【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 NERV本部が使徒(BloodType-BLUE)を検知したその時、南極に居た4人の適格者(チルドレン)も又、異常を理解していた。

 

「なに?」

 

 綾波レイは遥かな声を聴いたかのように空を見上げた。

 

「あ”?」

 

 惣流アスカ・ラングレーは不快気に眉を顰め、目を細めた。

 

んだ()?」

 

 碇シンジは静かに左目を瞑り、右眉を跳ねさせた。

 

「おや?」

 

 渚カヲルは胡散臭さの混じらない驚きの顔で自分の両手を見た。

 

 4人の適格者(チルドレン)は、誰もが同じ瞬間に気付いていた。

 異変の地たるNERV本部(日本列島-箱根)から直線距離で2万Kmを越えようと言う場所であるが、距離など問題では無かった。

 A.Tフィールドがあり、A.Tフィールドで繋がっているからだ。

 4人の乗る4騎のエヴァンゲリオンは、それぞれが発した大出力のA.Tフィールドの波長を合わせ、共振させ、世界を覆っているのだから。

 

 物理的な壁であると共に、心の壁であると言われるA.Tフィールド。

 使徒(渚カヲル)の全面協力によってある程度の実態が人類でも理解出来始めた事で、シンジ達エヴァンゲリオンパイロットも又、A.Tフィールドをより深く使いこなせ始めているのだった。

 

カヲルサァ(カヲル君)?」

 

 シンジが渚カヲルの名を呼ぶ。

 同時にアスカも又、その名を呼んだ。

 

『渚、アンタ__ 』

 

 何が判っての事ではない。

 無意識の反応であった。

 何故なら、NERV本部と思しき場所で発生したA.Tフィールドの感覚が、渚カヲルの駆るエヴァンゲリオン6号機のA.Tフィールドに余りにも似ていたからだ。

 対する渚カヲルは2人の声に反応するよりも先に己の手を見ていた。

 黒を基調として青が入った渚カヲルのプラグスーツ。

 その手に異常はない。

 そして手を開いて閉じる。

 動きにも異常はない。

 それを確認して、顔を上げた。

 

『うん、僕じゃない』

 

 目には力があった。

 意志が宿っていた。

 

じゃっとな(そうなの)?」

 

『うん。僕じゃない、僕以外の(Adam)

 

 その言葉の意味をシンジ達が理解するよりも先に、新しいA.Tフィールドによる波紋が発生した。

 渚カヲルのエヴァンゲリオン6号機にも似たA.Tフィールドに重なる様に広がっていく。

 それはどこか懐かしい、優しさを感じてしまう様なモノであった。

 

「!?」

 

 だからこそ違和感を感じたシンジ。

 心に触って来る感覚。

 異常である。

 だが、シンジが何かを言うよりも先に、断じた人間が居た。

 綾波レイだ。

 

『貴方は私ではないわ。私は私。私は綾波レイ__ 』

 

 確固たる意志の言葉であった。

 不満げな、嫌そうな顔をしている。

 

『レイ、何か感じたの?』

 

 アスカにしては珍しい、曖昧模糊とした物言い。

 だが表情は真剣であった。

 A.Tフィールドと言う存在を言うのであれば、そうなってしまうのだ。

 言葉や理屈では無く、感覚であり(意志)の領域であるからだ。

 

『オカエリナサイって言われたわ』

 

『どこから?』

 

『私ではない(Lilith)。呼んでいたの、でも嫌』

 

Okay(いいわね)

 

 ニヤリと笑ったアスカ。

 他人は他人、自分は自分であると言うのはとても大切だと言うのだ。

 当然であると頷き返した綾波レイ。

 そこにはかつての人形めいた少女の姿は無かった。

 

 と、そこに大人が加わった。

 

Attention(傾聴してくれ)!』

 

 適格者(チルドレン)の会話を断ち切る様に強い調子で発された言葉、発したのは日向マコトだ。

 トリントン基地にあってシンジ達南極にあってA.Tフィールドを同調させる任を負った人類補完計画エヴァンゲリオン第1班(タスク1ユニット)の責任者だ。

 責任者としての仕事 ―― 情報をかき集めていたのだ。

 葛城ミサトやパウル・フォン・ギースラーと言った上位者の居ない状況で、押しつぶされそうな重責に、背筋を伸ばして耐えながら己の職責を果たしていく。

 大人の姿であった。

 但し、背筋は伸ばせても顔色は隠せない。

 そういう真っ青な表情で言葉を紡ぐ日向マコト。

 

『落ち着いてみてくれ。UNの偵察衛星が拾っているLive映像だ』

 

 前置きの後に表示された衛星軌道上からの第3新東京市、NERV本部周辺の映像。

 

「っ!?」

 

 思わす息を呑んだシンジ。

 シンジだけではない、アスカも、そして綾波レイすらも驚いていた。

 それ程の画像だった。

 平野の中に悠然と聳える山は特徴的なコニーデ山体であり、富士山以外には無い。

 第3新東京市のある箱根地方で間違いはない。

 だが、今、富士山よりも巨大な、真っ白な、人の様な何かをしたとてつもない巨大な存在が生えてきているのだ。

 

 頭は1つ。

 だが、顔の様なモノが2つ。

 体は1つ。

 だが、腕の様なモノが2対4本。

 

 異形の存在であった。

 ゆっくりと羽化する様に体を起こしていく。

 余りにも巨大であるが故に、ゆっくりとしている様に見えるが、その実、恐ろしく素早く動いていると言えるだろう。

 

『NERV本部との連絡は!?』

 

 アスカが問う。

 回答は非情。

 (ネガティブ)、だ。

 

『推定だがNERV本部は、あの存在、仮称ティーターンの中心部にある。通信は有線無線を問わず不可能。光学及びレーダーでも状況は把握できない』

 

『ティーターン、古の神って命名ね』

 

 洒落臭い、そんな表情で呟くアスカ。

 綾波レイは何とも言い難い表情でティーターンを睨んでいた。

 否、綾波レイだけでは無い。

 渚カヲルも同じであった。

 とは言えシンジも含めて意識の全てがティーターンに向けられている訳では無かった。

 今だ地球の地軸を動かす為の人類補完計画は継続中であり、4人は心をより合わせ、巨大なA.Tフィールドを紡ぎ出しているのだから。

 

『で、アレは何なの』

 

「そうだよ。どげんすっとな(どうすれば良いの)?」

 

 アスカの疑念。

 シンジの同意と問いかけ。

 NERV本部から突如として発生した使徒反応(BloodType-BLUE)と謎の存在ティーターン。

 シンジが悩まし気に確認するのも当然であった。

 敵であるなら討てばよい。

 だが、最後の使徒であった渚カヲル(第17使徒TABRIS)は人類に下っているのだ。

 である以上はティーターンを敵と即決し、討つ事は正しく無い。

 下った相手に確証も無く仕掛けるのは道理では無い。

 そう思う程にはシンジは冷静であった。

 

『………』

 

 口を噤んだままの日向マコト。

 情報が足りな過ぎていた。

 ティーターンが敵か味方かすら判らない。

 中でどうなっているかも判らない。

 日向マコトが指揮権を持つ戦力は南極の第1班(タスク1ユニット)、即ちNERVエヴァンゲリオン戦闘団の主力であるのだ。

 (スーパーソレイド)機関を搭載したFⅡ型装備(F型ステージⅡ)を持つ4機のエヴァンゲリオンは、その展開力も含めて考えれば()()()()とすら言える部分がある、現時点で人類最強の戦力()だ。

 だからこそ悩むのだ。

 

 ティーターンを敵と定め、第1班(タスク1ユニット)を討伐に投入するべきなのか。

 討伐をするとして、現時点で軽々しく投入してしまって良いのか。

 伏兵を想定し、第1小隊と第2小隊で分けて投入するべきではないのか。

 だがティーターンは余りにも巨大であり、分けて投入した場合、それは愚行(戦力の逐次投入)にならないだろうか。

 そもそもティーターンは敵なのか。

 現在実行中の人類補完計画を中断して大丈夫なのか。

 

 4人の適格者(チルドレン)、そしてトリントン基地の作戦指揮所に詰めている誰もが日向マコトを見ていた。

 その圧を、日向マコトは歯を食いしばって受け止める。

 歪んだ、笑う様な顔をしている。

 指揮官は責任を背負うものである。

 とは言え人類の存続と言うモノは日向マコトと言うまだ青年としか言えない若者が背負うには余りにも巨大な、重責であった。

 

『………』

 

 沈黙。

 即座に実行可能な、現実的な案を考え出せる人間は誰も居なかった。

 刻一刻と巨大化していくティーターン。

 その大きさは、優に衛星軌道を越えている。

 何かをするべきではないのか。

 致命的な何かをティーターンがする前に対応するべきではないのか。

 だが、ティーターンは本当に人類に害を与える存在であるのか。

 答えの出ない問題。

 

 苦悩する日向マコトに1つ、朗報が齎される。

 発信者はマリ・イラストリアス。

 第2東京市のNERV松代支部(ジャパンNERV)でMAGI2号と有線接続して同調戦闘(RAID-GIG)システムの中枢(ホスト)を担っているエヴァンゲリオン8号機からであった。

 

『トージと繋がったよ!!』

 

 それは同調戦闘(RAID-GIG)システムのお陰であった。

 開発者たる真希波マリは、同調戦闘(RAID-GIG)システムが高速戦闘にも対応出来るようにする為、従来の無線や有線による情報伝達では無く、エヴァンゲリオンが持つ固有の存在 ―― A.Tフィールドによる即時性の高い情報共有システムを開発、実装していたのだ。

 群体の様に繋がって戦う群狼戦闘能力(ウルフパック)の名は伊達や酔狂では無いのだ。

 ティーターンのA.Tフィールドに妨害され、直ぐに繋がる事は出来なかったが、

 

「でかした!!!!!」

 

 日向マコトは感情を爆発させていた。

 

 

 

 

 

 常には無い匂い、むせかえる様な硝煙の匂いが漂うNERV本部第一発令所。

 否、硝煙だけではない。

 著しい緊張感が溢れていた。

 第一発令所には今、通信機に齧りついて様々な情報収集や命令を題しているNERVスタッフ達と同時に、NERVスタッフや国連軍からの出向者など様々な肌の色や制服背広を着た人間達による即製の戦闘集団が詰めていた。

 戦闘集団は隙なく第一発令所の入り口に銃口を向け、通信をしているNERVスタッフを守る様にしている。

 非常事態(内乱)等では無い。

 何故なら、戦闘集団の中心には葛城ミサトが居るのだから。

 赤い制服(ジャケット)に紫色の血にも似た何かが返り血として浴びており、それは顔も同じであった。

 硝煙と共に彩っているソレを拭う事無く凛々しく仁王立ちしている。

 手に持っているNERVで正式採用されている非戦闘スタッフ向けの自衛用火器(P.D.W)であるFN P-90だ。

 M4や89式小銃などに比べて操作に癖があるが、戦闘訓練を十分に詰む時間の無いスタッフが非常時に扱うには火力と取り回しが良く、更にはコンパクトであるから収納性も高いとして採用された個人用火器であった。

 使う機会が無ければ良い。

 そう願われ、常日頃は鍵の掛けられた保管庫(ガン・ロッカー)に収納されていたのだが、今は予備の弾倉もろともに引き出され使用されていた。

 

 と、第一発令所の入り口で足音がした。

 即製の戦闘集団は、テーブルなどの雑多なモノで作った出来合いのバリケードに身を隠しながら緊張した面持ちで筒先を入り口に向ける。

 だが発砲する様な盛った人間は居ない。

 非常事態であっても、良く訓練された成果は人を裏切らない。

 唯一、指揮官としての立場(意地)から背筋を伸ばして立っている葛城ミサトの指示を待つ。

 影となっている入り口から声が上がった。

 

「サクラ! サクラ!!」

 

 合言葉だ。

 葛城ミサトも声を返す。

 

「サイタ! サイタ!」

 

「チューリップ!」

 

 ある意味で素っ頓狂な組み合わせであるが、それは警戒からであった。

 簡単な合言葉では真似られる危険性がある。

 だからこそ、であった。

 安堵する様に息を吐き、銃を下げる様に手で指示しながらも声を出す。

 

「撃つな。良いわよ」

 

 葛城ミサトの許可を得て、入り口から戻って来る武装した4人。

 第一発令所から出て周辺を確認しに出ていた周辺捜索班だ。

 国連軍からの出向者で、レンジャー徽章持ちであった為、他の人間がするよりはと志願し、3名ほどのスタッフを連れて第一発令所に繋がるエレベーターと非常階段まで確認していたのだ。

 

「ルート3、現状、クリアです」

 

 ()は居ないと言う。

 悪く無い報告であった。

 

「異音、それに異臭の類もありません。後、予定外でしたが第二発令所も確認しましたが無事でした。なので予備の弾薬を持ってきています」

 

 顎でしゃくって指したのは、4人の後ろから資材搬送用の台車(L車)に乗せられた大量の弾薬箱であった。

 ある意味、今、第一発令所で一番に必要なものであった。

 

「有難いわ」

 

 葛城ミサトも思わず相好を崩す。

 自身の持つFN P-90も、弾切れ寸前であったのだから当然だろう。

 

「気が利くわね。流石は精鋭(ナラシノバスターズ)かしら」

 

 軽口を叩きながら葛城ミサトは、国連軍で叩き込まれた仕草で手早く、一般的な小銃(アサルトライフル)とは異なる形状と位置にある弾倉を交換する。

 そして槓桿(コッキングレバー)を操作し、初弾を薬室(チャンバー)へと送り込む。

 最後に安全装置(セーフティー)を確認する。

 

「はははははっ、弾が無ければ戦えませんからね」

 

 銃が無ければナイフなどで。

 ナイフなどが無ければそこら辺の凶器として使えるモノで。

 それすら無ければ素手で闘う。

 そんな風格の漂う周辺捜索班班長(ベテラン)の言葉に、酷いジョークを聞いたものだと笑う葛城ミサト。

 正に歴戦の将校の態度であった。

 即製された戦闘集団は、多くが銃器を日常的に扱った事の無い人間であった為、そんな上の態度に何となく、安心するモノを感じていた。

 

 勿論、演技であったが。

 

ルート56(メインシャフト)には行けそうだった?」

 

 小声で確認する葛城ミサト。

 あまり良くない報告が帰って来るだろう。

 そういう事を想定した確認。

 無論、周辺捜索班班長も小声で返す。

 

()()()()()()()()()()()

 

 事実上、無理と言う返事だ。

 ルート56,メインシャフトとはNERV本部最下層秘匿区画(ターミナルドグマ)に繋がる道であり、そこにNERV総司令官である碇ゲンドウが居る筈であった。

 問題は、敵は、その地下から湧いてきていると言う事であろう。

 

「現時点で碇の救助は不可能。そういう認識で良いな」

 

 念を押して確認する様に言うのは冬月コウゾウだ。

 碇ゲンドウNERV総司令官が所在不明と音信不通となっている現状では、最上位の責任者と言えるだろう。

 とは言え冬月コウゾウ、組織運営は兎も角として荒事は不得手である為、現状では葛城ミサトに全権委任をしていたが。

 

「残念ながら」

 

「………そうか」

 

 嘆息する冬月コウゾウ。

 最後に碇ゲンドウと連絡が取れたのは1()()()()()の事だった。

 敵が発生する少し前、使徒パターン(BloodType-BLUE)をMAGIが検知した事を報告する為、最下層秘匿区画(ターミナルドグマ)へと緊急回線を開いた時であった。

 魂の抜け落ちた(漂白された)様な顔をしていた碇ゲンドウであったが、非常事態の報告を受けるや、即座に第一発令所へと戻ると言って回線を切った。

 それが最後であった。

 碇ゲンドウが第一発令所に戻るよりも先にNERV本部は電波や光学、その他の一切を通さぬ何かに閉ざされ、そして敵が発生したのだった。

 

「なに、碇の事だ。何とか生き延びていると信じよう。それよりも此方の問題だな」

 

 床に転がっている敵、その遺体と言うか残骸を見る冬月コウゾウ。

 それは人めいたナニカであった。

 服めいたモノも着ていない、白いノッペリとしたナニか。

 頭はあった。

 口もある。

 四肢も揃っていた。

 だが眼窩も耳も無く、体にも乳房や陰茎といった性器も無く男女すらも判らない。

 赤木リツコも調べて早々に匙を投げた、使徒(正体不明の物体X)と言われれば納得するナニカであった。

 それが大量に、大挙して発生して襲ってくるのだ。

 恐怖と言う言葉そのもの(コズミックホラー)であった。

 参謀として来ていたアメリカ人の国連軍将校などは、ゾンビ映画などと叫んでもいたが。

 

 だが救いはあった。

 比較的簡単に殺せる、と言う救いが。

 出現した際、銃 ―― 携帯の許されている高級指揮官たる葛城ミサトが咄嗟に腰に佩いていたH&K USPを抜いて対応した時、或いは青葉シゲルが咄嗟に椅子をぶん回して殴り飛ばした際に、実は格闘徽章持ちだった国連軍連絡官の日永ナガミが拳を振るった際、何れも簡単に絶命していた。

 だが、数が多すぎていた。

 1人2人と言う数では勿論ない。

 10や20ですら甘い。

 三桁にもなろうかと言う数字で、通路を埋め尽くす勢いで襲い掛かって来るのだ。

 殺せても殺される。

 囲まれ殺される。

 噛み殺される。

 体を千切り殺される。

 そう言う類の脅威であった。

 故に、敵はレギオン(群れ為すモノ)と命名されていた。

 

 実際、第一発令所でも少なからぬ人間が死傷していた。

 又、対応の遅れた第一発令所以外でも多くの被害が出ていた。

 更に最悪なのは、人類補完計画への備えとしてNERV本部に繋がっている地下シェルター群に一般市民が避難していたと言う事だ。

 敵がNERV本部を通過して地上に溢れようとした時、その経路に人が居る様なモノなのだ。

 最悪と言って良いだろう。

 だが現状、それ程の事 ―― 致命傷めいた被害に拡大してはいなかった。

 自爆(ヤケクソ)めいて葛城ミサトがNERV本部構造の多くのシャフトに硬化ベークライトを流し込んだというのも大きい。

 だが何よりもエヴァンゲリオンが居たからだった。

 エヴァンゲリオン3号機。

 人類補完計画の為としてジオフロントに配置されていた鈴原トウジの乗るソレが、A.Tフィールドをもってレギオンがジオフロントを超えて上に昇る事を阻止していたからだ。

 人間サイズのレギオンと戦う事は、全高40mに達するエヴァンゲリオンにとっては大変な事であったが、ソレを鈴原トウジは何とかやりこなしていた。

 その成果は、鈴原トウジの技量も大きい理由であったが、それ以上にエヴァンゲリオン3号機が装着していた装備のお陰であった。

 砲戦用のH型装備の最新モデル、H型装備第2形態である。

 景気づけにとばかり(広報用の写真撮影目的)に装着していたH号装備第2形態は、使徒襲来が終わって余裕の出来た技術開発局が、将来を見越して開発した実験的な装備であった。

 目的は()()

 将来的に想定されている、外宇宙からマルアハ(Adamの子)乃至はリリン(Lilithの子)が襲来した際に備えての事であった。

 使徒の能力を持った、人間サイズの敵、その群れである。

 無論、完成品と言う訳ではないのだが、それでも今のレギオン相手には十分であった。

 その上でエヴァンゲリオン3号機は巨大な燃料タンクを背負ってEW-31(フレームランチャー)を運用しているのだ。

 人間の範疇を出ないレギオン如きが対抗できる筈も無かった。

 エヴァンゲリオン3号機は最後の盾(デッチライン)として死と破壊とを振りまいていたのだ。

 その様、その塗装と相まって黒い悪魔めいていた。

 

 兎も角。

 レギオンが発生して1時間以上が経過していた。

 外、NERV本部や第3新東京市の外の状況は何も判らなくなっていた。

 通信も全て通らなくなっている。

 どうなっているか判らない状況。

 只、南極にはNERVエヴァンゲリオン戦闘団が居る。

 使徒の天敵とすら言えるシンジとアスカ(エースオブエース)が居るのだ。

 世界が滅んでいるなどあり得ないと、葛城ミサトは確信していた。

 

「状況改善の見込み、弾薬とて無限では無かろう」

 

「はい。現在、我々が動ける範囲の保管庫から弾薬をかき集めています。現状__ 」

 

 葛城ミサトは一旦、言葉を切る。

 そして周辺捜索班が回収してくれた弾薬の山を見て、先の戦闘で消費した分とを考える。

 

「3回は先ほどのレベルの襲撃に耐えられると思われます」

 

「3回か………再度確認する。第一発令所に籠城するのが最善なのだな」

 

「はい。開口部を減らしている現状では最善ではありませんが次善にはなります」

 

「最善は3号機の後方に下がる(地上に脱出する)事か」

 

 渋い顔で言う冬月コウゾウ。

 問題は、第一発令所はそれなりにNERV本部の深部にある為、その脱出行に際してレギオンの襲撃を受けた場合、集団が分断され各個撃破される可能性があると言う事だった。

 又、第一発令所はNERV本部の全てを管理する第7世代型有機コンピューターMAGIが設置されているのだ。

 第一発令所の放棄はNERV本部の放棄と同義であると言えるだろう。

 故に、簡単に選べる選択肢では無かった。

 

「ですので、今は耐えるべき時かと」

 

 支援は来る。

 救援は来る。

 確信をもって言う葛城ミサト。

 ある種、葛城ミサトのシンジとアスカへの信用は信仰めいた域に達していた。

 その狂信は、正しく報われる事となる。

 冬月コウゾウが何かを口にする前に、エヴァンゲリオン3号機の支援を行っていたNERVスタッフが大きな声を上げたのだ。

 

「葛城さん! 繋がりました!! 3号機の特殊回線(RAID-GIGシステム)です!!!」

 

「でかした!!」

 

 至誠天に通じるとばかりに葛城ミサトは莞爾に頬を歪めていた。

 尤も、冬月コウゾウから見れば(戦意の塊)めいた笑いであったが。

 NERVの反撃が始動する。

 

 

 

 

 

 

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