サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 広大なオーバーザレインボー(拡大ニミッツ級大型原子力空母)の甲板を見渡せる、ウィング(見張り用デッキ)に立って空を睨んでいる惣流アスカ・ラングレー。

 その目は爛々と輝いていた。

 引き絞られた口元は、その内側に獣性を隠していた。

 アスカが思っている事は1つ。

 碇シンジ、NERVの秘密兵器だ。

 最も新しく適格者(パイロット)として登録された、最も戦果を挙げている適格者(ライヴァル)だ。

 登録されたのは第3使徒が襲来した日であり、その日、技術試験機(テストタイプ)でありながらも起動確率が極めて低い(起動確率0.000000001%)とされていたエヴァンゲリオン初号機を即座に起動(シンクロ)させてみせた。

 疑ってくださいと言う表現すらも生ぬるい、隠す気の更々に無いNERV本部の態度に、秘密主義にも程があるとNERVドイツ支部の人間の一部が批判の声をあげた程であった。

 尤も、その手の人間は、NERVドイツ支部支部長と一緒に、NERV総司令官碇ゲンドウの手によって更迭されていったが。

 何にせよ、シンジはその後、エヴァンゲリオン初号機を駆って第3使徒を簡単に屠った。

 その戦いの様相は、アスカから見て華麗さの無いものであった。

 武器を使わず、素手で殴り続けた果てに撃破した事など、原始人かと思う程であった。

 だが無駄だけは無かった。

 それは第4使徒との闘いでもそうであった。

 戦闘のスタイル自体は華麗さどころか技巧すら感じられない、暴力の体現であったが、そこに無駄と言うものは一切含まれていなかった。

 そして第5使徒との闘い。

 被弾して中破、乃至は大破相当の被害が出て居るにも拘わらず戦闘行動を継続し、勝利に貢献した戦意の高さ。

 これを偶然だと思える程にアスカはおめでたくない。

 起動すら満足に出来ない開発担当の先任(1st チルドレン)綾波レイ(テストパイロット)を隠れ蓑にしてNERV本部が使徒との闘いに備えて用意していた秘密兵器、それがシンジなのだろうと。

 隠していた理由は恐らく、各国のNERV支部に対する牽制だろうか。

 NERVドイツ支部でも、NERV本部に秘密裏にエヴァンゲリオン専用兵装の開発を行っていたのだ。

 ()()()()()()()()()()

 かつてアスカの出会ったNERV本部の幹部員、葛城ミサトが出来たとは思わない。

 交流した時間は短かったが、概ね大雑把な性格をしている事は見て取れたから。

 陽性な言動を好み、獣めいた戦局を見抜くセンスがあり、劣勢にあっても戦意の折れる事の無い根っからの戦士気質ではあったが、()()()()()()、その手の策謀めいた事が出来る様には思えなかったのだ。

 そもそも、葛城ミサトが作戦局第一課課長(運用方のトップの地位)に就いたのは、ごく最近なのだ。

 出来る筈が無い。

 である以上、仕掛けたのは1人しか居ない。

 誰もがその性格を批判するが、その手腕を批判する者の居ない碇ゲンドウNERV総司令官だ。

 その采配によって用意されたのだろう。

 そもそも、その碇ゲンドウの息子と言うのも怪しい。

 髭面強面のNERV総司令官と、女顔めいた繊細な雰囲気のある最新の適格者(3rd チルドレン)だ。

 全く似ていない。

 恐らくは養子縁組の類なのだろう。

 だからこそアスカは、出会い頭でシンジに対して己が格上であると教え込む(出会ったその場で白黒つける)積りであるのだ。

 NERV本部に所属する事になるアスカだが、指揮系統は別にして、誰かの風下に立つ気は無かったのだから。

 

 赤い腕時計を確認する。

 先ごろに聞いていたシンジ他、NERV本部からの人間が到着する時刻が近づいているのを確認する。

 と、それが切っ掛けと言う訳では無いが、空に黒い点が生まれた。

 航空機だ。

 

「どうやら日本人が時間に正確だってのは、噂通りっぽいわね」

 

 勝気に呟くアスカ。

 アスカが知っている日本人は片手にも満たない程に少ないが、その少数の筆頭である葛城ミサトなどは、些かとは評しがたいレヴェルで呑気(ルーズ)な所があるので、何と言うか信用し兼ねていたのだ。

 

 と、そんなアスカに近づく人影、背広をラフに着崩した男性だ。

 ネクタイすらも崩している。

 只、その目だけは鋭かったが。

 

「ここに居たのかアスカ。楽しみしていた葛城達だが、もうすぐ着くみたいだぞ」

 

「加持さん!」

 

 アスカの呼んだ加持、加持リョウジ少佐はNERV特殊監査部EURO局第1課主席監査官だ。

 正確には()()()と言うべきだろう。

 先の碇ゲンドウによるNERVドイツ支部仕置きに於いて監査官と言う役職に相応しく縦横に活躍し、その結果、NERV本部への転属と相成ったのだから。

 NERV本部では戦略調査部特殊監査第1局第1課、NERV全支部を飛び回って調査する部門に所属する事となる。

 とは言え、労務の対価と言う訳では無いが1月程は無任所であった。

 又、課長代理と言う地位にも昇格している。

 それだけ、NERVドイツ支部の内部を碇ゲンドウが握る際に活躍した男であった。

 

「おいおい、そんな薄着で海風に当たり過ぎると冷えるぞ」

 

「魅力的に見える?」

 

「心配しなくてもアスカは何時だって魅力的だよ」

 

「そう言う割に加持さん、私をデートに誘ってくれないじゃない!」

 

「仕事が中々に忙しくてな。豪華なお船のクルーズで勘弁してくれ、お嬢さま」

 

「立派なフネだけど、もう少し可愛げが欲しいわね」

 

「はっはっはっ、そこは次の機会に期待って所だな」

 

 軽い調子での会話。

 だがその実でアスカは、加持リョウジから自分がはぐらかされている事を理解していた。

 好きだと言っても流され、性的なアプローチを試みても無視される。

 大事だと言われても、魅力的だと言われてもその程度だ。

 だからアスカは加持に挑むのだ。

 そして、まだ見ぬシンジ(エース候補)にも。

 自分が自分である為に、エヴァンゲリオン操縦者としての確たる地位と、自分に愛を捧げてくれる相手を掴まねばならない。

 そう考えているのだった。

 

 

 

 

 

 定刻通りにオーバーザレインボーの飛行甲板に着艦したCMV-22N。

 その機内から出たシンジは大きく伸びをした。

 CMV-22Nの機内(キャビン)が狭い訳では無いが、窓の1つも開けられない空間に2時間以上も居たのだ。

 閉塞感を感じるというものであった。

 だが、そんなシンジの隣では、元気一杯にはしゃぎまわる者が約一名。

 相田ケンスケだ。

 

「おぉーっ! 凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄すぎるーっ!」

 

 ビデオカメラで周り中を撮っている。

 軍事機密などが写っても良いのか? 等とシンジなどは思ったが、周りを見て納得した。

 友人の()()を目にしたオーバーザレインボーの甲板要員が、生温かい目(ニヤニヤ顔)で見守っていたのだから。

 

「男だったら涙を流すべき状況だね! これは! はぁーっ、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄ーい!!」

 

 絶叫めいたものを叫んでいる相田ケンスケは、本当に狂態としか言いようがなかった。

 だが、興味の無いシンジからすれば誠に以ってどうでも良い話であったが。

 友人が何をするのも自由であるし、或いは、相田ケンスケが熱狂している対象に関してもそうであった。

 戦友と言う意味で軍 ―― 国連軍には(シンパシー)は抱いているが、その使っている道具は、正直、どうでも良かったのだ。

 大事なのは使徒をぶちのめす事であり、それ以外は些末事なのだから。

 横木打ちで振るう丸棒が、実際の刀と同じくらいの重さや長さであれば何でも良い様に。

 或いは、銃が引き金を引けば弾が飛ぶ。

 飛びさえすればどんな銃であっても良いのと同じ話なのだから。

 

 葛城ミサトが、オーバーザレインボー側の連絡将校と挨拶を交わしている。

 答礼と敬礼を見て、自分もするべきなのかな? と言う事を考えていた。

 挨拶には参加してもらう、そう最初に言われていたからだ。

 だからシンジは、今日はNERVの男性適格者用制服、所謂常装を着こんでいたのだ。

 尉官級一般職員用とは異なる、黒を基調としたジャケットに、下は同じベージュ色のスラックスを着ている。

 まだおろしたての制服は、アイロンの跡が強く残っていて、着慣れない感じがしていない。

 だがそれも当然だった。

 一日、NERVに居る日は兎も角、学校帰りでNERVに行く時などは、学校の制服のままで過ごしているからであった。

 そんな、着ていると言うよりも服に着られている感の漂うシンジであったが、胸元には中尉の階級章と適格者(パイロット)である事を示す徽章、それに2等勇功章(シルバースター)の略綬を付けている。

 理解できる人間は決して侮らないであろう格好であった。

 其処にベレー帽もキチンと被っている。

 どこに出しても恥ずかしくは無い恰好となっている。

 

 と、その横をジャージ姿の鈴原トウジが駆けて行く。

 

「待て! 待たんかい!!」

 

 帽子が風に飛ばされたのだ。

 幸い、甲板を転がっているだけだが、急いで掴まえねば海にも落ちるだろう。

 慌てて拾おうとするも、するりと転がっていく。

 中々に難しい様だ。

 

「くっそぉ、止まれ! 止まらんかい!!」

 

 逃げる様に転がっていく帽子、が海へと飛ぶ前に甲板に刺し止めたものがあった。

 赤いパンプス。

 ほっそりとした脚。

 鈴原トウジの帽子は、踏みつぶされたのだ。

 

「なっ!?」

 

 余りの暴力に、絶句する鈴原トウジ。

 その声にシンジと相田ケンスケも視線が向いた。

 

「凄い!」

 

 相田ケンスケが感嘆の声を上げた。

 さもありなん。

 空母と言う無骨な存在の上に居るには似つかわしくない、黄色いワンピースを纏ったの金髪碧眼の美少女が仁王立ちしていたのだから。

 言うまでも無くアスカだ。

 

「なんや! 何をするんや!!」

 

 鈴原トウジの抗議を鼻で笑い、アスカはシンジだけを見ている。

 加持リョウジ経由で得たシンジの写真を事前に見ていたと言う事もあったが、何より、格好が違う。

 鈴原トウジは黒いトレーニングウェアの上下であり、相田ケンスケは学校指定の制服 ―― 白い半袖シャツと黒系のパンツ姿だ。

 対してシンジはNERVの制服姿なのだから。

 3人の内で誰が適格者(3rd チルドレン)であるかなど、一目瞭然というものであった。

 

「Hallo! 貴方が碇シンジね」

 

ほうじゃ(その通りだけど)で、おはんは誰じゃっと(そう言う君は誰?)

 

 シンジの訛りの強さに、一瞬だけ眉を顰めたアスカ。

 だがこの美少女の頭脳の明晰さは、日本語を主言語としないにも拘わらず、その意図を推測し理解する。

 天才からすればフランス語も英語もドイツ語とはラテン語を介した親戚 ―― ある意味でそう言う括りをされていたのだ、日本(標準)語と鹿児島弁も。

 さてさて。

 アスカがシンジに対して自分の格を見せつけ(マウントし)ようと笑った時、運命が動く。

 否、()()

 悪戯っ気を出した風が、アスカのワンピースの裾を弄んだのだ。

 派手に巻き上がる。

 

「あっ!」

 

 間近で見た鈴原トウジは目を皿の様にしていた。

 

「え!?」

 

 婦女子の名誉があるとばかりに反射的に目を瞑ったシンジ。

 

「おお!」

 

 そして相田ケンスケは興奮しきってビデオカメラを回し続けていた。

 無論、スカートの中身までバッチリだ。

 

「おおおおおおおおおお! 俺は神秘を見たっ!!」

 

 興奮の儘に叫ぶ相田ケンスケ。

 盗撮までも趣味の範疇に収めていたが、それでも同年代と思しき少女の下着を真っすぐに見たのはコレが初めてであったのだ。

 それをバッチリとビデオカメラに収めたのだから、そうなるのも必然であった。

 だが、それ故に、自ら悲劇を招く事となる。

 

「…っ!」

 

 アスカは攻撃的笑顔のまま、先ずは鈴原トウジの頬を引っ叩いた。

 

「あたっ!?」

 

 続いては相田ケンスケ。

 カッカッカッっとばかりに歩み寄って右手で首を締め上げ、左手で自分を撮り続けたビデオカメラを叩き落とす。

 

「んなっ!?」

 

 何をするんだと抗議の声を上げようとするが、声が出せない相田ケンスケ。

 アスカに、軍隊仕込みの格闘術由来な体捌き(ワザ)で喉元を押さえられているのだ。

 そのアスカは笑顔のままに飛行甲板上に叩きつけたビデオカメラを更に踏みつける。

 二度三度と全力で踏む。

 足裏の感覚で、ビデオカメラが再起不能になったのを確認するや神速の、鞭めいた素早さで右手を振りぬいての平手打ちを敢行する。

 

「ギャッ!?」

 

 ぶっ倒れる相田ケンスケ。

 さもありなん。

 本人の意図したものでは無いとは言え、公衆面前で盗撮まがいの事になったのだ。

 しかも、それを詫びる事無く興奮していれば、この様も当然とも言えた。

 

「変態」

 

 吐き捨てる様に言葉を投げかけながら手を相田ケンスケから離す。

 不潔なモノを触ったとばかりに手を払う様に振る。

 そしてシンジだ。

 維持し続けた笑顔のままに口を開く。

 

「アンタの対応が一番マシ。だけど、世の中って公平性が大事だと思わない?」

 

 獣性の笑みに、流石のシンジも若干ひいている。

 此処まで強く来る(Powerを前に出して来る)女性は、鹿児島でも見なかったからだ。

 基本、賢い鹿児島の女衆は力で男衆を抑えるのではなく、実権を巻きあげる方向で薩摩の男尊女卑(ガッツリ女性上位)を成し遂げているのだから。

 その意味でアスカは、シンジにとって初めて見る女性であった。

 

ないがよ(なに言っているのか判らないよ)!?」

 

「……言うじゃない、日本語で、問答無用って」

 

 そして放たれた最後の一閃。

 だがその手のひらがシンジを叩く事は出来なかった。

 振り抜きの起こり、その際の手首にシンジが掌底を合わせたのだ。

 アスカの顔から笑いが抜け落ちる。

 シンジも力の入っていない顔を作る。

 

叩かるっ道理はなかど(黙って叩かれる理由は無いよ)

 

 だが、2人の間にあるのは紛れも無い緊張感であった。

 

「ふーんっ」

 

「………」

 

 図ったかの様に、同じタイミングで動く。

 叩きたいアスカ。

 止めるシンジ。

 見る者の息が止まる様な攻防は、段々と速度を増していく。

 一合二合、そして十合二十合。

 何時しか意地と意地のぶつかり合いとなる。

 騒動めいた事になって、周囲から暇人(ギャラリー)が集まってくる。

 葛城ミサトも慌てて来た。

 

「2人とも何をやってるのよ!?」

 

 任務では情を欠片も見せぬ鉄の女(アイアンコマンダー)葛城ミサトが、珍しくも悲鳴めいた声を上げる。

 だがアスカもシンジも一瞥もしない。

 只、相手だけを見ていた。

 

「何があったのよ、鈴原クン!?」

 

「いや、あのおなごのパンツをセンセが見てしまってですな」

 

 自分も見たし、何なら一番初めに報復(ビンタ)を受けたと言う話をおくびにも出さない鈴原トウジ。

 彼にもプライドと言うものはあったのだ。

 尚、相田ケンスケは粉砕されたビデオカメラに涙していた。

 

「ふふふふふふ、やるわね」

 

おはんサァもな(君も良く続くよ)

 

 互いだけに意識を集中している2人。

 隙を見ているアスカ。

 動きの起こりを探り続けるシンジ。

 

「ねーねーアスカ? シンジ君? そろそろ止まってくれるとおねぇさん、すごーくうれしいんだけど、聞いてる? ていうか聞いて、お願いだから」

 

 泣き付く勢いになる葛城ミサト。

 喧嘩沙汰と言うには少しばかり平和なため、()()をするには良心が咎める状況なのだ。

 と言うか、治安維持担当のMP(憲兵)と言う腕章を釣っている将兵まで、口笛を吹いて囃し立てている始末だ。

 真剣ではあっても殺意の無い、少年少女じゃれあい(ボーイミーツガール)にしか見えないのだから仕方がない。

 間に入ると、馬に蹴られて何とやらと言う事だろう。

 

 では、葛城ミサトが直々に動けるかと言うと、此方も難しい。

 と言うか、変な刺激を与えてしまい暴力沙汰に成られても困るのだ。

 2人が頭を冷やして、自分から止まってくれる事を願う。

 願いたいといのが葛城ミサトの気分(本音)だった。

 

とめっくいやれば(止めてくれるなら止まりますよ!)

 

 シンジは冷静だった。

 アスカも冷静さは保っていた。

 目の端で周りを確認する。

 観客が多い(騒動になっている事を)理解する。

 外面を重視する(猫かぶりの)アスカにとって、この状況は失態そのものであった。

 だが、今更に何も出来ぬままに退く訳にはいかない。

 ここで退いてしまっては、自分はシンジに劣る様では無いか! と。

 だから深呼吸。

 葛城ミサトに告げる。

 

「最後にもう一回」

 

「最後よ、お願いだから最後ね」

 

 泣きそうな声を出す葛城ミサトであったが、シンジは勿論ながらもアスカまで一顧だにしなかった。

 2人は共に真剣であった。

 

「二言は無いわ」

 

 だからこそアスカは、ドイツの格闘教官であったアーリィ・ブラストに習った女性専用の奥義(初見殺し)を使う事を決断する。

 その名も観音脚奈落落とし(パニッシュメント・フォールダウン)

 

「えぇぇいっ!」

 

 裂帛の気合を入れての足技、かかと落とし。

 それはスカートの時でしか使えぬ、乙女の必殺攻撃。

 天に伸びた脚によってスカートが捲れ、パンツがあらわにする事で相手の視線を釘付けにする事で相手の油断を誘い、脳天へと踵を叩き込む大技だ。

 この技の為、アスカはスカートを履く時は何時も新品の死装束(決戦パンツ)をキメている程であった。

 

 並の相手であれば一発で決まった大技。

 だが残念。

 シンジは些かばかり並、普通では無かった。

 

 純白の乙女のパンツをガン無視して、只々、防御(戦い)だけを考えていたのだから。

 最上段からの踵落とし。

 最善の手は退く事であるが、それは趣味じゃない(そういう躾は受けていない)

 故に前進する。

 距離を詰める事で、勢いと力ののった踵では無く膝より上の部分が当たる様にするのだ。

 

 だが、それがある種の悲劇(喜劇)を生む。

 その事に咄嗟のシンジは気づかなかった。

 考えぬままに前進する。

 瞬きの間めいた時間、そして衝突。

 

「あぁっ!」

 

「Oh!」

 

「あらま、大胆」

 

 再度言う。

 シンジは前に出ていた。

 アスカも踵を叩き込む為に前に跳ねていた。

 その結果は距離の消滅。

 即ち、シンジはアスカのパンツに顔を突っ込みながら押し倒したのだ。

 

「つぅ……」

 

「あいたたた」

 

 呻きながらも目を開けた2人。

 激突の衝撃が抜け、互いの姿勢を理解した時、その顔色は共に真っ赤に染まった。

 

んな、んだ(ご、ごめん)!?」

 

「キャー! エッチ!! チカン!!! 変態!!!!」

 

 乙女の絹を裂くような悲鳴が、オーバーザレインボーの甲板に響いたのだった。

 

 

 

 

 

 




2022.01.30 文章修正
2022.01.31 文章修正
2022.02.02 文章修正
2022.10.31 文章修正

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