サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 第2次E計画が齎した狂騒曲(カプリッチョ)は関わった()()()()()()()()を巻き込んだ騒動へと発展していた。

 そう、()()()()()()()()()()()()だ。

 安全保障理事会の理事国は、自分たちの野放図な要求を実現する為に必要な予算に恐怖していた。

 そして、それ以外の国家は、安全保障理事会理事国だけでエヴァンゲリオン(使徒への対抗手段)を独占しようとする事は、人道上の問題ですらあると述べる程であった。

 全人類を巻き込んだ、蜂の巣を突いた様な大騒動へと発展する。

 それ程に、Catastrophe-1999(セカンドインパクト)の記憶は人類の脳裏に焼き付いていたのだ。

 どうやってか流出した、安全保障理事会へと提出された人類補完委員会からの資料(NERVの内部資料)

 そこには各使徒が持つ破滅的な攻撃能力がハッキリと現れていた。

 人類の最終攻撃手段たるN²兵器に耐える姿が、地形を変える程の大威力光線兵器を放つ姿が、大地を溶かす溶解液を放つ姿が映っていた。

 出来の悪い娯楽映画(パルプフィクション)の怪物めいた姿。

 誰も、それを疑わなかった。

 何故なら、それらの使徒の姿の中に衛星軌道上に突如現れた全長数㎞に及ぼうかと言う使徒の姿が含まれていたからである。

 

 第10使徒。

 

 巨体を天空に置いて動いていた為にアマチュア天文家などが撮影しており、ネットなどで未確認飛行体(UFO)として知られていたのだ。

 と言うか箱根山中の第3新東京市めがけて降下してきていたのだ。

 日本列島の住人 ―― 特に関東地方を中心としたエリアの住人であれば、程度の差こそあっても、その姿を視認しており、使徒の存在に疑問を抱く余地などある筈もなかった。

 使徒との戦いの舞台となっている日本の人間が、使徒の存在を知覚していた事が知れ渡った結果、余程の陰謀論者以外は、使徒の存在に疑いを持たなくなった。

 だが同時に、それが更なる狂乱を生む事となる。

 或いは恐怖だ。

 使徒とはそれ程の、人類が持つ理論体系や知見を超える化け物(モンスター)であったのだ。

 そこに、今が書き入れ時とばかりに各国のマスコミ諸社が煽るに煽ったのだ。

 更には、宗教家や陰謀(趣味)者まで入り乱れてしまえば、自然鎮火など期待出来るモノでは無かった。

 

 

 

 TV画面には、したり顔で、使徒の脅威を口にして、同時に政府や国連の説明不足を非難するコメンテーターが映し出されている。

 それを半眼で、睨む様に見ている葛城ミサト。

 使徒が怖いのは判る。

 政府や国連、果てはNERVの動きが判らない不安も判る。

 だが、葛城ミサトは疑問を覚える。

 果たして説明とやらにNERVの使徒への対応力を裂いても良いのか? と。

 世の中、個々人の願望を充足させるだけの余裕(無限のリソース)なんて存在しないのだから。

 

「てゆうかコレ、どうなるのかしら?」

 

「さぁ」

 

 葛城ミサトの呆れを存分に含んだ疑念を、バッサリと切り捨てる赤木リツコ。

 さもありなん。

 今、赤木リツコは割と真剣に忙しかったのだ。

 場所は、もはや2人の根城となりつつある佐官級向け歓談休憩室終わらないお茶会(A Mad Tea-Party)だ。

 とは言え大部屋ではない。

 第2次E計画絡みもあって最近は国連やらNERVの他の支部からも人が来るようになった為に総務部から泣き付かれ(恐る恐るのクレームを受け)て、個室 ―― 40㎡程の部屋を独占する様にしていた。

 ここら辺は、流石はNERV本部の№3&4(ニア・トップ)と言った所であった。

 それぞれ立場相応の立派な執務室もあったが、作戦局と技術局とで横断的に行う事案が多すぎたのだ。

 互いに抱えている仕事で詰まった時に、(マブ)に簡単に聞けると言うのは実にありがたいのだ。

 後、息抜きの雑談も楽と言うのがあった。

 共に、責任者として部下の前では背筋を伸ばさねばならぬ為、この手の息抜きも決して軽視出来るモノでは無かった。

 特に、今の様な赤木リツコにとっては。

 

「どちらにせよ、面倒事は此方(現場)に放り投げて来るだけよ」

 

「珈琲飲む?」

 

「今は結構よ」

 

 一言(バッサリ)である。

 目も冷たい。

 煙草を咥えながら、ノートパソコンのキーボードを叩いている。

 追加仕事だ。

 第2次E計画は予算問題その他によって安全保障理事会での採決が遅れていたが、それはそれとして、エヴァンゲリオン建造の最高責任者となっている赤木リツコに人類補完委員会(SEELE)からエヴァンゲリオン建造に関する具体的、かつ効率的な方策(プラン)の提出が要求された結果であった。

 現在、昼夜を問わずに行われている安全保障理事会では、流石に12機の建造は再検討すると言う方向で話が纏まりつつある。

 予算面が膨大と言う事もあるし、それ程の予算を掛けても防護できる範囲(エヴァンゲリオンの行動範囲)は狭いと言うのが問題視されあのだ。

 又、追加される12機が安全保障理事会理事国で分配されるのは覇権(帝国)主義であると言う批判の声も、決して座視出来るモノでは無かったのだ。

 国連は、決して安全保障理事会理事国や人類補完委員会(SEELE)が専横出来る組織では無いのだから。

 

 だから、赤木リツコに負担(しわ寄せ)が来ているのだった。

 要求されているのは可能な限り素早く、そして安くエヴァンゲリオンを建造できる手段の構築であった。

 それはもう、面倒くさい等と言うレベルでは無かった。

 そもそも第2次E計画での予算案も、馬鹿げた規模に見えても野放図には組まれておらず、それどころか必要最小限を目指していたのだ。

 自分(技術局)の手間を削ると言う意味で。

 対使徒迎撃計画としての人類補完計画では無く、SEELEや碇ゲンドウが秘密裏に行っている、言わば裏の人類補完計画を知ればこそでもあった。

 人間、誰だって無駄な事はしたくないものだからだ。

 

 にも拘わらず、更に予算を圧縮しろと命令されれば、赤木リツコも気分を害するのも当然と言う話であった。

 結果、現行の正規量産型エヴァンゲリオンの構造の簡素化と並行して、情夫兼NERV総司令官である碇ゲンドウに掛け合ってNERV本部地下に眠っている製作技術確認用の素体や各支部が抱えている物資の流用その他。

 無茶を押し付けるならば、その分の権限を寄越せと声を上げたのだ。

 そしてソレが通っていた。

 NERVの序列第4位と言う常の権限以上の、第2次E計画に絡みさえすれば碇ゲンドウに準じた権限が赤木リツコに与えられたのだ。 

 碇ゲンドウは、寝室での反乱に抵抗する術を持てなかったと言えるだろう。

 翌朝の、艶々となった赤木リツコと、げっそりとした碇ゲンドウ。

 文字通り尻に敷かれたのが判る2人の様を、NERV総司令官執務室で見た冬月コウゾウは失笑を隠さなかった。

 只、ユイ君に叱られるぞ? そんな言葉だけは飲み込む事に成功していたが。

 

 

 兎も角。

 権限を奪った上で大馬力で働く赤木リツコ。

 今、行っているのは赤木リツコと言うエヴァンゲリオンの第一人者でしか成し得ない事 ―― 汎用性と言った余力を削ぎ落した量産性最優先のエヴァンゲリオン、言わば第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンの概念の構築であった。

 MAGIとの検算も繰り返しているが、概算で相当なコスト削減が図れると見ていた。

 特に4機だけならば、NERV本部地下で眠っている廃棄体(廃材)その他を流用する事で、エヴァンゲリオン弐号機の様な正規量産型エヴァンゲリオンの7割近い費用で建造が可能となるとされていた。

 但し、その対価は決して廉くは無い。

 汎用性の低下だけではなく、素体の骨格部分に廃材を流用する関係上、耐久性の低下は決して座視出来るモノではないのだから。

 例えば、碇シンジがエヴァンゲリオン初号機で行っている様な近接格闘戦は不可能と想定されていた。

 延々と、そして激しく行われる運動に足回りが耐えられないのだ。

 又、エヴァンゲリオン4号機で綾波レイが行っている射撃戦も難しい。

 機体の安定性が低い為、高精度の遠距離射撃戦も難しいのだ。

 高度な、格闘と射撃とを両立させる惣流アスカ・ラングレーのエヴァンゲリオン弐号機並みの戦闘に至っては、それを為せると思うのは妄想と呼べるだろう。

 正しく廉価版エヴァンゲリオンであった。

 だが、()()()()()()()

 使徒が出現した際に支援部隊と共に時間稼ぎを行い、NERV本部部隊乃至はドイツ支部の戦略展開部隊が現場に到着するまで被害を抑えれれば良いのだから。

 ある意味で機動人型A.Tフィールド発生装置。

 そう赤木リツコは割り切っていたのだった。

 とは言え、それは独断では無い。

 葛城ミサトを代表とした戦術作戦局のとのすり合わせで決められた仕様であった。

 これは現在の適格者候補生(リザーブ・チルドレン)たちの()の問題でもあった。

 エヴァンゲリオンを動かす上で重要な機体とのシンクロ率は起動指数ギリギリであり、シンジやアスカの2人(エース級)は勿論、2人に比べてかなり低い綾波レイと比べても半分以下と言う有様であったのだ。

 コレでは、今の様な対使徒戦術などが流用できる筈も無かった。

 だからこそ、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンは簡易的な機体として建造する積りであったのだ。

 

 尚、その上申を見た碇ゲンドウやSEELEは、国連安全保障理事会理事国の管理下に入るエヴァンゲリオンが簡易的な機体である事を、積極的に評価していた。

 将来的な、自分たちの障害にはなり辛いと見ての事であった。

 碇ゲンドウにとってNERV本部所属のエヴァンゲリオンは手駒であった。

 SEELEも、儀式用エヴァンゲリオン9体の建造準備を密かに進めていた。

 尤も、ソレらはある意味で画餅であったが。

 NERV本部のエヴァンゲリオン、その筆頭(エースオブエース)は折り合いの悪い息子シンジであり、次ぐ才能を持つアスカはSEELEの影響の大きいドイツ支部出身である為、政治的に信用し辛いのが現実であった。

 そしてSEELEのエヴァンゲリオン。

 此方は、より喜劇的ですらあった。

 そう遠くない未来、第2次E計画が改訂採択された際に秘匿して集積していた建造用の資材が赤木リツコに発見されてしまい、只の余剰物資と判断されて徴発され、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン建造に流用されるのだから。

 誠にもって世の中、儘ならぬものであった。

 

 

 忙しい赤木リツコに対して、葛城ミサトが暇かと言えば、そういう訳では無かった。

 使徒が来ない状況であったが、新規の適格者訓練計画、その優先順位の策定などに関わっている為、有体に言って忙しい立場であった。

 又、外部 ―― ドイツ支部からは成果の上がらぬ適格者候補生に刺激を与える為、一度、NERV本部のエースをドイツに派遣して欲しい等と言う話も出ていた。

 ドイツ支部であるが、第2次E計画に絡んで適格者の選抜と訓練を十分に出来ていない事を批判されていたのだ。

 先ごろまでであれば、乗るべき機体(エヴァンゲリオン)が無いからと言い訳も出来たが、エヴァンゲリオン4号機が実戦投入されており、残る各機も建造を開始したばかりのエヴァンゲリオン8号機は兎も角として他の4機は艤装が最終段階に達しつつあるのだ。

 言い訳の赦される段階を越えつつあった。

 現場からシンジ、乃至はアスカをドイツ支部に訓練教官補助として引っ張りたいとの希望は、その焦りと言えた。

 無論、葛城ミサトは却下であった。

 派遣している最中に使徒が襲来して来ては問題であるからだ。

 今現在、3人の正規適格者の価値と言うモノは宝石よりも貴重であり、それは人類の存続に直結する問題でもあるのだ。

 ドイツ支部の面子を維持する為に動かせるものでは無いのだ。

 とは言え、突っぱねるだけでは意味が無い。

 3人に続く適格者を養成する事も大事なのだ。

 適格者が増えれば体調不良やその他も備える事が出来るし、何ならば少しだけならば現場(第3新東京市)を離れて休養(バカンス)を取る事も出来るだろう。

 この点に関して言えば、子ども達の全般を担う支援第1課課長である天木ミツキも、この意見を推していた。

 この為、葛城ミサトはドイツ支部の要請に対して逆に、ドイツ支部で訓練中の子ども達をNERV本部へと招聘し、見学と交流会を行う事を提案していた。

 その意味で忙しい身の上なのだ。

 責任者としての葛城ミサトは。

 だからこそ赤木リツコと同様に、この場に居るのだとも言えた。

 仕事ばかりに集中していては、ストレスは溜まるだけであり発散が出来ないのだから。

 

「怠い」

 

「そうね」

 

「使徒何てこの世から消え去れば良いのに」

 

「そうね」

 

「シンジ君の唐揚げ、食べてない」

 

「そうね………そう?」

 

 割と最近、シンジの弁当を差し入れして貰ったのだ。

 その時のおかずに唐揚げは入っていた。

 柔らかく、そしてジューシーで美味しく、だから赤木リツコも覚えていたのだ。

 が、そんな赤木リツコの意見を、チッチッチっとばかりに指を振って否定する葛城ミサト。

 

「揚げたてよ、揚げたて。アツアツを、ビールと一緒にかっ喰らいたいのよ」

 

「ミサト、太るわよ」

 

「うっ………」

 

 制服、その腰回りが少しばかり窮屈になった自覚のある葛城ミサトは、ソッポを向いた。

 その様を笑って窘める赤木リツコ。

 

「もう直ぐ結婚式でしょ、準備は大丈夫?」

 

 大学時代の同期生が、又、結婚するのだと言う。

 それだけならオメデトウで終わる。

 終わらないのは、甲府市の方で農業関係の国の仕事をしていた為に2人にも結婚式の招待状が来ていたと言う事だ。

 葛城ミサトも赤木リツコも、それに天木ミツキまで出席を決めていた。

 近場でもあったし、ハレ事で、息抜きしたいと言う思いがあればこそと言えた。

 建前として、国とのパイプ作りと維持の為を掲げてはいたが。

 

「そう言えばリツコの礼服、ほら、裾が汚されちゃってたけど直しておいたの?」

 

「してないわね」

 

 赤木リツコのフォーマル系のドレスだが、以前に出席した別の友人の結婚式の余興で汚れてしまったのだ。

 友人の結婚相手がヤンチャな、国連軍歩兵部隊の将校であった為、余興が派手(無礼講)であったが為であった。

 そして、忙しさにかまけて、赤木リツコはそのクリーニングを後回しにしてきていたのだ。

 

「新しいのを買おうかしら」

 

「買いに行く暇はあるの?」

 

「行きたい」

 

 行こうではなく行きたい。

 行きたいけど行けないような気がする。

 そんな、赤木リツコの気持ち、或いは気分が良く出た表現であった。

 

「いっそ、NERVの礼服で行く?」

 

「止めて………いや、悪くない案ね」

 

「え”!?」

 

「作ってはみたけど、着て行く先も無いNERVの礼服だもの。供養も必要よ」

 

「そうね。最近は私も袖通してなかったし、良いか」

 

「良いわよ。だって今をトキメクNERV様よ」

 

 心が躍る、そんなフレーズをウンザリと言う声色で言う赤木リツコ。

 色々と煮詰まっている様であった。

 

「リツコ、今度飲みに行きましょう」

 

「シンジ君ところで十分よ」

 

「………あんましシンジ君の処でやり過ぎると、アスカの目が怖いのよ」

 

「あら、独占欲?」

 

 シンジの家に自分以外がわが物顔で来るのが気に食わない。

 そういう事だろうかと目を細めて、可愛いものだと笑う赤木リツコ。

 

 最近のアスカは、シンジの独占欲が出て来ていた。

 大人と言う事での憧れでもあった加持リョウジの事は別にして、シンジを(パートナー)として意識しだしていたのだから。

 ある意味でドイツの人間関係感とも言えた。

 男女の人間関係を進めるためのお試し期間(プローベツァイト)を迎えつつある。

 ドイツへの留学経験もある赤木リツコはそう見ていた。

 尤も、シンジがその事に気付いてはいないだろうとも、見ていたが。

 

「も、あるだろうけど、あの娘って、ほら、割と人見知りでしょ」

 

「ストレスって事。なら仕方ないわね」

 

「もう少しリツコも来る頻度を上げれば良いわよ、きっと」

 

「まるで猫ね。でもそれはシンジ君の負担が大きいわよ。それにマヤやレイの事もあるし」

 

「そこかー なら、外ね」

 

「ま、誘ってくれた作戦局局長殿の財布に期待しましょ」

 

「幾らでも奢るわよ。給与が丸々残ってるのだもの」

 

「あら、車の方はやってないの?」

 

「乗る暇が無いので壊れないし、最近は乗る体力も無い。疲れた」

 

「………そうね」

 

「っとに、誰よ、使徒の情報を流した奴って」

 

「さぁ? 戦略調査部の、それも特殊監査局が動いてるって聞いたけど、まだ報告書は上がって来て無いわね」

 

「剣崎君の所か。あそこが本気でやってしっぽが見つからないなら、ウチ(NERV内部)の仕業じゃ無さそうね」

 

「有難い話よね」

 

「本当に」

 

 溜息をつくように言葉を漏らす赤木リツコと、同意する葛城ミサト。

 内部からの情報漏洩があったとなれば、その人員の拘束と処罰は別にして、その行動に汚染されていた人間の炙り出しその他も重要になってくるのだ。

 その間、NERV本部の業務遂行能力は劇的に低下する事になるだろう。

 何時、使徒が襲ってくるのか判らぬ状況でソレは、現場の責任者として心底から勘弁して欲しい話であった。

 

 と、葛城ミサトのPCにメールが届いた。

 

「あら、何かしら」

 

 素早く目を通していく葛城ミサト。

 最初はやる気の無い顔であった。

 が、文面を追う毎に、困惑が追加されていく。

 

「ええ!?」

 

 最後は素っ頓狂な声を上げていた。

 顔も面白い事になっている。

 

「どうしたの?」

 

「広報部からなんだけど、うん」

 

 赤木リツコの質問に、顔を向ける事無く生返事をする葛城ミサト。

 目は文面を追いかけている。

 このメールに間違いがないのか、と。

 

「正気を疑うと言うか、凄い事を言い出してて」

 

 頭を掻いている。

 実にオッサン臭い態度とも言えるが、それを指摘する人間は居ない。

 

「何?」

 

「いや、今の人心の擾乱を安定させる為に、NERVが積極的に活動を広報するべきって言ってるのよ」

 

「………」

 

「機密性の低い戦闘場面の公開や、守護者としての子ども達の公開とか………」

 

 特に子ども達の情報公開に関しては、エヴァンゲリオンを駆る適格者(ヒーロー)、或いは守護者としての偶像(アイコンとしてのアイドル)としての公表であり、人々の心を安定させようと言うのだった。

 一応、付帯して子ども達(チルドレン)に関しては、未成年と言う事もあるので教育とかプライバシーに配慮して、情報の全公開ではなく年齢や性別、目や口元を隠しての公開とか書いてあった。

 それにしても、正気を疑うと言うものであった。

 反NERV、或いは反国連。

 陰謀論に染まったテロリストに情報を与えるようなものだと言うのが正直な感想であるのだから。

 

 そもそも今の子ども達(チルドレン)には向いていない。

 顔立ちと言うか雰囲気で言えば、3人ともアイドル(偶像)には向いていた。

 だが、綾波レイに社交性を求めるのは無理だ。

 無垢すぎるのだ。

 シンジは社交性はあるけども、絶対に方言は止めてくれないだろう。

 唯一、アスカはアイドル役も出来そうではあるし、常々、選良(エリート)たる自負を口にしていたので問題も無さそうに見える。

 だが葛城ミサトの見る所、アスカは人としての性根の部分が3人で一番の子どもっぽい所があった。

 或いは人格の安定性と言っても良い。

 この点に関しては天木ミツキも同意していた。

 故に、今現在、シンジと言う相方を得て漸く安定し、成長を始めたばかりの幼子に人の欲求の標的役(アイドル)なんてさせたくないと言うのが大人としての良識であった。

 

 却下。

 それ以外の結論は無かった。

 

「NERVって、一応は秘密機関で非公開組織だって自覚、あるのかしら」

 

「暇、だったのかしらね」

 

「羨ましいわね」

 

 吐き捨てる様に、赤木リツコは言った。

 

 ()案めいた提案と言えキレた内容のNERV広報部のメールに、否定的な結論(解答)を葛城ミサトと赤木リツコは抱いていた。

 実際、この根は生真面目な性格をした2人だけで物事を決めるのであれば、話は終わっていた。

 だが、このメールは碇ゲンドウの手元にまで届いたのだ。

 SEELEと秘密会議や、何故か安全保障理事会にまで呼ばれて打開策を要求され続けて疲弊した、碇ゲンドウの元へと。

 

「構わん。それで打開できるのであればやってみれば良い」

 

 許可(ゴーサイン)を出したのだ。

 出してしまったのだ。

 狂騒曲の第2幕が始まる事となる。

 

 

 

 

 

 




アスカはドイツから来た女の子
そういう文化的な相違って美味しいですよね(満面の笑み

2022.10.31 題名修正

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