【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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獣めいて自由自在に動く
対するエヴァンゲリオン3号機。
右腕で保持する
派手には動かない。
まだ、
付近ではまだ
対第13使徒が最優先だと言う指示は出ていた。
だが、出来る話では無かった。
故にエヴァンゲリオン3号機に乗る鈴原トウジは耐えるのだった。
第13使徒は、伸ばした両腕を鞭のようにしならせて来る。
それを盾で防ぐエヴァンゲリオン3号機。
直撃。
巨大盾は軋みを立てるが耐えた。
間髪入れず、鈴原トウジは右腕で持つ
エントリープラグに映し出されている、第13使徒の予測位置めがけて動かす。
細かい制御は必要ない。
鈴原トウジが行うのは攻撃の意志を示した事で、Bモジュールが計算し提示する選択肢の中で最良と思えるモノを選ぶだけなのだ。
これがType-Ⅲb。
これがBモジュール。
初めて1人で第13使徒と対峙し、近接戦闘と言う神経を削る様な戦いを鈴原トウジが出来る理由でもあった。
だが、鈴原トウジは不満げに声を荒げる。
「
声を漏らした理由は、
G型装備第3形態の固定武装 ―― 近接牽制用の5連装35.6cm無反動砲の使用である。
設置されている位置は背部、人間で言えば肩甲骨に相当する部位に固定式に5連装のランチャーが左右各1基づつ搭載されている。
主武装である
だが、鈴原トウジは否定する。
強く拒否する。
第13使徒に囚われている相田ケンスケを心配するが故、ではない。
地上への余波、被害を考慮するが故であった。
35.6cm無反動砲の砲弾は広範囲に被害を与える榴弾であり、それを一度に5発を発射するのだ。
しかも、発射時には
付近で救助活動が行われる中で使える様な選択肢では無かった、
主兵装である
エヴァンゲリオンは力があり過ぎる。
特に火砲は、使用に慎重でなければならない。
そう鈴原トウジは理解していた。
にも拘わらず、
鈴原トウジでなくとも、声を荒げてしまうと言うものであった。
エヴァンゲリオン3号機は第13使徒に怯えている。
Bモジュールが示す攻撃性を、鈴原トウジはそう理解していた。
恐怖を第13使徒に感じている。
感じているからこそ、第13使徒を
シンクロによって何となく、エヴァンゲリオン3号機の心を感じていたが故の理解であった。
第13使徒と闘う中で、相手への恐怖心が伝わってくる様な気がしたのだ。
「そう怯えんでもええやろ」
接触面から侵食してくるナニか。
エヴァンゲリオン3号機が怯えるのも当然だと、それが悪いことでは無いと言う鈴原トウジ。
足元を確認し、機体を大型盾に隠しながら距離を調整する。
怖いのも当然だ。
自分も怖い。
綾波レイとエヴァンゲリオン4号機が、碇シンジとエヴァンゲリオン初号機が、惣流アスカ・ラングレーとエヴァンゲリオン弐号機が戦ってきた相手に比べれば、無茶苦茶な能力は無いのだから。
全てを焼き払う様な光学兵器も無ければ、分裂してダメージを無効化する事も無い。
影に引っ張り込もうとする事も無い。
飛んですらもいない。
ごく普通の第13使徒だ。
手足を伸ばすし獣めいて飛び跳ねる所は少しばかり厄介だが、それだけだ。
物理法則の範疇に居るのだ。
しかも、もう少し頑張ればシンジが到着する。
怯える必要なんてないのだ。
深呼吸して機体に話しかける鈴原トウジ。
勝つと判ってる闘いなのだ。
怖くても焦る必要はないんだよ、と。
「笑うのは無理やけどな」
シンジやアスカの様に、戦いの最中に笑う事は出来ない。
笑うまでは出来ない。
だが、心を落ち着ける事は出来るのだと言う。
「シンジが言うとった、
横木打ちの際、雑念を捨てるのだと言う。
ありのままに受け入れ、そして対応するのだと言う。
それが出来ると言える程に鈴原トウジも図太くは無い。
だが、それを目指しているとは言えるのだ。
「だから、焦らずに行くで」
その顔は笑っていなかった。
だが、落ち着いていた。
鈴原トウジは、大型盾からエヴァンゲリオン3号機の顔を出させて第13使徒を確認する。
戦術ネットワークによって、
だが、その顔を出した瞬間を狙って、第13使徒は腕を鞭のように振るってくる。
細く伸びた右腕、その先にある手はまるで膨れたかのように丸くなり、内側から破裂した1万2千枚の特殊装甲の素材をまき散らしながらエヴァンゲリオン3号機に迫る。
『触れるな、トウジ君!』
青い光を乗せた
判るが言葉にしている余裕はない。
まだ、行動の自由は得ていないが故に、払う事を選ぶ。
膝を落とした中腰で、
Bモジュールによってエヴァンゲリオンの操作に不慣れな鈴原トウジでも、簡単に神業めいた所業が可能となっていた。
長くて重い、
だが、出来ない。
鞭めいた第13使徒の手が、振り払おうとしてきた
そのまま、腕を引っ張る第13使徒。
腕を4本に増やし、肩甲骨辺りから増やした腕で、鞭めいた腕を引っ張っている。
笑っている第13使徒。
その動きは奇矯であり、道化めいていた。
だが、全く笑えない。
笑う事の出来ない脅威であった。
引き合う力が拮抗状態を生む。
その間にある
「なんやーっ!?」
悲鳴めいた声を上げる鈴原トウジ。
ソレが何かとは判っていた。
侵食。
だが、思わず声が出ていた。
『手放すんだ、トウジ君!』
「ええんか!?」
思わず声を上げる鈴原トウジ。
デカくて重いレールガンである
だが、指示を出す
戦闘時に於いては、
『気にするな!』
「後で怒らんで下さいよっ!?」
歯切れのよい
引き合う力が消え失せた結果、第13使徒もエヴァンゲリオン3号機も後ろにたたらを踏む形となった。
睨み合い。
第13使徒は奪った
そしてエヴァンゲリオン3号機を見る第13使徒。
その顎部ジョイントが嗤う様に歪んでいる。
少なくとも、鈴原トウジにはそう見えた。
「舐めやがって」
伸ばしていた腕を戻し、肩甲骨から生えた腕共々に、威嚇する様に腕を組んで見せていた。
エヴァンゲリオン3号機が無手と見ての事だろう。
歯ぎしりする鈴原トウジ。
だが、通信機が朗報を届ける。
『
「えっ!?」
言われ場をチラ見すれば、半壊して後方に下がっていた筈の
両手で
刃で斬る事も出来るが、上手く刃を当てなくとも鈍器めいて使える事から、鈴原トウジがデジタル演習で多用していた武器だった。
「避難者はええんかいな!?」
油断なく第13使徒を見ながら、
足元で行われる救難活動を気にする鈴原トウジ。
だが
『今しがた、救難活動の終了が報告された。NERV施設内なら安心して暴れて良いんだぞ__ ん? ………』
ヘッドセットのマイクを握って何かの応答をした
『反撃の時間が来たぞ! シンジ君と
『
「おうシンジ!!」
着地の粉塵が舞い上がる中、肩部に装着した、機体の安全な降下用のブースターを排除するエヴァンゲリオン初号機。
顎を引いて睥睨するその様は、戦場の支配者と言う顔であった。
油断の無い仕草で、後ろ腰に装備していた
その後方に回った
通常のアンビリカルケーブルに比べれば短いが、それでも電力は十分であった。
「
報告が上がる。
NERV本部第1発令所では安堵の声が上がった。
送電システムが無事に稼働するか不安視されていたのだ。
「どうやら無事に第2ラウンド、と言った所だな」
「ああ」
第1発令所の第1指揮区画、その中央にある総司令官ブースの椅子に座っている碇ゲンドウは、腹心である冬月コウゾウに頷く。
半分は綱渡りであった。
当初予定では、第13使徒が発見されても遠隔地で
だからこそシンジとアスカ、それにエヴァンゲリオン弐号機をNERVドイツに派遣していたのだ。
それが日本の首都である第2東京の近郊、松代で第13使徒が出現し、暴れ出したのだ。
日本政府は、その沽券の問題からNERVに対して第13使徒の早期撃滅を要求していた。
全くの予想外であった。
そもそも、第13使徒が
「3号機では無理でも、シンジと初号機であれば使徒の殲滅は容易いだろう。特にあの
「後は、乗っている
「………知らん。だが、出来ねば死ぬだけだ。それは理解しているだろう」
戦闘を行うつもりがないなら、エヴァンゲリオン初号機が
そう言う判断であった。
「お前らしくない、不確定さの容認だな?」
「第2次E計画によってダミーシステムの開発が遅れているのだ。ならば、後はシンジを信じるしかあるまい」
ダミー、Dシステムとも呼ばれるソレは、Type-Ⅱで制御されているエヴァンゲリオンの無人起動/運用システムであった。
綾波レイと言う存在の特質を利用したソレは、制御の難しい
だが、碇ゲンドウの言葉の通り、第2次E計画に赤木リツコを筆頭とした技術開発局の人間を集中投入した結果、見事に頓挫していたのだ。
Dシステムは儀式用のエヴァンゲリオン開発に必要な大事な技術であったが、如何に大事であっても、或いは重要であっても物理の問題 ――
と、冬月コウゾウが喉を震わせた。
「何だ?」
「いや、お前が信じると、息子を信じると言った事がな」
「………問題ない。計画は
「盛大な親子喧嘩にならん事を祈るよ」
右手の拳で笑みの形に歪む口元を隠した冬月コウゾウ。
その姿を憮然とした顔で睨む碇ゲンドウ。
「
報告が上がる。
葛城ミサトが指示を出す。
「使徒が、
「はい」
「リツコ? MAGIの判断は」
「賛成1に条件付きが1つ。後は判断保留ね。第13使徒の
条件付きは、どれ程のダメージで第13使徒の支配力が低下するか読めない点が問題視されていた。
判断保留は、エントリープラグの射出用の推進剤の残量十分か判断できないとの事だった。
エントリープラグの緊急射出は既に2回試されているのだ。
安全係数が取られている為、定格であれば3回分は射出可能とされているのだ。
出来る筈であった。
だが、第13使徒との戦いに絶対と言う言葉は使えないのだ。
MAGIの1基が慎重な判断をするのも当然の話であった。
「なら、待ちましょう。シンジ君を信じて」
「はい!」
唱和する声が上がる。
状況は、碇ゲンドウたちを
取り敢えずの手合わせとばかりに仕掛けるエヴァンゲリオン初号機。
第13使徒もまた、腕を鞭のように振り回す。
踏み込み、そして1
交差する刃と腕 ―― 交差にならない。
シンジは見事に第13使徒を腕を斬り飛ばしていた。
だが追撃はしない。
バックステップするエヴァンゲリオン初号機。
そして油断なく第13使徒を睨みながら、
侵食を行う第13使徒、その事前情報あればの行動であった。
表面を確認し、そして振ってみる。
只の1合で刃先が荒れてはいたが、刀身に
とは言え長くは持たない。
予備として
全力での使用に向いていない。
「
第13使徒を倒す事は大事であるのだが、同時進行で第13使徒に
と、今度は第13使徒が踏み込んでくる。
エヴァンゲリオン初号機の持つ
『シンジ!?』
「キェェェェイ!!」
故にシンジは半歩だけ踏み込ませる。
そのまま膝を落とし、蜻蛉から半月を描く様に
切っ先が大地を切り裂く程に低く沈み、空を断つかの如き一閃。
だが、第13使徒も黙って斬られなどしない。
踏み込みから両手を地面に着いて、腕の力だけで空へと跳ねての緊急回避する。
正に人外の動きであった。
だがシンジも又、並では無かった。
エヴァンゲリオンと言う機体への理解が進んでいるのだ。
だからこそ動きをイメージする。
追撃、連続攻撃。
空へと振り上げた姿勢のままに、軸足1つで跳ねる。
膝とつま先だけで、全高40m近い巨躯が空へと跳ねたのだ。
人間では決して出来ない動き。
だがエヴァンゲリオンであれば出来るのだ。
空中にある第13使徒とエヴァンゲリオン初号機。
空中であると言う事は自由では無い。
A.Tフィールドを自在に操れるようになりつつあるアスカとエヴァンゲリオン弐号機なら話は別であったかもしれないが、シンジとエヴァンゲリオン初号機にそんな器用さは無い。
だが、それでもシンジは攻撃を諦めない。
NERVに来てから受けた格闘訓練を基にした動きをイメージし、エヴァンゲリオン初号機を操る。
身を捻り、上半身を逸らせる挙動を行い、その反作用を蹴りとして第13使徒に叩き込んだのだ。
轟音と共にエヴァンゲリオン初号機のつま先が、第13使徒の胸部装甲へと叩き込まれる。
はじけ飛ぶ第13使徒。
着地するエヴァンゲリオン初号機、
残身として第13使徒を睨むシンジ。
まだ倒せてはいない。
感覚として判っていたが故だった。
『ケ、ケンスケェェッ!?』
通信機越しに鈴原トウジが悲鳴を上げているのが判る。
だがエヴァンゲリオンでの戦闘歴が長いシンジは、あの程度であればエントリープラグに大きな被害は出ていないと判断していた。
そもそも、第13使徒を倒せる1撃ではないのだ。
相田ケンスケに被害が出る筈も無いと言う剛毅な判断もあった。
只、神の悪戯か、この1撃が予想外の結果を生む。
第13使徒による
それは通信機能に繋がった。
『聞こえているかNERV! トウジ!』
とは言え映像は無く、エントリープラグの非常モード ―― 音声のみの緊急回線であったが。
『ケンスケ、ワシじゃ、トウジじゃ! 無事か!?』
『何とか無事だ。今、いきなりエントリープラグの電源が戻ったんだ! 何が起こってるんだよ、コレ!?』
電源は戻ったが、外部は見えないと言う。
何も判らないのだと言う。
故に手早く、
『マジかよ………』
絶句する相田ケンスケ。
大地に穴を開ける勢いで叩きつけられていた第13使徒が起き上がろうとする。
青い光が全身に走る。
再度の、
『何だこりゃ!? た、助けてくれぇっ!!』
「
『シンジかっ、頼む!!』
「
『何にだよ!?』
「
『………死なないなら耐えるさ! 頼むぞシンジ!! 俺、まだやりたい事が__ 』
第13使徒による
シンジは決意を込めて、インテリアのグリップを握りなおす。
痛くても耐えると言ったのだ。
男の言葉だった。
だから、それを信じての速攻を選ぶ。
と、鈴原トウジが口を開いた。
『シンジ、ワイが仕掛けるからその隙にってどうや?』
組み伏せて見ると言う鈴原トウジ。
第13使徒は、エヴァンゲリオン3号機よりもエヴァンゲリオン初号機を見ている。
優先度の高い脅威と認識していたのだから、エヴァンゲリオン3号機による攻撃は成功する筈だと言う。
だがシンジは、否定する。
それは難しいだろう、と。
「
避けられてしまうだろうと言う。
だから役割は逆だと続ける。
「
『何、シンジ君』
「
結果としてエヴァンゲリオン初号機を壊す事があったが、今回は第13使徒を抑える為に壊れる事が織り込み済みになるのだ。
先に一言、葛城ミサトに告げるのはシンジの良識であった。
それをそっと受け止める葛城ミサト。
『………不甲斐ない大人で御免ね。シンジ君、ケンスケ君を助けてあげて』
「
「
『おおや!』
駆け出す2機のエヴァンゲリオン。
エヴァンゲリオン初号機は
「キィィィィィィィェェェェェェッ!!」
ほとばしる猿叫。
エヴァンゲリオン初号機も顎部を開いて吠える。
-フォオォォォォォォォォォォォォオオオオオン!!-
人機一体の叫び。
自らの叫びに背中を圧される様に、3歩目にはトップスピードとなるエヴァンゲリオン初号機。
対する第13使徒、此方は4つの腕を膨らませて剛腕として迎撃を図ってくる。
此方も、吠える事は無いが力を全力で込めているのが判る。
両者全力となる一撃。
激突。
第13使徒が振るう腕よりもエヴァンゲリオン初号機が早かった。
エヴァンゲリオン初号機の質量まで乗った1撃は肩から背中にまで貫通する。
第13使徒の左の腕2本を一撃で封じて見せたのだ。
そのままシンジはエヴァンゲリオン初号機の左腕で第13使徒の右腕を封じる。
脚は、上半身と共に第13使徒の体を抑え込んだ。
身動きの出来なくなった第13使徒。
だがそれは第13使徒にとっても願っても無い事であった。
侵食である。
だからこそ、エヴァンゲリオン初号機を受け入れたとも言えた。
『シンジ君!?』
通信機越しに聞こえる葛城ミサトの悲鳴。
碇ゲンドウの声も混じっていたようにも聞こえた。
だが、浸食の痛みを全身で受けているシンジに対応する余力は無い。
それよりも優先するべき事があるからだ。
「
吠える。
叫びながら、残った自由に動く右腕でシンジは第13使徒の背中を殴り飛ばした。
エントリープラグの装甲
灰褐色に塗られたソレが宙を飛ぶ。
そして大地に落ちる前に、鈴原トウジの駆るエヴァンゲリオン3号機がエントリープラグを引っこ抜いた。
『獲ったでぇっ!?』
「
痛みに耐えながらシンジは鈴原トウジを称賛し、併せて攻撃に移る。
『シンジ君、浸食が激しいわ! 一度離れて』
葛城ミサトの指示。
だが、もうシンジには勝利への道が見えているのだ。
故に笑う。
笑っての追加攻撃一択であった。
「
エヴァンゲリオン初号機に残った武器、
エヴァンゲリオンを構成する素体、その
滅茶苦茶に暴れようとする第13使徒。
だが、シンジはそんな真似など許さない。
跳ね散る血。
第13使徒の頭部やエヴァンゲリオン初号機を侵食していた青い光が消え、動きが止まる。
『使徒、活動停止! シンジ君、終わったんだ!?』
日向マコトの報告めいた通信。
だがシンジは攻撃の手を緩めない。
まだ必要な報告が無いからだ。
故に、止めとばかりに追加攻撃を掛ける。
第13使徒の、
2発目、3発目、4発目。
そして7発目で
『
欲していた報告、青葉シゲルの言葉を受けてシンジは漸く攻撃の手を止めたのだった。
凄惨なまでのエヴァンゲリオン初号機の姿。
第13使徒の