サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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09-Epilogue

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 エヴァンゲリオンと団結した人の(暴力)によって沈んだ第11使徒。

 その日、第3新東京市の飲み屋街は記録的な売り上げを出す事となる。

 人間の勝利とも言えた。

 明日からは、エヴァンゲリオン弐号機のA.TフィールドとEW-31(フレームランチャー)によって滅茶苦茶にされた地下整備区画の後片付けを筆頭に、戦いによって荒れてしまったNERV本部地下設備の()()が待っている。

 だがそれでも自らも参加した戦い、その勝利の美酒に酔いたいと言うのが人情であった。

 明日、或いはその先に次の使徒が来たとしても、先ずは今日の勝利を喜ぼう。

 そう言う話であった。

 無論、NERVは24時間365日(フルタイム・フルスロットル)と言う仕事だ。

 飲める人間が居れば飲めない人間も居る。

 残業に関わる諸事は明日に回して良いと葛城ミサトが冬月コウゾウに掛け合って認めさせたが、流石に待機シフトは通常通りに行われる事になった。

 

 監視スタッフ主体となって、静かな第1発令所。

 ごく少数の不運なスタッフは席を寄せ合って晩餐としゃれこんで居た。

 とりあえず飯を喰おう。

 監視チームの班長(リーダー)を担う日向マコトの号令によってであった。

 第3新東京市(箱根山)を起点にした対使徒哨戒網は正常に作動している為、多少は息を抜いても良いだろうとの判断であった。

 

「主食のおにぎりに主菜のカップラーメン、そしてウーロン茶で乾杯だな」

 

「そうですね」

 

唐揚げ(ホットスナック)もありますよ!」

 

「春巻きもですね」

 

 第1発令所第1指揮区画の後方にある、常ならばPC(ノートパソコン)だの地図だのといったアレコレが乗っている幕僚向けテーブルに、今は大量のコンビニ袋が載せられている。

 いろいろなカップラーメンや弁当、おにぎり、様々なおかず(ホットスナック)

 或いは菓子パンの類。

 それにペットボトルのドリンクだ。

 葛城ミサトの差し入れだった。

 第11使徒対応で晩飯を買いに行く暇も無ければ、スタッフ向け食堂も()()()()()()()に閉鎖されている為であった。

 

「家で喰うより豪勢ですな!」

 

「全くだ」

 

 笑い合う一同。

 

「しかし、葛城さんの差し入れにしては、ビールが入って無いな」

 

「残念!」

 

 陽性の笑いが上がる。

 ある意味で貧乏くじめいた居残り(夜間監視業務)ではあったが、第11使徒を自らの手で倒せたと言う気持ちは前向きな元気を与えていた。

 やいのやいのと盛り上がりながら夕食を食べていた一同。

 そこに来客が来る。

 

「中々、楽しそうだな諸君」

 

 冬月コウゾウだ。

 

「副司令!?」

 

「ああ。そのままそのまま。気にする必要は無い」

 

 そうは言われても、組織の序列第2位(№2)を前にしてカップラーメンを啜れる剛の者は居ないと言うものであった。

 手で制されて立ち上がる事は無かったが。

 

「君たちの様子を見に来ただけなのだ。元気であるなら結構だよ」

 

「有難くあります。しかし副司令もこの時間まで?」

 

 代表して日向マコトが答える。

 上級者が精査決済するべき書類作成も明日以降に投げられているのだ。

 お偉いさん(冬月コウゾウ)がする事など今は無い筈であった。

 その解を冬月コウゾウは苦笑と共に述べる。

 対外折衝である、と。

 

「本部施設内への直接侵攻だったからね、人類補完委員会や日本政府との情報交換が長引いてしまってね」

 

 遠隔会議であったと言う。

 何かの役に立つ訳では無い会議ではあったが、NERV本部地下施設まで侵攻を受けたという事の重さが必要としていた。

 要するには感情失禁(ヒステリー)、その発散であった。

 

「お疲れ様です」

 

「ああ。上の老人共の愚痴を聞くのも私の俸給分と言う所だよ」

 

 心底から労わる口調の日向マコトに、何でも無いと笑う冬月コウゾウ。

 その様は大学教授の様でもあった。

 研究内容に理解の無い大学運営サイドに掛け合って、ゼミの運営資金を確保していく様とも言えた。

 

「もう少し私に力があれば、君たちにももう1品は付けられたかもしれんのだがね」

 

 サラダ位は必要だと笑う冬月コウゾウ。

 日向マコトは愛想笑いを浮かべた。

 サラダより肉が欲しい。

 脂っ気が欲しい。

 まだまだ若い(そう言う年頃)のだから。

 

「お気持ちだけで大丈夫です」

 

「そうかね? では私も帰るとする。頑張ってくれたまえ」

 

「有難くあります」

 

 手を振って去っていく冬月コウゾウ。

 流石に全員が立って見送る。

 

「副司令も大変だよな」

 

「全くだ。そう言えば碇司令も確かまだIDは本部施設内在住だったよな?」

 

「ああ。点呼の時に確認した」

 

「偉くなるのも楽じゃないよな」

 

「本当だ」

 

 

 

 背中で部下たちの声を聞いた冬月コウゾウは、小さく声を漏らしていた。

 

「あっ」

 

 忘れていた。

 そんな言葉を喉の奥に飲み込みながら。

 

 

 

 NERV本部地下、最深部(セントラルドグマ)

 使徒の標的となるアダム、を模したリリスを封印しているNERV秘中の秘たる場所。

 巨大な空間には磔にされたリリスから漏れ出た液体(L.C.L)が満たされている。

 その岸辺で、碇ゲンドウは座っていた。

 放棄され埃まみれとなった古い調査研究設備、そこにあった椅子に座っている。

 A号封印体(Solidseal-α)の入ったトランクを抱える様にして持ち、只ひたすらに巨大なリリスを見ている。

 

「まだ、地上は終わらぬのか………」

 

 空腹、のどの渇きと戦いながら碇ゲンドウは必死に耐えているのだった。

 このL.C.Lは口に含んでも大丈夫だったかな。

 そんな事を考えながら。

 

 

 

 

 

 葛城ミサトの打ち上げ。

 最早定番化しつつある碇シンジ宅が宴会場になっていた。

 年下の、中学生の、子どもの家ですると言う事に葛城ミサトに抵抗はない。

 アスカが反対しようとするがヒト睨みで黙らせる。

 シンジは最初から抵抗しなかった。

 シンジとアスカがくすねて飲んでたビールの対価だと言われれば、平伏して(へへーっと)受け入れるだけしか出来なかったとも言える。

 取り敢えず、食材代は巻き上げたし、参加者も総菜などは持ちよりとはなっていたが。

 

「しかし、俺が居ても良いものなんですかね?」

 

 そう言って肩をすくめたのは青葉シゲルであった。

 独居男子らしく、持ち込んで来た総菜は出来合いのオードブルであった。

 とは言えコンビニやらスーパーではなく、デパート地下の総菜屋で買ってきている辺り、何と言うか()()()()()()()()と言う塩梅であった。

 

「ナニを言うんだい、何時も送迎で活躍しているじゃないか。それに、居て貰わないと男率が悪くてね」

 

 男臭く笑っているのは加持リョウジであった。

 葛城ミサトの酒を飲むぞ飲むぞ発言の場に居合わせたので、俺も参加させろと参加権を確保しての最初からの列席であった。

 で、その際に上記の様な理由で青葉シゲルを誘ったのだ。

 別段に同期と飲む予定も無かった為、青葉シゲルは誘いに乗ったのだった。

 

「それに、マヤちゃんとも良い仲だって聞いてるぜ?」

 

 キラッっと歯を輝かせる加持リョウジに、青葉シゲルも苦笑を漏らす。

 仲良くはしていますよ、と。

 

「だけど加持さんが言うような男女的なって奴じゃないですよ」

 

 可愛げがあるんで手を貸してやりたいんですよ、と言う青葉シゲル。

 こういう所が、仲良くなる(警戒されない)秘訣なんだろうと加持リョウジは思っていた。

 少なくとも以前に自分がアプローチした際の不審者を見る様な態度を思い出せば、納得するとも言えた。

 

「はっはっはっ、そんなモンかな」

 

 2人が居るのはキッチンだった。

 甲斐甲斐しく料理の準備 ―― シンジの手伝いをしている。

 役割分担だ。

 女性陣は、シンジ宅の全てが手の中にあると言わんばかりの態度で出されるアスカの指示に従ってリビングの準備をしていた。

 ソファーを動かし、テーブル(ちゃぶ台)をアスカの家から持ってくるなどの一番の肉体労働だ。

 男衆(加持リョウジたち)で無い理由は、男女平等(ジャンケン)の結果だからだ。

 ぶーぶー言いながら、手袋(軍手)で汗を拭う葛城ミサト。

 無様ねと笑っている赤木リツコ。

 テラスでビールなどを氷水に浸けてせっせと冷やしている人間(綾波レイ)も居る。

 働かざる者食うべからず。

 そんな格言めいて飲み会の準備が進められていた。

 隣のアスカ宅でも、伊吹マヤが刺身盛りをやって居たりもする。

 反対隣の葛城ミサト宅を使わない理由は、言うまでもないだろう。

 使えないのだから仕方がない。

 赤木リツコなどは、リョウちゃん(加持リョウジ)が泊まりに来た時にさせれば良いじゃない等とシレっと煽るが、葛城ミサトは聞こえないふり((∩゚Д゚) アーアー キコエナーイ)で手を動かす。

 そしてアスカは指示をしながら、大人って(フケツ)っと半睨みをしていた。

 誰かが洒落で買ってきた、()()()()()と言うタスキを掛けながら。

 

 猥雑な、だか楽しい雰囲気に満ちているシンジ宅。

 その中でせっせと料理をしたり、オードブルを皿に盛りつけしながらシンジは笑う。

 楽しそうに笑う。

 

「良い笑顔だな、シンジ君」

 

楽しかでよ(楽しいですからね)人が集まっせぇに(皆で集まって)やいのやいのとやっとがまこてよか(賑やかなにするのは好きですからね)

 

「そいつは良かった」

 

ほあ、こん皿を持っててくいやい(この皿はもう持っていって大丈夫ですよ)

 

「ああ、任せろ」

 

 リビングを見ればテーブルの準備は終わっていた。

 既に葛城ミサトなどは席に座って乾物(ポテチだのスルメだの)の準備に取り掛かっているのだ。

 大皿料理を運んでも問題は無さげであった。

 

「青葉君、そろそろ全部、運んでしまうか?」

 

「良いですね。シンジ君もそろそろ行こうか?」

 

ほうな(判りました)ほいなら(でしたら)こんとが終わいもしたら行っでよ(この卵焼きが終わったら移りますよ)

 

 折角、卵を割って準備していたのだ。

 それを放置するなど勿体ない。

 そういう話であった。

 

「じゃ、大根おろしはもう少し、作っておくかい?」

 

じゃいなら(そうですね)頼んもんで(お願いします)

 

 頼まれた青葉シゲルが大根に手を伸ばそうとした、その手をアスカが止めた。

 アタシがするから、と言って。

 

「アッチの準備は終わったから、青葉さんはマヤを呼んできて」

 

 アスカの家のキッチンで忘れられていては可哀そうと言うのがあった。

 呼びに行く役を青葉シゲルに頼む辺りは、アスカも実に乙女と言う所なのかもしれない。

 シンジとの作業を取ったとも言える。

 そんなアスカの乙女心を理解した加持リョウジは、声を立てる事無く大皿などをリビングに運ぶのだった。

 

 

「卵焼きにGratedRadish(大根おろし)って良く合うわよね」

 

「うん。マヨネーズが良いって人も居るらしいけど、僕はコッチが好きかな」

 

「ママの味?」

 

「うん、義母さんが良くしてくれたよ」

 

「そっ」

 

 リビングの大人組は、キッチンで並んで料理しているシンジとアスカの後姿をそっと覗いていた。

 ニヤニヤとした悪い大人の顔をしていた。

 汚れていない綾波レイは首元を掻きながら呟く。

 

「コレも、痒いと言う気持ち?」

 

 そんな絵が、刺身の大皿を持った青葉シゲルを連れた伊吹マヤが帰ってくるまで続いていた。

 

 

「どこも女性の方が強いか」

 

「あら、私はヨワいわよ?」

 

「いやいや。一番強い側だと思うけどね」

 

「そうね、ミサトは我が強いものね」

 

「リツコ………おぼぇT」

 

「さ、乾杯乾杯」

 

「ほら、ミサトもビールよビール。レイも席に座りましょ」

 

 

「乾杯」

 

 主役と言うタスキ(御指名)に、アスカが上げる乾杯の声。

 誰もがビール缶を抱えて唱和した。

 シンジ宅で一番の賑やかな時間が始まる。

 

 

 

 

 

 




2022.10.3 文章修正

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