サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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02-Epilogue

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 避難シェルターからの勝手な移動 ―― 特別非常事態宣言に含まれている避難義務を怠った事となった鈴原トウジは、酷い顔でベンチに座っていた。

 場所は第3新東京市の地表部分、NERVの一般外来者向けの応接ターミナルの面談室だ。

 特務機関として、業務の一般公開は行っていないNERVであるが、それでも国連の人類補完委員会の下にあるが故に外向けの部分が必要である為、特設された設備であった。

 同時にNERVスタッフの通勤路、駅の役割も担う場所だ。

 別段、エヴァンゲリオン初号機の機動等で怪我をしたと言う訳では無い。

 只、救助してくれたNERVの回収班(保護スタッフ)から手荒く絞られ、その上で避難実行担当である第壱中学校の教師陣からはこってりと叱られ、そして最後に親からに怒られたのだ。

 全てが終わったのは日付が変わる所か、明け方の寸前だったのだ。

 それはもう、顔色も悪くなるのも当然と言うものであった。

 

「よう」

 

 死にそうな顔をした鈴原トウジに声を掛けたのは、負けず劣らずの顔をした相田ケンスケであった。

 

「生きとるか?」

 

「ああ、何とかな」

 

「お互い、えらい目におうたな」

 

「そうだな」

 

 疲れ果てたとばかりに、鈴原トウジの隣に座り込んだ相田ケンスケ。

 同病相憐れむといった風情であるが、此方の凹んでいる理由は少しばかり違う。

 相田ケンスケは、唯一の親族である父親との関係が崩壊状態である為、今回の事でもさして怒られなかったのだ。

 学校からの叱責も馬耳東風。

 NERVから絞られた事に至っては、リアルなミリタリーとばかりに内心では喜んでいる有様であった。

 そんな相田ケンスケが凹んだ理由は、持ち出していたカメラやビデオなどが、その記録情報もろとも没収廃棄された為であった。

 戦闘機やヘリ、そしてエヴァンゲリオン初号機が写っているソレらは、とてもでは無いが返却されるものでは無かった。

 相田ケンスケの眼前で破砕され、廃棄された。

 年齢の割に少しばかり知恵の回る相田ケンスケは、財産権の侵害だと声を上げたが、相手にされる事は無かった。

 NERVに与えられた権限、特務機関NERVに関する法案の特権条項とも揶揄されるA-18、そこに付随する[情報の機密保護に関する規定]に基づく処置であった為だ。

 お年玉や()()()で稼いだ金で買い込んだ、中学生には分不相応な高級品は念入りに破壊されて返却された。

 黒いゴミ袋に入れられたソレが、一番に相田ケンスケを痛めたのだった。

 

「しかし、ワシらなんでここに置かれとるんかのー」

 

「さあな。俺も聞いてないよ…………腹減った」

 

「そやなー」

 

 そんな2人の正面の壁にあるドア、NERVの施設側入り口が軽快な圧搾空気音と共に開いた。

 

 

 

 

 

「あの子たちへの処分(処罰)、アレでよかったの?」

 

 2度目の使徒戦、その後片づけに奔走し、結果として徹夜をする羽目になった赤木リツコは、同境遇の葛城ミサトにコーヒーを手渡しながら訪ねた。

 場所は茶室(A Mad Tea-Party)だ。

 今日も今日とて、この2人の女性は上級者向けの歓談室を執務室の様に使っていた。

 他に佐官級の人間が居ないと言うのが1つ、そして何より彼女たちの執務室や仮眠室よりもこの場の方が快適と言うのが大きかった。

 

「あーん? ああ、シンジ君の同級生2人ね。良いんじゃないの」

 

 一瞬だけ考えて思い出す。

 赤木リツコが話題にしたのは、碇シンジのクラスメイトでもあった闖入者の事であると。

 眠たげな顔でコーヒーカップを受け取った葛城ミサト。

 手の中のソレを、親の仇のようにも見ている。

 カフェイン摂取(眠気覚まし)の為に、もはや何杯目ともしれない熱いコーヒーなのだ。

 過剰労働の根源とばかりに憎むのも仕方の無い話かもしれない。

 

「初犯だし、広義のNERV関係者だし、後、シンジ君のクラスメイトでしょ。情状酌量であんなモノでしょ」

 

 軽い口調の葛城ミサト。

 だが2人への処分は、言う程に軽いものではない。

 内容は兎も角として、少なくとも日本国政府による処罰を受けたと言う事は、決して軽くは無い。

 高校への進学、或いは就職時に決して無視できない重荷(ペナルティ)となるのだから。

 只、赤木リツコが更なる重罰が必要だと思っているのは、第3新東京市での戦闘に際して一般市民がこの2人の様に軽い気持ちで動かれては堪らないからであった。

 特に、第3新東京市要塞部分の管理運営を担当する技術開発局としては、機密保持に掛かる手間が増える様な事は勘弁して欲しいと言うのが本音であった。

 それ故の一罰百戒要求だ。

 

「それより問題は、情報漏洩の方よ」

 

 気怠げな口調ではあるが、目だけは鋭く言う。

 情報漏洩。

 それは相田ケンスケの尋問の際に判明した、()()()()()()()()()であった。

 仕事が忙しい為に、一部のスタッフが勝手に家に情報を持ち帰ったりしていた事が判明したのだ。

 相田ケンスケは家にあった父親のPCを勝手に覗き見て、NERVの情報を得ていたのだ。

 シェルターを勝手に出た事よりもよっぽどに大きな問題であった。

 実際、相田ケンスケの父親である相田タダスケ曹長は戦略調査部調査情報局第1課と言う、情報戦に絡む部署に居た事から問題は深刻であった。

 当の本人が、己の息子への教育の不甲斐なさの責任を取ると述べ、辞任を申し出てくる程であった。

 尚、それは葛城ミサトからの助言と碇ゲンドウの決裁により、戦略調査部調査情報局第1課課長代理である青葉シゲル中尉の権限で却下されていた。

 温情(身内意識)もある。

 だがそれ以上に、()()()()()()()()()()()と言う話であった。

 

「とは言えその原因って、人手不足の所を襲った仕事量の圧倒的な増大(使徒襲来に伴う作業の拡大)だもの。それを高圧的に叩けば人が居なくなるだけよ」

 

「そうね」

 

「だから軽い処罰でやる。今で踏みとどまってくれれば(仕事を持ち帰らない様にすれば)大目に見る。少なくとも相田曹長は戒告処分で終わらせる。その事例案内で理解させるのよ」

 

 葛城ミサトのソレは指揮官としての、或いは人を統率する為の手法であった。

 厳罰による綱紀粛正を狙う赤木リツコとは違う視点であった。

 

「碇司令の許可は取ったの?」

 

「もっち、上申済みで決裁済みよん」

 

「なら、言うだけ野暮だったわね」

 

「そういう風に言って貰えるから、足元を確認できるのよ私も。だから有難うリツコ」

 

「どういたしまして」

 

 気分転換の雑談を終えた2人は、仕事(現実)に戻る。

 14年ぶりに現れた使徒、だが2度目はたった2週間であったのだ。

 次の使徒が明日来てもおかしくは無い。

 そう言う危機感が2人を駆り立てているのだ。

 

「取り合えず碇司令が人類補完委員会からぶんどってきた第2次補正予算、アレでエヴァ用の装備開発が加速しそうよ」

 

「そう言えば、司令がドイツ支部から巻きあげた研究成果もあったっけ?」

 

「ええ。お陰でポジトロンライフルの実用化とパレットガンの更なる大威力化が図れそうよ」

 

「どっちが簡単そう?」

 

 興味本位というよりは、願望めいた顔で聞く葛城ミサト。

 その豊満な胸の内で願うのは陽電子砲(ポジトロンライフル)の実用化であった。

 

 実戦で効果を発揮して見せたパレットガンは、発砲原理が電磁レール方式である為、大威力化だけであれば比較的容易だ。

 対してポジトロンライフルに関して言えば、陽電子の収束技術に関してもう2歩程の技術革新が必要と言った塩梅であった。

 だが威力で言えば圧倒的にポジトロンライフルが優位なのだ。

 少なくとも、設計時の理論値(理想上の最小威力)であっても。

 今後の使徒が防御力を増していかないとは限らないので、エヴァンゲリオンの運用を担う葛城ミサトとしては、より大威力兵器を欲する気分があった。

 残念ながら、現実は気分を裏切る。

 

「簡単なのはパレットガンね。此方は基礎データが揃ったもの」

 

「そりゃ残念!」

 

 

 

 

 

 対使徒戦を終えてのSEELEへの報告会。

 いまだ碇ゲンドウは、自分に対する温情の類に慣れかねていた。

 疎まれ、或いは憎まれる事の多い人生だったのだ。

 この状況に適応しきれないのも当然と言えた。

 

 尚、SEELE側からすれば、小憎たらしかった碇家の入り婿がしおらしい顔をしているのだ。

 しかも、善意めいた言葉を言えば、何とも評しがたい苦い顔をするのだ。

 面白くて仕方の無いと言う部分があった。

 皮肉であれば鉄面皮となれる男が、善意めいた言葉であればわたわたとしているのだ。

 愉快極まりないと言うものであった。

 又それは、NERVが使徒との2連戦を存外に低い被害で乗り切っていると言う状況も影響していた。

 少なくとも最悪の想定、常に第3新東京市要塞機能が半壊する様な時に比べれば、必要な予算や資源は段違いに低く抑えられているのだ。

 SEELEとて人の子の集団。

 気が楽になる(気分が良くなる)のも当然とも言えた。

 

「第3使徒、そして今回の第4使徒。NERVは良くやっている」

 

「有難う御座います」

 

「今回は君の代行として、葛城中佐が指揮を執ったと言う」

 

「然り。()()()()()()()()()はあった様だが、成果自体は認めよう」

 

「だが油断してはならぬ。子育てや怪我と一緒だ。気を付けたまえ碇」

 

「はっ」

 

 油断していると打ち込まれて来る善意(善意の皮を被ったナニカ)に碇ゲンドウは奥歯を噛みしめる。

 弄ばれている。

 顔色を見て笑われている。

 被害妄想めいた気分で自分を律せねば、道化めいた事になる。

 そう自分に言い聞かせている。

 

「そういう顔をするな、歯に悪いぞ」

 

「歯が無くなっては食べる楽しみが減る」

 

「困ったものだよ碇。肉を噛み千切ると言う粗野だが、面白い行為も出来なくなるからな」

 

「左様、歯は健康のバロメーターと言う」

 

 これはSEELEの会議の筈だ。

 高齢者の寄り合い所じゃない。

 碇ゲンドウは、自分にそう言い聞かせて報告会を乗り切るのだった。

 

「全てはSEELEのシナリオの儘に」

 

「碇、計画の着実な実行、そして健康を祈る」

 

 

 会議が終わった後、碇ゲンドウは思いっきり机を蹴飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 相田ケンスケと鈴原トウジの所へ来たのはシンジだった。

 学生服とは違う、黒を基調としたNERVの適格者(チルドレン)向け制服を着こんで居る。

 それを着込むシンジはにこやかに笑っている。

 

謹慎すっち聞いたで(謹慎処分を受けると聞いたので)さきにゆとこうちおもてな(言っておこうと思ってね)

 

「なんや」

 

ぼっけじゃち言うとかんとちおもてな(勇敢だったと。褒めておこうと思ったんだ)がいたくられたやろがな(怒られたでしょ)?」

 

「しこたまにしぼられたで」

 

じゃっどがな(だろうね)

 

 にこやかに会話する2人。

 対してシンジの方言(かごしま弁)が理解出来ない相田ケンスケは微妙な顔をしていた。

 いや、別に鈴原トウジが理解できている訳では無い。

 同じ標準語を使わない同士のシンパシーか、何となく理解できたのだ。

 或いはそれは、鈴原トウジと相田ケンスケのコミュニケーション能力の差なのかもしれない。

 大まかな意思疎通が出来れば良いと思う大らかさの有無なのかもしれない。

 

 只、それでも聞き続けていたお陰で、相田ケンスケも何となくシンジの言おうとする事が理解出来る様になった。

 シンジは戦闘を邪魔されて怒ってない。

 それどころか、戦場にノコノコと出てきた事を、ぼっけ等と言って褒めてくれている。

 それが判ったからこそ、先に頭を下げる事を選んでいた。

 相田ケンスケと言うひねくれた所のある少年の、矜持とも言えた。

 

「シンジ、すまん」

 

ないがな(何が)?」

 

「褒めてくれるのは嬉しい。だけど、やっぱり戦闘を邪魔したのは短慮だったって思ったんだ。トウジは悪くない。全部、俺が悪かったんだ」

 

よか(いいよ)よかとよ(いいんだよ)ぼっけちぁそういうもんじゃっひとよ(勇敢というのはそういうものだと思うよ)

 

 損得勘定とかそういうモノを抜いて。

 やるべきと思った時にやってしまうものだと言う。

 迷った時には先ず突撃しろ(なこかいとぼかいなこよかひっとべ)、と。

 

「シンジ……」

 

「それなケンスケ、それやとワシが()()()()()()ゆー話にならんか?」

 

「いや、そういう積りじゃ無いって!」

 

よかよか(いいんだよ)おはんもぼっけやっでよ(付き合いでやるのも立派さ)

 

 笑うシンジ。

 

「なぁケンスケ。ワシ、ぼっけってバカって言ってる気がしてきたんやけどな」

 

「奇遇だな、俺もそう思う」

 

 ジロっとシンジを睨む2人。

 シンジは笑ってる。

 笑って答えた。

 

そいもぼっけよ(それもぼっけだよ)

 

「ええ加減すぎやろ!?」

 

 関西の血が、思わず鈴原トウジにツッコミをさせていた。

 笑うシンジ。

 いつの間にか鈴原トウジも、相田ケンスケも笑っていた。

 

 それを見ていたシンジの護衛役、黒い背広を着こんだ適格者(チルドレン)護衛を専門とする保安諜報部保安第2課の男2人は肩をすくめて笑いあった。

 青春だ、と言わんばかりに。

 

 

 

 

 

 




2021.12.21 文章修正
2021.12.25 文章修正
2022.02.12 文章修正


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デザイナーズノート(こぼれ話) #2

 ノープランで続いてしまったが故に割と頭を抱えた部分3割。
 残りは、ま、適当に本編をなぞりつつも、何だかなー と言う部分を変えていけば良いヨネと思ったのが2割。
 そして半分以上は、ヤル気アグレッシブにシンジ君行って見よう感ががが(のーぷらん

 取り敢えず、TV版を見てて思っていたのが、シンジ君は引っ込み思案では無いと言う事
 根っこは気が強いし前向きだと言う点が大事にされない二次創作が多いナァ と思ってた不満点の解消だったりする訳で。
 後半戦でのシナリオの都合でメンタルポキポキされるまでの、育成環境によって後ろ向きになりがちだったのが健全になりつつあったのを、そのママ行けばとも言えまする。
 ま、シナリオの都合と言うか、世界の都合とかでポキポキしようとしてきたら、相手をへし折れるような鍛え方をしたったーぁ!! と言うシンジ君な訳で。
 なのでトウジ君とは全力全開の殴り合いに(オイ
 お陰で、ナニカ、シンジ君の野蛮力に合わせてトウジ君もももも(ヒデェ
 余波でケンスケ君は犠牲となりましたが、ま、仕方ないね!!
 後、#2なシナリオでエントリープラグに2人が入るのは、流石に無茶が無い? となって改変。
 ねー
 だって40m級に子どもを登らせるのってどーよ?
 そんな疑問への個人的回答でもありまする。

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