらに切り込む。
「ええ、そうよ!その通りよ!現に私は、私たちはあの時まで上手くやってた!でも出来なかった!出来なかったのよ!」
そんな叫びを上げながら、強引に振り払ってツキノワを吹き飛ばす。
そしてそのまま切り込む。
「深澄がレアアイテムなんて欲をかいたからだろ!?何であんな状況でそんなの狙った!?どうして先輩の傍から離れた!?」
咄嗟に躱しながらミトを蹴り飛ばす。
その隙をついて正面からソードスキル【リーパー】を放つ。
「あのレアキャラは【ウインドフルーレ】っていう細剣のレアアイテムをドロップするのよ!それで喜んで欲しかった!もっと力をつけて欲しかったのよ!」
負けじとソードスキルで対抗しお互い鍔迫り合う。
STRではミトの方が上なため自然とミトが優勢になっていった。
「ばっかやろう!!それで目を離して危険な目に合わせてたら意味ねぇだろ!?じゃあ、何でパーティを解散したんだよ!?」
ツキノワは不利になってきた鍔迫り合いを止めるため、鎌を滑らせそのまま全力で剣を振り下ろした。
ガードは間に合ったものの、体勢が不十分で倒れ込んでしまう。
そんなミトの喉元に、ツキノワは切っ先を突きつけ上から睨みつける。
「俺が1番聞きたかったのはその理由だよ。何でパーティを解散したの?」
さっきまでの激しさはなく、今はただ静かに聞いてくる。
そんな弟の反応にミトも静かに答える。
「…私は約束したの、アスナを守るって。でも出来なかった。アスナのHPがゼロになるのを見るのが怖かったの。だから逃げた。逃げて逃げて、今でもずっと逃げ続けてるの」
その声は震えており、ポタポタと涙がこぼれていた。
「…だと思ったよ。何やかんやで深澄は臆病だから誰かに突き放されるのが怖い。でも自分のせいで傷つけるのも怖い、だから友達は作らない。だから明日奈先輩っていう友達ができた時は驚いたよ」
その時の事を懐かしむように話すツキノワ。
本当に驚いた。
家に姉の友達が来るなんて何年ぶりかと思い、思わず脅迫されてないか聞いたほどだ。もちろん折檻された。
「【行動には責任が伴う。その事を忘れないで】…母さんがよく言ってたよね。ねぇ深澄、もう逃げないで。先輩にあって謝ろう?俺も一緒に謝るから」
「無理…無理だよ!今さらどんな顔して会えばいいの!?明日奈に突き放されたら私どうすればいいの!?」
泣きじゃくりながらそう言うミトに対し
「…だって明日奈先輩。あとは頼みます」
「…え?」
ミトが顔をあげた瞬間、何かが駆け寄り強く抱きしめていた。
「ミト…ミト!」
sideアスナ
2人の喧嘩をずっと見てたし、聞いていた。
そしてミトの本心を聞いた時、我慢できず抱きしめていた。
「どうして…アスナが…生きて…?」
「うん、何とか生きてたんだよ…。ごめんねミト」
「何で…何でアスナが…謝るの?謝るのは「だって1人にしたもの」!?」
ミトの言葉を遮った。分かってたの。
本当はミトが臆病なんだって。
そしてとても優しい人だって。
「ミトが苦しんでるのに連絡できなかった。私もミトに突き放されるのが怖くて…」
「アスナ…アスナ!」
ミトからも強く抱きしめ返される。
「ごめんね!私こそ本当にごめん!あの時レアモンスターを優先してごめん!明日奈を見捨てて逃げて本当にごめん!何も連絡をよこさなくてごめん!…本当にごめんね!」
「深澄…みすみぃ!」
「明日奈…あすなぁ!」
お互い強く抱きしめ合うと
「「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」」
もうひたすら泣いた。
周りなんて気にせずに大泣きした。
お互いのごめんねが聞こえなくなった時、私たちは仲直りできた、そんな気がした。
「もう大丈夫?2人とも」
泣き終わった頃、ツキノワ君が近づいてきた。
「うん、ありがとうツキノワ君」
「いえ、こっちこそ深澄を許してくれてありがとうございます」
そう言って頭を下げるツキノワ君。
そんな彼に
「優月」
優しくミトが声をかける。
そして優しく抱きしめた。
「ありがとう。私達のために。そしてごめんね、こんな不甲斐ない姉で」
そんな優しさに当てられたからかポロポロと泣き出し、そのままミトに抱きつく。
「俺…2人が仲良しなの…大好きだから…」
「うん」
「もう…こんな事しないで…」
「うん、約束する」
「バカ姉貴…」
その光景を見ていると、突然妙なモヤモヤと胸が少し痛んだ。
(あれ?何だろうこの気持ち)
その事を不思議に思ってると
「「アスナ(先輩)どうしたの(んですか)?」」
同時に聞かれる。
「何でもない、大丈夫だよ」
そう返すと
「そう、明日も早いし二人とも早く帰りましょ?」
そうミトが言う。
「そうだね、早く風呂はいって寝よ」
そうそうお風呂入って寝ないと…ちょっと待って?
「「今なんて言った?」」
今度は私とミトが被る。
「え?風呂はいって寝よだけど」
聞き間違えではないらしく
「風呂ってどういう事!?」
思わず聞き返す。
「俺とキリトの拠点は農家の2階なんだけど、そこに風呂付いてんの」
「「…お風呂かして!!」」
「お、おう了解」
そして私たちは彼の拠点に向かいお風呂を入ることにした。
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初の姉弟喧嘩からの仲直りをした次の日、ツキノワ達はボス部屋への道のりを歩いていた。
「確認するぞ。取り巻きの【ルイン・コボルト・センチネル】はフルプレートで、ポールアックスを持ってる」
「ああ、だから俺かキリトがパリィして」
「私が喉元を貫くのよね」
3人で確認をしていると
「おい、お前らはわいらの取りこぼしを相手するんやで。そこを忘れんなや」
キバオウが吐き捨ててくる。
それに対し
「だったらしっかり働いてくれ。その方が楽できる」
ツキノワは嫌味たっぷり返す。
キバオウは睨んでくるが、何も言わず仲間の方へ帰っていく。
「…何あれ」
昨日ミトから貰ったウインドフルーレの柄を撫でながら、不機嫌さMAXで呟くアスナ。
「調子乗るなってことじゃないかな」
苦笑いしながら返すキリト。
「気にするだけ無駄。俺たちのペースでやりましょう」
全く気にしないツキノワ。
それぞれバラバラの反応をしながらそのまま進んでいく。
「みんな、俺から言う事は1つだけだ…勝とうぜ!!」
「「「「「おう!」」」」」
全員の心が1つになっている。
ディアベルが扉を開ける。
そして全員がボス部屋になだれ込んだ瞬間、突然の部屋が明るくなりボスの全容が見える。
鍛えられた体、凶悪な牙、圧倒的な存在感。
手には斧と盾。
迷宮区にいるモンスター達の王。
その名は【イルファング・ザ・コボルトロード】。
そいつの雄叫びに恐れるプレイヤー達に対しディアベルが
「戦闘用意!」
つよく呼びかけ全員が気を引き締め直す。
「全員!突撃!」
第1層ボス攻略作戦、運命の初戦が始まった。
何とか宣言通りに進めれました。