【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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200名を2人部屋に分ける為、都合100部屋を必要としている。
とは言え、男女が綺麗に100名づつ選ばれたと言う訳では無いので、100部屋あれば良いと言う訳にはならなかった。
そもそも、寮は新設ではなくNERVドイツ支部にほど近い
護衛部隊の配置その他も必要である為、大規模なリゾートホテルが選ばれていた。
その由来故に設備の整った厨房があり、提供される料理は中々の旨さとなっていた。
「
今日の主菜はボイルしたソーセージであったが、肉々しく、実にジューシーであったのだ。
未だ
とは言え、
途中で
それよりは、支給される
ソーセージを齧り、ザワークラウトを平らげていく。
これにシチューとパンが付くと言う実にドイツなメニューだ。
と、ソーセージの最後を齧ろうとした所で、テーブルに新しい人間がやってきた。
「
咀嚼中だったので、軽くフォークを握っていた手を少しだけ動かして返事とした。
食に五月蠅い
ヨナ・サリムの相部屋が日本人の相田ケンスケと言う事もあって、霧島マナとは割と
この一次選考通過した立場から見ても、実に6%しか残れない過酷な選考となる。
全ての人間が
だが今となっては、そこまで思い詰めている人間は少数派だった。
ヨナ・サリムを含めて大半の子どもは良い環境と、家族を支えたいと言う思いで手を挙げた人間が多かった為だ。
一次選考を通過したお陰で、
とは言え、一次選考が行われるまでの
「
「
そう霧島マナが指したのは、しょぼくれた顔でスプーンを動かしている相田ケンスケだった。
死んだ魚の様な目をしている。
霧島マナがテーブルに来た事にも気付いていない。
「
「
「
深く頷く霧島マナ。
相田ケンスケが
そして、その話しぶりから特別な感情を抱いている事も察していた。
別に霧島マナが敏いからと言う訳では無い。
あからさまに語る際の熱量が、男である
誰の目にも判ると言うものだろう。
久々に会えたけど、顔を合わせるどころか声も掛けて貰えず凹んだと言った所だろうかと当たりを付ける。
少しばかり
「ふーん」
他人の恋路程に、愉快なモノは無い。
そう言う顔であった。
だから、俯いていた相田ケンスケの耳をそっと引っ張った。
「凹んでる?」
「………霧島か」
上目遣いの相田ケンスケ。
前髪から覗くその目は死にそうな色であった。
「セカンドさん、会えたけど逢えなかったから残念?」
「そんなんじゃ、ないよ………」
ボソボソとした声で反論する。
とは言え、目は即座に下におろされていたが。
頭ごと俯いていた。
深い溜息もついている。
その様は正に傷心と言った所だろう。
「遠目でも美人ぽかったものね、セカンドさん。それにサードさんも格好良かったね」
「
サードの言葉に誘われて、ヨナ・サリムが会話に入ってきた。
相田ケンスケのお陰で少しだけ日本語が判るのだ。
「
「
相田ケンスケを放り出し、碇シンジの話題で盛り上がる霧島マナとヨナ・サリム。
日本語と英語、それに
それに、近いテーブルの面々も集まって来て、昼に見たシンジの格闘力を評価しあっていた。
強いとか早いとか、躊躇が無かったというのもあった。
皆が皆、二次選考に向けた訓練の中で格闘術も習っている為、シンジの
男子陣は、シンジの
「
「
「
対して女子陣は、王子様の様に
「
「
「
「
「
総じて言えるのは、誰もギード・ユルゲンスら適格者候補生に対して同情しないと言う事だろう。
言葉に載せようともしない。
身分を笠に着た横暴、暴言、そして暴力。
嫌うのも当然だった。
一方的に馬鹿にしてくるのだ、阿る人間は出なかった。
だからこそ、
そんな盛り上がった食堂を他所に、相田ケンスケはポツリと呟いた。
「そんなんじゃないさ」
遠目で見て近づけなかったから? 違う。
会話が出来なかったから? 違う。
そんな事で傷つく程に、相田ケンスケは自分とアスカとの距離が近いなんて夢は抱いていない。
告白し、
だからこそ、あの懐かしい第3新東京市市立第壱中学校2年A組を抜け出て
エヴァンゲリオンの操縦者になりたいと言う
だが、それ以上に、このままではシンジに勝てないとの思いもあっての行動だった。
シンジはアスカの直ぐ傍に居るのに、アスカの魅力に気付いていない。
大事にしていない。
だが自分は違う。
アスカを大事にする。
大事にしたい。
そう思って居たのだ。
それは相田ケンスケの胸にある、キラキラとした想いだった。
初恋の煌きとも言えるだろう。
だが今日、相田ケンスケは動けなかったのだ。
アスカが素行不良の適格者候補生に絡まれた時、助けに動く事が出来なかったのだ。
ギード・ユルゲンスら残っている適格者候補生たちは皆が武術を嗜んでいた。
威圧する様に殴られた
相田ケンスケも殴られた事があった。
強い適格者候補生が3人も居るのだ、と。
だが、シンジは違っていた。
アスカに
止めただけで無く、1対3をものともせずにアスカを守り切ったのだ。
出来る出来ないの前に、自分は最初の一歩が踏み出せなかった。
そう、それは正しく敗北感だ。
相田ケンスケもまた男の子であり、自分に嘘をつく事は出来ないのだ。
だからこそ打ちのめされたと言えるだろう。
「元気ないわね」
「あるわけねーよ」
ほっといてくれ、と言う思いを乗せて霧島マナを否定する相田ケンスケであったが、そうは問屋が卸さなかった。
根が陽性な霧島マナは、暗くなった人間を見捨てないのだ。
「よし、おっぱいで元気出そう!」
「ハァ!?」
オッパイと言う単語に思わず顔を上げた相田ケンスケ。
実に思春期だ。
だが、目の前に立っているのは霧島マナでは無かった。
大きな影。
「
「
ムキっとした大男に抱きしめられるッという事に、相田ケンスケの
大声で全力拒否を表明するのだった。
「
「
必死になって逃げ出す相田ケンスケ。
笑いながら追いかけるアルフォンソ・アームストロング。
そんなコミカルな2人に、霧島マナや他の
「チキショーメ!!」
そして相田ケンスケも、逃げながら何時しか笑うのだった。
笑って居られる
アーリィ・ブラストの働きかけで決まったシンジとギード・ユルゲンスの試合準備があったからである。
準備、と言うか試合のルールをどうするかであった。
ギード・ユルゲンスは男らしいフェンシングでの試合を口にしていたが、それはシンジが難色を示した。
当然である。
フェンシングの道具は勿論、ルールの類も一切知らないのだから。
対してギード・ユルゲンスは全欧州ジュニア大会でのベスト4に入っているのだ。
何ともあからさま過ぎる狙いに、血の気の多いアスカですら怒る前に失笑する話であった。
だからシンジの代わりとばかりに、笑いながら
この反応にギード・ユルゲンスは男の戦いから逃げるつもりかと声を上げていたが、シンジは勿論として教官たちも、そんな
そもそもとして、
そして、古来より決闘は、手袋を投げられた側が戦いの内容を決める権利があるとされているのだ。
故に、実家であるユルゲンス家すらもギード・ユルゲンスを支持する事は無かった。
では防具を付けて無手での格闘戦、もしくヨーロッパでも愛好者の出ている剣道の
日本の伝統的な製法で作られている竹刀は、銃剣格闘訓練用の小銃を模した
だが、試合をする両者が受け入れれたのだ。
シンジからすれば木刀に似た形なので問題は無かった。
ギード・ユルゲンスにとっても、握れる所が制限されているバトンに比べれば、竹刀は剣と言う形であるので使いやすいと受け入れたのだ。
とは言え教官陣からすれば、竹刀は少しばかり危険過ぎた。
シンジにせよギード・ユルゲンスにせよ、怪我などされては困るのだ。
結果、竹刀にウレタンを巻いたモノが使用される事となった。
ウレタンを巻いた、試合向けの竹刀。
重さも重量バランスも別物になったソレを振るうシンジ。
その動作に別段の乱れはない。
「大丈夫なの?」
見守るアスカが、秀麗な眉をまげて尋ねる。
実に不機嫌そうであるが、ある意味で仕方がない話だった。
アスカはシンジが負けるなど露ほども思っていない。
だが、試合前に邪魔をするのは良くないと我慢したが故の事だった。
盛り上がって
アスカ。
真面目である。
同時に、試合に勝った後には
試合の発端は自分だ。
シンジはアスカを守るが為に、試合になったと言えるのだ。
であれば、褒美を下賜するのも当然ではないかと思ったのだ。
同時に、公衆面前で実行する事で、大きな効果を狙う積りでもあった。
アスカは件の際、見ていた。
気付いていた。
自分に対して向けられた熱い視線、それと同じ位に熱い視線がシンジに向けられていた事に。
自分はシンジと共にいる。
シンジは自分の為にいる。
そう満天下に示すべきだと、
シンジ以外の男は全て邪魔。
世の女は全てが敵と敵の予備群。
実にアグレッシブな恋愛観と言えるだろう。
ある意味でアーリィ・ブラストの影響とも言えた。
兎も角。
そんなアスカの熱視線を背中に受けながら、シンジは熱心に素振りを行うのだった。
振る速度。
重量バランス。
竹刀は勿論、木刀や木剣の類とも違う感じ。
だがシンジは頓着しなかった。
弘法筆を選ばずと言う訳では無いが、振りぬいて壊れないのであれば問題は無いと言うのが正直な感想だったからだ。
刃の長さは間合いに直結するから重要ではあるが、極簡単に言えば飛び込んで得物を振ると言う
横木打ちでも立木打ちでも無い、只の素振り。
だからシンジは猿叫を上げない。
素早くも行わない。
只々黙々と、このウレタンを巻いた竹刀の具合を自分に馴染ませる為に行う。
ドイツに来て色々とあった。
アスカの家族にあった。
アスカへの気持ちに気付いた。
アスカを傷つけようとした阿呆が居た。
「………」
竹刀を握るシンジの手の力が増した。
不快だ。
不快極まりない。
アスカが自分を選ばないなら、それは仕方がない事だ。
悲しいけども。
細身な自分よりも、がっしりとした筋肉のある男らしい人が好きかもしれない。
或いは加持リョウジの様な飄々とした態度の、大人が好きなのかもしれない。
アスカにも好みはあるのだ。
である以上は、辛いけど仕方がない。
好かれる様に努力したい。
だからこそ、ナニガシの暴力などでアスカを好きにしたいなどと云う奴は赦しておけぬ。
アスカとの空気が好きだが、それと同じ位にアスカの放つ煌きが好きなシンジにとって、それを
ギード・ユルゲンス。
今日の試合相手、その実にドイツ人と言うべき風貌を思い出す。
実家が
国連に関係する家柄なんだとも言う。
だから、NERVドイツ支部で傲慢に振る舞っていたと言う。
アスカからも、昨日は
赦せるものでは無いのだ。
素振りの速度が上がる。
只、その顔は凪いでいた。
息を乱す事無く、唯々、上下に振るう。
「シンジ!」
と、アスカがシンジの名を呼んだ。
素振りを止めたシンジが振り返れば、アスカの傍にはNERVドイツ支部のスタッフが来て居る。
「時間だって」
「判った」
アスカが差し出したタオルで顔を拭い、そして水を飲むシンジ。
「熱心だったわね。やり過ぎてない?」
「丁度いいくらいに温まった感じかな」
別に強がりなどではない。
多い時には1000回からの、それも
如何に数が多くとも、或いは早く見えても、余力があると言うモノであった。
「なら良いわ。防具を付けて
ギード・ユルゲンスは不快だった。
不満だった。
赦し難い状況であると思って居た。
家柄も才覚も持った、選ばれた身である筈の自分がNERVを追放されると言う。
あり得ない。
シンジがNERV総司令官碇ゲンドウの息子と言う立場を利用し、卑劣な事をやったとしか思えなかったのだった。
今まで問題になっていない軽い事を、さも大事であるかのようにした卑劣漢。
確かに正規
その意味では、ごく普通の事でしかない。
にも拘わらず、自分は
男としての格の差を見せつけ、シンジの力は親の七光りでは無いかと突き付けてやる積りであった。
全身の防具、そしてウレタンを巻いた竹刀を確認するギード・ユルゲンス。
自分だけではなく、付き添いに志願してくれた分家筋の親戚であるヨハン・エメリヒと一緒にする。
たった2人だった。
最後まで一緒に居た仲間であるアルヴィン・マイネッケもバルナバス・ネッツァーも、拘束されていて、試合会場には来れない。
試合会場の上にある観覧席で、NERVスタッフに監視されながら見ているのだから。
フト、感じた寂しさにギード・ユルゲンスは2人の居る方向を見上げる。
目と目が合う。
大きく腕を振っていた。
勝って自分たちの正しさを示してやる。
改めて、そんな気持ちが湧き上がる。
「
と、ヨハン・エメリヒが注意を促す様に言う。
その意図をギード・ユルゲンスも受け入れる。
「
シンジ、或いはシンジに阿ったNERVドイツ支部の卑劣漢が何の小細工をしたか判らないと思えるからであった。
偵察とばかりにシンジの所へ送った人間は入り口で追い返されている。
ユルゲンス家の名前を出しても無駄だった。
入口に居たスタッフも買収か何かをされているのだろう。
何か後ろ暗い事があるから、そうするのだ。
決まっている。
だからこそ、勝たねばならない。
ギード・ユルゲンスの気分は、ただひたすらに盛り上がっていた。
「
見ればシンジが対面に来ていた。
ヨハン・エメリヒの様に、介添え人としてアスカを連れている。
実に許し難い。
混血児だが、否、混血児だからこそアスカには純血のドイツ人には無い
だからこそ選ばれた人間である自分、ギード・ユルゲンスの傍にあるべきなのだ。
それをNERV総司令官の息子だからと傍におくシンジ。
実に許し難い。
対使徒戦の
あの様なモノ、使徒が弱いから倒せたのだ。
自分ならもっとうまくやれるだろう。
今日は良い日だ。
「
鼻息も荒く言い放っていた。
シンジとギード・ユルゲンスの試合。
それは、形式としては武器ありの総合格闘戦となった。
ウレタンを巻いた竹刀が最初に与えられるが、それを捨てて素手で戦っても良い。
関節技や寝技も許される。
但し、急所攻撃は禁止。
試合の終了は
正に
その説明を外野 ―― 試合会場となる多目的体育館のテラスで聞いた相田ケンスケは呆れる様な気持ちとなった。
今後本格化する格闘訓練の為、であった。
第2次E計画の下、建造が進められている
結果、現行の各エヴァンゲリオンに比べると全くと言って良い程に格闘戦闘に向いていない。
だからこそ、運用計画も格闘戦闘を前提としない形で立案されている。
とは言え戦闘となれば何が起こるか判らない。
人類の理解力を越えた所があるのが使徒だからだ。
NERVの科学技術部門の
実に現実的な話であった。
だからこそ、可能性の格闘戦闘もカリキュラムに含まれるのであった。
格闘技の基礎的な訓練はもう受けだしている相田ケンスケは、シンジとギード・ユルゲンスの試合のルールが持つ意味を誤解しなかった。
必殺的な攻撃以外が許された、実質、何でもアリの喧嘩じゃないかと。
「ま、シンジだから勝つだろうけどさ」
「でも
「ソウダ。
ヨナ・サリムの疑問。
それを相田ケンスケは否定する。
「
この試合がフェンシングのルール下で行われる
だが、この試合は事実上の
である以上は、話が変わってくる。
「
周囲にそっと声掛けをする相田ケンスケ。
シンジの性格を知り、そして実際にエヴァンゲリオン初号機での戦いを見たが故に判るのだ。
決着は直ぐにつくだろうと。
試合の場、その中央に立つシンジとギード・ユルゲンス。
審判にはアーリィ・ブラストが立っている。
何か在れば実力で
既に、禁止事項の再確認などは終わっている。
儀礼的な握手も済ませている。
握手の際、見ていた周りの人間はハラハラとしていたが、
シンジは言うまでも無い。
路傍の石の如く踏みつぶす、立木の様に
ギード・ユルゲンスも、無駄な事をするよりも
そう言う話であった。
2人の闘志は満ち満ちている。
もはや言葉は不要と言う所であった。
2人の目を見て最終確認を済ませたアーリィ・ブラストは二歩ほど下がって、右手を高々と掲げた。
「
振り下ろされた手。
その瞬間、シンジとギード・ユルゲンスの動きは全く同じだった。
突進である。
シンジは蜻蛉の姿勢では無く、八相の構えで腰を落として突進する。
「キィィィィィィィィィィ!!」
狂を発したが如き猿叫が、体育館じゅうに響き渡る。
対するギード・ユルゲンスは、ウレタン巻き竹刀を
「Yaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
シンジ同様に、声を上げ己を鼓舞しての突進だ。
狙うのはシンジの喉元。
如何に防御しようとも、当たれば1発で悶絶する場所だ。
ギード・ユルゲンスがドイツのフェンシング大会で上位入賞した原動力となった、必殺技であった。
広くはない試合場。
両名、全速で前にでている為に3歩目で接触する。
先に相手に
竹刀を付きだしての突進なのだから当然と言えるだろう。
だが、その切っ先がシンジの喉元を捉える事は出来なかった。
八相に構える、そのシンジの左腕が盾となったのだ。
これがフェンシングであれば有効であっただろう。
或いは剣道の試合であれば小手打ちとなってギード・ユルゲンスが勝利していたかもしれない。
だが、これはフェンシングでも剣道でも無いのだ。
その事をギード・ユルゲンスは、シンジの突進 ―― 左腕に受けた突技をものともせず迫られた事で思い出していた。
試合であって
咄嗟に逃げる事を選ぼうとするが、その様な時間を与えるシンジでは無かった。
突進。
その儘の勢いでギード・ユルゲンスの顔面に竹刀を握ったままの両拳を叩き込んだのだ。
余りにも実用的 ――
だが、そこからが本番であった。
ギード・ユルゲンスが耐えたのだから。
想定していた全ての戦闘予測を裏切るシンジの
想定外であっても、鍛えられた足腰はギード・ユルゲンスの体を支えたのだ。
それ故に、シンジの
拳による打撃からの着地。
そのまま両足、その足の裏でしっかりと床を掴む。
着地の勢いを殺す事と併せて、それを予備動作とする様に膝を落とす。
同時に竹刀の持ち方を八相の構えから蜻蛉の姿勢へと変える。
本番の始まりである。
「キェェェェェェェッ!!」
更なる猿叫と共に放たれる斬撃。
一言で言うならば滅多打ちであった。
人を折ろうとする様な恐るべき打ち込み。
1発目は耐えられた。
2発目も耐える事が出来た。
3発目まで、何とか手に持った竹刀で防御しようとする事は出来た。
だが4発目。
姿勢が崩れて防御が出来なくなったギード・ユルゲンス、その首元をシンジの一撃が捉えた。
しかも致命的な事に、
「
悲鳴を上げるギード・ユルゲンス。
フェンシングではあり得ない、今まで味わった事の無い痛み。
ウレタンを巻いているとは言え、竹刀の威力はギード・ユルゲンスが想像する以上であったのだ。
だが、それが終わりではなかった。
5発目。
6発目。
猿叫の響きと共に、シンジの斬撃は途切れる事無く続いた。
竹刀を取り落とした手を、逃げようとする頭を、動きの少ない身体を、一切の容赦なく滅多打ちにするシンジ。
下がるギード・ユルゲンス。
それを許さず迫るシンジ。
凄惨とすら言える
だが、シンジは止めない。
そして、
当然だ。
試合の終了条件は
そのどちらもギード・ユルゲンスがしないのであれば、戦闘意志があると思うのも仕方のない話でもあった。
竹刀を落としてはいるが、仕切り直しにはならない。
無手での格闘も認められているのが今回の試合なのだから。
正に暴力。
それが終わったのは、ギード・ユルゲンスが悲鳴を上げて一目散に逃げだしたからであった。
「な、
絶句していた周りの
その様は、
尤も、その目はタオルを持ってシンジに駆け寄るアスカの姿を追っていたが。
とは言え、アスカがシンジに飛ぶようにして抱き着いた所で、視線を外していた。
鈍痛。
胸に感じる痛み。
それは失恋を教えてくれる痛み。
痛みを受け入れる様に笑って言う。
「
気取った風にも、すがすがしくも言う。
アスカへの恋慕は忘れよう。
だが、輝くシンジとアスカの場に行くと言う夢はまだ持っていても許されるだろう。
だから頑張ろう。
その決意を込めての態度であった。
「気取り過ぎ」
「そう言うなよ霧島」
霧島マナの容赦ないツッコミに、ひょうけて肩をすくめる相田ケンスケ。