【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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だがそれは決して安全な事ではない。
開発黎明期からエヴァンゲリオンに携わっていた
幼少期から厳しい戦闘訓練を重ねた
そして
だからこそ、新たなる
その様に、NERV総司令官である碇ゲンドウは、オブザーバー参加した国連安全保障理事会の対使徒特別会議で熱弁を振るったのだ。
無論、弁舌だけではない。
碇ゲンドウは精力的に
対象は、第2次E計画に基づいて選ばれた ―― 志願した
第1次選考が終わり、本格的な訓練が始まている
現実的に、使徒との命がけの戦いが迫ってきていると言える。
ご子息、ご息女、お身内が晒す命の危険性を下げたくはありませんか? と言う風にだ。
極秘での接触。
その際に碇ゲンドウは、部外秘のエヴァンゲリオンの戦闘情報や
そして、実の息子も危険に身を投じている等と臭い芝居をしてまで
巧緻とも言える手管だった。
『第2次E計画、その補正予算の確保、素早くやり遂げた事は称賛に値する』
『左様。これは紛う事無き成果と言えよう』
『………しかし、目標の8割か。現状でこれ以上は高望みであろう。見事だ碇』
SEELEのメンバーも今回ばかりは碇ゲンドウの手腕をほめちぎる。
頓挫する可能性が高まっていた人類補完計画、即ち人類の種としての進化と
喜ぶのも当然であった。
尤も、褒められている碇ゲンドウの表情は微妙であったが。
息子たるシンジを出汁に使ったのだ。
否、使うのは別に構わない。
問題は、さも心配している等と言う様な、言わば息子を愛しているかのようにふるまった事だった。
愛妻家と呼ばれるのは認めてよい。
だが、妻である碇ユイの愛を無条件で独占していたシンジを愛せるかと言われれば、難しい。
そもそもとして、
思い出した碇ゲンドウが微妙な気分になるのも当然と言えた。
兎も角。
そんな碇ゲンドウを置いて、SEELEの会議は進む。
SEELEのメンバーは各国その他で重鎮の席にある者たちなのだ。
暇をしている訳では無いのだから。
『開発は可能な限り進めている』
『幸い、生体部品に関しては、今回の
『装甲材に関しては、14機分の予備部品としてであれば如何様にも誤魔化せる』
現時点で配備予定となっているエヴァンゲリオンは15体。
正規のエヴァンゲリオンが8体。
そして試験用エヴァンゲリオンが1体。
この15体のエヴァンゲリオンに於いて、真にSEELEの支配下にあると言えるのはNERV本部に配置される6体のみであった。
残る9体は
エウロペアNERV。
アメリカNERV。
ユーラシアNERV。
共にNERVの名を冠しているが人類補完委員会では無く
即ち
将来の人類補完計画発動時、邪魔をされる可能性が高い組織であった。
人類補完計画は、この激変した地球環境に於いて凋落した
人類 ―― Lilithの子に与えられた知恵の実。
知恵の実の力で人類は此処まで進歩し、地球の支配種となる事が出来た。
だがそれだけでは、
だからこそ、Adamの子に与えられた命の実を得る必要があるのだ。
人類は完全な存在に生まれ変わり、そして真の地球の支配者となるのだ。
それが神への道、人類の福音となる人類補完計画。
だが、その過程でどうしても避けて通れぬモノがある。
再誕する為に必要な、古き人の形を脱ぎ捨てる一時的な人類の
SEELEは狂人の集団ではない。
だから、大多数の人類が還元と言う過程に対して拒否感を示すであろう事も理解していた。
だから、拒否を許さずに強行する積りであった。
だから、SEELEの僕たる
一次的な還元を恐れるからでは無い。
より生々しい理由があった。
即ち、政治だ。
新理事国が勃興できた理由は、旧理事国などの古くからの列強の没落があればこそなのだから。
古い支配者の復権を認める愚か者は居ない ―― そういう話だ。
『Bモジュールによる新しいエヴァンゲリオン。完成が楽しみであるな』
『左様。簡易品のエヴァンゲリオンは歯牙にも掛けぬことになるであろう』
自信満々に言うSEELEメンバー。
それは論拠の無い自信などでは無かった。
それ程の可能性をBモジュール主制御システムとして搭載したエヴァンゲリオンは秘めているのだ。
これはBモジュールの概念発案者である葉月コウタロウや、その概念を推し進めたディートリッヒ高原。
或いは形而上生物学からのアプローチを行って技術的問題の解決に尽力している真希波マリと言ったNERVアメリカ支部技術開発局の主要メンバーで行わせた概念検討に於ける結論であった。
エヴァンゲリオン4号機の様にBモジュールを後から組み込むのではなく、制御システム全体をBモジュール搭載を前提とする形で改めて設計したエヴァンゲリオンは、
少なくとも
只、流石に
最後の1点にそこはかとない不安を覚えるが、それ以外に於いてSEELEメンバーの満足のいく結論であった。
『問題は工期か………』
『年内は不可能、そういう事だな?』
「はい。現在、エヴァンゲリオンの製造プラントは全て稼働状態にあり、生体ユニットの培養は早くても年明け2月の着手になると思われます」
『第2次E計画の余波か。こればかりは仕方あるまい』
予算が付いたとしても、そもそも製造に関わる部分が埋まってしまっていては不可能なのだ。
又、
出力の問題ではない。
出力だけであれば、新開発の
又、エヴァンゲリオン用として開発中のA.Tフィールドによる位相差を利用した
だが、それらでは駄目なのだ。
出力が足りないのだ。
機体を動かす為ではない。
人類補完計画を遂行するのに足りないのだ。
人類補完計画、その儀式の際には9基の
『鍵は揃いつつある』
『先ずはその点を喜ぼう』
『その日を可能な限り前倒しする事を願う』
『全ては人類補完計画の為、人類の新たなる夜明けの為に』
『碇、君の尽力を期待する』
「はい。全てはSEELEの為に」
碇ゲンドウの他は誰もいないNERV本部総司令執務室。
SEELEとのデジタル会議を終えた疲労感から、椅子の背もたれに力なく体重を預ける。
何時も近くにいる冬月コウゾウも今日は出張の為、NERV本部は勿論、日本からも離れていた。
NERVアメリカ支部だ。
Bモジュールの開発現場の確認と、人員の再配置に関する業務の為であった。
現在、BモジュールはNERVアメリカ支部のみで行われている。
碇ゲンドウは勿論、SEELEの直接管理でも無い支部なのだ。
しかも今後はアメリカNERVとの同居関係になるのだ。
機密保持、或いはNERV本部に対して開発情報の隠蔽などをさせない為の処置が必要と言う事であった。
開発の責任者である葉月コウタロウは、NERVアメリカ支部技術開発局局長でもある為、NERV本部への
現局長である赤木リツコよりも、才能は兎も角として年齢と実績が上なのだ。
妙な軋轢が生まれかねない。
であれば残るはディートリッヒ高原か真希波マリか。
才覚に於いて甲乙つけがたいが、出来ればディートリッヒ高原であって欲しいと言うのが、碇ゲンドウの気分であった。
愛妻たる碇ユイの愛弟子を自称する真希波マリは、正直な気分として面倒くさい相手だからだ。
碇ユイがエヴァンゲリオンに消えた実験、その詳細を知った際に
それ以来、事務的な会話はする。
だが常に刺々しい目で見て来るのだ。
勘弁してくれと言うのが正直な気分だと言えるだろう。
嫌な事を忘れる様に、碇ゲンドウは目を閉じる。
「
時おり、碇ユイが呟いていた言葉。
自分の様な凡夫と違い、先を見ていた才女だったのだと、時おり碇ゲンドウは思い出して呟くのであった。
もう一度、碇ユイと逢う事だけが碇ゲンドウの目的だ。
その先など考えた事も無かった。
嘗ての野心、栄達と言う夢。
それらの全てが、手段であった筈の碇ユイによって無価値へとなったのだ。
薄汚い野良犬の様な六分儀ゲンドウが、人である碇ゲンドウに生まれ変わったのだ。
成ってしまったのだ。
だからこそ碇ゲンドウは碇ユイを求めていたのだった。
思索の海に沈む碇ゲンドウ。
と、それを現実に戻す音がした。
圧搾空気音。
NERV総司令執務室の扉が開いたのだ。
「司令、報告が御座いますわ」
赤木リツコだ。
手には書類の束があった。
だが、その顔は少しばかり常日頃の理知的なものから離れていた。
「ああ、ご苦労」
煤けた声で返事をする碇ゲンドウ。
全てを察していた。
今日も
CGで簡略化されて表示される世界を疾駆するエヴァンゲリオン3号機。
デジタル演習だ。
無論、搭乗しているのは鈴原トウジである。
動きは実に滑らかであった。
手には
その演習空間を、管制室の大画面で見ている葛城ミサト。
大画面の隣の小さなディスプレイには、エヴァンゲリオン3号機と鈴原トウジの
全てが良好であった。
葛城ミサトは1つ、頷いてから
「トウジ君、大分慣れて来たわね」
『はい、何とかやれとりますわ!』
「
『今の所、感じまへんで』
ディスプレイ越しに見る鈴原トウジの顔にも緊張感は浮かんでいない。
真剣ではあっても、力んだ風には見えない。
安堵する様に笑う葛城ミサト。
「それは結構」
葛城ミサトが慎重な態度を見せている理由は、エヴァンゲリオン3号機が操作システムの改修を行ったばかりの為であった。
使徒の襲来、その間が空いていたお陰での事だ。
所謂近代化改修。
NERV本部で建造中の
目的はBモジュールの利用領域 ―― 制御領域の拡大であった。
従来のType-Ⅲが
Bモジュールに対して曖昧な形で目的を指示し、その目的達成をBモジュールが計算し実行すると言う形になるのだ。
Type-Ⅲbと命名されたソレは、エヴァンゲリオンの操縦を大幅に簡素化するものであった。
言ってしまえば、Type-Ⅱは全てを操縦者の
対するType-Ⅲbは、大まかな部分をBモジュールが担う
訓練の短い儘で実戦投入される鈴原トウジや
否、葛城ミサトら大人たちにとっても同じだ。
将来的な
「なら次の段階に進むわよ。射撃訓練、要領は前と同じだからやってみて」
『やってみますわ!』
デジタル化して再現された第3新東京市で、過去の使徒を再現した
その様は、シンジやアスカの動かし方に比べれば物足りないものであったが、綾波レイのエヴァンゲリオン4号機には近い動きであった。
鈴原トウジが手本としているのが綾波レイであり、エヴァンゲリオン4号機であるのだから当然とも言えた。
「悪く無いですね」
副官役の日向マコトは、感嘆する様に言った。
葛城ミサトも頷く。
「……そうね…………」
同意はする。
だが、葛城ミサトの表情は優れない。
簡単に戦力化が出来るとは、別の言い方をすれば簡単に子どもを戦場に放り込む事になったと言う事なのだ。
指揮官としては割り切らねばならぬことであるが、簡単に割り切れるものでは無かった。
葛城ミサトは私生活でも
そして同時に、第2次E計画が実戦段階に突入する事を示していた。
大人の、政治の都合で戦場に放り込まれる新しい
何とも醜い話であろうか。
現実の
その耳朶に無慈悲な現実を叩きつける言葉を吐く者が居た。
「これで、
赤木リツコだ。
その姿を恨めし気に見る葛城ミサト。
鉄面皮でそれを無視し、日本政府からの
「来月には、第2東京市のジャパンNERVでお披露目をしたいそうよ」
「お披露目、お披露目ネェ」
本当に政治だった。
「
「さぁ?」
「ウチの
「ええ。ミツキが
「笑って?」
「
両手、人差し指をこめかみの横で立てて見せる赤木リツコ。
意味するものはツノ。
鬼が出た、そう言う事だ。
広報部の担当が日本政府の交渉担当から
否、口約束で認めていた。
だから厳罰に処される事となった。
減棒2割を6ヵ月。
及び
天木ミツキは一切容赦しなかった。
そして、口約束を盾に交渉を図った日本政府の担当者に対しては、組織としての結論であるかのように個人的願望を口にした結果、処分しましたと言って突っぱねていた。
躊躇や容赦と言うモノが一切ない、
「アホね」
「ええ」
頷き合う2人。
その表情は共に、子どもの為なら碇ゲンドウ
「面倒ね」
「ええ」
「飲みに行く?」
「悪く無いわね」
自分が負うべき責任の範疇は兎も角、その外にある何ともやりきれない現実のストレス。
その発散は重要であった。
酒と加持リョウジ、或いは碇ゲンドウで発散している2人であるが、それだけで発散しきれるものではないのだ。
「ミツキも呼ぼうか」
「そうね、褒めてあげるのは大事かもね」
「んじゃ日本酒が美味しい店にしましょ」
笑っている2人。
そんな2人の向こうにあるディスプレイには、縦横に駆け回って
NERV本部は平常運転であった。
少なくとも、この時は。
2023.1.7 文章修正
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これが2022年の最終更新になります。
読んでくださった皆様、本年ありがとうございました。
感想までくださった方々に至っては、唯々、感謝あるのみです。
サツマンゲリオン、来年もよろしくお願いします。
では!