【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 蒼穹、それよりも更なる高みを駆け抜けるエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機。

 それは高度5万m以上の果て、宇宙(ソラ)に近い場所であった。

 何Kmにも及ぶ、流星の如くキラキラとした光芒を残して飛ぶ2機。 

 速度は、マッハと言う単位を使ってすら馬鹿馬鹿しい程の数字が出る速度となっている。

 FⅡ型装備(F型ステージⅡ)、そのα型の高機動型の名に相応しい力であり、同時にA.Tフィールドによる空気圧縮による熱を遮断できるがからこその力技(暴力)と言えた。

 とは言え、エヴァンゲリオンにもFⅡ型装備(F型ステージⅡ)にも航宙設備は搭載されていない。

 全環境対応能力こそあるが、本来は汎用人型決戦兵器。

 戦闘に投入される場所の限定された局地戦闘ユニットである為、広域での移動に必要となる自機の位置確認機能などが十分ではないのが実状であった。 

 にも拘らず真っすぐに日本列島、箱根地方、第3新東京市へと突き進めるのは誘導者(パスファインダー) ―― 先導する単段式宇宙輸送機(SSTO)あればこそであった。

 2機のエヴァンゲリオンよりも更に上、高度10万mの高さを往く特別観測機(バーミリオン1)が、詳細な進路情報を伝え、それを基に惣流アスカ・ラングレーが細かい進路を設定。

 そして碇シンジは、アスカの全てを信じてエヴァンゲリオン初号機を操っているのであった。

 

 南極から日本列島へと突き進む、赤い流星。

 人類の誰もがソレを見ていた。

 TVが、ソレが何であるかを伝えていた。

 故に誰もが、2人(エースオブエース)の活躍を願うのであった。

 だが、状況は人類の手だけで進むモノでは無かった。

 

 

 それは振動。

 地震。

 空震。

 そして最初に言葉があった。

 

― 我は(全にして一)なり ―

 

 それは声ではななった。

 音では無かった。

 只、伝わるナニかであった。

 

α(Adam)にしてω(Lilith)なり ―

 

 地球上の全ての人に伝わるナニか(言葉)であった。

 

― 全ての祖であり終焉である ―

 

 不安げに空を見上げる人々。

 空に居るのではない。

 何かを感じるのだ。

 

― 始まりと終わりを繋ぎ、世界を孵すモノなり ―

 

 動物たちすらも、空を見上げていた。

 或いは昆虫たち。

 魚すらもであった。

 地球の、生きとし生けるモノの全てが、2頭4腕2翼のソレを視ていた。

 恐れ慄いていた。

 

 

 だが畏れぬモノ、怯えぬモノも居た。

 

『どう思う?』

 

 尋ねるのはエヴァンゲリオン弐号機に乗ったアスカ。

 その表情に緊張感は無い。

 特別観測機(バーミリオン1)からの情報を基に、(全にして一)とやらを自称するナニカを()()()()()()()

 そうなのだ。

 エヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機が征く場所は、巨大な、全高1万mを超えそうな巨大な存在の遥かに高みなのだ。

 故に、巨大さは畏怖に繋がらない。

 神を気取ろうとしても地球に比べれば、月に比べれば、太陽に比べれば、宇宙に比べれば、ああ全く以ってチッポケな存在でしかないのだからだ。

 

 アスカが問いかけた先はシンジ。

 空力加熱によって生み出された高温 ―― プラズマに包まれているエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機は地上との電波による通信が不可能となっていたが、特別観測機(バーミリオン1)との情報連結(リンク)にも使われているレーザー通信が可能なのだ。

 特別観測機(バーミリオン1)との回線が距離の問題もあって不安定であるのに対し、至近距離であるが故に齟齬(タイムラグ)などそこには無かった。

 

 シンジは、アスカはアスカだよな。

 この非常時でもアスカらしい。

 そんな事を思考の端で思いながら答える。

 

「良く判らないけど、段平(マゴロクソード・ステージ2)なら切れると思うよ」

 

 断言するシンジ。

 FⅡ型装備(F型ステージⅡ)兵装架(ウェポン・ラック)に、お守り的に搭載されていたEW-12B(マゴロクソード・ステージ2)が役に立つと笑っていた。

 既にシンジの意識は戦闘に備えていた。

 どの様な事になっても対応できる平常心と、そして倒すまで喰らいついていくと言う戦意とが表情には充満しており、アスカ同様に緊張感は無い。

 

 そう、命令は発せられているのだ。

 エヴァンゲリオン8号機とエヴァンゲリオン3号機を介して行われた、短時間での葛城ミサトとの通信。

 エヴァンゲリオン部隊の指揮官として命令を発した。

 見敵必戦(Catch and Kill)

 ノイズの入った画面の向こう側で、葛城ミサトは断言した。

 既に対象はNERV本部内で人類に対して敵対的行動を行っており、第3新東京市に出現したモノは使徒に類されるモノであるが、第17使徒(渚カヲル)が代表する使徒とは違うと言いきっていた。

 そして、NERVの権限をもって対象を撃滅対象と認定したのだ。

 日向マコトがそれを手早く国連(第2新東京市)の安全保障理事会と人類補完委員会に上申し、決済を受けた。

 A-17条項の発令である。

 その時間、約5分。

 14度にも及んだ使徒との実戦が生んだ、呆れる程にスムーズさであった。

 

 かくして、神を自称したナニカは暫定的に18番目の使徒とナンバリングされた。

 第18使徒。

 そう定められればする事は1つしかないのだ。

 

『アンタもシンプルよね』

 

「そういうアスカはどうなんだよ?」

 

『接敵の際の、最初に一発をとっておきのにしてやろうって思ってるわよ』

 

「同じじゃないか」

 

『違うわよ』

 

 何時も通りのシンジとアスカ。

 そこに通信が入る。

 特別観測機(バーミリオン1)だ。

 

『よ、お2人さん。仲良くやってる所を悪いね』

 

 軽い口調、軽い雰囲気で話しかけて来る国連極東軍(Far East-Aemy)の機長。

 若いと言うよりも若々しい雰囲気をしている。

 だが、大災害(セカンドインパクト)の際の戦乱で実戦を経験している熟練のパイロットだ。

 国連極東軍(Far East-Aemy)では5本の指に入る撃墜王(エース)でもある。

 だが、そんな雰囲気を感じさせずに言葉を続ける。

 第3新東京市方面からの不明な電磁波を確認した、と。

 

『索敵、或いは照準用って事?』

 

『恐らくはね__ 』

 

 だから、と続ける。

 特別観測機(バーミリオン1)がエヴァンゲリオンの先に出る、と。

 

危なかど(危ないですよ)

 

『仕方が無いかな。第18使徒だけど一切が不明、第3新東京市周辺の部隊も交戦を開始してはいるけども、情報が上がって来るにはまだまだ時間が必要だからね』

 

 情報の収集と分析の柱となるのが第3新東京市周辺ではNERV本部第一発令所に置かれたMAGIであるのだ。

 MAGIは第18使徒の中にあって十分な通信は不可能となっている。

 これでは、収集した情報を短時間で整理する事など無理と言える。

 だからこそ特別観測機(バーミリオン1)は前に出ると言う。

 囮となる積りだった。

 既に日本列島が見えており、第18使徒もエヴァンゲリオンから認識出来ていた。

 であれば誘導(水先案内)は不要。

 その先の戦闘の為の情報収集に当たろうと言うのだ。

 

「………」

 

『………』

 

 その危険性を想像し、シンジとアスカは口を噛みしめた。

 使徒は危ない。

 エヴァンゲリオンに任せろ。

 そう言うのは簡単であった。

 だが言えなかった。

 使徒の持つ危険性(初見殺し)の恐ろしさを知悉するが故に、事前情報の収集の重要性を理解するが故の事であった。

 

『こう言っちゃなんだけどさ、こう見えて俺、結婚しててね。子どもも居るんだ。女の子なんだけど、未来が欲しくてね。だから、頑張ってくれよ__ 』

 

任せっくいやい(任せて下さい)

 

 シンジの言葉に、莞爾と笑う特別観測機(バーミリオン1)の機長。

 そしてアスカの敬礼に軽い仕草で答礼をして通信を切った。

 静寂に包まれたシンジのエントリープラグ。

 

 信念を、漢の意地を、親の矜持を見た。

 NERVに関わる大人たちの多くは、こういう人達だと改めて思うシンジであった。

 

『シンジ………』

 

「うん、アスカ」

 

 多くの言葉は要らない。

 シンジはアスカの目を見れば判った。

 戦意が滾った顔。

 それは笑顔。

 アスカは笑っていた。

 緊張その他、無駄な力の抜け落ちた笑みだ。

 そしてシンジも笑っていた。

 ()意。

 預かった事を背負い、そして果たす。

 そういう顔であった。

 

 

 

 加速しながら第18使徒の場所へと降りていく特別観測機(バーミリオン1)

 残っていた燃料を最大に吹かして加速していく。

 その様を脅威と捉えたのか、第18使徒はその双貌を仰ぐ様に動かす。

 

― 抵抗を図るか、Lilithの子たるリリン ―

 

 男性の様に見える顔。

 女性の様に見える顔。

 その2つで特別観測機(バーミリオン1)を捉える。

 

― 逆らうのであれば神罰を与える ―

 

 2つの顔、その口が開いて光る。

 レーザー兵装(プルトンビーム)だ。

 空に走る2つの光轍。

 だが、ソレが特別観測機(バーミリオン1)を捉える事は無かった。

 馬鹿げた速度の儘に、機体を翻したからである。

 単段式宇宙輸送機(SSTO)と言う性質上、航空機として言えば非常識なレベルの強度のある構造を採用していたお陰での事であった。

 10G所では無い重力加速度が掛かり、機長以外は胃袋がひっくり返りそうな顔をしていたが機長は笑っていた。

 

「機長!?」

 

 ひっくり返りそうな胃袋を呑み込んで叫ぶ副機長(コ・パイロット)

 その悲鳴を笑って聞き流しながら、機体を操る。

 

「大丈夫、何とかするって」

 

 緊張の色など無い声色。

 呆れる様な実戦経験を持ち、鼻歌交じりでスタント飛行(アクロバット)を遊びにする様な人間にとって、威力はあっても精度の粗い攻撃は脅威の内に入らなかった。

 2度、3度と機体をロールさせ、第18使徒の攻撃を避ける。

 

「光学兵器、距離があると直線的過ぎるよな」

 

「もう、脱出しましょうよ!!」

 

「もう少しだ。子どもらの為にアレのベールをはぎ取りたいから ―― ミサイルの1つ、機銃も無いのが残念だ」

 

 喋りながら操縦桿を操り、手品の様に第18使徒の攻撃を避けていく特別観測機(バーミリオン1)

 

「機長ぉぉぉっ!?」

 

 

 

 

 

 威力偵察を行い、その上で生還(離脱)に成功した特別観測機(バーミリオン1)

 

「凄いね」

 

『何よアレ』

 

 純然たる感動を示したシンジに対してアスカの声に呆れの色が混じっているのは、特別観測機(バーミリオン1)がやった事の凄さの質が理解出来るからであった。

 NERVドイツ支部でエヴァンゲリオンの作戦訓練を受けていた際、航空部隊との連携訓練も行っていたのだ。

 だから判るのだ。

 アレが普通ではないと言う事を。

 

『シンジ。あんなの見せられて、何も出来ないなんて私は嫌よ』

 

 その1言でシンジはアスカの望む事を理解した。

 笑うシンジ。

 積極的である事は望むところであるからだ。

 

「やる?」

 

『やる!』

 

 アスカの指が動き、エヴァンゲリオン初号機に最新の飛行ルートと攻撃案が送られて来る。

 エヴァンゲリオン弐号機と共に、真正面から高速で一撃を喰らわそうというのだ。

 実に積極的、攻撃的であった。

 

「なら、同調は僕が」

 

『調整はアタシが』

 

 A.Tフィールドの同調による威力の強化。

 そして、過度に突入し過ぎない為の調整。

 第18使徒に接触した時点までが最高速で、それから30㎞程で減速出来る様にするのだ。

 現在、全高が凡そで35kmに成ろうかと言う第18使徒の巨躯。

 その9割を消し飛ばしてやろうと言うのだ。

 

「やろう」

 

『やるわよ』

 

 更に加速する2機のエヴァンゲリオン。

 第18使徒の直上に移動し、そのまま一気に逆落としにする。

 鏡写しの様な姿勢となるエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機。

 揃ったつま先の先には幾重にも重なったA.Tフィールドが展開される。

 

 圧縮空気による過熱。

 灼熱化したA.Tフィールド。

 プラズマを纏うが如きその姿。

 天から大地へと振り落とされる鉄槌。

 その様、正に太陽が落ちていく(ソーラー・フォール・ダウン)が如き威風を持っていた。

 

― 抵抗を赦さぬ ―

 

 第18使徒の迎撃。

 口からのレーザー兵装(プルトンビーム)が空を焼き、エヴァンゲリオンを打ち倒そうとする。

 直線軌道となっている2機のエヴァンゲリオン避ける術はない。

 そして誘導するアスカに避ける気はない。

 自分とシンジが同調し強化したA.Tフィールドに絶対の自信を持っているが故の事であった。

 慢心では無い。

 判るのだ。

 A.Tフィールドを深い所まで理解出来たアスカには、何となく、己のA.Tフィールドと他者 ―― 第18使徒のA.Tフィールドの強度差と言った事が。

 故に、絶対の自信をもって吶喊する。

 

 寸毫の間。

 そして衝突。

 

 果たして、結果はアスカの思った通りであった。

 シンジとアスカの同調し強化されたA.Tフィールドは第18使徒のレーザー兵装(プルトンビーム)を真っ向から蹴り飛ばしていた。

 四散する光線。

 否、光すらも消し飛ばし、その光塵をも巻き込み、流星の如く墜ちゆく2機のエヴァンゲリオン。

 

「キィエェェェェェ!!」

 

『フラァァァァァァ!!』

 

 シンジとアスカの咆哮が、A.Tフィールドを更に強化する。

 加速する。

 

― 赦さぬ ―

 

 第18使徒もまた、吠える。

 2対の腕と1対の翼を天に振り上げ、六芒星めいた形でA.Tフィールドを展開する。

 

― 赦されざる ―

 

 吠える第18使徒。

 笑いながら吼えるシンジとアスカ。

 

「ェェェェェェェ!」

 

『ァァァァァァァ!』

 

 激突。

 光芒。

 太陽が生まれた。

 

 4腕2翼双貌、そして上体と派手に吹き飛ぶ第18使徒。

 2機のエヴァンゲリオンの爪先がその体を削っていく。

 だが、第18使徒もそこで終わる事は無かった。

 10km程が削られた辺りで、吹き飛んだ体を一気に集約させる。

 焦点は勿論、2機のエヴァンゲリオンだ。

 

「あっ」

 

 見ていた誰もが声を漏らした。

 旧東京都域に展開していた国連極東軍(Far East-Aemy)部隊の将校は日記に、この様をエヴァンゲリオンが喰われたが如しと書き残していた。

 

 

 

 

 

 




 2024年
 新年、明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。
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