サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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04-Epilogue

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「いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ。やはり、これのせいですか?」

 

 机の前に立って軽薄な口調で肩をすくめて見せたのは、緩くNERVの制服を着こんだ加持リョウジであった。

 居る場所はNERV総司令官執務室。

 であれば当然、話しかけた相手はNERVの総司令官碇ゲンドウであった。

 碇ゲンドウの返事を待たぬまま、机の上に置いた荷物(ケース)の電子錠に触れる。

 加持リョウジの指紋を確認した電子錠はその役目を終えて、荷物を開く。 

 出てきたのは小さな対爆仕様の箱だ。 

 (シール)が施されており、そこには白地に血の様に赤い色で描かれたSeal-426(426号封印)の文字がある。

 

「確認を」

 

「ああ」

 

 碇ゲンドウが、先に送られてきていた封印指示書を確認する。

 此方も封がされており、それを開く。

 割り開かれたプラスチック製の封書の中には、裏にSEELEと刻まれた小さな封印番号票が入っている。

 Seal-426。

 送り主(SEELE 秘匿物資部)受け取り手(碇ゲンドウ)の数字が合致している。

 加持リョウジは自覚せぬままに安堵の息を漏らした。

 NERV情報部の諜報員(スパイ)にしてSEELE秘密監査部の特殊情報員(スパイ)も兼ねる男は、そうであるが故に慎重であった。

 碇ゲンドウの手がSEELE内部にまで浸透しているとは知っていたが、それが本物で在るかと言うのは確認できなかったのだから。

 だがそれが今の手続きで変わる。

 判ったのだ。

 S()E()E()L()E()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 本来、SEELEの秘密監査部部員(カウンターインテリジェンスユニット)として加持リョウジにはSEELEへの報告義務が発生する(首輪の鈴を鳴らすべき)事態であった。

 だが、加持リョウジはそれを鳴らさない事を選択する。

 否、選択は済ませていた。

 加持リョウジは、己の願望 ―― セカンドインパクトの真実を知りたいと言う欲望に突き動かされ、碇ゲンドウに与する事を選んでいたのだ。

 

 碇ゲンドウの手が封を切り、中身を露出させる。

 

「これが……」

 

 碇ゲンドウの後ろに立っていた冬月コウゾウが感嘆の声を漏らした。

 そこには、黄色めいた半透明の中に存在する胎児とでも言うべきモノがあったのだ。

 A号封印体(Solidseal-α)

 薄暗い総司令官執務室にあって、それは何かの曰くめいた光を放っているようにも見えていた。

 

秘蹟部(SEELE対使徒機関)の手は入ってません。自らの能力でここまで回復しています。硬化ベークライトで固めてありますが、生きてますよ。間違いなく」

 

 封印されているものは第1使徒、その名もAdamであった。

 

「魂は無くとも蘇る、か。恐ろしいものだな。アダムの魂の行方はまだ判明していないのだな?」

 

「ええ。SEELEでも捉え切れていない模様です」

 

()()宿()()()()()、その可能性は?」

 

 冬月コウゾウの目が厳しくAdamを見る。

 だが、それを碇ゲンドウが否定する。

 

「宿っていたのであれば、第6使徒は迷わなかっただろう」

 

 太平洋上で発見された第6使徒は、Adam(Solidseal-α)を輸送中の第1特別輸送任務部隊(Task Force-7.1)を襲うまでに数日の間があったのだ。

 判らなかったが故に迷走していたのだと碇ゲンドウは考えていた。

 

「それに万が一にAdamの魂が肉体に宿ったのであれば、この程度の封印など役には立つまいよ」

 

 封印はAdamとしての肉体が蘇る事を封じると共に、Adamの魂に体が発見されぬ様に施された処置なのだ。

 使徒とは(コア)を潰さぬ限り、永劫に存在し続ける事が可能な存在。

 故に、Adamはコアが形成される前の段階で封印されているのだった。

 

「最初の人間、アダムですか」

 

「フッ、S()E()E()L()E()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 嘲笑する様に口を歪める碇ゲンドウ。

 実際、滑稽であったのだ。

 第1使徒の名がAdamであるが故に、それが人類の始まりであると認識するSEELEの老人たちが。

 宗教的由来によって、現実を歪めてしまう事を嗤うのだ。

 

「………では、教えて頂けるのであればご教授願いたい。()()()()()()()()()()()?」

 

 内なる欲望(知的好奇心)に駆られ、思わず口にしてしまった疑問。

 だがソレに碇ゲンドウは鷹揚に答えた。

 

「始まりの使徒、第1使徒アダムだよ」

 

 

 

 

 

「っとに、酷い航海だったわ」

 

 そう愚痴るのは葛城ミサトだ。

 場所は技術開発部技術開発局局長執務室だった。

 故に、愚痴った相手は赤木リツコとなる。

 洋上での、第6使徒との戦闘詳細(レポート)を出すついでに愚痴をこぼし、コーヒーを飲みに来ていたのだ。

 局長執務室には、赤木リツコの趣味で上等なコーヒーセットが用意されているのだから。

 

「あら? 第6使徒を第7艦隊と共同撃破、それも弐号機にも艦隊にも被害ゼロと言う完全勝利(パーフェクトゲーム)やったのにご不満?」

 

「作戦の主導権はシンジ君とアスカにあって、私は艦隊司令部への伝達役よ? それで自慢できるって胸張れる程に恥知らずじゃないっつーの」

 

「ふーん、てっきり加持君に会ったからかと思ったけど?」

 

「なっ!? 何で居たのを知ってるのよ!!」

 

「本人から連絡があったもの。EUから本部に異動になったって。ミサトには伝えないでって添えられてたわ。驚かしたかったみたいだけど、その分じゃ大成功したみたいね」

 

「………別に、どうって事ないわよ」

 

 そう切り捨てる葛城ミサトであったが、目は口程に物を言う。

 少しばかり緩んでいる。

 赤木リツコは、その本音の部分が見て取って優しく笑う。

 良い年こいて素直になれぬ友人(マブ)に、そして、その相方(加持リョウジ)にもだ。

 

「あらそう?」

 

「そっ、それより弐号機の実戦データ、確認は良いの?」

 

 露骨なまでの話題逸らしであったが、赤木リツコも乗った。

 追い詰めようとまでは思わぬ友情(憐憫)もあったが、個人的な好奇心でもあった。

 第6使徒との闘いは、エヴァンゲリオン初の洋上戦闘であり、それを現場で指揮し観戦していた人間の意見(ナマの感想)は極めて貴重だと思えたからだ。

 時間を置いての分析も大事だが、直感 ―― 感性もまた重要であるのだ。

 

 

 葛城ミサトの語る、エヴァンゲリオン弐号機と第6使徒との闘い。

 それは陸上戦闘とは別種の緊迫感と、詰将棋の様な頭脳戦の複合であった。

 特務艦オセローを出撃したエヴァンゲリオン弐号機は、その背中に背負式に装着したS型装備(海洋ユニット)で海中で作戦行動を開始した。

 S型は推進ユニットと大型バッテリー、そして武装として計8発の重魚雷を持つ海洋強攻装備である。

 水中速力12ノットを発揮可能であり、A.Tフィールドを加味すれば下手な潜水艦よりも強力な水中ユニットであった。

 第6使徒はエヴァンゲリオン弐号機の起動後は、一直線に狙って突進してきた。

 迎撃として惣流アスカ・ラングレーは、遠距離雷撃戦を行おうとし、葛城ミサトはその判断を認めた。

 だが碇シンジが止めた。

 

『この距離だと、多分無駄打ちになるよ?』

 

 アスカが雷撃戦を検討した時点での距離は約10,000m。

 水上戦闘の交戦距離としては近いと言えたが、相手が使徒となれば話は違う。

 使徒が保有するA.Tフィールドを中和(無力化)して打撃を与えるには、最低でも500mまで接近せねばならないと言うのがシンジの体感であった。

 使徒情報を分析しているNERV作戦局第2課(戦術情報分析班)技術開発局実証第1課(使徒情報分析班)もシンジの判断を支持していた。

 その上で、強烈なA.Tフィールドを持っていた場合には50mまで接近せねば中和出来ないと認識であった。

 

『正気!?』

 

 その数値を聞いたアスカが悲鳴めいた声を上げる。

 500mはまだしも、50mとのなれば攻撃の余波(水圧)に晒される事となるからだ。

 だがシンジは肩をすくめるだけだった。

 

『………アンタの事、見境無しの狂戦士(ベルセルク)なんて言ってた奴も居たけど、まさかその通りだったとはね』

 

 第3使徒、第4使徒との闘いも大概であったが、第5使徒との交戦が決定的だった。

 勇敢であるし、敬意も払うべきであるが、聊かもって戦意過剰では無いかと言う評価である。

 

『効かないと意味が無いよ』

 

 飄々とした言葉と相反する、断固とした表情を見せるシンジ。

 そのほっそりとした横顔をチラ見したアスカは嘆息した。

 

『効かない?』

 

『無理、かな』

 

『おーけー ならやるっきゃ無いわね。覚悟を決めてしがみ付いてて、アンタも一蓮托生って奴よ』

 

『信じてるよ』

 

 

 かくして行われた至近距離での雷撃戦。

 アスカは初手から最大火力を投げ込んだ。

 8発の魚雷、全てを発射したのだ。

 この先が白兵戦となれば故障するなりなってしまうと考えての思いっきりの良さであった。

 手動で安全距離設定(セーフティ)を解除して放たれた、500lb.級の炸薬を腹に詰めた対使徒魚雷は有線モードで誘導され見事に第6使徒に正面から命中した。

 すさまじい水柱が5つ上がった。

 残念ながら3発は命中のタイミングがずれ(遅れ)てしまい、先に炸裂した魚雷の爆発に巻き込まれて不発となったのだ。

 それでも高性能炸薬2500lb.級の衝撃である。

 接触で炸裂した3発が第6使徒の口先を叩き割り、第6使徒の下で炸裂した2発が生み出したバブルパルス現象が体をズタズタにした。

 人類の生み出した構造物であれば致命傷となる1撃。

 だが、使徒は倒れなかった。

 体はボロボロとなって赤い血を流しながらも、止まる事無くエヴァンゲリオン弐号機に突進した。

 

「この時点で弐号機との通信は途絶した訳ね?」

 

「ええ。魚雷の水中衝撃波で機器が故障したっぽいのよね」

 

「で、そんな状況下であの2人が選択したのが__ 」

 

()()()?」

 

 冗談めいて尋ねた赤木リツコに、葛城ミサトは何とも言えない表情で頷いた。

 

「白兵戦__ 」

 

 赤木リツコの表情も、何とも言えないモノへと変わっていた。

 

 PC上には、オセローの光学監視装置が捉えた映像が映し出される。

 それは、エヴァンゲリオン弐号機が凶悪な近接戦闘用の質量武器、EW-17(スマッシュトマホーク)を装備する姿だ。

 10m級のEW-17は、エヴァンゲリオン弐号機の内装兵器であるEW-11B(プログレッシブナイフ)よりも遥かに巨大で、重く、凶悪であった。

 ソレは、アスカのリクエストでNERVドイツ支部が開発したエヴァンゲリオン弐号機用の装備であった。

 エヴァンゲリオン初号機用として開発される事となった斬撃武器、後のEW-14(ドウタヌキ・ブレードⅩⅢ)にアスカが対抗心を燃やした結果の産物とも言えた。

 とは言えエヴァンゲリオン弐号機がNERVドイツ支部を出るまで、もう時間が無かった為、片手持ち装備としてEW-17は完成していた。

 只し、突貫作業で作られた為に機構機能の類は一切搭載せず、その質量をエヴァンゲリオンの尋常では無い膂力で叩きつける暴力装備(野蛮力の塊)であったが。

 尚、EW-17開発の話と詳細とを知った時、葛城ミサトはアスカがシンジと似たメンタルの人間(類友な超攻撃型人間)では無いかと危惧する事となる。

 その危惧が杞憂で無かった事を、この第6使徒との闘いでアスカは実証する事となったのだった。

 

 だが、アスカはそのまま切り込む様な単純な事はしなかった。

 より悪辣に攻撃の準備を重ねた。

 先ずは水中に潜って、突進してくる第6使徒に対してS型装備に搭載されている特殊固定装備(ハープーン)を使用する。

 その名の通り(ハープーン)を模した特殊固定装備には、特殊繊維製の(ワイヤー)巻き上げ機(ウィンチ)とが繋がっている。

 第6使徒の顎下に突き刺さった銛を巻きあげる事でS型装備は密着する事となる。

 この時点でエヴァンゲリオン弐号機はS型装備から分離している。

 仕上げは、S型装備に搭載されている緊急浮上装備だ。

 巨大なエヴァンゲリオンを水中から緊急浮上させる為の装備の生み出す浮力は圧倒的であった。

 特殊ガスによって緊急展開した空気袋(バルーン)は、第6使徒を海面に放り出し固定する事に成功した。

 アスカは、白兵戦に足る戦場(足場)を自ら作り上げたのだ。

 第6使徒の上に立ち、その足場を砕こうと言うのだ。

 何とも暴力的であり、そして効果的であった。

 振り下ろされ続けるEW-17は、鯨めいた第6使徒の体を切り裂いていく。

 海が赤く染まった。

 

「それで勝った訳?」

 

「残念ながら、それで終わる程に使徒は脆く無かったわ。だからアスカは、攻撃によって第6使徒が弱体化して無線通信が回復すると共に要請をしてきたって訳」

 

「協力」

 

「そ、直接火力支援(ダイレクト・ファイヤーサポート)

 

 葛城ミサトの指先が、レポートの写真を引っ張り出す。

 そこには第7艦隊(TaskForce-7.1)に属する戦艦群 ―― 戦艦イリノイとケンタッキー、それに信濃とバンガードの4隻が至近距離から戦艦砲を発射する様が捉えられていた。

 戦艦砲の運用としてはあり得ない直接照準による水平発砲だ。

 その様は正に暴力であった。

 エヴァンゲリオン弐号機は4隻の戦艦(レヴィアタン)を従えて、さながらに地獄の女王めいていた。

 

「戦艦って、こんな使い方をするモノだったかしら」

 

 ()()()()()そんな気分を隠さぬままに嘆息する赤木リツコ。

 対する葛城ミサトは朗らか(ヤケクソ)に笑う。

 開き直りとも言える。

 

「しないわよ」

 

 断言。

 そして続ける。

 

「兎も角! ウチのビー・キャノン、EW-23(パレットキャノン)程じゃないけど、それでも戦艦4隻分の火力はエバー弐号機ともども使徒をボッコボコにしてやって、それで終了」

 

 尚、止めを刺したのはエヴァンゲリオン弐号機だと言う。

 EW-17によって上から第6使徒を耕していったエヴァンゲリオン弐号機が、そのまま(コア)まで到達し、止めを刺したのだと言う。

 自動再生されていく()()()()

 第6使徒の爆発を背に、悠々と母艦であるオセローに帰還するエヴァンゲリオン弐号機の姿もあった。

 その様は正しく暴力であった。

 

「ドイツの頃のアスカってさ、『戦いは、常に無駄なく美しく!』なーんて言ってたんだけど………」

 

「コレを見ると、ね」

 

 無駄は無い。

 無駄は無いけども、美しいかと言われれば首を傾げざる得ない。

 そんな、純粋な暴力がそこにはあった。

 

「シンジ君の影響なのかしらね」

 

「朱に交われば赤くなる?」

 

「そう言えば弐号機も、アスカの髪も赤いわね」

 

「止めてよリツコ!!」

 

 割と本気な葛城ミサトの悲鳴。

 と、証拠写真の自動再生が最後の1枚を映し出した。

 それは記念撮影であった。

 オセローの甲板上で、エヴァンゲリオン弐号機を背景にした写真。

 シンジとアスカがプラグスーツ姿で中心に立ち、その周りにNERVスタッフや第7艦隊の将兵が集まった写真。

 何と、艦隊司令官であるノーラ・ポリャンスキーまで加わっていた。

 

 皆、笑顔であった。

 シンジもアスカも、皆が笑顔であった。

 

 

 

 

 

 第3新東京市第壱中学校の朝は、何時も通りの喧騒に包まれていた。

 週末での出来事などを話し合っている子どもたち。

 多くは朗らかだった。

 出歩いた事やTVドラマの事などで元気に話の華を咲かせていた。

 だが、萎れた、疲れ切った顔をしている者も居る。

 鈴原トウジと相田ケンスケだ。

 ()()()()()()の疲労が顔に出て居た。

 

「ほーんま、顔に似合わずいけ好かん女やったなー 」

 

 帽子は踏まれるし叩かれるし、散々だったと呻いている。

 その鈴原トウジ以上に凹んでいるのは相田ケンスケだ。

 

「踏まれたのが帽子だったからマシじゃないか! 俺はビデオカメラを踏まれたんだぞ! ご丁寧に、壊れるまで、念入りに!!」

 

じゃっどん(でも)あいはケンスケが悪かったが(アレはケンスケの態度が悪かったよ)

 

 唯一、顔に(精神的な)疲れの浮いていないシンジであったが、此方はエヴァンゲリオン弐号機に同乗した事による肉体的な疲労によって元気が乏しかった。

 戦闘終了後には、アスカに個室へと引っ張り込まれて検討反省会に参加させられたのだ。

 疲れもするというモノであった。

 

「そや、センセの言う通りや」

 

「あれは不幸な偶然だぞ!? 俺だって消せって言われれば消したよ!!」

 

「言われればやろ?」

 

じゃひど(そうだよ)そいに鼻ん下まで伸ばしとれば(それに鼻の下伸ばして興奮してたんだ)仕方がなかがな(仕方が無いよ)

 

「あのビデオカメラ、まだ買ったばっかりだったんだぞ!!」

 

 第4使徒戦の際の()()()()で、相田ケンスケ愛用のカメラもビデオカメラも粉砕された。

 だからこそ、貯めていたお小遣いをはたいて買ったビデオカメラだったのだ。

 それが無慈悲にも粉砕されれば、相田ケンスケが憤慨するのも当然であった。

 無論、盗撮とは言え個人所有のビデオカメラを一方的に粉砕する権利は、本来は存在しない。

 だがアスカはその貴重な例外となる。

 秘匿されている国連人類補完委員会隷下の特務機関NERVでも情報秘匿度の高い、重要人物(チルドレン)であるのだ。

 アスカに関する情報には、特務機関NERVに関する法案に含まれたA-18条項下の情報の機密保護に関する規定が適用されるのだ。

 そしてアスカは機密保護に関わると強弁し、相田ケンスケのビデオカメラ粉砕を機密保護規定に基づくものであると葛城ミサトに認めさせたのだった。

 故に、丸々と壊され損である。

 

「撮ったんが問題なんや、新品かそうでないかなんて、あの女には関係の無い話やろ」

 

「友達甲斐を発揮してくれよ、トウジ!!」

 

「流石に盗撮めいた事を擁護するのは男らしゅう無いで」

 

じゃっど(そうだよ)

 

「薄情な友人たちだよ!」

 

 容赦の無い2人のツッコミに、風向きが悪いと見た相田ケンスケはカバンから冊子を取り出した。

 新しい2015年モデルのカメラのパンプレット群であった。

 全くへこたれていない。

 相田ケンスケはメンタル的な意味に於いて強者であった。

 問題は、反省もしていないと言う事だろう。

 良くも悪くも趣味(欲望)に全力投球と言うのが、相田ケンスケと言う少年であった。

 

「ま、おれたちはもう会うことも無いさ」

 

「センセエは仕事やからしゃーないわなぁ。同情するで、ほんま」

 

 他人事の様に笑う2人。

 2人は知らなかった、今日、このクラスに転校生が居る事を。

 とびっきりの笑顔をした美少女である事を。

 教室の外で、教師に呼ばれるのを待っていた事を。

 

 

 

 筆記体で黒板に掛かれた文字。

 胸を張って魅せる美少女。

 

「惣流・アスカ・ラングレーです! よろしく!」

 

 自己紹介。

 それはとびっきり(全力猫かぶり)の笑顔であった。

 

 

 

 

 




2022.02.12 文章修正
2020.06.01 文章修正

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