サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機が攻撃され、搭乗するディピカ・チャウデゥリーが悲鳴を上げる少し前に時間は巻き戻る。

 

 

 人類補完計画に基づいて中東に配置された第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機は、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンに共通する白を基調とした塗装に搭乗者(ディピカ・チャウデゥリー)の希望から紫が刺し色となっていた(乙女の叫びを示していた)

 地軸の歪み(ポールシフト)によって緯度が変わり、過ぎし日々の如き強い日差しは消え、人が過ごしやすくなった大地であるが、それでも砂漠である。

 大地の照り返しによる日の強さはあった。

 それ故もあり、砂塵の中にあって尚、輝くエヴァンゲリオン。

 見える限りを埋め尽くす砂漠にあって尚、威風堂々と目立つ巨躯は人類の福音(エヴァンゲリオン)と言う名に相応しい佇まいと言えた。

 

「凄いものだ」

 

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機を見上げ、呆れたように呟いたのは国連軍アラビア方面軍第1特別部隊の兵士であった。

 兵士だけでは無い。

 この場に配置されている第1特別部隊は増強装甲連隊規模の、戦車や装甲車の集団であった。

 テロと言うモノを想定するには物々しいが、その実として実戦的な訳でも、真剣な訳でも無かった。

 素直に言ってしまえば軽薄(ミーハー)な理由だ。

 即ち、国連軍アラビア方面軍司令部が、今を時めく存在であるエヴァンゲリオンと共に部隊の記念撮影をしようと言う訳である。

 先ほどまで国連軍アラビア方面軍の一部参謀までもが、激励(記念撮影)に来ていた程であった。

 何とも呑気な話とも言える。

 理由はあった。

 イスラム教の導師(ハティーブ)がエヴァンゲリオンを、神に弓引くモノでは無いとの布告(ファトワー)をしていたのだ。

 布告には、人を守るために神が遣わした救う者(マライカ)であるとの事も添えられていた。

 

 故に、大多数の中東の人間もエヴァンゲリオンを良きモノと見ていた。

 見上げている兵士は、そんな人間の1人であった。

 ヘルメットと立派なあごひげの隙間にある目元にも優しさが浮かんでいた。

 セカンドインパクトで地獄を経験して以来、兵士は信仰に対する疑念を持っていた。

 だがそれ故に、エヴァンゲリオンを素直に評価出来ているのだった。

 だが、全ての人間がそう言う訳では無い。

 

「神を象る積りか」

 

 憎々し気にエヴァンゲリオンを見上げながら、言葉を吐き捨てる兵士も居るのだ。

 否、それどころかエヴァンゲリオンに対して否定的な感情を抱いている兵士は多かった。

 

 セカンドインパクトによる地軸の変化(ポールシフト)は中東と呼ばれる地域の気候を過ごしやすいモノへと変えていた。

 だが同時に、海面の上昇がそれまであった海沿いの生活圏を奪われる事にもなっていた。

 重要なのは港湾施設の喪失である。

 その結果、食料品の輸入が止まってしまい中東もまた恐ろしい程の飢餓と、飢餓に起因する食料争奪戦が勃発していたのだ。

 セカンドインパクト後の日々(After the Holocaust)

 何とも救いのない現実。

 だからこそ神に縋ったと言える。

 神に祈り、神の試練として受け入れ、消化していた。

 ()()()()()、神の試練である使徒に戦いを挑んだエヴァンゲリオンを憎む事になっていた。

 複雑骨折した様な心理と言えるだろう。

 他人から見れば試練に立ち向かう事を否定している様に見える。

 だが、当人たちにとって話は違っていた。

 首をたれ、神に祈り、そして耐えねばならぬ試練にエヴァンゲリオンを以って立ち向かうのは、神への挑戦と見えていたのだ。

 更に言えば、エヴァンゲリオンの開発を行ったのが日本や欧米(列強であり神に従わぬ地)であると言う事も、話を複雑にしていた。

 20世紀の時代、中東が列強に踏みにじられていた時代に繋がって見えるのだから。

 無論、導師(ハティーブ)からエヴァンゲリオンを認める布告(ファトワー)が出されているので、正面から否定する事は無い。

 だが理屈では無いのだ。

 感情であり、素朴な納得でもあるからだ。

 そしてエヴァンゲリオン。

 そもそもとして()()と言うのも良く無かったと言えるだろう。

 

 何故、そんな人間までもがエヴァンゲリオンの護衛に居るのかと言えば、理由は政治であった。

 それも、かなり生臭い話であった。

 国連軍アラビア方面軍の高級将校(王族ベタ金)が、将来の政界転進に備えてエヴァンゲリオンとの記念撮影を希望した。

 それだけであれば問題は無かった。

 問題は、高級将校の部下(太鼓持ち)が、記念撮影をするのであれば将兵も多い方が立派に見える(映える)と考えたのだ。

 結果、増強連隊(1000人)規模が動員される事となったのだ。

 とは言え精鋭部隊が派遣される訳にはいかなかった。

 中東と言う地域は、国家間で言えば比較的安定している(本格的な戦争の兆候は無い)とは言え、それ以外での難民問題、それと宗教問題などに起因した騒乱は終息したとはとても言えない状況なのだ。

 イスラエルとパレスチナの関係、シリアなどでの独裁者による圧政。

 火種は地域中に存在している為、高練度の(高い教育を受けた)将兵による部隊はそれらが出火せぬ様に走り回って居るのだ。

 暇な高級将校(閑職のベタ金)とその腰巾着が右から左に動かせるものでは無かった。

 だからこそ用意されていたのが第1特別部隊であった。

 

「真面目な奴らは大変だ」

 

 エヴァンゲリオンに肯定的な兵士は肩を竦める。

 現実的な(宗教への幻想を失った)彼は元精鋭部隊に所属していた。

 だが任務で負傷し、休養配置として第1特別部隊に配属されていたのだ。

 同じような人間はそれなりに配置されており、第1特別部隊はそれなりの部隊となっているのだった。

 

 警報が鳴る。

 人類補完計画の発動まで10分を切った事を告げるモノであった。

 

「仕事の時間だ!!」

 

「急げ急げ! 所定の場所に集まれ!!」

 

「点呼を忘れるなよっ!?」

 

 部隊の背骨、先任下士官たちが声を張り上げていく。

 その多くは人類補完計画が何であるか理解しているとは言い難かったが、大災害(セカンドインパクト)以降の混乱期で軍歴を重ねて来たベテランである。

 何食わぬ顔で、整列し、待機命令を出していた。

 不測の事態に備えてである。

 とは言えソレは戦闘では無い。

 高空偵察によって、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機を中心にした直径20Km程の場所に不審な人間の集団、或いは戦車などの装備が無いのが確認されているのだ。

 であれば、後は()()()()と言う仕事を終えた部隊を無事に基地に戻すのが仕事となる。

 それだけの話であった。

 

 

 周囲の人間の動きなど意にも介さぬとばかりに、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機が起動した。

 目に火が点った。

 固定されていたクレーン類が離れ、片膝をついた駐機姿勢から立ち上がる。

 人類補完計画が始まるのだ。

 

 

 国連軍アラビア方面軍第1特別部隊の誰もが、各集合場所から呑気に第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機を見ていた。

 その呑気な気分が、悲劇の引き金となる。

 人類補完計画は地球の地軸を1999(セカンドインパクト)年以前に戻す作業である。

 その為に、都合12機のエヴァンゲリオンがA.Tフィールドを全力で展開するのだ。

 4機のエヴァンゲリオンが過負荷運転(オーバードライブ)を同調し強大なA.Tフィールドを生み出し、地球を動かす。

 そして、4機のA.Tフィールドを同調戦闘(RAID-GIG)システムで調律し、地球を守る8機の第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン。

 それらは説明されてはいた。

 だが理解出来ていなかった。

 否、実感を持てなかったと言える。

 8機の第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンで調律して地球を守らねばならぬ程に、4機のエヴァンゲリオンによるA.Tフィールドは強大であると言う事を。

 その(暴力)が今、顕現する。

 

 大地が揺れた。

 空が轟々と啼いた。

 巻き上がった砂が視野を白く染めていく。

 正に世界の異変。

 判らぬモノにとってソレは、世界終焉であった。

 そして神を信じる者にとっては、()()に他ならなかった。

 

 第1特別部隊の誰かが悲鳴を上げた。

 砂塵を振りまく風がかき消した。

 誰かが神の名を唱えた。

 大地の軋みに紛れた。

 だが、誰かが銃を撃った音だけは不思議と多くの人間の耳に届いたのだ。

 只の人の武器。

 AK-47とも呼ばれる小銃。

 その筒先が向けられていたのは第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機だった。

 

 後の調査によってソレは宗教的情熱は勿論、何らかの意図をもって行われた凶行などでは無く、単純な、恐怖による行動であったと判る。

 不幸であった事は1つ。

 最初に発砲した人間が、戦場でも無いのに自身の小銃に実弾が装填された弾倉(マガジン)を挿していた愚か者だったと言う事だ。

 

 1発目の銃声によって箍が外れたかのように、多くの人間が小銃を第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機に発砲した。

 酷い者になると、戦車砲すらも発砲していた。

 正に集団による恐慌(パニック)であった。

 

 尚、第1特別部隊の全ての人間が加わった訳では無く、大多数の人間は暴走する人間から逃げる様にしゃがみ込んだり、或いは可能な人間は遮蔽物に逃げ込むのであった。

 

 

 

 正に人類にとって乾坤一擲となる人類補完計画が始まって早々に上がったディピカ・チャウデゥリーの悲鳴。

 そして、現地からの第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機が攻撃を受けたとの報告は、NERV本部第一発令所に混乱を与えた。

 理解出来ない。

 意味が解らない。

 都合14体との使徒との戦いの場に挑んだ、歴戦と言って良いNERVスタッフであったが、エヴァンゲリオンが人間に攻撃されると言う事態は想定外であった。

 テロで狙われるとしても、それはNERVの施設であり、或いは適格者(チルドレン)であろうと考えていたのだ。

 それが、エヴァンゲリオンが攻撃されていると言う。

 それも護衛部隊(第1特別部隊)からである。

 意味が解らぬと混乱するのも道理であった。

 

 そこに更なる悲報 ―― 悲鳴が届いた。

 警報が鳴り、緊急事態(Red Alert)の文字が第一発令所各部のディスプレイに映し出される。

 使徒戦役の際にも出なかったNERV本部始まって以来の第1級非常事態警報だ。

 

エバー204(第2期量産型エヴァンゲリオン4号機)!?」

 

「ちっ、違います! 201、202、203__ ぜ、全機です!!」

 

「ハァ!?」

 

 伊吹マヤのヤケクソめいた叫び。

 それが示した全てとは、人類補完計画に投入されている第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン7機全てだと言う事だった。

 否、7機だけではない。

 エヴァンゲリオン8号機、マリ・イラストリアスも悲鳴を上げているのだ。

 甲高い幼子の声で、身も世も無い悲鳴は耳では無く心に刺さるモノであった。

 同調戦闘(RAID-GIG)システムに繋がった8機全てのパイロットが苦悶していた。

 

「葛城大佐! 危険ですっ!!」

 

 怒鳴り声。

 その声を上げたのは、第一発令所に増設した人類補完計画向けの(コンソール)に着いていた技術開発部のスタッフだった。

 反射的に判っていると返そうとした葛城ミサトであったが、何とか踏みとどまった。

 何故なら怒鳴った技術開発部スタッフは第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンに関わっていないからだ。

 人類補完計画で重要な、A.Tフィールドの空間係数を観測し報告する事を任務としているスタッフであった。

 それが意味するのは更なる非常事態だ。

 

「何があったっ!?」

 

 ギラギラとした目で、言葉よりも視線で射抜く様に吠える葛城ミサト。

 だが技術開発部スタッフも負けてはいない。

 

「空間係数が無茶苦茶になってます!!」

 

 A.Tフィールドは、その全てを人類が理解している訳では無い。

 故に、扱いには細心の注意が必要とされていた。

 特にNERV本部スタッフは注意していた。

 誰もが、何人もの人間が消えてしまった第15使徒戦の惨劇を忘れて居なかったのだから。

 

「………っ」

 

 舌打ちをする葛城ミサト。

 或る意味で当然の話であった。

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンによるA.Tフィールド調律班の状況は南極のA.Tフィールド同調班には伝えられていない。

 状況の進行が速すぎて、誰も気を回していなかったのだ。

 だからこそ、碇シンジたちは当初予定通りに4機のエヴァンゲリオンの同調して強力なA.Tフィールドを作し続けていたのだ。

 最悪と言って良い事態と言えた。

 

 人類補完計画の緊急停止。

 その単語が葛城ミサトの脳裏に踊った。

 が、即座に口には出せなかった。

 人類補完計画は莫大な予算と手間を掛けて準備されており、如何な葛城ミサトとは言え簡単に停止と言えるモノでは無かったのだ。

 そもそも、発動した人類補完計画によって地球の地軸は少しずつ動き出しているのだ。

 惑星1つが動いているのだ。

 慣性まで乗っており、物理的にも簡単に止める事が出来る筈もなかった。

 逡巡。

 対応を考える葛城ミサト。

 だがその間にも状況は悪化を続ける。

 

 悲鳴、怒号が交差する第一発令所。

 衝撃緩衝装置(ショックアブソーバー)があって尚も大きく揺れているその中央で、葛城ミサトは仁王立ちのままに歯を食いしばる。

 そして1度だけ目を瞑むり開くと、自身の後方で司令官席に座っていた冬月コウゾウに振り向く。

 その意図、意味を冬月コウゾウは誤認しない。

 静かに問う。

 

「止めるかね?」

 

「はっ。現状はまだ中止可能です。碇司令に至急連絡を」

 

 第一発令所中央の大画面に設定されていた時計(カウンター)は、事前に定められていた人類補完計画の中止可能時間内であった。

 甚大な被害が出る事が予想されては居るが、それでも強行するよりはマシ。

 葛城ミサトの決断。

 原因、或いは状況などへの興味の一切を切り捨てたソレは、使徒戦役によって培ってきた決断と行動に特化した(即断即決速攻の)指揮官たる姿であった。

 葛城ミサトは自分が罷免されるだろうと理解していた。

 だが、それでも世界をグチャグチャにしてしまうよりはマシ。

 シンジ達子どもの手を汚させるよりマシ。

 そう腹をくくっていたのだ。

 

 だが、葛城ミサトの決意に冬月コウゾウが応える前に、声を上げる人間が居た。

 ディートリッヒ高原だ。

 NERV本部に於いて、同調戦闘(RAID-GIG)システムの根幹を為すBモジュールに一番に詳しい人間だ。

 

「3分下さい」

 

 己の席から、そう叫んでいた。

 声は硬質となっていたが、その表情は常と同じような余裕が浮かんでいる。

 

「何とかなるの!?」

 

「任せて下さい。同調戦闘(RAID-GIG)システムの確認、原因が判りました__ 」

 

「原因の説明、今は結構。それより取り掛かって!!」

 

 進んでいる時計(カウンター)

 だがそれでも、中止不可能までは300秒以上あるのだ。

 ディートリッヒ高原の対応が失敗しても、中止する時間はある。

 そういう計算であった。

 

「了解」

 

 ディートリッヒ高原の指が信じられない速度で打鍵を始める。

 この状況の原因の把握、そして対応案は完成しているのだ、故に迷いは無い。

 

 調律班の壊乱は、ある意味で同調戦闘(RAID-GIG)システムが原因であった。

 同調戦闘(RAID-GIG)システムが余りにもBモジュールを介してパイロットを深く繋ぎ過ぎていた為、ディピカ・チャウデゥリーの心が他のパイロットにも()()してしまったのだ。

 攻撃による第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機の被害は少なからずあったが、同時に深刻なモノは無かった。

 人類補完計画の為にA.Tフィールドの全てを振り向けている第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン4号機であったが、それでも装甲は十分 ―― エヴァンゲリオンが持つ1万2千枚の特殊装甲は無いにしても高品位の均質圧延装甲で基幹部位(バイタルパート)は守られているのだ。

 当然の話であった。

 だが、機体(第2期量産型エヴァンゲリオン)が無事であっても痛みはある。

 そして衝撃もある。

 何より、人から攻撃されると言う恐怖がディピカ・チャウデゥリーの心を襲っていたのだ。

 その気持ちが同調戦闘(RAID-GIG)システムを介して調律班の他の7機に伝わり、同調戦闘(RAID-GIG)システムのネットワーク内部で増幅(エコーチェンバー)してしまったのだ。

 

 本来であればマリ・イラストリアスが調律班班長(ホスト機パイロット)として抑える役割を背負う部分があったのだが、如何せんにも()()()()()()

 人造適格者(ビメイダー・チルドレン)として戦闘行動に関しては訓練されており、痛みへの耐性などは得ていたのだが、痛みを感じた同僚の混乱(パニック)を抑える術までは得て居なかった。

 稼働時間、と言う意味でマリ・イラストリアスと言う少女は肉体の外見よりも更に幼いのだ。

 だからこそディートリッヒ高原は同調戦闘(RAID-GIG)システムのネットワークの情報伝達力を低下させ、調律班のパイロット間での感情の増幅を抑えようとしていたのだ。

 とは言え、機械的な対応だけで出来る話では無かった。

 だが切り札があった。

 

 鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機だ。

 エヴァンゲリオン8号機と同じ、純正のBモジュールを搭載したエヴァンゲリオンであり、同じように統率(ホスト)機としての役割を担えるのだ。

 だからこそ、ネットワークの調整を行うと共に役割をマリ・イラストリアスから鈴原トウジに交代させるのだ。

 

「後1分で準備が終わる。覚悟は良いかい?」

 

『何とかやって見せますわ』

 

 予備として待機していた鈴原トウジは笑って答えた。

 とは言え緊張感が無い訳ではない。

 それどころか世界を背負うと言う重責に、緊張感でガチガチになっている部分があった。

 だが、先任たるシンジを真似ていたのだ。

 上手く笑えているか、鈴原トウジには判らない。

 それでもシンジの様に笑って重責に立ち向かおうと考えていた。

 

「頼むよ」

 

 子どもが歯を食いしばって世界を背負おうとする事にやりきれない事を感じながら、ディートリッヒ高原は指を奔らせる。

 不甲斐ない自分への怒りが、その勢いを増させるが、その頭脳は冷徹であった。

 打ち間違いなどする事もなく終える。

 

「葛城さん!」

 

「やって!!」

 

 以心伝心で、許可を出す葛城ミサト。

 最後の一打を打つディートリッヒ高原。

 

 そして、鈴原トウジは吠える。

 慌てている8人の少年少女に向けて活を入れる。

 

『じゃかぁしぃわっ!』

 

 その声は咆哮めいていた。

 叫び。

 或いは怒声。

 それが同調戦闘(RAID-GIG)システムのネットワークを介して8人に心ごと伝わり、衝撃を与えた。

 誰もが一瞬、止まった。

 ある意味で、心の()()()

 それで同調戦闘(RAID-GIG)システムは一気に正常化に向かう事となる。

 

 

 状況の改善が始まる。

 地球を動かす程のA.Tフィールドは、調律班のエヴァンゲリオンによって安定性を取り戻す。

 世界が終わる様な振動が終息に向かう。

 

「見事よ、トウジ君」

 

 安堵の溜息めいて鈴原トウジを褒める葛城ミサト。

 だが、状況はまだ、最悪の始まりを迎えたばかりでしか無かった。

 青葉シゲルが叫んだのだ。

 最早叫ばれる事のないと思われていた言葉を。

 

パターン青(BloodType-BLUE)!?」

 

 焦り、恐怖、その他。

 様々な感情がないまぜになった青葉シゲルの言葉(One Word)であった。

 

「ハァッ!?」

 

 目を見開いた葛城ミサト。

 誰もがその言葉の意味を理解する前に、NERV本部が激しく揺れるのだった。

 

 

 

 

 

 


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