【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
そして、海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう
神にかたどって創造された
男と女に創造された
神は彼らを祝福していわれた
産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ
海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ
16-1 Valkyrie
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国連第2東京本部ビル総会室。
かつてニューヨークにあった国連本部ビルのソレと同じように、すり鉢めいた作りをした巨大な部屋。
その中央の演台に碇ゲンドウは、国連安全保障理事会人類補完委員会特務機関NERVの総司令官として堂々と立っていた。
NERV高官用制服を身に纏い、使徒との生存戦争の終結を人類に報告するのだ。
それは、特別報告会と題された公式発表の日の事であった。
その姿を小さなTV画面越しに見ている少年たち。
場所は何時ものNERV本部地下、操縦者待機室だ。
「コレで、公式には終わりっちゅう事やな」
「
尚、惣流アスカ・ラングレーら女子組は男子組禁制の心身管理プログラムに参加していて不在であった。
アスカの女性特有の生理問題に綾波レイが関心を持ち、最近はアレコレと質問をする様になっていたが為に質問を受けるアスカが悲鳴を上げて大人に泣きつき、結果として天木ミツキが教育をするべきとした結果であった。
マリ・イラストリアスも、チト早いかもしれないけども構わないとばかりに連行されていった。
尚、アスカは綾波レイに腕を掴まれていて参加の拒否権不在であった。
綾波レイ、最近は女性的な事に関してはアスカを頼る様になっていた。
これも情緒が育った結果と言えるかもしれない。
兎も角。
突発的な事情でアスカ達が不在であっても、シンジ達の訓練は継続されていた。
それはこの、特別報告会の日であっても同じであった。
とは言え操縦者待機室に
女の子はまとめて天木ミツキの女の子教室に放り込まれているのだから当然の話であったが、男子陣はそうではない。
居ない理由は教育方針の転換その他、
それは
エヴァンゲリオン3号機と
そして、
軽視して良い話では無かった。
操縦する人間の練度不足で高価な機体が簡単に破損させられては堪らないのだから。
同時に、機体的な問題も調査される事となっていた。
だがそれでも、予想された能力よりも動きが悪かった。
だが、対使徒戦力と言う観点からNERV本部配備エヴァンゲリオンが優先されていた為、問題の原因究明と対応は後回しにされていた。
そもそもとして、
第16使徒戦に投入された事がNERVからすれば想定外であった。
だが、その使徒襲来が止まった事で赤木リツコら技術開発局が原因の調査と研究に本腰を入れられる事となったのだ。
機体とのシンクロ ―― 制御にBモジュールを介していると言う特性からエヴァンゲリオン3号機とエヴァンゲリオン8号機、そして
兎も角。
最初は、その成果からシンジの受けた訓練内容が基になっていた。
2番目には、アスカの受けた訓練内容が基になっていた。
選抜に選抜を重ねた果ての
そして今回の改訂前の内容は、前2例の反省を基に標準的な適格者向けとして綾波レイの受けていた訓練内容を基にした内容であった。
幼少期から
冷静に考えれば普通の筈が無かった。
その点に気付いた時、葛城ミサトは
だが、気付かないのも仕方のない話であった。
その内容は鈴原トウジが受けた訓練内容でもあったのだ。
そして鈴原トウジは見事にエヴァンゲリオン3号機を操り、使徒と戦い抜いてきたのだから。
それは、普通と見られている鈴原トウジも、資質を持った人間であったと言う証拠であった。
Bモジュールの非搭載機向けの訓練内容を受け、その上でエヴァンゲリオン3号機と実際にシンクロし実戦を潜り抜ける中でコツを掴んだのだから。
「当分、実戦は無いちゅーんは有難いわな」
「平和って良いよね」
何時もより
割と切実に命の危機があったのだから、ある意味で当然の反応であった。
珈琲カップに砂糖をマシマシに注いでる。
が、ソレを見るシンジと鈴原トウジは驚きの表情をしていた。
「
滅多に無いシンジの驚きの声。
さもありなん。
事前に公開されたプログラムには、本日の特別報告会に
「フフフフフ、2人とも驚いたね。その顔が見たくて」
「何を言っとるんじゃ!?」
「
「一寸したA.Tフィールドの応用でね」
そう渚カヲルが呟いた瞬間、TVの向こう側でどよめきが上がった。
碇ゲンドウの隣に、光輝く人めいたナニカが出現したのだから。
『紹介しよう、我々人類が接する17番目の使徒、使徒の代表でもある』
淡々と説明する碇ゲンドウ。
チカチカと点滅する光り輝くナニか。
挨拶のつもりだろうか。
総会に参加している各国代表は勿論、TVのリポーターすら絶句しているのが判る。
唯々、カメラ音だけが響いている。
『このような場で我々と彼らの意思疎通には少しばかり、まだ乗り越えねばならぬ壁がある。翻訳者を用意してある』
碇ゲンドウの言葉を合図に、脇から登壇する小柄な人影。
NERVのチルドレン用の制服を着ている。
とは言え徽章の類は無い。
又、顔は黒い頭巾で完全に覆われている。
長い銀色の髪が腰まで伸びている。
とは言え性別は判らない。
ズボンを履き、胸は無いのだから。
「誰や、アレ?」
「
顔を見合わせるシンジと鈴原トウジ。
特徴的な銀色の髪は、青味があって渚カヲルの特徴と言えるだろう。
綾波レイはアルビノ系の白味が強いからだ。
「僕の
事も無げに説明する渚カヲル。
ストランド計画の第
とは言え、乗るべき儀式用エヴァンゲリオンが形とならなかったが為、その駆動用プラグユニットへの
その1体、
自我が薄い為、渚カヲルがA.Tフィールドで操っているのだと言う。
「SFやな」
「
シンジが指し示したのは碇ゲンドウとカール・ストラント=CⅧの傍に居る光る人型である。
「アレもA.Tフィールドの一寸した応用だよ」
空間を屈折させ、そこに何かが存在し、光っているように見せているのだと言う。
揺らぎ。
或いは影。
質量も無く、光すら本来は存在していないのだと言う。
「
「わからん」
「
割と深刻な顔で首を傾げるシンジと鈴原トウジ。
シンジは一般的な学業と言う意味では優秀と言ってよかったし、鈴原トウジとて
と言うか、感覚でやっている事であり、理屈など赤木リツコですら何となく理解したと言うレベルであるのだ。
判る方がオカシイと言う話であった。
「フフフフフ」
「何や、楽しそうやな」
「だって、僕にだって特技があって、自慢できるって、それは嬉しいって事だよ」
「
「そや」
素の中学生らしい雰囲気の会話をする3人。
そんな3人など相手にもせず、国連総会の報告会は加速していく。
それは使徒の人類への降伏宣言であった。
強大無比なエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機。
使徒を屠り続けたNERV本部のエヴァンゲリオン戦闘団。
そして人類の
使徒は強力である。
使徒は強大である。
だが、使徒は単独にして単体でしかないのだ。
使徒にとって都合15体ものエヴァンゲリオンと言うのは正しく
故に、講和の道を選ぶ事となったと続ける。
それは地球の人々と、何よりも
恐るべき敵が人類の武威に畏れを抱き、講和を呼び掛けて来た。
何とも喜ぶべき話であるのだ。
無論、
莫大な予算を急遽組み上げた第2次E計画が無駄だったなどととてもでは無いが言える話ではないのだから。
その辺りの報告会で言うべき内容を詰める際、碇ゲンドウからリクエストされた事を渚カヲルは
その笑み。
素直な渚カヲルは、自分の安全が保障されたので後は何でも良いと言う気分での事だった。
だが、性根の曲がっている碇ゲンドウは、それを
碇ゲンドウを除く、全ての人間を満足させる言葉。
そしてカール・ストラント=CⅧの口が代弁していく言葉は、更に満足させた。
使徒の持つ技術の全開示である。
渚カヲルの内側に眠るAdamの
同時にNERV本部、その地下空間の大本となっている黒き月に残されている情報の解析なども行うのだ。
使徒の無尽蔵の動力源である
使徒との講和が齎す明るい未来の提示。
それは
明るい未来と言うものは、それだけの力があったのだ。
様々な言葉で、万歳と歓声が上がる国連総会。
興奮した人々が壇上に握手を求めて近づき、
「楽しそうね」
少しばかり白けた顔で呟くのは葛城ミサトであった。
勿論、見ているのはTVであり、国連総会での報告会である。
場所は作戦局大会議室だ。
作戦局の主要スタッフと技術開発局の主要スタッフが集まっていた。
「希望は必要ですからな」
合いの手を入れるのはパウル・フォン・ギースラーである。
とは言え、若干の苦笑が唇には浮かんでいる。
仕方のない話であった。
この作戦局大会議室に2つの部局の人間が集まっている理由、議題が議題であったからだ。
太陽系外からの襲来、他の星系に降着した白き月、黒き月の末裔が攻撃的な意図をもって襲来した場合への対処に関する検討であったのだから。
始祖民族の手で宇宙に拡散された大迷惑。
総数10万にも達する白き月、黒き月の民と言う脅威への対応である。
とは言え、具体的な話は何も出来ずにいた。
いつ来るのか。
本当に来るのか。
来たとしてそれが友好的なのか、それとも攻撃的なのか。
攻撃的な意図をもって来たとして、それはどれ程の規模で来るのか。
一切合切が不明であるのだ。
正に雲をつかむような話であった。
「勘弁して欲しいわね」
「情報が何もないですからね」
アメリカ人めいて肩を竦める仕草をするパウル・フォン・ギースラー。
だが、その言葉を発端に、集まった人間が
「
「敵を知らないと言えるかもしれません。ですが、我々の情報も敵は知らないとも考えられます」
「先ずは情報だな」
「恒星系外に向けた太陽系全域の探知網など、現時点では絵空事も良い所だ」
「光速の壁、人類には太陽系は広すぎる」
「いっそ近隣の恒星系に偵察を行うか? 宇宙研究者は大喜びしそうだが」
「そもそも、そんな宇宙船をどうやって開発する__ 」
「
「正にSFだな。しかし、近くのアルファ=ケンタウリにすら遠すぎるのだぞ?」
「今の人類には火星すら遠い__ 」
喧々諤々と言った塩梅の議論。
とは言え、結論の出る話ではない。
そして主催たる葛城ミサトにとっても、結論の欲しい話では無かった。
今日の会議も、ある種、
「何にせよ、政治サイドが予算枠と目的をくれないと何も出来ないわよね」
「宮仕えの哀しさね」
葛城ミサトの隣に座っている赤木リツコも嘆息していた。
「そう言えば、10万だかの月の話、何時、公表される事になるの?」
「少し先ね。使徒技術の解析によって判明したって態で行われるとは、碇司令が言っていたわ」
「………少し先にして欲しいわね」
「そうね」
憂鬱な顔で頷き合う2人。
世論が沸騰し、沸騰した世論が国連を動かし、国連が無茶ぶりする相手がNERVとなるのは、事、使徒がらみであれば最早決定事項。
或いは様式美であると言えるのだから。
確定した未来に暗澹たる思いを抱きながら、そう言えばと葛城ミサトは言葉を繋ぐ。
「そう言えば地球移動計画、アレ、何時だったっけ?」
「そういう略し方もどうかと思うわよ」
「上の組織名に
「あら、地球の地軸が1999年以前に戻るっていうのは、正に、人類の補完、生きる為の環境回復計画としては妥当じゃないかしら」
「名前の規模が大きすぎるっちゅーの」
「そこは同意するわ」
葛城ミサト曰くの地球移動計画、正式名称は人類補完計画。
それはエヴァンゲリオンのA.Tフィールドの共振による地球の
核となるのは4機のエヴァンゲリオンだ。
強力なA.Tフィールドの出力を持った機体。
エヴァンゲリオン初号機。
エヴァンゲリオン弐号機。
エヴァンゲリオン4号機。
エヴァンゲリオン6号機。
この4機のエヴァンゲリオンが南極でA.Tフィールドを発振し、それを地球各地に展開させた8機のエヴァンゲリオンで共振させて安全に地軸を基に戻そうと言う大計画であった。
「大計画よね。都合12体ものエヴァンゲリオンでやるんだから」
「大仰とも言えるわね。セカンドインパクト時にはたった1体のアダムが成し遂げた事なんだから」
「で、あのざま、と」
「そっ。その大災害を再発させないための調律を8機のエヴァンゲリオンで行うわ」
「調律ね。本当に出来るの?」
「その為のBモジュールと言えるわ。マリの8号機を起点にして、MAGI5台による支援があるんですもの。可能よ。それに3号機のバックアップがあるんだもの」
共振による調律を行う8機のエヴァンゲリオンは、全ての機体にBモジュールが搭載されている。
そのBモジュールの秘匿機能、
余人では存在すらも判らなかった天才、真希波マリによる封印。
それを解いてみせたディートリッヒ高原もまごう事無き天才であった。
兎も角。
この機能が封印されていた理由は、過度なエヴァンゲリオン同士の同調は、その操縦者への負担が大きすぎると言う事であった。
基点となるエヴァンゲリオンに乗っている操縦者の意識が、エヴァンゲリオンを介して流れ込む危険性が危惧された結果だった。
データ上に残されていたメモに、人道的と言う言葉を母親の胎内に忘れて来たような
その様な文言が残されていた。
削除されなかったのは、この機能がBモジュールの根幹にかかわっているからであった。
尚、今回は、その辺りを5台のMAGIによって調整し、同時に、A.Tフィールドの共振と言う事にのみ集中させる事で行われる事となっていた。
ディートリッヒ高原の手腕である。
不運な事は、この作業中にディートリッヒ高原は大病を患っている事が判明し、緊急入院して治療する羽目に成ったと云う事だろうか。
幸い、NERVの再生医療技術の高さから命に係わる事は無かったが、本人は最後までやりたかったとぼやいていたと言う。
「Bモジュール、
「そうね真希波博士も驚いているかもね」
笑う赤木リツコ。
葛城ミサトも笑いながら、真希波マリへの感謝を述べていた。
「女の子って大変」
自分のほっそりとしたお腹を見ている綾波レイ。
そしてアスカのお腹も見た。
天木ミツキの教室であった。
それなりの知識を持っていた霧島マナは余裕顔であったが、改めて聞いたアスカも顔を少しだけ赤らめていた。
NERVドイツ支部で幼少期から育ってきて、外の事を余り知らない純粋培養であったのだ。
こういう反応になるのも、ある意味で当然であった。
尚、アスカに対して
「それで済ますからレイ、強いわね」
呆れた様に言うのはこの部屋で唯一の非
NERV本部の
やはり、常識担当は必要と言うモノであった。
「
鼻息も強く
それを少しだけ恨めしい顔で見るアスカであった。
とは言えアスカ。
その左手薬指に小さく輝く銀の指輪が、これ以上ない程の
それを最初に見つけた洞木ヒカリが黄色い悲鳴を上げ、綾波レイは首をコテっと傾け、マリ・イラストリアスは似合ってると素直に褒め、霧島マナは歯ぎしりし、ディピカ・チャウデゥリーは
世界情勢を尻目に、今日も姦く平常運転であった。