【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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碇シンジは惣流アスカ・ラングレーとの距離を取り切れずにいた。
好きだと言う気持ちの自覚は、アスカの父親であるヨアヒム・ランギーの手によって完全な形で為された。
為されてしまった。
好きと言う気持ち。
言葉にして、口にだして認めてしまえば、後は楽になった。
アスカと一緒に居たい、そして離れたくないと言う想い。
だからこそ迷ったのだ。
自分が、アスカを好きだと口にして良いのかと言う思い。
アスカと仲が良いと言う点は自信を持っている。
が、それは
かつてアスカが常々言っていた、加持リョウジへの好きと言う言葉が、シンジの足を止めたとも言える。
人一倍に、羞恥心と言うモノが強いが故にとも言えるだろう。
兎も角。
自覚してからというもの、
煩悩を払う様に、一心不乱に
横木が用意出来なかったので、適当な木を選んでの立木打ちをした。
猿叫と共に振るう木剣。
100回と200回と振っても消えなかった。
アスカの顔が脳裏から消えなかった。
だから1000回と振るった。
木が折れた。
そこまでしてもアスカの顔は消えなかった。
消えなかったからこそ、一心不乱では無く雑念交じりに振るってしまったのではないかとシンジは思い、戻って休憩する事を選んだ。
正に
だが、そんなシンジの悩みもアスカが
「
アスカに対して躾けてやるとばかりに腕を振り上げ、そして掴まれたギード・ユルゲンス。
親からの教育、或いは家庭教師による教育は別として、NERVでの
だからこそ、最初、腕を掴まれたと言う事に驚いた。
睨まれると言う事にも、驚いた。
驚きの余り、反応が出来なかった。
「
とは言え、その声に
「
「
シンジを相手に殴り掛かった。
今、シンジが着ているのは候補生が来ているモノと同じ灰白色のトレーニングウェアであり、
だから、なのだ。
取り巻きの2人はシンジを、
殴って躾けてやる。
そういう
暴力は禁じられている。
だが、多少の暴力沙汰は自分たちの
そう思えばこその慢心であった。
快音。
堅い木の音と共に、慢心は止まる。
2つ拳は、シンジが盾とばかりに動かした木剣によって止められた。
2人分の重さを、シンジは腰を入れ、肩を入れ、真っ向から封じてみせる。
「
笑うシンジ。
殴り掛かられたと言う事で、正当防衛の様式は揃ったのだ。
立木打ちでも発散できなかった
両手を離す。
ギード・ユルゲンスからも木剣からも手を離す。
踏み込み。
利き手の側、先ずは右手に居た取り巻きから潰しに掛かる。
1足で距離を詰め、避ける事も回避も許さず肘打ちを放ったのだ。
コンパクトな軌道の、抉る様な一撃は、見事に吹き飛ばした。
「
一見すれば優男風のシンジが、割と大柄な取り巻きBことバルナバス・ネッツァーを吹き飛ばした。
その事に残った取り巻きAことアルヴィン・マイネッケは驚き、同時に、己を諫めた。
相手はギード・ユルゲンスに手を出す様な馬鹿だが、
決して油断は出来ぬと認識を改め、真剣にシンジを潰そうとする。
アルヴィン・マイネッケはシンジよりも細身であるが、ボクシングを学んでいた。
ギード・ユルゲンス程では無いが、アルヴィン・マイネッケも
ある種の伝統として、体を鍛える事が義務めいているのだった。
小刻みにステップを踏みながらシンジに迫るアルヴィン・マイネッケ。
近代的な、科学を背景にして育てられたボクシングと言う闘術。
牽制の為の小刻みなジャブ。
そして踏み込み。
だが、踏み込みと言う意味に於いてはシンジもまた決して劣る所は無かった。
被弾上等とばかりに顎を引いての吶喊。
「
アルヴィン・マイネッケのジャブは確かにシンジを捉えた。
だが伸びきる前の拳が、堅い額に当たっただけなのだ。
であれば
そしてもう1つ。
シンジに間合いに踏み込まれたのだ。
ジャブで伸びた右腕を掴み、そのまま一気に左に相手を巻き込み、そして押し倒す。
肩を極める。
NERVで、戦闘訓練の一環として学んだ格闘術、その応用だった。
シンジはボクシングを舐めなかった。
拳の応酬と言う意味では格上だろうと思い、であるからこそ関節を潰す動きを選んだのだった。
「
悲鳴を上げるアルヴィン・マイネッケ。
ボクシングでの痛みに馴れてはいても、関節を締め上げられる痛みと言うのは未体験だったのだ。
さて、これからどう
「シンジ、そこでaufhörenよ。もう十分だもの。それから、
後半は、ギード・ユルゲンスが相手だった。
拳を握って、アルヴィン・マイネッケを助けに入ろうかと窺っている、その機を制した形だ。
不快気に鼻で笑い、答える。
「
「
殴り飛ばされ、顔に芝の枯れ草を纏わせたバルナバス・ネッツァーが吠えた。
が、それがアスカの笑いをより深くする。
「
その紹介をするアスカは、その日一番の
シンジとギード・ユルゲンス及び取り巻きとの
おっとり刀でやってきた
其処から先は大人の時間となる。
公衆面前、沢山の
同時に、その
最初に動いたとされるシンジは、
否、小言は言われた。
シンジも又、VIPである
ある意味で
対して洒落にならない事となったのはギード・ユルゲンスと取り巻き2人であった。
子どものした行為とは言え、碇ゲンドウら組織トップを除いて
否。
未遂ではない。
振るっているのだ。
それが未遂めいているのは、
その意味に於いて、
特にアスカの父親である
生半可な処置では許されないと言う勢いであった。
尚、対してシンジの父親である碇ゲンドウは、NERVドイツ支部の人間からすれば空恐ろしい程に無反応であった。
その本音的な部分としては、少しシンジが痛い目にあったのであれば良いし、
とは言え、周囲はそう取らない。
特にNERVドイツ支部としては、この少し前にも
試されている、と思うのも当然であった。
結果として尋常では無く重い処分が下る事となる。
ギード・ユルゲンス以下3名の、NERVからの追放。
及び経歴の抹消である。
NERVに所属していたと言う経歴が消えるのだ。
その上で、追放処分と言う事でNERVはおろか国連機関にも再就職する事は不可能になる。
経歴に付いた染みと言う意味では、極めて厳しいものであった。
当然ながらも、ギード・ユルゲンスは強く反発し、処分の撤回を要求した。
ユルゲンス家を介して
それどころか、以前からの素行の悪さを指摘され、更には
今までの、
だが驚いている間にも情勢は動いていく。
現実は過酷であった。
正式にNERVからの追放が決まるまでの時間。ギード・ユルゲンスはせめてと1つの願いを口にしていた。
自分とシンジの試合である。
暴力沙汰で追放されるのは受け入れよう。
だが、自分はシンジに何もしていない。
だからこそ、一度、白黒を付けさせてほしいとの事であった。
自分が優れていると言う事に自負を持っているが故の。態度であった。
NERV総司令官の息子と、SEELEメンバーの縁者。
肩書では負けているかもしれないが、男としては負けていない。
そう言う話であった。
誠にもって子どもの
シンジとの試合などありえなかった。
「
そう笑って言うのは
ギード・ユルゲンスは自負を持つ程度には強い。
だがアーリィ・ブラストの見る所、シンジには先の暴力沙汰で見せた
だから良い。
シンジの本質を見極めるのに丁度よいと言うものであった。
アーリィ・ブラストとその
だからこそ、シンジを見極めたかったのだ。
正に私情。
私情をもって、ギード・ユルゲンスの訴えを認める様に手回しをするのだった。
かくして、シンジとギード・ユルゲンスの試合が認められる事となる。
2022.12.13 文章修正