【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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第18使徒に喰われる形となったエヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機。
その喰われた先、そこは全てが白かった。
何も見えない。
視界は0mであり
だが、エヴァンゲリオン弐号機の惣流アスカ・ラングレーから見れば違っていた。
戦意過多と言えるが為、自分達は
巨体を誇る第18使徒であるが、であればこそ内側からの攻撃が有効になるだろう。
内側から食い破る。
そういう意気であった。
「シンジ! A.Tフィールドを!!」
声を張り上げるアスカ。
四方八方から迫る第18使徒のA.Tフィールドを正面から殴りつけ、中和してやろうというのだ。
エヴァンゲリオン弐号機だけでは無理だろう。
だが、エヴァンゲリオン初号機と一緒であれば、2機のA.Tフィールドをもってすれば不可能は無い。
そう考えていたのだ。
だが、その想定がひっくり返された。
「えっ……」
思わず、己の手を見たアスカ。
エヴァンゲリオン弐号機と手をしっかりと握り合っていた筈のエヴァンゲリオン初号機が、まるで手品の様に消えたのだ。
手を離した訳では無い。
フッと消えたのだ。
「シンジ!?」
慌ててレーダーを確認する。
「
罵るアスカ。
とは言え、罵っている相手は言葉と違いシンジでは無い。
シンジがミスをしたと思っている訳でもない。
直感したのだ。
第18使徒にさらわれたのだと。
「アンタはお姫様かっつーのぉ!!」
周囲の白い闇を吹き飛ばさんとばかりに、エヴァンゲリオン弐号機の手を振るい、乱暴にA.Tフィールドを放つ。
閃光。
白い闇よりも輝くナニカが、アスカの視野を埋め尽くした。
『おわっ!?』
誰かの悲鳴を無線が拾った。
エヴァンゲリオン専用回線、誰であるのかとかアスカが確認するよりも先にスイッチが切り替わった様な感触が襲ってくる。
それは、言わば目を閉じて開く、そんなコンマの隙間。
それで視野が開けた。
アスカの目の前に飛び込んで来たのは茶色 ―― 大地であった。
流石のアスカも顔が引きつる。
エヴァンゲリオン弐号機は頭っから真っすぐに地面に突っ込もうとしていたのだ。
それも全速力でだ。
「くぉっのぉっ!!!!」
360度、自在に回転出来る
視野一杯に広がる地面。
呆れる程のG。
振動。
悲鳴など漏らすモノかと歯を食いしばり、エヴァンゲリオン弐号機を操るアスカ。
その甲斐あって間一髪、エヴァンゲリオン弐号機はギリギリの所で地面に突き刺さるのを免れる。
噴射されている、物質化されたA.Tフィールドによって大地を荒らしながら浮かぶエヴァンゲリオン弐号機
「どこよここ」
第3新東京市まで降りたかと周囲を警戒しつつ、目の端で急いで高度計を確認する。
表示は、
慌てて周りを見れば見慣れた場所、NERV本部
「ハァ!?」
正に異常事態。
何が起こったのか、第3新東京市の地表部分を自分とエヴァンゲリオン弐号機はどうやって抜けて来たのか。
判らない事だらけであった。
木が、草原が吹き飛ばされたジオフロントの地表に、ゆっくりと着地するエヴァンゲリオン弐号機。
敵は、状況は、素早く周囲を索敵するアスカ。
と、その動きを支える様に敵味方識別装置が自己主張した。
少し離れた場所で、エヴァンゲリオンが居る事を示したのだ。
エヴァンゲリオン3号機だ。
「鈴原っ!?」
その視線の先で、エヴァンゲリオン3号機が
アスカが知る由も無いが、世界中で発生している使徒/エヴァンゲリオン擬きだ。
エヴァンゲリオン3号機は複数の使徒/エヴァンゲリオン擬きに囲まれながら戦っており、格闘戦となっているが、その戦いぶりには不安定さは無い。
阿修羅めいていた。
比喩では無く言葉通りの意味だ。
装備しているのは外装が傷つき、歪み、失われ、殆ど残骸と化しているH型装備であったが
或いは残骸となっている
通信が繋がる。
エヴァンゲリオン間専用の
『おぉ、惣流か!』
目元に刻まれた隈や脂汗 ―― 疲労が浮かんでいても戦意の途切れていない顔で、油断なくて使徒/エヴァンゲリオン擬きを睨みつけながら戦っている鈴原トウジ。
良い顔だと褒めるアスカ。
『そういうのは
「ヒカリから言われたい?」
『じゃかましいわい!!』
一寸した
戦闘への意識を弛緩させるのではなく、途切らせぬ為の息継ぎめいた会話。
それで鈴原トウジの顔の疲労は少しだけ軽くなる。
対してアスカは、己の戦闘への意欲を集中させる。
疾駆するエヴァンゲリオン弐号機。
飛ばない。
使徒/エヴァンゲリオン擬きによる迎撃 ―― 射撃を警戒しての事だった。
「支援に入るわ!」
奔る。
奔る。
奔る。
4歩目には最高速に達したエヴァンゲリオン弐号機が、右手で持っていた
回転し、豪々と風すらも砕き斬って飛ぶ
その切っ先が見事に使徒/エヴァンゲリオン擬きの頭部を叩き斬る。
否。
潰す。
その勢いは、使徒/エヴァンゲリオン擬きの上半身までも真っ二つにした。
『無茶苦茶やな!?』
「それがアタシだっつーの! って!?」
「無茶苦茶ね!?」
『使徒やぞ!!』
「そりゃそう…だっ!!」
駆けつけ一杯の勢いで、踏み込みと共に
「
蹂躙者の笑い。
それは正に
容赦呵責の無い戦闘を見せる赤いエヴァンゲリオン弐号機の姿は、周囲が炎上している事も相まって正に地獄の赤鬼めいていた。
対するエヴァンゲリオン3号機は、色も相まって言うなら幽鬼と言った所であろうか。
だが幽鬼は幽鬼であっても、
エヴァンゲリオン初号機程に豪胆では無い。
エヴァンゲリオン弐号機程に華麗では無い。
エヴァンゲリオン4号機程に冷徹では無い。
だが、冷静に、落ち着いて戦うエヴァンゲリオン3号機の姿は、歴戦の言葉に恥じぬモノであった。
エヴァンゲリオン3号機と鈴原トウジも又、
寸毫の時間で、使徒/エヴァンゲリオン擬きをせん滅したエヴァンゲリオン弐号機とエヴァンゲリオン3号機。
光となって消えていく使徒/エヴァンゲリオン擬きを意識の外から追い出し、アスカは現状を鈴原トウジに問う。
「で、状況は?」
だが先に、鈴原トウジが声を上げる。
『ワシより適任がおる。通信をミサトさん繋いだから___ 』
「ミサト、無事なの?」
問い掛けへの返事は当人であった。
『アスカっ、無事なのっ!』
通信機越しに見える葛城ミサト、その姿は痛々しいモノであった。
顔の半分を、血の滲んだ包帯で多い、服も何処其処が破れ、或いは煤めいた汚れが付着していた。
だが精気に溢れていた。
チーク替わりの硝煙、半乾きとなった血でひかれたルージュが葛城ミサトに、凄惨と言う言葉の伴った美しさをも与えていた。
アスカをしてハッとする匂いを感じさせている。
だが、何よりも力強いのは目であった。
正に
「コッチは無事。ミサトは酷いみたいだけど」
『唾つけとけば治るわよ、この程度。それよりシンジ君は?』
「また使徒に捕まったみたい」
その一言で色々と察した葛城ミサトは苦笑する様に顔をゆがめた。
否、葛城ミサトだけでは無い。
画面越しに見える第一発令所の人達も苦笑いを浮かべていた。
何時もの様に頭に指先を充てている冬月コウゾウ。
青葉シゲルはグチャグチャに歪んだ
伊吹マヤはノートパソコンを抱えながら仕方がないなと笑っていた。
誰も心配はしていない。
使徒が何をするかなんてわからないが、シンジであれば戦う。
戦って勝つと信じているのだ。
『まるでお姫様ね。結構。それでアスカ、
「
以心伝心と言わんばかりに、エヴァンゲリオン弐号機の状況を報告するアスカ。
エントリープラグ内に表示されているエヴァンゲリオン弐号機の状態表示パネルは全て
問題は、言葉通りに兵装類であった。
エヴァンゲリオン弐号機が装備している
空気抵抗や重量バランスなどの問題から、兵装の搭載が満足に行えないでいた。
結果、現時点でエヴァンゲリオン弐号機が携行しているのは、内蔵兵装を除けば近接装備の
遠近の両方に対応可能なアスカにとっては不十分というのが本音と言えるだろう。
A.Tフィールドを攻撃的に、そして遠距離に投射可能なアスカであったが、使い勝手の良い
「でも、リンクは出来ないの?」
通常、第3新東京市で運用されるエヴァンゲリオンは有線接続が無くとも自動的に専用の無線回線が接続される様になっている。
MAGIによって管理されている第3新東京市の情報や推測される
だが今、エヴァンゲリオン弐号機は接続途絶状態になっていた。
『システムの4割が喰われててね、チョッち、無理なのよコレが』
笑えない状況を、朗らかに言う葛城ミサト。
有り体にいって状況は危機的であった。
怪我を負っているのは葛城ミサトだけではなく、画面に映っている誰もが大なり小なりの怪我をしていた。
エヴァンゲリオン8号機とエヴァンゲリオン3号機との
そして押し寄せ続けるナニカとの闘いは、人類側が押し込まれる結果となっていた。
通常の銃器で倒せる相手ではあったが、数が多すぎたのだ。
それでも人類は奮戦した。
弾薬が尽きるまで戦い、弾薬が消えれば白兵戦でもって戦っていた。
後1度か2度、大規模な攻撃を受ければ全滅しかねない。
そんな状況になる迄、抵抗していたのだ。
にも拘らず葛城ミサトが笑っているのは、戦意故だけでは無かった。
報われたからだ。
己の、NERVスタッフの、この場に居る全員の闘い、献身が報われたからだ。
『ンな事よりアスカ、有難う。
軽いノイズ音と共に、通信回線が切り替わる。
但し、此方は画像が無い。
『聞こえているわねアスカ。Eva弐号機用のとっておき、突貫工事で完成させたわ』
「え?」
『詳しい話をしている暇は無いから手短に言うわ』
そう前置きして行われた赤木リツコの説明。
ソレはエヴァンゲリオン弐号機専用の新装備であった。
武器、
南極で発見された対使徒決戦存在たるロンギヌスの槍を解析し、再現し、そして生み出したエヴァンゲリオン用の大型決戦兵装であった。
A.Tフィールドによって自在に形を変えられる装備。
だがA.Tフィールドの使い方が
それを、突貫工事で赤木リツコとNERV本部技術開発局の人間で仕上げたのだ。
強度その他、試験もしていないが為にどこまで使えるかは不明瞭である。
だがそれでも、この危機的状況を切り抜ける一助になれるだろう。
なって欲しい。
それが赤木リツコら、製造に携わったスタッフの総意であった。
「了解。後はコッチでやってみる」
『ありがとう。正直、これ以上はもう無理ね。全てはアスカに任せるわ』
時々、銃声などによって聞き取り辛い所もあったが、概ねはアスカは理解した。
どれ程の努力を重ね危険を圧して最後の希望たる
アスカの心が奮い立つ。
「任されたわ」
短い言葉。
だがそこには強い意志が込められていた。
『派手にやって頂戴。ルート7Bで射出するから、後は任せたわ』
「了解!」
アスカの言葉に呼応する様に、NERV本部施設からやや離れた場所にあるジオフロント内戦闘用のエヴァンゲリオン射出口が炸薬によって吹き飛ぶ。
そして、
使徒/エヴァンゲリオン擬き等に邪魔されぬ様にと勢いよく出されたソレを、苦も無く回収したエヴァンゲリオン弐号機。
エヴァンゲリオンの身長サイズはあろうかと言う黒い、棒の様な、槍めいたモノ。
それが
「
武器となれ。
その意思を受け、
ものの数秒で完成する。
『ものゴッツい武器やのう』
呆れた様な声を漏らす鈴原トウジ。
変容した
死神の大鎌の様な刃と、全てを断ち切る様な戦斧の如き刃を両側に備えているのだ。
実にエヴァンゲリオン弐号機に似合いの武器であった。
『アスカ、聞こえてる!? 恐らく第18使徒の本体は地下、ターミナルドグマと推測されるわ。シンジ君も恐らくはそこね。物資の搬入路だったメインシャフトの最終装甲板、第一発令所を退避する際に爆破するから。突入、お願いよ』
「了解。じゃ、シンジを助けて、ついでに世界を守りにいってくるわ。ミサトも気を付けて退避してて」
『アリガト。じゃ武運を祈ってるわ、惣流アスカ・ラングレー大尉』
「感謝します、葛城ミサト大佐」
敬礼。
答礼。
同時に破顔する2人。
笑いながら通信が切れる。
そして爆発。
ピラミッドめいていた蒼いNERV本部地下中央建物が吹き飛び、巨大な穴が顔を出す。
電源が失われ真っ暗となった縦穴は、地獄へと続くと言われても納得しそうな雰囲気があった。
だが、アスカは一切の躊躇なく、エヴァンゲリオン弐号機を躍らせる。
「
エヴァンゲリオン弐号機、進軍を開始する。