【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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碇シンジ宅の食卓に並ぶ夕食。
その主役はハンバーグ、肉の日であった。
とはいえ残念ながらシンジお手製の、等と言う訳では無い。
近所の肉屋で作られた肉ダネを買ってきたお手軽料理と言える。
少なくともシンジにとっては。
だが、それを供される惣流アスカ・ラングレーからすれば、焼いてからデミグラスソースで玉ねぎやマッシュルームと共に煮込んだ、手の込んだ煮込みハンバーグだ。
否、そうでなくてもアスカにとってシンジの料理は特別だった。
一般学業と並行してエヴァンゲリオン操縦者としての訓練と教育を受けているにも拘わらず、シンジが
無条件に大事にされている感があって、とても好きなのだ。
シンジの料理と言うものが。
だから弁当も大好きであり、必ず完食するし、昼食時間の後に弁当箱を返す際に感謝の言葉をシンジに伝えても居た。
『今日も、マァマァ、美味しかったわよ』
素直という言葉から相当に離れているが、綺麗に完食している容器から、丁寧に空になった容器を包んでいる
ニッコリと笑って弁当箱を受け取り、それは良かったと返すのだった。
第壱中学校2年A組の女子陣は、アスカを虜にしているシンジの弁当とはどの様なものなのかと興味津々であった。
尚、アスカと昼食を共にする洞木グループの子だけは、絶対におかず交換に乗って来ないアスカに
そして相田ケンスケを筆頭にした、アスカが歯牙にもかけない
兎も角。
キッチンに充満する芳香。
その主が、シチュー皿に2つよそわれて手元に来たアスカはニッコリと笑顔であった。
付け合わせにポテトサラダと新鮮なレタスが別皿で出される。
「良い匂いね」
「結構大ぶりなマッシュルームが売ってたんだ。良い旨味が出てると思うよ」
「大丈夫。アンタの料理は何時も旨味が美味しいわよ」
テーブル上でトースターで焼きなおした
少しだけ言葉が怪しくなるのは、アスカが日本語ネイティブでは無いが故のご愛敬だろう。
パンを
マーガリンでは無くバターは既に用意済みだ。
ドイツ式ともドイツ風とも言う訳では無いが、本日の碇家の食卓は洋風であった。
「でも2人分? 今日はミサトは来ないの?」
「さっき電話があって、今日は帰れそうに無いんだって」
「あの第10使徒の片づけ? それとも弐号機がらみ?」
訝し気に言うアスカ。
直近の使徒、第10使徒による第3新東京市への被害は事実上無かった。
だが、後片付けは別だった。
使徒の残骸 ―― 綾波レイのエヴァンゲリオン4号機の
都市機能を回復させる為の清掃作業は人海戦術で行う大作業であり、碇家の3人目でありNERV作戦局局長代行でもある葛城ミサトは責任者として忙殺されていたのだ。
とは言え、山場は越えており、後は最終確認を現場で行うと言う段階であった筈だった。
戦闘で中破したエヴァンゲリオン弐号機の修理も同じ。
砲戦態勢で居た為に第10使徒の
又、第9使徒戦役時の戦訓から開発実装された、大
エヴァンゲリオン弐号機関連で作戦局が担うべき部分は終わり、手続き等は技術開発局に引き継いでいる。
今日こそはビールが痛飲出来る! そう葛城ミサトがNERV本部の執務室で吼えていたのをアスカは見ていたのだ。
にも拘わらず帰れなくなったのだと聞けば、ナニ事であるかと思うのも当然であった。
対して
「赤木さんと一緒。急に仕事が増えたんだって」
「技術局と? 急な新装備の開発でも始めようって事??」
「エヴァンゲリオンを増やすんだって」
「ハァ?」
シンジの言葉にアスカの眉が跳ねる。
意味が判らない、そう言う顔であった。
或いは、自分たちの戦績に不満が出たのかと言う、ある種の憤懣であった。
アスカ自身がエースになると言う、ドイツ支部時代の誓いは果たせていない。
だが、日本に来て以降の戦績にアスカは不満を感じていなかった。
自分の上を行くシンジは、アスカをして
背を支えてくれる相手としてのアスカを。
背を支えたい相手としてのアスカを。
称賛し、敬意を払ってくるのだ。
だからこそアスカは不快感を感じたのだった。
エヴァンゲリオンを追加する、
自分とシンジ、それに綾波レイの戦績に不満があると言うならば、やれるモノならやってみろとも思った。
ドイツ時代に見た
マリィ・ビンセント他、何人かの顔を思い出すが、どれもこれも不足だと言えるのだ。
否、マリィ・ビンセントは良い。
正しい誇りを持ち、努力と言う意味ではアスカの水準に付いて行こうと言う努力をしていたのだから。
だが、ドイツ系の男子候補生、顔も名前も記憶から消し去った様など阿保で腑抜けは、アスカの事を
アスカから見れば、
そんな阿呆どもが、家の力で何かをしたのか。
そう思えたのだ。
NERVの一員と言う事に自負を持つアスカであったが、同時に、自分の属する組織に対して過度な期待は抱いていなかった。
ドイツ支部時代、過度な貴族趣味を持ち、他人を見下す人間の多さに閉口していた位なのだから。
殆ど瞬間湯沸かし器めいたアスカの内側での感情激発に気付かぬまま、シンジは呑気に夕食の支度を勧める。
自分の分の煮込みハンバーグを運び、スプーンを用意する。
その片手間に、何でも無い事の様に続ける。
「世界中に配置する為なんだって」
「ナニそれ」
「知らないよ。前に聞いた計画分だと足りなくなったのかな?」
E計画、NERVの
使徒の標的となる日本のNERV本部には5機 ―― 2機1組のペアを2セット用意し予備機1機を配備し、3機を
現時点で実戦配置に就いているのは3機。
残り5機の内、4機は建造が最終艤装段階にまで到達しつつある。
エヴァンゲリオン零号機の代替として追加建造となったエヴァンゲリオン8号機はアメリカ支部にて素体の培養が本格的に開始された段階であるが、艤装その他はエヴァンゲリオン3号機及び4号機の実績によって効率的に製造が出来る為、そう遅くない時期には
最短で年内。
ある意味で
そんな完成していないE計画の体制であっても十分な戦績を挙げており、ほころびの類も見られない。
にも拘わらず、E計画完遂前に追加をすると言う。
しかも目的は世界配置である。
アスカは、どうやら
次元の違う話になったと感じたのだ。
「上の方で何かあったのかしらね」
故に、ストンっとアスカの怒りは消えた。
自分が、自分たちの評価があれば、或いは自分とシンジが舐められていないからそれで良い。
良くも悪くも割り切りがあった。
であれば、視野は今現在に焦点が合う事となる。
シンジの顔を見れば、お腹がすいたと体中から表明していた。
「どうなんだろ。判らないよ」
心底どうでも良い。
そういう本音で染められた言葉だった。
アスカも同意する。
そんな事よりも大事なことがあるのだ。
「じゃあさ、ミサトが帰ってこないなら、食べちゃって良いんじゃない」
煮込みハンバーグ、葛城ミサトの分である。
美味しいのだ、シンジの作る煮込みハンバーグは。
「駄目。明日食べたいから残しててって言ってたからね」
「メニュー、言ったんだ」
不満を全身から表明しながらシンジを見るアスカ。
シンジは肩をすくめる。
聞かれたからね、と。
「心底残念がってたよ。あの分だと、食べたら恨まれそうだよ」
「チッ、ミサトなんて適当なビール飲ませておけば良いのよ!!」
「でもアスカ、葛城さんがビールを買ってくるから、ね」
シンジは悪い顔で冷蔵庫の中のミサトとラベルの付けられた棚からビールを取り出した。
冷凍庫で良く冷やしておいたグラスを2つ取り出してもいる。
飲む? などと野暮な質問はしない。
悪い遊びとして、或いは冒険心の延長でシンジとアスカは偶に、アルコールを嗜んでいた。
葛城ミサトも誰も知らない、2人の秘密だ。
「………そうね、ビール担当は大事よね」
アスカも
2人は共に14歳。
外でビールなどのアルコールを買える身の上ではないのだ。
その点で馬鹿みたいに買い込んできて、飲んだ数も
料理用と称して焼酎やワインは買って来れても、ビールは流石に難しいのだから。
テーブルに着き、シンジが恭しい仕草で金色の泡が出るジュースをグラスに注ぐ。
楽しそうにその様を見ていたアスカは、先ほどまでのE計画の追加分などの話を忘れて恵比須顔だ。
キンキンに冷えたビール。
「シンジ、乾杯しましょ」
「何に?」
「取り合えず、可哀そうな作戦部長に」
澄まして言うアスカ。
シンジも、プッと吹き出す。
共にグラスを軽く掲げる。
「可哀そうなミサトに」
「残業を頑張る葛城さんに」
「「乾杯」」
チン、とガラスが鳴いた。
国連安全保障理事会で決定したエヴァンゲリオンの追加整備計画は、最終的には第2次E計画として纏められる事となった。
SEELEによる予算獲得に向けた調整、碇ゲンドウによる建造と配備に関する折衝、そしてNERV本部スタッフを中心とした現実的整備計画の立案。
この3つが、混然一体となって進められ、約1月で素案が纏められる事となった。
異様、異常なほどの大馬力だ。
その原因は国連安全保障理事会での情報、
人類の脅威存在、それが使徒。
その情報を知った
世界は蜂の巣を突いた様な大騒動となった。
その結果であった。
国連安全保障理事会は常にマスコミから注目され、監視され、そして非理事国からの折衝も多く発生していた。
沸騰した世論を治める為、早期の対応を表明する必要に駆られたのだ。
人類補完委員会を隠れ蓑とするSEELEも予算折衝で疲弊し、SEELEと理事国から早期計画立案を要求された碇ゲンドウとNERVスタッフは疲労困憊となった。
対して安全保障理事会は安穏としていたかと言えばさにあらず。
情報を漏洩した人物特定の為に
旧常任理事国と新強国、その間に挟まった日本とドイツ。
関わった誰もが疲弊し果てる様な日々であった。
葛城ミサトはその日々を指して、あのタイミングで使徒が来なかったのは残念であったと述べた。
残念である。
幸運では無い。
議論から離れられるからではない。
ストレスの発散先が来ないのが残念であると言うのだ。
「ギッタンギッタンにしてスッキリする事が出来たつーの!!」
目が据わっている。
見れば、目の下に隈も出来ている。
「ボッコボコになって最後は爆破して、スッキリできたのに残念よ、全く」
「後片付けが無ければね。それよりミサト」
赤木リツコから差し出されたビールのロング缶。
流れる様な仕草でプルタブを起こし、一気に喉へと流し込む。
駆けつけ一杯。
乾杯の前にビール缶を一気飲みしていた。
「ぷっはーっ、生き返るわ!!」
場所は碇シンジ宅。
第2次E計画を立案し、安全保障理事会人類補完委員会で成立が認められた、ある種の祝勝会での事であった。
色々と、女性としての色々をすっとばしたかの如き仕草。
日常業務と並行しての立案作業に追われ、禁酒状態であったが故の事と言える。
常であれば窘める
「ミサト、居る?」
「もっちよ!」
一気飲みでは無いが、似た様なペースでロングのビール缶を開けている辺り、赤木リツコも相当にストレスを貯め込んでいたと言えるだろう。
殆ど家にも帰れず、飼っていた猫は綾波レイに世話を頼むような有様であったのだ。
「センパイ達も酷い事に……」
乾杯用にと渡されたビールのコップを手にあわわっと慄いているのは、赤木リツコが連れて来た伊吹マヤだった。
正確に言えば葛城ミサトが声を掛けたのだ。
今日はシンジに頼んで飲める料理をお願いしているから飲もうと赤木リツコを誘いに来た際、一緒に居たので伊吹マヤもついでだとばかりに誘ったのだ。
伊吹マヤら尉官クラスの基幹スタッフは、この第2次E計画立案には携わっていない。
だが疲弊していないという訳では無い。
赤木リツコや葛城ミサトと言った幹部スタッフが立案作業に忙殺された結果、どうしても仕事量が増えてしまっていたのだから。
否、部内業務だけである分、伊吹マヤや日向マコトなどはマシな方であった。
第1発令所第1指揮区画の三羽烏筆頭、青葉シゲルは外部との交渉も担っていたが為、残業時間は幹部スタッフ並みとなる程の激務をこなしていたのだから。
尚、この場には当然ながらも青葉シゲルも日向マコトも居ない。
日向マコトは哀しい事に本日の当直スタッフであった為、人気の消えた第1発令所に残って仕事をしていた。
青葉シゲルはギター片手に「
かくして割と広めの碇シンジ宅に、今日は6人の男女がリビングとダイニングキッチンに居た。
家主のシンジと、半同居人のアスカ。
隣人である葛城ミサト
葛城ミサトが誘った赤木リツコと伊吹マヤ。
そして伊吹マヤが、ならばと声を掛けたお隣さんの綾波レイである。
食卓の上には買ってきた
それにシンジがハム、ボイルしたエビ、スティック野菜と言ったモノを用意している。
唐揚げに炒飯もある。
何処かの飲み屋かと言わんばかりのメニューだ。
やいのやいのと愚痴をこぼしたり、
いつの間にか、アスカもビール缶片手に交じっているし、綾波レイもクピクピっと伊吹マヤが持ってきたサワー缶を嗜んでいる。
下品な笑いや、ジョークが飛び交う。
宴会でも
アスカや綾波レイは、ネジが飛ぶ事は無いが、共に白身の白い肌をほんのりと朱に染めて、
襟元やスカートの裾が乱れもしていて、しかも男女比が1対5と言う、ある種の
ストレス溜まってたんだな、と。
故に、気配を消してキッチンでチビチビと焼酎を飲みながら、手製のさつま揚げを齧る。
ネットでレシピを見つけたので、肉を好まない綾波レイ向けにと作ってみたのだ。
初めての事であったが実に良い塩梅の塩加減になっていた。
美味しい。
残念なのは、その主敵標的たる綾波レイは、ニンジンやらキュウリのスティック野菜から手を離さないと言う事だろうか。
そう言えば料理はまだ足りているだろうかと、そっと主催場となっているリビングを覗くシンジ。
料理はまだまだ余裕があった。
綾波レイの主食たるスティック野菜も、まだまだ余裕があった。
辛子を混ぜ込んだマヨネーズや、チリソースに浸けては齧るをゆっくりと繰り返している。
誰にも譲らないとばかりに、スティック野菜を詰めたコップを握り続けているのは、可愛い所作と言えるかもしれない。
合間にクピクピっとサワー缶を傾けている。
その周りに転がっている、空けた缶の数は数えたくないと言える惨状だ。
と、アスカを探す。
居た。
此方は葛城ミサトと赤木リツコに挟まれ、赤裸々な女
手に持ったビール缶が歪む程に力が入っている。
と言うか目を回している様な状態だ。
その様が可愛いのか、益々もって葛城ミサトと赤木リツコは赤裸々な
鹿児島で散々に見て来た駄目な飲み会、その範例めいた惨状で出来る事など、自分の身の安全を確保するだけなのだから。
割らずに氷だけ浮かべた氷割り焼酎とさつま揚げで自分に乾杯しようとした所で、チャイムが鳴った。
新しい客が来たのだ。
「
そう言ってシンジが
宴もたけなわと言った所にやってきた人。
「誰よ?」
「よ、盛り上がってるな」
軽く言うのはNERVの制服を洒落た風に着崩している、加持リョウジであった。
「加持さん!?」
喜色めいたものを含ませてアスカが声を上げた。
この、一杯一杯になりそうな女子トークから救ってくれとの、ある種の悲鳴であった。
とは言え、当人以外には判る筈も無い。
シンジすら、そう言えば加持リョウジを好きだとアスカは言っていたよなと思い出す様であった。
少しだけ、何となく面白く無いモノを感じて、シンジはそっと静かにキッチンに引っ込むのだった。
「アスカも呑んでるのか。全く。少し早いと思うぞ?」
男臭いと言うよりも、保護者臭いと言うべき態度の加持リョウジ。
それにアスカが反応するよりも先に、葛城ミサトがべらんめえな、巻き舌めいた口調で眉を逆立たせる。
「何でアンタがここに来てるのよ!?」
「いや、副司令に頼まれてね。
ヒラヒラっとA4サイズの封筒を振って見せる。
先の第2次E計画絡みの書類であった。
作戦局
真面目な話。
仕事の話。
野暮の極みな話に、葛城ミサトが不機嫌になる前に、爆発した人が居た。
伊吹マヤだ。
飲み過ぎて、熱い熱いと言って上着のボタンをはだけさせていたのだ。
隣の妹分めいた綾波レイともども、気付いたら下着が丸見えめいた事になっていたのだ。
熱いでしょ。
熱いよねといって襟元を開けさせていたのだ。
「キャーっ!? 変態ですっ!! チカン!!!」
誰が悪いと言えば、加持リョウジで無い事は明白ではあった。
だが酔っぱらいと女性に理屈は通じない。
酔っぱらった女性ともなれば、もはや無敵だ。
故に、伊吹マヤは手に持っていたビール缶を加持リョウジに向かって投げつけたのだ。
「おわっ!?」
「いやはや、酷い目にあったよ」
シンジの出したタオルで頭から被ったアルコールを拭きつつぼやく加持リョウジ。
だがそこに嫌味の類を帯びていないのは、余裕と言う奴であろうか。
「女子会に軽々しく顔を出したのが運の尽きって事なんだろうけどさ」
「
シンジはその前に、そっと湯呑を置いた。
中身は
ヌルいとは言え液体を浴びた身なのだ。
温かいモノが良かろうとの配慮であった。
それを有難く口に運びながら加持リョウジは男臭く笑う。
「慣れた感じだな、シンジ君」
「
「アルコールを被ったりも?」
「
無論、瓶を倒したり零したりと言う事であり、濡れるのは床で寝ていた奴が被ったりである。
流石に飲みかけのビール缶が投げられるなどと言う事は、先ずなかった。
取り敢えず、シンジの周辺では。
「はっはっはっ、何処も一緒か」
余裕ある笑いの向こう側で、女子一同が片づけを始めていた。
投げた後で伊吹マヤが泣きだし、これは飲ませ過ぎたと年長の2人が反省し、お開きとしたのだ。
綾波レイもウトウトとし始めていた。
アスカは先ほどまで
体が冷えるといけないからと、そっとシンジがソファに移してタオルケットを掛けていた。
シンジが、である。
鍛えているシンジにとってアスカの体重など軽いモノであり、その動作に危ういものは無かった。
只、それを大人の誰かにお願いする事を思いつかない辺りに、葛城ミサトや赤木リツコと言った悪い大人組は楽しさを覚えていた。
特に、タオルケットを掛けてやる優しい仕草などには。
兎も角。
そう言う訳で、テーブルだの空き缶だのを葛城ミサトと赤木リツコが片付けていた。
ある種の責任払いと言えた。
尚、片付けながら飲んで喰っている。
実にタフな2人だった。
「そう言えばリッちゃん達、もうタクシーを呼んだのかい?」
「
「それは良かった。俺もアルコールを浴びてしまったんで、今日は流石に送れないからな」
「
「いや、ここは責任者に責任を取って貰うサ。葛城ィ、今日は泊めてくれよ」
「ハァ!? いきなり何を言ってるのよ!?」
「良いじゃないか知らない仲なんかじゃ無いんだしな」
「車の中で寝れば良いじゃないの」
「流石に俺の車は狭いよ」
激しく盛り上がって行く葛城ミサトと加持リョウジ。
その
第2の来客。
迎えは青葉シゲルであった。
「急いできたけど、遅くなったかい?」
取り敢えず
おひとり様でギターをかき鳴らして絶唱していたが故の呼び出しである。
否、伊吹マヤが近距離でも拒否しないからと言うのも大きいだろう。
そして、気の良さ故に頼まれれば拒否しないのだ。
送迎を頼まれるのも、
「丁度良かったわ。マヤ、レイ、帰るわよ」
泣いた後は傾眠傾向が出た伊吹マヤと、元より眠たげな綾波レイ。
綾波レイは飲酒量の少なさから、まだしっかりとした足取りだったが伊吹マヤはもう駄目だった。
「マヤちゃんは酒に強くないからね」
慣れた仕草で伊吹マヤを支える青葉シゲル。
その手際に、
だからこそ距離が近づくのかもしれない。
と、シンジがコンビニの買い物袋に入れたタッパーを青葉シゲルに差し出す。
オードブルなどの残りで綺麗な所を詰めたモノだ。
「
「おっ、有難うシンジ君。明日の朝飯にさせてもらうよ」
葛城ミサトと加持リョウジも帰った碇シンジ宅。
静かになった部屋。
只、柔らかなアスカの寝息だけが音の全てとなった部屋。
その余りにも幸せそうな寝顔を見たシンジは、後片付けをするのを諦めた。
起こしてしまっては可哀そうだと思ったのだ。
それ程に子どもの様な、無垢な寝顔だったのだ。
「おやすみ、アスカ」
もう一度、しっかりとアスカにタオルケットを掛けたシンジは囁いてから部屋の電気を消した。
暗闇に沈んだ部屋。
アスカは目を瞑ったままに呟いた。
「バカシンジ」
とても可愛らしい響きのある呟きだった。
2022.10.31 題名修正