サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機とエヴァンゲリオン3号機。

 ジャパンNERV(NERV松代支部)を舞台とした人類の守護者を期待された巨人たちの闘いを、人々は固唾をのんで見守っていた。

 獣めいて自由自在に動く第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機改め、第13使徒。

 対するエヴァンゲリオン3号機。

 灰褐色(都市型迷彩色)の甲冑を身に纏った様なG型装備第3形態で、その姿(イメージ)通りの闘いをしていた。

 右腕で保持するEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)を振り回して牽制し、左腕と副腕(サブアーム)で保持する大型盾で身を護る。

 派手には動かない。

 まだ、()()()()

 付近ではまだ退避行動(救急救命)が行われているのだから。

 

 NERV松代支部(ジャパンNERV)司令部からは、巻き添えにしても構わない。

 対第13使徒が最優先だと言う指示は出ていた。

 だが、出来る話では無かった。

 故にエヴァンゲリオン3号機に乗る鈴原トウジは耐えるのだった。

 

 第13使徒は、伸ばした両腕を鞭のようにしならせて来る。

 それを盾で防ぐエヴァンゲリオン3号機。

 直撃。

 巨大盾は軋みを立てるが耐えた。

 間髪入れず、鈴原トウジは右腕で持つEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)を振るわせる。

 エントリープラグに映し出されている、第13使徒の予測位置めがけて動かす。

 細かい制御は必要ない。

 鈴原トウジが行うのは攻撃の意志を示した事で、Bモジュールが計算し提示する選択肢の中で最良と思えるモノを選ぶだけなのだ。

 

 これがType-Ⅲb。

 これがBモジュール。

 

 初めて1人で第13使徒と対峙し、近接戦闘と言う神経を削る様な戦いを鈴原トウジが出来る理由でもあった。

 だが、鈴原トウジは不満げに声を荒げる。

 

()()()()()()()()!!」

 

 声を漏らした理由は、機体(Bモジュール)が提示した選択肢にあった。

 G型装備第3形態の固定武装 ―― 近接牽制用の5連装35.6cm無反動砲の使用である。

 設置されている位置は背部、人間で言えば肩甲骨に相当する部位に固定式に5連装のランチャーが左右各1基づつ搭載されている。

 主武装であるEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)に比べればかなり威力と言う意味では低いが、至近距離でA.Tフィールドを互いに中和しあっている現状では効果的であると言う判断であった。

 だが、鈴原トウジは否定する。

 強く拒否する。

 第13使徒に囚われている相田ケンスケを心配するが故、ではない。

 地上への余波、被害を考慮するが故であった。

 35.6cm無反動砲の砲弾は広範囲に被害を与える榴弾であり、それを一度に5発を発射するのだ。

 しかも、発射時には反動消費材(カウンターマス)を後方に盛大にばら撒くのだ。

 付近で救助活動が行われる中で使える様な選択肢では無かった、

 主兵装であるEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)を、この戦闘に際して一度も発砲していないのも同じ理由だった。

 エヴァンゲリオンは力があり過ぎる。

 特に火砲は、使用に慎重でなければならない。

 そう鈴原トウジは理解していた。

 にも拘わらず、機体(Bモジュール)は発砲許可を常に常に求めて来るのだ。

 鈴原トウジでなくとも、声を荒げてしまうと言うものであった。

 

 エヴァンゲリオン3号機は第13使徒に怯えている。

 Bモジュールが示す攻撃性を、鈴原トウジはそう理解していた。

 恐怖を第13使徒に感じている。

 感じているからこそ、第13使徒をあらゆる(周りの被害を顧みぬ)手段で撃退しようとしているのだ。

 シンクロによって何となく、エヴァンゲリオン3号機の心を感じていたが故の理解であった。

 第13使徒と闘う中で、相手への恐怖心が伝わってくる様な気がしたのだ。

 

「そう怯えんでもええやろ」

 

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンを乗っ取った、第13使徒と言う存在への恐怖。

 接触面から侵食してくるナニか。

 エヴァンゲリオン3号機が怯えるのも当然だと、それが悪いことでは無いと言う鈴原トウジ。

 足元を確認し、機体を大型盾に隠しながら距離を調整する。

 怖いのも当然だ。

 自分も怖い。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 綾波レイとエヴァンゲリオン4号機が、碇シンジとエヴァンゲリオン初号機が、惣流アスカ・ラングレーとエヴァンゲリオン弐号機が戦ってきた相手に比べれば、無茶苦茶な能力は無いのだから。

 全てを焼き払う様な光学兵器も無ければ、分裂してダメージを無効化する事も無い。

 影に引っ張り込もうとする事も無い。

 飛んですらもいない。

 ごく普通の第13使徒だ。

 手足を伸ばすし獣めいて飛び跳ねる所は少しばかり厄介だが、それだけだ。

 物理法則の範疇に居るのだ。

 しかも、もう少し頑張ればシンジが到着する。

 怯える必要なんてないのだ。

 深呼吸して機体に話しかける鈴原トウジ。

 勝つと判ってる闘いなのだ。

 怖くても焦る必要はないんだよ、と。

 

「笑うのは無理やけどな」

 

 シンジやアスカの様に、戦いの最中に笑う事は出来ない。

 笑うまでは出来ない。

 だが、心を落ち着ける事は出来るのだと言う。

 

「シンジが言うとった、明鏡止水(鏡の如き水面の澄み切った心)ゆーやっちゃ」

 

 横木打ちの際、雑念を捨てるのだと言う。

 ありのままに受け入れ、そして対応するのだと言う。

 それが出来ると言える程に鈴原トウジも図太くは無い。

 だが、それを目指しているとは言えるのだ。

 

「だから、焦らずに行くで」

 

 その顔は笑っていなかった。

 だが、落ち着いていた。

 

 鈴原トウジは、大型盾からエヴァンゲリオン3号機の顔を出させて第13使徒を確認する。

 戦術ネットワークによって、支援機(ジェットアローン2)汎用支援機(ジェットアローン3)が収集した情報がエヴァンゲリオン3号機に提供されているが、頭部の光学センサーによる情報収集も大事なのだ。

 だが、その顔を出した瞬間を狙って、第13使徒は腕を鞭のように振るってくる。

 細く伸びた右腕、その先にある手はまるで膨れたかのように丸くなり、内側から破裂した1万2千枚の特殊装甲の素材をまき散らしながらエヴァンゲリオン3号機に迫る。

 

『触れるな、トウジ君!』

 

 NERV松代支部(ジャパンNERV)の臨時指揮所から指示が飛ぶ。

 青い光を乗せた()()がヤヴァイ事は言われなくとも判る。

 判るが言葉にしている余裕はない。

 まだ、行動の自由は得ていないが故に、払う事を選ぶ。

 膝を落とした中腰で、EW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)の切っ先で迎撃する。

 Bモジュールによってエヴァンゲリオンの操作に不慣れな鈴原トウジでも、簡単に神業めいた所業が可能となっていた。

 

 長くて重い、EW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)での切り払い。

 だが、出来ない。

 鞭めいた第13使徒の手が、振り払おうとしてきたEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)切っ先(バヨネット)を掴んだのだ。

 そのまま、腕を引っ張る第13使徒。

 腕を4本に増やし、肩甲骨辺りから増やした腕で、鞭めいた腕を引っ張っている。

 笑っている第13使徒。

 その動きは奇矯であり、道化めいていた。

 だが、全く笑えない。

 笑う事の出来ない脅威であった。

 引き合う力が拮抗状態を生む。

 その間にあるEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)の砲身を、青い光が伝ってくる。

 

「なんやーっ!?」

 

 悲鳴めいた声を上げる鈴原トウジ。

 ソレが何かとは判っていた。

 侵食。

 だが、思わず声が出ていた。

 

『手放すんだ、トウジ君!』

 

「ええんか!?」

 

 思わず声を上げる鈴原トウジ。

 デカくて重いレールガンであるEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)は、精密機械の塊であり、運用には注意する様に前に言われていたからである。

 だが、指示を出す現場指揮官(NERV作戦局スタッフ)からすれば、それは平時の話なのだ。

 戦闘時に於いては、EW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)すら消耗品であった。

 

『気にするな!』

 

「後で怒らんで下さいよっ!?」

 

 歯切れのよい返事(指示)に、鈴原トウジはEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)とG型装備第3形態との接続部を爆砕し、エヴァンゲリオン3号機に手放させる。

 引き合う力が消え失せた結果、第13使徒もエヴァンゲリオン3号機も後ろにたたらを踏む形となった。

 睨み合い。

 第13使徒は奪ったEW-23B(バヨネット付きパレットキャノン)を興味なさげに放り捨てていた。

 そしてエヴァンゲリオン3号機を見る第13使徒。

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンそのままの頭部は直線主体で構成された1つ目(エヴァンゲリオン零号機)めいた顔。

 その顎部ジョイントが嗤う様に歪んでいる。

 少なくとも、鈴原トウジにはそう見えた。

 

「舐めやがって」

 

 伸ばしていた腕を戻し、肩甲骨から生えた腕共々に、威嚇する様に腕を組んで見せていた。

 エヴァンゲリオン3号機が無手と見ての事だろう。

 歯ぎしりする鈴原トウジ。

 だが、通信機が朗報を届ける。

 

4時方向(右後後方)を確認!』

 

「えっ!?」

 

 言われ場をチラ見すれば、半壊して後方に下がっていた筈の支援機(ジェットアローン2)が近づいていた。

 両手でEW-17(スマッシュトマホーク)を抱えている。

 刃で斬る事も出来るが、上手く刃を当てなくとも鈍器めいて使える事から、鈴原トウジがデジタル演習で多用していた武器だった。

 

「避難者はええんかいな!?」

 

 油断なく第13使徒を見ながら、EW-17(スマッシュトマホーク)を装備する鈴原トウジ。

 足元で行われる救難活動を気にする鈴原トウジ。

 だが現場指揮官(NERV作戦局スタッフ)は快活に答える。

 

『今しがた、救難活動の終了が報告された。NERV施設内なら安心して暴れて良いんだぞ__ ん? ………』

 

 ヘッドセットのマイクを握って何かの応答をした現場指揮官(NERV作戦局スタッフ)は、さらに楽し気に言う。

 

『反撃の時間が来たぞ! シンジ君と101(エヴァンゲリオン初号機)が降着する………2、1、今っ!!』

 

 合図(カウントダウン)通りのタイミングで、豪快な音を立ててエヴァンゲリオン初号機が戦場に降り立つ。

 

待たしたがっ(おまたせ)!』

 

「おうシンジ!!」

 

 シンジ(エース)の帰還であった。

 

 

 

 着地の粉塵が舞い上がる中、肩部に装着した、機体の安全な降下用のブースターを排除するエヴァンゲリオン初号機。

 顎を引いて睥睨するその様は、戦場の支配者と言う顔であった。

 油断の無い仕草で、後ろ腰に装備していたEW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)を抜く。

 その後方に回った支援機(ジェットアローン2)が送電システムを接続する。

 通常のアンビリカルケーブルに比べれば短いが、それでも電力は十分であった。

 

101(エヴァンゲリオン初号機)、通電状態回復します。バッテリー充電モード、入りました」

 

 報告が上がる。

 NERV本部第1発令所では安堵の声が上がった。

 抵抗(時間稼ぎ)によって手酷い被害を受けていた支援機(ジェットアローン2)だ。

 送電システムが無事に稼働するか不安視されていたのだ。

 

「どうやら無事に第2ラウンド、と言った所だな」

 

「ああ」

 

 第1発令所の第1指揮区画、その中央にある総司令官ブースの椅子に座っている碇ゲンドウは、腹心である冬月コウゾウに頷く。

 半分は綱渡りであった。

 当初予定では、第13使徒が発見されても遠隔地で戦闘(迎撃戦)は行わず、対第13使徒迎撃要塞都市である第3新東京市(NERV本部戦闘領域)で戦う予定であった。

 だからこそシンジとアスカ、それにエヴァンゲリオン弐号機をNERVドイツに派遣していたのだ。

 それが日本の首都である第2東京の近郊、松代で第13使徒が出現し、暴れ出したのだ。

 日本政府は、その沽券の問題からNERVに対して第13使徒の早期撃滅を要求していた。

 全くの予想外であった。

 そもそも、第13使徒が第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機を侵食し支配したと言うのも想定外であった。

 

「3号機では無理でも、シンジと初号機であれば使徒の殲滅は容易いだろう。特にあの目標(使徒)に大きな特殊能力は見えない」

 

「後は、乗っている適格者(チルドレン)の問題か。シンジ君、君の息子は友人に刃を向ける事が出来るのかね?」

 

「………知らん。だが、出来ねば死ぬだけだ。それは理解しているだろう」

 

 戦闘を行うつもりがないなら、エヴァンゲリオン初号機がEW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)を抜く筈も無い。

 そう言う判断であった。

 

「お前らしくない、不確定さの容認だな?」

 

「第2次E計画によってダミーシステムの開発が遅れているのだ。ならば、後はシンジを信じるしかあるまい」

 

 ダミー、Dシステムとも呼ばれるソレは、Type-Ⅱで制御されているエヴァンゲリオンの無人起動/運用システムであった。

 綾波レイと言う存在の特質を利用したソレは、制御の難しいパイロットの問題(碇ゲンドウとシンジの確執)を無視出来ると言う理想のシステムであった。

 だが、碇ゲンドウの言葉の通り、第2次E計画に赤木リツコを筆頭とした技術開発局の人間を集中投入した結果、見事に頓挫していたのだ。

 Dシステムは儀式用のエヴァンゲリオン開発に必要な大事な技術であったが、如何に大事であっても、或いは重要であっても物理の問題 ―― 人材の壁(マンパワーの限界)と言うモノは突破できないのであった。

 

 と、冬月コウゾウが喉を震わせた。

 

「何だ?」

 

「いや、お前が信じると、息子を信じると言った事がな」

 

「………問題ない。計画はアレ(シンジ)の技量も含めて再計算されている」

 

「盛大な親子喧嘩にならん事を祈るよ」

 

 右手の拳で笑みの形に歪む口元を隠した冬月コウゾウ。

 その姿を憮然とした顔で睨む碇ゲンドウ。

 

101(エヴァンゲリオン初号機)及び103(エヴァンゲリオン3号機)戦闘開始します(エンゲージ!!)

 

 報告が上がる。

 葛城ミサトが指示を出す。

 

「使徒が、エバー201(第2期量産型エヴァンゲリオン1号機)に大ダメージが入ったならエントリープラグの緊急射出シークエンス再度、実行。良いわね?」

 

「はい」

 

「リツコ? MAGIの判断は」

 

「賛成1に条件付きが1つ。後は判断保留ね。第13使徒のEva201(第2期量産型エヴァンゲリオン1号機)に対する支配力が低下すればハッチ周りの拘束も緩める事が出来る筈よ」

 

 条件付きは、どれ程のダメージで第13使徒の支配力が低下するか読めない点が問題視されていた。

 判断保留は、エントリープラグの射出用の推進剤の残量十分か判断できないとの事だった。

 エントリープラグの緊急射出は既に2回試されているのだ。

 安全係数が取られている為、定格であれば3回分は射出可能とされているのだ。

 出来る筈であった。

 だが、第13使徒との戦いに絶対と言う言葉は使えないのだ。

 MAGIの1基が慎重な判断をするのも当然の話であった。

 

「なら、待ちましょう。シンジ君を信じて」

 

「はい!」

 

 唱和する声が上がる。

 状況は、碇ゲンドウたちを置いてけぼり(傍観者)にして加速する。

 

 

 

 取り敢えずの手合わせとばかりに仕掛けるエヴァンゲリオン初号機。

 第13使徒もまた、腕を鞭のように振り回す。

 踏み込み、そして1()

 交差する刃と腕 ―― 交差にならない。

 シンジは見事に第13使徒を腕を斬り飛ばしていた。

 だが追撃はしない。

 バックステップするエヴァンゲリオン初号機。

 そして油断なく第13使徒を睨みながら、EW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)の刃先を手早く確認する。

 侵食を行う第13使徒、その事前情報あればの行動であった。

 表面を確認し、そして振ってみる。

 只の1合で刃先が荒れてはいたが、刀身に(亀裂)が入った気配はない。

 とは言え長くは持たない。

 予備としてEW-15(カウンターソード)も携帯してはいるが、此方は刀身が短いし、牽制用の射撃装置(200mmリボルバーカノン)が仕込まれているのだ。

 全力での使用に向いていない。

 

こいはいっきにいかんとね(短期決戦でいくしかないかな)

 

 第13使徒を倒す事は大事であるのだが、同時進行で第13使徒に第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機ごと囚われている相田ケンスケを助けねばならぬのだ。

 EW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)の問題もそうだが、時間を掛ける訳にはいかなかった。

 

 と、今度は第13使徒が踏み込んでくる。

 エヴァンゲリオン初号機の持つEW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)を警戒してか、その殺傷圏を潜り抜ける様に低い姿勢から奔る。

 

『シンジ!?』

 

「キェェェェイ!!」

 

 故にシンジは半歩だけ踏み込ませる。

 そのまま膝を落とし、蜻蛉から半月を描く様にEW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)を下段に移して、そのまま低い場所からの逆袈裟とする。

 切っ先が大地を切り裂く程に低く沈み、空を断つかの如き一閃。

 だが、第13使徒も黙って斬られなどしない。

 踏み込みから両手を地面に着いて、腕の力だけで空へと跳ねての緊急回避する。

 正に人外の動きであった。

 だがシンジも又、並では無かった。

 エヴァンゲリオンと言う機体への理解が進んでいるのだ。

 だからこそ動きをイメージする。

 追撃、連続攻撃。

 空へと振り上げた姿勢のままに、軸足1つで跳ねる。

 膝とつま先だけで、全高40m近い巨躯が空へと跳ねたのだ。

 人間では決して出来ない動き。

 だがエヴァンゲリオンであれば出来るのだ。

 

 空中にある第13使徒とエヴァンゲリオン初号機。

 空中であると言う事は自由では無い。

 A.Tフィールドを自在に操れるようになりつつあるアスカとエヴァンゲリオン弐号機なら話は別であったかもしれないが、シンジとエヴァンゲリオン初号機にそんな器用さは無い。

 だが、それでもシンジは攻撃を諦めない。

 NERVに来てから受けた格闘訓練を基にした動きをイメージし、エヴァンゲリオン初号機を操る。

 身を捻り、上半身を逸らせる挙動を行い、その反作用を蹴りとして第13使徒に叩き込んだのだ。

 

 轟音と共にエヴァンゲリオン初号機のつま先が、第13使徒の胸部装甲へと叩き込まれる。

 はじけ飛ぶ第13使徒。

 着地するエヴァンゲリオン初号機、

 

 残身として第13使徒を睨むシンジ。

 まだ倒せてはいない。

 感覚として判っていたが故だった。

 

『ケ、ケンスケェェッ!?』

 

 通信機越しに鈴原トウジが悲鳴を上げているのが判る。

 だがエヴァンゲリオンでの戦闘歴が長いシンジは、あの程度であればエントリープラグに大きな被害は出ていないと判断していた。

 そもそも、第13使徒を倒せる1撃ではないのだ。

 相田ケンスケに被害が出る筈も無いと言う剛毅な判断もあった。

 

 只、神の悪戯か、この1撃が予想外の結果を生む。

 第13使徒による第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機の拘束力低下である。

 それは通信機能に繋がった。

 

『聞こえているかNERV! トウジ!』

 

 とは言え映像は無く、エントリープラグの非常モード ―― 音声のみの緊急回線であったが。

 

『ケンスケ、ワシじゃ、トウジじゃ! 無事か!?』

 

『何とか無事だ。今、いきなりエントリープラグの電源が戻ったんだ! 何が起こってるんだよ、コレ!?』

 

 電源は戻ったが、外部は見えないと言う。

 何も判らないのだと言う。

 故に手早く、現場指揮官(NERV作戦局スタッフ)が状況を説明する。

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機が第13使徒に乗っ取られ、今、鈴原トウジのエヴァンゲリオン3号機とシンジのエヴァンゲリオン初号機と交戦中であると言う。

 

『マジかよ………』

 

 絶句する相田ケンスケ。

 大地に穴を開ける勢いで叩きつけられていた第13使徒が起き上がろうとする。

 青い光が全身に走る。

 再度の、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機掌握に出たのだ。

 

『何だこりゃ!? た、助けてくれぇっ!!』

 

たすくっであわてんな(助けるから、慌てないで)

 

『シンジかっ、頼む!!』

 

じゃっで(だから)たえやいな(耐えるんだケンスケ)

 

『何にだよ!?』

 

けしんほどいてこいよ(死ぬほど痛い事に)

 

『………死なないなら耐えるさ! 頼むぞシンジ!! 俺、まだやりたい事が__ 』

 

 第13使徒による第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機の掌握率が上がったか、通信が途絶した。

 シンジは決意を込めて、インテリアのグリップを握りなおす。

 痛くても耐えると言ったのだ。

 男の言葉だった。

 だから、それを信じての速攻を選ぶ。

 と、鈴原トウジが口を開いた。

 

『シンジ、ワイが仕掛けるからその隙にってどうや?』

 

 組み伏せて見ると言う鈴原トウジ。

 第13使徒は、エヴァンゲリオン3号機よりもエヴァンゲリオン初号機を見ている。

 優先度の高い脅威と認識していたのだから、エヴァンゲリオン3号機による攻撃は成功する筈だと言う。

 だがシンジは、否定する。

 それは難しいだろう、と。

 

あいははやかでよ(反応速度が高いから)

 

 避けられてしまうだろうと言う。

 だから役割は逆だと続ける。

 

葛城サァ(葛城さん)!」

 

『何、シンジ君』

 

すこしじゃどんこわしもんでな(少し壊すと思いますけど、許して下さいね)

 

 結果としてエヴァンゲリオン初号機を壊す事があったが、今回は第13使徒を抑える為に壊れる事が織り込み済みになるのだ。

 先に一言、葛城ミサトに告げるのはシンジの良識であった。

 それをそっと受け止める葛城ミサト。

 

『………不甲斐ない大人で御免ね。シンジ君、ケンスケ君を助けてあげて』

 

まかしっくいやい(任せて下さい)

 

 

 

いっどがほい(行くよ、トウジ)

 

『おおや!』

 

 駆け出す2機のエヴァンゲリオン。

 エヴァンゲリオン初号機はEW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)を両手で握り槍の様に突き出して奔る。

 

「キィィィィィィィェェェェェェッ!!」

 

 ほとばしる猿叫。

 エヴァンゲリオン初号機も顎部を開いて吠える。

 

-フォオォォォォォォォォォォォォオオオオオン!!-

 

 人機一体の叫び。

 自らの叫びに背中を圧される様に、3歩目にはトップスピードとなるエヴァンゲリオン初号機。

 対する第13使徒、此方は4つの腕を膨らませて剛腕として迎撃を図ってくる。

 此方も、吠える事は無いが力を全力で込めているのが判る。

 両者全力となる一撃。

 

 激突。

 

 第13使徒が振るう腕よりもエヴァンゲリオン初号機が早かった。

 EW-12(マゴロク・エクスターミネート・ソード)の切っ先は、第13使徒左肩を貫通する。

 エヴァンゲリオン初号機の質量まで乗った1撃は肩から背中にまで貫通する。

 第13使徒の左の腕2本を一撃で封じて見せたのだ。

 そのままシンジはエヴァンゲリオン初号機の左腕で第13使徒の右腕を封じる。

 脚は、上半身と共に第13使徒の体を抑え込んだ。

 身動きの出来なくなった第13使徒。

 だがそれは第13使徒にとっても願っても無い事であった。

 侵食である。

 だからこそ、エヴァンゲリオン初号機を受け入れたとも言えた。

 

『シンジ君!?』

 

 通信機越しに聞こえる葛城ミサトの悲鳴。

 碇ゲンドウの声も混じっていたようにも聞こえた。

 だが、浸食の痛みを全身で受けているシンジに対応する余力は無い。

 それよりも優先するべき事があるからだ。

 

トウジサァ(トウジ)!!」

 

 吠える。

 叫びながら、残った自由に動く右腕でシンジは第13使徒の背中を殴り飛ばした。

 エントリープラグの装甲ハッチ(カバー)だ。

 灰褐色に塗られたソレが宙を飛ぶ。

 そして大地に落ちる前に、鈴原トウジの駆るエヴァンゲリオン3号機がエントリープラグを引っこ抜いた。

 

『獲ったでぇっ!?』

 

よかっ(見事)

 

 痛みに耐えながらシンジは鈴原トウジを称賛し、併せて攻撃に移る。

 

『シンジ君、浸食が激しいわ! 一度離れて』

 

 葛城ミサトの指示。

 だが、もうシンジには勝利への道が見えているのだ。

 故に笑う。

 笑っての追加攻撃一択であった。

 

もうおわっが(もう終わりです)

 

 エヴァンゲリオン初号機に残った武器、EW-15(カウンターソード)を引っこ抜いてエントリープラグが抜けた穴に叩き込む。

 エヴァンゲリオンを構成する素体、その最深部(コア)に繋がる弱点と言える場所であった。

 第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機に侵食し、融合しているが故に第13使徒は、その痛みに震える事となる。

 滅茶苦茶に暴れようとする第13使徒。

 だが、シンジはそんな真似など許さない。

 EW-15(カウンターソード)に付けられている200mmリボルバーカノンを全弾零距離射撃を実行する。

 跳ね散る血。

 第13使徒の頭部やエヴァンゲリオン初号機を侵食していた青い光が消え、動きが止まる。

 

『使徒、活動停止! シンジ君、終わったんだ!?』

 

 日向マコトの報告めいた通信。

 だがシンジは攻撃の手を緩めない。

 まだ必要な報告が無いからだ。

 故に、止めとばかりに追加攻撃を掛ける。

 EW-15(カウンターソード)から手を離させ、その柄頭に拳を叩き込むのだ。

 第13使徒の、第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機のコアを叩き潰そうと言うのだ。

 2発目、3発目、4発目。

 そして7発目でEW-15(カウンターソード)の切っ先は第13使徒の体を貫通し、コアを割るのであった。

 

使徒反応(BloodType-BLUE)、消滅を確認』

 

 欲していた報告、青葉シゲルの言葉を受けてシンジは漸く攻撃の手を止めたのだった。

 

 

 

 凄惨なまでのエヴァンゲリオン初号機の姿。

 第13使徒の第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオン1号機の返り血を受け、夕暮れに威風堂々とたたずむその姿は、正に戦鬼の風格であった。

 

 

 

 

 

 


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