サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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風向きを気にすれば種は蒔けない
雲行きを気にすれば刈り入れはできない

――旧約聖書     









参) ANGEL-05  RAMIEL
03-1 Alt Eisen


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 NERVアメリカ支部にて建造中であったエヴァンゲリオン4号機のNERV本部輸送のスケジュールが正式決定すると共に、エヴァンゲリオン零号機は試作機としての役割を終える事となった。

 代わりに、試験機(技術開発局の玩具)であると共に予備機(パーツ取り機)としての役割を得る事となる。

 適格者(パイロット)2人に3機のエヴァンゲリオン。

 更に将来的には適格者1名と1機の実戦用エヴァンゲリオンが加わる予定なのだ。

 これで作戦局は、第3東京市での運用に限れば余裕が出来ると安堵していた。

 

 だが、技術開発局としては安穏としていられる訳では無い。

 先ずはエヴァンゲリオン零号機の、起動実験失敗時に行われた凍結処置が解除、そして運用可能な状態への改修工事が行われる事となっているからだ。

 否、既に凍結解除処置は行われている。

 非常用の特殊ベークライトでの拘束は解除されており、エヴァンゲリオン零号機は、改装作業用の格納庫(ケージ)へと移されていた。

 エヴァンゲリオン初号機での運用実績を基に解析したお陰で、失敗した起動実験の原因を特定する事が出来ており、それに基づいた改修が行われていた。

 併せて、火器管制システムの設置や戦闘用装甲の取り付けなど多岐に渡る改修も実施されている。

 技術開発局の第1課、所謂E担当(エヴァンゲリオン)課は何とも忙しい事になっていた。

 

 その忙しい最中にあっても、決して手を抜けない事があった。

 適格者たち(チルドレン)の訓練である。

 剣術の修練は積んでいても、射撃装備なども含めた近代的な戦闘訓練を受けていない碇シンジ。

 此方はある意味で問題は無かった。

 第3と第4、使徒との連戦にて戦闘の勘所(コンバット・センス)を理解している事を実証していたのだから。

 問題はもう一人の適格者(チルドレン)、綾波レイである。

 色素の薄さが存在感の薄さ ―― 自己主張の儚さに繋がる様な、美少女と評して間違いの無い少女は、今まで開発スタッフの一員としての教育と訓練を受けていた。

 それが、戦闘スタッフとしての訓練へと変わるのだ。

 それは簡単な事では無かった。

 銃器その他の使い方は、その開発に携わっていたので理解はしていた。

 だが、それが同時に(イコールで)戦えると言う事を意味する訳では無いのだから。

 だがやらねばならぬ。

 それはNERV本部が対使徒戦闘集団へと変容するのと、ある種、軌を同じにしているとも言えた。

 

 

 

「で、どうなの?」

 

 問いかけたのは赤木リツコ。

 字面だけで言えば冷たい響きがあったが、実際には、常日頃の鋭利さがぼやけた様な疲労の色が乗った言葉であった。

 眠気を煙草(ニコチン)コーヒー(カフェイン)で散らし続けて居るが故に、目元にはどす黒いクマが出来ていた。

 技術開発局の局長として、エヴァンゲリオン4号機の受け入れ作業まで管理監督しているのだ。

 忙しさは今のNERV本部で一番であるとも言えた。

 そんな赤木リツコが問いかけたのは、作戦局の葛城ミサトであった。

 問いかけた内容は1つ。

 NERV本部を統括管理する第7世代型有機コンピューターMAGIが構築した仮想空間でのデジタル演習にて交戦訓練を行うシンジと綾波レイの事であった。

 赤木リツコは軍事的素養に関する教育を受けていない。

 そうであるが故に、デジタル演習の管制室モニターに表示されている情報からの意味が読み取れないのだから。

 とは言え、それは職務からの質問と言う訳では無かった。

 デジタル演習は作戦局が主導しており、技術開発局は第1課が協力しているだけである為、正直、赤木リツコ(局長級スタッフ)が詰めている必要は無いからだ。

 又、それは葛城ミサトにも言えていた。

 デジタル演習は通常業務の一環として行われている為、作戦局第1課課長であると共に局長代行でもある葛城ミサトにとっても手離れさせた仕事であるのだ。

 作戦局第1課の係長である日向マコト少尉が音頭を取り、技術開発局第1課の課長補佐である伊吹マヤ少尉が中心となって支えている業務とも言えた。

 

()()()って感じ?」

 

 少しばかり軽い感じで返す葛城ミサト。

 此方は手に持ったコーヒーを楽しむ余裕がある。

 ある意味で気楽な立場故であろうか。

 それを赤木リツコは咎めない。

 彼女とて、ある種の気分転換にこの演習を見に来ていたのだから。

 

「というと?」

 

 2人の前にあるディスプレイには、仮想空間内で激しくぶつかり合うエヴァンゲリオン初号機と4号機の姿が映し出されていた。

 エヴァンゲリオン初号機は大型で刀状の武器 ―― EW-14(ドウタヌキ・ブレードⅩⅢ)を振り回している。

 対して銀色のエヴァンゲリオン4号機はEW-22B(銃剣付きパレットガン)を乱射している。

 最初からエヴァンゲリオン同士の戦いをやっていた訳では無い。

 デジタル演習開始時は再現した使徒との交戦(戦闘訓練)が行われていたのだが、再現された使徒の挙動が画一化している(ワンパターンであった)為、これでは訓練として効果的では無いとの批判(クレーム)が作戦局第1課から上がった結果であった。

 そして実際、人間同士での戦闘(Player vs.Player)の方が戦闘で機知を働かせ、考える ―― 効果的な訓練となる要素が大きかった。

 シンジも綾波レイも必死になって考えて戦っている。

 だが、戦いは一進一退とはなっていなかった。

 シンジの猛攻に、綾波レイは対応するだけで精一杯と言う有様であった。

 射撃による牽制をしながら距離を取ろうとしているが、機を見ては突貫されて、銃剣で抵抗しようにも勢いの差で抗しきれないと言う塩梅だ。

 

「レイはチョッチ、冷静過ぎるって事ね」

 

「冷静なのは良い事じゃないの?」

 

「冷静自体は良いわよ? 只、冷静過ぎて状況を見すぎてしまう感がね、あるのよ」

 

「?」

 

「慎重である事は大事。だけど慎重すぎると(チャンス)を失うわ。何事もそうでしょ?」

 

 シニカルに笑う葛城ミサト。

 研究も投資も、或いはモノを買う時や男女仲でも、みんなそうだと言う。

 戦場で臆病である事は大事だけれども、慎重が過ぎるのも問題であると言う。

 その事に感じる所のあった赤木リツコは、少しだけ渋みのある顔で頷く。

 

「中々に、実体験に基づく含蓄がありそうね?」

 

「やーね。一般論よ、一般論?」

 

「大学時代とか?」

 

 ボソッと言う赤木リツコに、目が泳ぎ出す葛城ミサト。

 そんな管理職の会話(戯れ)を背に、デジタル演習は加速していく。

 踏み込むエヴァンゲリオン初号機。

 距離を取ろうとするエヴァンゲリオン4号機。

 最終的に、戦闘時間が長期化した事で綾波レイの集中力が低下、そこを察知したシンジが一気に飛び込んでの打ち込みを果たし、決着が着く事となる。

 袈裟懸けに真っ二つになったエヴァンゲリオン4号機。

 

「戦績は?」

 

「7勝1敗、1引き分けってトコ」

 

「これが最初の1敗じゃないわよね」

 

「そ。だから少し休憩ね。ぶっ通してで2時間だもの。レイが集中力を失うのも当然だわ。日向君、2人に上がる様に伝えて。休息は、昼休憩も込めて3時間の方向で。皆も、手持ちのデータを打ち込み終わったら、めいめいが休憩取って頂戴ね」

 

 後半は、赤木リツコでは無くデジタル演習統括の日向マコトに伝える。

 本来であれば葛城ミサトが嘴を挟む話ではない。

 だが、生来の真面目さ故か日向マコトには根を詰める所があるので、こうやって管理する必要があったりもするのだ。

 有事は兎も角、平時であれば休息による体調(コンディション)管理も大事な仕事なのだから。

 

「はい!」

 

 

 

 休憩。

 L.C.Lは体調調整効果も持っては居るが、それでも2時間から浸かりっぱなしとなれば疲労感が出て来る。

 特に、露出している顔周りや髪は何とも言えない不快感が出て来る。

 それをシャワーでさっぱりと流したシンジは、昼飯でも食べに行こうかと食堂に向かおうとした。

 料理が1つの趣味になっているシンジは、常日頃は自分で作った弁当を持ってきていた。

 だが、通日でエヴァンゲリオンの試験や訓練をする日などは流石に億劫であり、その限りでは無いのだった。

 昼からもエヴァンゲリオンに乗る(L.C.Lに浸かる)とあって、食事は軽めの方が良いかと思いながら通路を歩いていたシンジ。

 それを止める声。

 

「お疲れ様♪」

 

 ニコニコ笑顔の葛城ミサトだ。

 そこにシンジは、何か微妙な臭いを感じた。

 何かを腹に抱えている感じ、とでも言うべきだろう。

 シンジから見て葛城ミサトは悪い人間では無い。

 悪い人間では無いのだが、時々、その善意(行動力の空回り)から、面倒くさい事をする事があるのだ。

 

「良かったらお姉さん達とご飯しない?」

 

 ()と来た辺りで、面倒事確定である事を理解した。

 そこで無駄とは思いつつ1つのアピールをする。

 ご飯を持ってきてない。

 

食堂へたもいけ行っで、後にしてもらえんけ(ご飯の後では駄目ですか)?」

 

 だが残念、上司からは逃げられない。

 ジャン! とばかりに自分のIDカードを見せる。

 NERV本部敷地内であれば、電子マネーの支払いも出来る優れものだ。

 全て給与からの天引きで買える上に、設定された限度額以上は自動的に翌月に繰り越されると言う優れものだ。

 当然、中佐相当の給与を貰っている葛城ミサトの支払い能力はド高い。

 

「そこは任せて貰って良いわよン。奢っちゃうから」

 

わかいもした(ではお願いしますね)

 

 

 

 葛城ミサトに連れて来られたのは、高級士官用(佐官以上向け)の歓談室である終わらないお茶会(A Mad Tea-Party)だった。

 初めて入るシンジは、一般の質実剛健さが表に出ているNERV本部施設とは異なった豪奢な内装に呆れにも似た表情を見せていた。

 真っ白なクロスの掛けられたテーブル。

 椅子もソファーめいている。

 壁には絵画が掛けられており、窓にはクロスオーバースタイルのレースカーテンが用意されている。

 何とも欧州的趣味が出ているが、稀に国連軍から派遣されて(出張して)来ていた非自衛隊系の佐官級以上の将校からは好評であった。

 

 特別扱いは料理にも及んでいる。

 専用のキッチンは流石に無いが専用のメニューは用意されており、一般食堂で調理して持ってくるものとされていた。

 無論、その分価格(サービス費)は高くなっている。

 佐官級の給与が無ければ満喫できない場所とも言えた。

 そんな場所で、物珍し気に内装を見ながら4人テーブルに着席するシンジ。

 葛城ミサトが洒落た手書きのメニューボードを差し出して来る。

 

「何を頼んだって良いわよ?」

 

 メニューの値段と、それを意にも介していない葛城ミサトの太っ腹ぷりに呆れつつシンジは、ボリューム感のあるクラブハウスサンドのセットを選んでいた。

 セットはフレンチフライ(ポテトフライ)とコーラだ。

 欧州よりもアメリカンな料理ではあるが、この手のパンチ力のある食べ物を望む将校も多い人気メニューであった。

 当然、葛城ミサトも好んでいた。

 

「良いのを選んだわね、それ美味しいわよ?」

 

 日中は配置されている、NERVの制服の上に純白のエプロンを付けた従卒(メイド・ガイ)に注文を出す葛城ミサト。

 だがシンジの意識は、そちらを向いていない。

 2人掛けのテーブルもあるのに、この大き目の4人テーブルが選ばれた事に、誰かが来るのだろうし、それが()()なのだろうと勘案していた。

 果たして、注文が終わった頃に赤木リツコがやってきた。

 

「お待たせ」

 

 赤木リツコは1人では無く、綾波レイを連れている。

 それが本意では無いというのは、綾波レイの整った、アルビノ故の色素の薄さから冷たげに見える顔がほんの少し不満げに歪んでいる事で判る。

 大人組が気を利かしたのだ。

 シンジと綾波レイが交流できる場の用意だ。

 2人には対話が必要と言う判断だった。

 

 先ずは食事。

 肉っ気の多いシンジに対して、綾波レイは肉無しが良いとリクエストした為、フランスパン(ガーリックトースト)ジャガイモのスープ(ヴィシソワーズ)となった。

 とりあえず黙食。

 他人の顔色を窺わないシンジと我が道を行くタイプの綾波レイ。

 そんな2人で、しかも距離があるのだ。

 そりゃ、そうなると言うものであった。

 食事を一緒にすれば勝手に仲も少しは良くなるだろう、そう当て込んでいたのに少しばかりアテが外れたと言う表情の葛城ミサト。

 そんな友人(マブ)をブザマねと言わんばかりの表情を見せる赤木リツコであった。

 

 

 大人の下心など意にも介さぬと言う風であった子どもたちであるが、食後は意外な展開を見せる事となる。

 対話だ。

 それぞれの手に緑茶と紅茶を持って言葉を交わす。

 

「どうして叩いたの?」

 

 初手は綾波レイであった。

 ティーカップを置いて、シンジに真っ向から切り込む。

 内容は言うまでもないだろう。

 碇ゲンドウの事だ。

 

ひっぱたかんな、ならんかったでよ(叩かねばならない事をしたから)

 

「……どうして?」

 

 リアクションが少し遅れたのは、シンジの言葉(かごしま弁)を脳内で反芻翻訳したからであった。

 

つがんねぎをゆて(適当な理屈を言って)ひとをうごかそしたとがゆるせんかったがよ(命令してきたのに腹が立ったからだよ)そいも(しかも)ひっかぶいちゆたでな(最大限の侮辱をしてきた)

 

「……?」

 

よかな(良いかい)おいは乗るちゆた(僕はエヴァンゲリオンに乗ると言った)じゃっでかわりになぐらっしゃいちゆた(代わりに殴らせろと言った)で、あいはそいをうけいれたったが(それを碇ゲンドウは受け入れた)そひこんこっよ(それだけの話だ)

 

「…………ごめんなさい、言っている言葉が判らないの」

 

 困惑した顔を見せた綾波レイに、流石のシンジも苦笑いを浮かべる。

 湯呑で口を湿らせて、それからかみ砕く様に言葉をゆっくりと発する。

 

おいが殴らせちゆた(僕は殴らせろと言った)あいが殴られるちゆた(碇ゲンドウは殴らせると言った)そひんこっよ(それだけの話だよ)

 

「……そう」

 

 今度は理解出来た。

 シンジが叩かせろと言ったし、碇ゲンドウは受け入れた。

 そう言っている事を。

 でも、矢張り許せないものを綾波レイは感じた。

 だから真剣な目でシンジを睨む。

 その眼圧をシンジは受け止める。

 やられたらやり返す。

 だがそれは正義では無いと言う事を理解していたから。

 

 自分が納得できない事には(No!)を突き付けると決めていたが、別の視点に立った人間に無条件で受け入れられると思っては居なかったのだから。

 立場、主義主張、或いは利益の相違による対立なんて普通だからだ。

 だから綾波レイの怒りを、拒否しようとは思わないのだ。

 無論、受け入れる気は更々に無かったが。

 だが、フト、思い立って尋ねた。

 

おはんさぁは(綾波さんは)あいが大事やっとな(アレが大事なの)?」

 

「?」

 

碇ゲンドウよ。大事やっとな(碇ゲンドウが大事なの)?」

 

「……大事。絆だから」

 

絆ちな(絆、ね)

 

 中々に無い表現にシンジは、碇ゲンドウはやはり綾波レイを後妻に据えようとしているのではないかとの疑念を感じたのだった。

 NERVの総司令官と現場担当(パイロット)

 それ位しか接点(理由)が思いつかなかったのだ。

 

 シンジには手に持った湯呑の緑茶が、渋みを増した気がした。

 

 

 

 

 

 NERV本部、その地下にある技術開発局第1課の建物内で1つの新装備が完成しようとしていた。

 NERVドイツ支部から接収した情報を元に、EW-22パレットガンを強化した中遠距離用の火砲だ。

 全長で30mを超える超大型火砲。

 発展型パレットガン、EW-23パレットキャノン(60口径480mmレールキャノン)だ。

 通称はバスターランチャー(ビー・キャノン)

 葛城ミサト曰くの『使徒をぶっ飛ばす武器よ!』という言葉が由来であった。

 運用には専用のキャパシタを複数用意しなければならず、連続射撃も難しいが、同時に、条件さえ整えば第3使徒クラスの構造体であれば簡単にぶち抜く事が可能な大威力装備だ。

 

 多くの技術開発局第1課のスタッフが誇らしげに見上げている。

 

「何とか次の使徒までには間に合いましたね」

 

「後は試射ね。海にでも向けてやりますか?」

 

「伊吹課長補佐の話だと、日本重化学工業共同体(J.H.C.I.C)で管理している関東射爆場を借りる予定との事だ」

 

「ウチにエライ対抗心燃やしてませんでしたか、あそこ?」

 

「連中の玩具、ほれ例の首無し(ジェットアローン)。アレの開発に協力する対価に取り付けたとか言う話だ」

 

 日本政府の肝いりで防衛省と防衛企業が合同で開発を進めていた、対使徒人型兵器。

 それがJA(ジェットアローン)

 現在、NERV以外が開発した唯一の40m級人型兵器であった。

 正確には、その技術実証機である。

 

 問題は、実戦投入するには余りにも動作がドン臭いと言う事だろうか。

 そもそも使徒が持つ特殊防護能力(A.Tフィールド)を突破乃至は中和する技術が実現していないのだ。

 その意味では、対使徒等という看板を掲げるのは、無謀を通り越す話であった。

 だからこそNERVの技術開発局に属する人間は軽く見ていた。

 

「へー」

 

「使徒の残骸撤去に便利そうだって事で、運用(実稼働)試験を兼ねてウチが借りだす(レンタルする)って事になったんだとさ」

 

「あー、デカいブツ(使徒の残骸)2つですからね」

 

「Evaでやれれば良いのだろうけど、アレ、時間当たりの運用コストが金貨をばら撒く様なモンだからな」

 

 その嘆息は事実であった。

 エヴァンゲリオンは文字通りの金食い虫なのだ。

 特に今現在は、まだ確とした運用システムが構築されておらず、全てが手探り状態でやっているのだ。

 金が掛かって仕方がないと言うものであった。

 稼働には有線での電源供給を必要とする事もマイナスと言えよう。

 対してJAは、対使徒以外の局面を考えた場合、反応炉(ニュークリア・リアクター)を持つお陰で僻地でも長大な連続稼働能力を持っているのだ。

 ある意味でエヴァンゲリオンの支援機として有望な存在と言えるだろう。

 又、搭載されている反応炉の出力は、一般的な大型商用原子炉には劣るとは言え、十分な発電力を持っており、非常時のNERV本部の電源として期待できるのも大きい。

 

 この点に着眼した作戦局で話が纏まり、下からの提案に葛城ミサトが動き、そして碇ゲンドウが承諾したのだ。

 J.H.C.I.Cは当初、抵抗しようとしていた。

 当然だろう。

 NERVに対抗して開発していたものがNERVに持っていかれるなど言語道断であるからだ。

 だが、最終的には国連と言う権威と札束がモノを言った。

 莫大(エヴァンゲリオンに比べれば割安)な製造コストにJ.H.C.I.Cが悲鳴を上げてた点を、碇ゲンドウが巧妙に突いた結果とも言えた。

 又、第3と第4と経て続いた使徒の襲来を、比較的軽微な損害で乗り切れたお陰で、予算的に余力があったと言うのも大きい。

 結果、JAは完成披露どころか、完成前にNERVに派遣される事となったのだった。

 

 殆ど接収めいていたが、それでも共同開発であった。

 有能な技術スタッフまで駆り出す(派遣させる)と言う本音を隠す為の看板は大事であった。

 政治的正しさ、或いは欺瞞と言うモノは決して軽視されるべきモノではないのだから。

 

「人も来るんでしたっけ?」

 

「おお、開発支援って事もだしな。聞いてなかったか、仙石原の施設に受け入れる予定だ」

 

「あすこって、使徒の残骸を収容する予定じゃなかったでしたっけ?」

 

()()()()()?」

 

 目の前にニンジン(研究対象)がぶら下がっていれば、やる気もでるだろうと笑う。

 笑っていた。

 

 

 

 

 

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EW-14 ドウタヌキ・ブレードⅩⅢ

 

【挿絵表示】

 

 エヴァンゲリオン初号機の専属パイロット、碇シンジの要請を受けて開発された斬撃装備。

 当初はA.Tフィールドを展開して斬撃力を強化するマゴロク・E・ソードの開発が行われたのだが、強度不足の問題が指摘された為、急遽、開発された。

 プログレッシブナイフと同様に超振動によって相手を分子レベルで切り裂く能力を付与する予定であったが、使用時の衝撃で機能が故障する可能性が強く指摘された為、断念された。

 最終的には、重量と速度だけをもって相手を叩き切る質量兵器めいた装備として完成する。

 尚、ⅩⅢとは試作開始から13番目の、と言う意味である。

 当初は記録上では十三とされていたが、誰かがドウタヌキ+3(プラス・スリー)などと読んだ為に、ローマ数字に変えられたのだ。

 尤も、正式化ナンバーと数字が近く、紛らわしい為に、早々に消される事となる。

 

 

 

 

 

 


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