サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 碇ゲンドウと渚カヲルの対談。

 人間と使徒との和解は、ある種の淡白さをもってなされる事となった。

 

 使徒たる渚カヲルとしては、人間の中に居たが為、今更に使徒だと自覚した所で友人知人を敵に回す所が殺さねばならないと言うのに抵抗が大きかった。

 又、そもそもとして殺す前に殺される確率が激しく高かった。

 碇シンジと惣流アスカ・ラングレーの駆るエヴァンゲリオンを間近で見て来たのだ。

 技量も、その戦意も。

 何をやっても最後は殺される未来しか見えなかった。

 であれば降伏するのが一番と言うモノであった。

 とは言え、コレが出来たのは渚カヲルが純然たる使徒では無く人為的な使徒であった事が大きいだろう。

 使徒(白き月の子)としての本能は有していたが、同時に人間としての意識を持っているのだから。

 元々として渚カヲル、カール・ストランドは大災害(セカンドインパクト)前に採取されていた第1使徒の生体サンプルを元に作り出された人造適格者(ビメイダーチルドレン)であった。

 その目的は、人類補完計画時に於いて祭器たるエヴァンゲリオンを駆動させる為の道具であった。

 通常の適格者(チルドレン)であった場合は自我がある為、人類補完計画発動時に(チルドレン)希死念慮(デストルドー)に余分な()を付けてしまう事が恐れられたのだ。

 故に生み出された人造適格者(ビメイダーチルドレン)

 その技術責任者の名前を取ってストランド計画とされていたソレは、元は真希波マリの人造人間(デザイン・チルドレン)計画で開発された技術が流用されていた。

 違いは、使徒(Adam)由来の遺伝子情報の有無であった。

 そして渚カヲルはストランド計画の第3(C)案で生まれたのだ。

 だからこそカール・ストランド(ストランド計画C案体14号)

 決して人の名前と言えるモノでは無い。

 だからこそ渚カヲルと名を変えていたのだ。

 

 兎も角。

 そんな渚カヲルが使徒となった理由は、SEELEが世界に残されていた第1使徒(Adam)の魂を消滅させる為に調整したと言うのが大きかった。

 量産されたカール・ストランド。

 第1使徒の生体情報を利用していたお陰で、Adamの魂の残滓が宿りうっすらとした意識を宿していたのだ。

 だからこそ、人類補完計画の儀式用エヴァンゲリオンを駆動できると判断されていたのだ。

 それは、SEELEや渚カヲルが知らぬ話であったが、似て非なる綾波レイと同じであった。

 開発の凍結されている無人化プラグ(ダミープラグ)計画も、数限りなく生み出された綾波レイの()()に、うっすらとした魂があればこその話であったのだから。

 量産されたカール・ストランド、その14番目のカール・ストランド(渚カヲル)が第17使徒、番外使徒(第17使徒)となった理由はAdamの魂の問題であった。

 Adamの魂が存在していた場合、SEELEの人類補完計画を実行する際に祭器たるエヴァンゲリオンが乗っ取られる可能性が危惧されたのだった。

 障害(不純物)となるAdamの魂。

 それを第17使徒として処理する為、渚カヲル(カール・ストランド No.14)は生み出されたのだ。

 

 だからこそ、渚カヲルは人類への降伏を選ぶ事が出来たのだ。

 使徒としての本能の薄さが()()を可能としていた。

 生命の安堵。

 それは使徒と言うよりも人間としての要求であった。

 

 対する碇ゲンドウ。

 人類補完計画が潰えた今、渚カヲルを殺す意味はない。

 その上で、渚カヲルが示したメリット ―― 技術は果てしなく重要なモノであった。

 即ち、使徒の保有していた技術体系の提供であるからだ。

 (スーパーソレイド)機関や、A.Tフィールドの利用に関する情報だ。

 渚カヲルが示した対価、その情報にSEELEは沸きあがった。

 何故ならA.Tフィールドの利用して可能な事の中に、複数のエヴァンゲリオンによるA.Tフィールドの共鳴現象によって地球の地軸を改善出来る可能性が含まれていたからだ。

 地軸の改善。

 それは即ち、人類の生存圏として困難地と化していた欧州(ヨーロッパ亜大陸)の環境回復を意味するのだ。

 人類補完計画の目的であったソレ。

 それが為されるのだ。

 歓喜しない筈が無かった。

 SEELEに報告した際、歓喜に爆発する一堂を碇ゲンドウは醒めた目で見ていた(へーへー ヨカッタネと腹の中で呟いていた)

 とは言え、碇ゲンドウが他人事であったのは其処までであった。

 差し出される技術の中に、()()()()()()()が含まれていたのだ。

 

 

 

 

「お前は知っているのか………」

 

()()()()()()()()()()()

 

 その情報を示された時、碇ゲンドウは渚カヲルの笑み(アルカイックスマイル)に恐ろしさを感じていた。

 ああ、その様はANGEL(使徒)と言うよりもMEPHISTO(悪魔)めいていた。

 少なくとも碇ゲンドウにとっては。

 だがソレは1発で運算霧消する。

 パコンと言う余りにも軽い音と共に。

 

「そう言う態度は駄目」

 

 赤い瞳の絶対者(綾波レイ)だ。

 渚カヲルと碇ゲンドウの最初の面談以来、抑え(ツッコミ)役として常に同席していたのだ。

 手には安っぽい樹脂製のメガホンがある。

 青いソレには、100円と言う値札がまだ残っており、そこに持ち込み許可の赤も鮮やかなNERV印のスタンプが押されている。

 何と言うか真面目な面談に向いていない渚カヲルと云う人間を修正する為の武器(ツッコミ・ロンギヌス)であった。

 こんな馬鹿げたモノを持ち込まざる得ない程に、渚カヲルはツッコミどころが満載であったのだ。

 一般にミステリアスな美形などと言う扱いを受ける渚カヲルであったが、その実態としては浮世離れした暢気者と言う塩梅であった。

 綾波レイから見てもソウである辺り、実に重症であった。

 だからこそ綾波レイは、その事を適格者(チルドレン)の集まりで相談したのだ。

 武断派のシンジは拳骨で叩けばよいと言った。

 流石に可哀そうだと意見が一致して却下された。

 軍隊式にアスカはお尻を蹴飛ばせば良いと言った。

 洞木ヒカリが女の子のする事では無いと強く諭して却下された。

 鈴原トウジはツッコミならハリセンであると言った。

 一瞬だけ考えた綾波レイであったが、売って無いと言う事で却下された。

 幼い(ピュア)なマリ・イラストリアスは鞭で叩くのって教育って聞いたよと言った。

 余りにも暴力的で人権()の問題があると思った一同、黙って聞かなかった事にした。

 最終的に洞木ヒカリの提案、オモチャのメガホンであれば視野的なインパクトと音が鳴りやすいと言う主張が通ったのだった。

 

 青いメガホン(ツッコミ・ロンギヌス)は胡散臭い渚カヲルと顔の怖い碇ゲンドウとの面談の悪い空気をぶち壊す、実に良い道具となっているのだ。

 ツッこまれる渚カヲルは勿論、それを振るう綾波レイに碇ゲンドウは何とも言えない顔(酢を呑んだ様な顔)になってしまうのだ。

 もう陰険漫才だの陰謀などが成立する余地など無かった。

 笑うしかないそんな面談を見た冬月コウゾウは、過去の碇ユイの所業(力による裁定行動)を思い出して遠くを見ていた。

 お茶が美味しいなどと言いながら。

 

 兎にも角にも、腹を割った(グダグダな)面談に於いて差し出されたソレは、本来であれば劇薬めいた部分があった。

 エヴァンゲリオンに眠る魂の回収、そして人間としての再現。

 それだけであれば素晴らしい事と言えるだろう。

 人道的にも正しい。

 只、その魂が眠っているのがエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機、第1小隊(エースのツートップ)の機体で無ければ。

 最も使徒を屠って来た機体が無力化されると言う話であるのだ。

 おいそれと受け入れられる話では無かった。

 互いの腹の探り合いになる事態であった。

 本来であれば。

 

 だが裁定者たる綾波レイの振るう神器(メガホン)によって、その様な雰囲気は粉砕される。

 渚カヲルが汗を掻きながら補足する。

 

「要するに、出来ますって話です。心の色(A.Tフィールド)から初号機に眠っているのはシンジ君のお母さんと言うのが判ったので、なら碇司令の奥さんですよね?」

 

 要するには純粋な善意であった。

 それに、と加える。

 

「もう初号機も弐号機も、シンジ君と惣流さんとに馴染んじゃってるからね」

 

 それぞれのコアが覚醒し、受け入れているのだと言う。

 未覚醒状態であったエヴァンゲリオンがシンジやアスカに繋がる為には、その仲介者としての魂を必要としていたが、今はそうでは無いのだと続けていた。

 

「言ってしまえば今の初号機と弐号機は、エヴァンゲリオンと言う存在の本来の能力を発揮しだしているって言えると思う。思います」

 

 最後に綾波レイの顔色を伺う辺り、何と言うか、本当に力関係(カカァ天下)が見て取れていた。

 とは言え碇ゲンドウにとってはそれ所では無かった。

 現実的な意味で、碇ユイが帰って来ると言う事は恐るべき衝撃を与えていた。

 

「ユイ………」

 

 悄然と椅子に力なく背を預ける碇ゲンドウ。

 この10年余りの時間は全て、妻である碇ユイとの再会が願いであった。

 それが碇ゲンドウの人類補完計画。

 息子も、人類の全てをも贄として、永遠なる一瞬の邂逅を夢見ていたのだ。

 一瞬である。

 それから先など考えていなかった。

 それは、言ってしまえば碇ゲンドウが己の行い、その()を理解すればこそであった。

 人類補完計画で喪われるモノに己自身も加えていたのだ。

 碇ゲンドウは碇ユイに再会し、末永く幸せに暮らしました ―― そんな結末は考えていなかったのだった。

 だからこそ、非道を行えたとも言えた。

 息子であるシンジを手荒く扱い、碇ユイの現身とも娘とも言える綾波レイを道具の様に扱い、赤木リツコは道具とする為に非道に穢した。

 罪深いが故に、命と言う対価を払わねばならぬのだ、と。

 現実として、シンジからは手荒く扱われ、綾波レイは我が道を往き始め、赤木リツコには下克上を受けていたが、それは別の話なのだ。

 それを覚悟していた。

 だが、それが否定される。

 対価など無いままに、碇ユイが帰って来る。

 それは碇ゲンドウが想像した未来に存在しない話であった。

 そうであるが故に、碇ゲンドウは苦悩する事となる。

 

 

 

 

 

 渚カヲルが使徒であったと言う話は、厳重に秘匿されていた。

 葛城ミサトらは勿論、シンジ達の誰もその事を口にする事は無かった。

 だが人間の集団、組織なのだ。

 何となく、空気と言う奴は判るのだ。

 故に、どうやら使徒との戦いは終わりそうだという話はNERVの中で流れていた。

 勿論ながらも、それでNERV本部スタッフの働きぶりが変わると言う訳では無い。

 NERV本部のスタッフは大半が日本人であり、日本人と言う人種は基本的に生真面目であり、特に仕事に対して何とはなしに手を抜かないと言う性を持っているのだから。

 だがそれは大人の話。

 子どもは、エヴァンゲリオンに乗る為に集められた子ども達は別の話であった。

 特に第2期適格者(セカンドステージ・チルドレン)だ。

 促成で行われていた訓練内容が修正され、訓練内容の適切化という名目で過度と考えられていた詰め込み式の内容が中止される事となった。

 その上で、年齢相応の情操教育が重視される事となる。

 即ち、学校教育である。

 その裏には勿論、天木ミツキ ―― 非戦闘面で誰も逆らえぬ、実質NERVの№5様の暗躍があった。

 碇ゲンドウNERV総司令官が副司令官たる冬月コウゾウと共に渚カヲルとの面談に掛かりっきりとなっており、制止出来る人間が居なかったのだ。

 葛城ミサト(NERV序列第3位)赤木リツコ(NERV序列第4位)は、子ども(チルドレン)案件だものと早々に白旗を挙げていたのだ。

 である以上、NERVに逆らえる者がいる筈も無かった。

 丁度と言う訳では無いがNERV本部の半管理下に第壱中学校があった為、そのA組にNERV本部に居た9人が編入される事となったのだ。

 帰国子女めいた先輩役としてアスカや渚カヲルが居て、尚且つ第2期適格者(セカンドステージ・チルドレン)9名の内の2名が日本人(相田ケンスケと霧島マナ)であったので、言葉の壁の部分は余り問題にならぬと考えられていた。

 又、パソコン(デスクトップPC)で学習が行われる為、翻訳をMAGIが全力支援するとされていた。

 又、授業内容の主体は体験学習とされていた。

 正に情操教育であった。

 

 知っている人間は第壱中学校2年E()組等と言う特別クラスA組。

 尚、教師陣からはある程度歓迎されていた。

 外国の子ども達と触れ合うと言うのは面白い体験であると言うのが1つの理由であった。

 そして同時に、生徒の多くが疎開で離れていたお陰と言うには少しばかり微妙な理由で人手的な意味での余力があった事も、この編入(体験学習)を受け入れる余力に繋がっていた。

 

 

「まさか、また日本の学校に通えるなんて思ってもいなかったな」

 

 そう言って姿見の前で第壱中学校の制服姿を確認しているのは霧島マナだった。

 場所はNERV本部の尉官用ゲストハウス、その歓談室(リビングルーム)だ。

 歓談室は、ゲストハウスが個室とは言え4㎥(三畳)と言う手狭さ故に設けられている場所であった。

 それなりのソファやTV、喫茶設備などが用意されており、適格者(チルドレン)専用の操縦者待機室や第2適格者休憩室程では無かったがそれなりに快適な空間となっていた。

 勿論、ゲストハウス自体は男女別々になっており、9名の第2期適格者(セカンドステージ・チルドレン)も男女別で纏められている。

 

 鏡を見ながら、顔の表情を確認したりする。

 今日は第壱中学校への編入を前にしての説明会(ブリーフィング)が行われるのだ。

 最近、距離を詰める事に成功しつつあるリー・ストライクバーグは居るだろうし、上手くすればシンジも居るかもしれない。

 無論、シンジがアスカと一歩進んだ(ステディな)関係である事は認めるし、正直な話としてお似合いだとも思って居るが、ソレとコレは別話なのだ。

 渚カヲルと並ぶイケメン枠なのだからお近づきになりたいと言う(アイドルに憧れるミーハーな)気分になるのも当然であった。

 とは言え、まだまだディピカ・チャウデゥリーなどはまだまだ本気でシンジを狙ってはいたが。

 ガッチガチに化粧をし、近くの鏡で出来栄え見ているディピカ・チャウデゥリーの後姿からは鬼気迫るモノが漂っていた。

 その様を、視野に入れぬ様にしながら霧島マナは同じ第2期適格者(セカンドステージ・チルドレン)仲間と一緒に、呆れめいた溜息をもらすのだった。

 アスカはシンジ(自分のモノ)に手を出す奴を許さない。

 故に、またディピカ・チャウデゥリーが何かやらかして涙を流す羽目になるんだろうとの、確定した未来が見えたのだ。

 と、そんな事を思って居たのが影響したのか、アスカが歓談室に現れる。

 

「お待たせ、迎えに来たわよ」

 

 意識の外からの声に、この歓談室に居た4人は皆して飛び上がっていた。

 只、ディピカ・チャウデゥリーだけが不敵に笑うのであった。

 

「何?」

 

There is nothing wrong(何でも無いですよ)

 

 笑い、そして敬礼をしてみせる。

 それはほれぼれする位に見事な姿勢だった。

 只、底意がアスカには見えた。

 だからこそ不敵に笑って答礼する。

 

Es ist toll(悪く無いわね),Herausforderungen anzunehmen(その意気だけは)

 

!?(ふみゅーーん)

 

 笑みと言うモノが如何に攻撃的かを示す様なアスカの笑みに、部外者な霧島マナや他の女子第2期適格者(セカンドステージ・チルドレン)もドン引きしていた。

 そして、ディピカ・チャウデゥリーも腰がかなり引けているのだった。

 

 

 

 

 

 


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