サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 NERV本部で行われている適格者(チルドレン)の訓練。

 本日行われている内容は、第7世代型有機コンピューターMAGIが再現した仮想空間でのデジタル演習であった。

 主目的は5機のエヴァンゲリオンによる入れ替え戦をする事での、5人の相性その他を見る事である。

 正式なNERVエヴァンゲリオン戦闘団第2小隊を組む上で綾波レイ、鈴原トウジ、渚カヲルの組み合わせの適性を見るのだ。

 そこに碇シンジと惣流アスカ・ラングレーも含まれているのは、今の様な2人のどちらかが戦闘参加不可能な状態を想定しての事であった。

 使徒は段々と強さを増している。

 そして、襲来の時期は予想出来ない。

 だからこそ、であった。

 

 最初、葛城ミサトがシンジとアスカも相性を見ると言いだした時、アスカは物凄い顔をしていた。

 思わずシンジが二度見した程の表情であった。

 

「アタシたちが信用しないってぇの?」

 

 見事な、巻き舌めいた発音をするアスカ。

 その迫力にあてられて、鈴原トウジは半歩ほどアスカから離れていた。

 理解しなかったのは綾波レイと渚カヲルの2人(ピュアピュアコンビ)

 見事の同じ角度で首を傾げてアスカを見ていた。

 とは言え年の功。

 葛城ミサトはアスカの感情を柳に風とばかりに受け流す。

 と言うか、()と言う言葉に可愛げを感じる程の余裕があった。

 

「信用と言う意味では貴方たちは絶対的、それ位には信じているわよ? 只、不測の事態に備える。その準備って所ね」

 

 今みたいな、と続ける。

 シンジとアスカの組み合わせ(第1小隊)は、実戦に於いて圧倒的な能力(パフォーマンス)を発揮している。

 ほぼ全ての使徒を2人で撃破しているのだ。

 シンジとアスカ、共に襲来する使徒の3体を単独撃破し、それぞれが5体と4体とを共同撃破している。

 綾波レイにせよ鈴原トウジにせよ、共同撃破しか経験()が無い。

 圧倒的と言う言葉は伊達や誇張では無いと言えるだろう。

 綾波レイは支援役が主であり、鈴原トウジが戦列に加わったのが極最近であると言う事を加味しても尚、圧倒的と評価されていた。

 少なくとも、葛城ミサトと作戦局の人間が、ペアの解消と組みなおしを検討しない程の評価である。

 戦技、そして戦意による戦果であり、その点に関して鈴原トウジは、アレは自分には無理と断言した程だった。

 

『あんなん求めんで下さいよ!?』

 

 それは断言と言うよりも悲鳴とも言うべき言葉であった。

 正式に適格者(チルドレン)に選出されエヴァンゲリオン3号機の専属操縦者に決まって以降に行われた教育で見せられたビデオ ―― 戦うべき使徒の脅威の開示と、その使徒に先任たるシンジとアスカが如何に戦ってきたかを知っての事であった。

 それを作戦局の教育役(ドリルマネージャー)は笑わない。

 逆に、全く同意すると頷いていた。

 

『安心してくれ。我々とてあの2人が()()だと言う事は理解している』

 

 その言葉に嘘はない。

 と言うか、鈴原トウジの反応に感動すら覚えていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()、と。

 さもありなん。

 異常と言う言葉は言い過ぎにしても、特別と言う言葉はシンジとアスカの2人を指す事実であったからだ。

 アスカはまだ良い。

 幼少期に適格者(チルドレン)として選抜され、実戦担当と言う形で営々と教育され磨き上げられた特別(エリート)なのだから。

 幸せであるべき子どもとしての時間を奪われ、その全てをエヴァンゲリオンの運用と戦闘の訓練時間に捧げているのだ。

 そこらの人間(子ども)に簡単に並ばれては立つ瀬がないと言うものであろう。

 だがシンジは違う。

 普通の少年として育ち、只、少しばかりの剣術の鍛錬をして来ただけ ―― 少なくともシンジ本人の自己申告ではそうであった。

 だが、それだけの人間の出せる成果では無かった。

 赤木リツコは言う。

 シンジにはエヴァンゲリオンを操る才能がある、と。

 だが自在に操れるからと言って、それが即座に戦闘の能力に繋がる訳では無いのだから。

 公開されている経歴、或いは能力から見れば規格外の結果を出した。

 それがシンジなのだ。

 NERV本部の秘蔵っ子(決戦存在)、各NERV支部がそう見たのも当然であり、葛城ミサトらも()()()()()()があるのではと危惧したのも当然の話だった。

 だが危惧は早々に霧散した。

 いくら調べても何も無かったし、よくよく見ればシンジはエヴァンゲリオンを自在に操れても、銃火器類の操作に関しては不慣れであったからだ。

 NERVで行われる戦闘訓練も、最初は初心者(新兵)向けの内容であったのだ。

 受ける教育に真剣であり、その内容を身に付けようと必死に訓練する姿を見ていれば、疑念など残る筈も無かった。

 葛城ミサトと赤木リツコはシンジへの評価として1つの結論を出した。

 ()()だろう、と。

 エヴァンゲリオンを操る才能。

 戦闘を行うセンス。

 それらを支える、剣術の鍛錬で培った胆力。

 葛城ミサトも赤木リツコも理由を探る事に匙を投げた程に、シンジも特別であったのだ。

 

 だが、常に2人を同時に戦場へ投入出来る訳では無い。

 今現在の様な、どちらかの乗機(エヴァンゲリオン)が修理などで動けない状況。

 或いは怪我などで動けない事も想定される。

 だから、であった。

 

「悪いけどシンジ君とアスカ。貴方たちの能力だと、そうなった場合に下げるってのは出来ないのよ」

 

 単独で見た場合でもシンジとアスカのエヴァンゲリオンでの戦闘能力はずば抜けている。

 だからこそ、相方が居ない場合でも実戦には投入するし、その場合に支援を誰がするべきかと言う話になるのだ。

 今までは綾波レイしか居なかったが為、問題には成らなかった。

 だが今は3人も居るのだ。

 であれば、相性の問題を見なければならないと言うのも当然の話であった。

 

「……フン…なら、仕方ないわね」

 

 特別だからこそ、と言う何とも自尊心をくすぐられる言葉に、アスカは可愛らしく鼻を鳴らしていた。

 そんな強いアスカの態度に、感性の一般的な鈴原トウジなどは呆れた様な感想を抱いていた。

 よくもシンジはアスカを選んだものだ、と。

 シンジとアスカの関係が一歩進んだ(ステディとなった)事を鈴原トウジは知っていた。

 と言うか知ってるのは鈴原トウジのみならず第壱中学校の面々は誰もが知っていた。

 思春期入りたての(とっぽい)シンジは隠すと言う考えが頭に無かったし、アスカはシンジの所有権を満天下に宣言する為に積極的に公表して回っていた(学校内を手を繋いで歩いて回った)のだ。

 シンジ並みに思春期の遅い鈴原トウジでも知っているのは当然の話であった。

 2時間だか3時間だが、アスカを学校近くのたまり場(ファミリーレストラン)で掴まえて根掘り葉掘りとヨーロッパでの事を洞木ヒカリとその一党(洞木グループ)は聞き出していたのだ。

 ジュースや珈琲紅茶。

 甘いパフェなどテーブル一杯に並んだソレを相伴にして、主菜はアスカの恋話。

 アスカを取り囲む洞木ヒカリに対馬ユカリ、好奇心旺盛と言った顔では無いながらも綾波レイも居た。

 3人だけでは無い。

 洞木グループでは無いが、割と仲の良い女子クラスメイトが2人加わって、アスカを逃さぬとばかりに取り囲む様になっていた。

 思春期(耳年増)の乙女に、彼彼女関係(成立したカップル)と言う奴は余りにも刺激的であるのだから仕方のない話と言えるだろう。

 とは言え、聞きだした(乙女の事情聴取)と言えるだろうか。

 翌日の艶々顔のアスカを見れば、自慢し(惚気)ていたと言うのが正しいのかもしれない。

 

 

 

 呆れる鈴原トウジを兎も角として、始まるデジタル演習。

 優先度の高い3人の相性問題の確認が実施される。

 戦闘スタイルの確認。

 戦闘への適正 ―― 判断速度の確認その他。

 確認するべき項目は多岐にわたる事となった。

 

「渚カヲル君、中々ね」

 

 感嘆する様に言ったのは葛城ミサトだ。

 近接格闘戦闘と中距離射撃戦、そして遠距離射撃戦。

 その全てで高い適性を見せていた。

 ある意味でアスカに近い所があった。

 高いシンクロ率と沈着冷静さが相まっているお陰とも言えた。

 とは言え近接格闘戦闘の面では、柔軟性(対応力)と言う側面で経験豊富なアスカに劣る感じではあったが。

 今までの戦闘経験がアスカに、戦闘に於ける判断の高速化と多様対応を教えている結果とも言えた。

 遠距離射撃戦で言えば、綾波レイに一歩及んでいなかった。

 冷静さと言う意味では同じところに居たが、戦闘への意欲(肝の据わり具合)と言う部分で及ばないのだ。

 反撃射(カウンターバッテリー)を受けるとなった際、状況を勘案して避難を選択するが退避中に撃破される事の多いのが渚カヲルだ。

 対し綾波レイ。

 一切の躊躇なく(シンキングタイムレスに)反撃を選択し、反撃射が致命傷になる前に相手を撃破し、生存する事が多かった。

 何とも評し難いと言えるし、或いはシンジとアスカの戦友らしいと言える姿(戦闘スタイル)であった。

 

 兎も角。

 尖った部分を別にすれば、渚カヲルは平均的に優れたエヴァンゲリオン操縦者であった。

 だからこそ、組み合わせを考える部分があった。

 デジタル演習などで得られた情報から作戦局のスタッフは喧々諤々の議論を行っている。

 だが、それを統括する葛城ミサトは1つ、結論めいたモノを考えていた。

 渚カヲルは綾波レイと組ませ、第2小隊とすると言う案である。

 

 近接戦闘を主軸とする第1小隊に対して、中距離戦闘を中心にした第2小隊。

 それは使徒への偵察戦闘(威力偵察)と言う役割を考えての事であった。

 如何にして、圧倒的な決着力を持った第1小隊の2機を使徒へ無傷で叩き込めるか、と言う考えであった。

 それ程に葛城ミサトはシンジの駆るエヴァンゲリオン初号機とアスカの駆るエヴァンゲリオン弐号機を信用していた。

 そして同時に、それは鈴原トウジの事を勘案すればこそと言う面があった。

 エヴァンゲリオンとのシンクロ訓練と戦闘訓練の期間が短いから ―― では無い。

 その様な後ろ向きの話では一切ない。

 逆なのだ。

 鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機の特性を前向きに勘案すればこそであった。

 即ち、Bモジュールの存在である。

 第13使徒との戦いで得られたBモジュールに関する知見、そして鈴原トウジからの操縦者としての報告を見て葛城ミサトは、このBモジュールの持つ攻撃性を高く評価しての事だった。

 綾波レイのエヴァンゲリオン4号機に搭載されているソレは、ディートリッヒ高原の手で調整された汎用型であったが、エヴァンゲリオン3号機に搭載されているソレは最終調整を真希波マリが実施した()()()であった。

 Bモジュールは操縦者の運用を支援し、B(ビースト)の文字を冠するに相応しいまでの攻撃(暴力)性を持つ事が実戦の場で実証されたのだ。

 その性能は、作戦局によるBモジュールの運用報告書(レポート)を見た国連安全保障理事会で第2次E計画のエヴァンゲリオンに搭載する事を求めた程であった。

 それは性能向上もあったが、そもそも、素人同然の鈴原トウジが乗ったエヴァンゲリオン3号機がBモジュールを搭載していた事で実戦の場で戦えたと言う事が評価されての事だった。 

 故に、エヴァンゲリオン3号機とは異なりType-Ⅲ制御システムだけであった第2期量産型(セカンドシリーズ)エヴァンゲリオンにもBモジュールの搭載が要求される事となったのだ。

 

 最も、残念ながらも真希波マリが謎の失踪していたが為、純正型Bモジュールを搭載する事は不可能であった。

 純正のBモジュールは、エヴァンゲリオン3号機とエヴァンゲリオン8号機に積まれている2つのみであった。

 攻撃(性能)増強に主眼を置いた葉月コウタロウのBモジュール。

 安定した多用途支援能力を重視したディートリッヒ高原のBモジュール。

 2種類のBモジュールは量産が可能であったが、最終調整を真希波マリが担った純正のBモジュール、群狼戦闘能力(ウルフパック)と呼ばれる対大規模()用A.Tフィールド戦闘能力を持ったBモジュールの再現は不可能となっているのだ。

 尚、同機能に関して、鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機は使用する事が出来ていない。

 その事が真希波マリをBMの開発に駆り立てたとも言えていた。

 とは言え、純正Bモジュールの特性は無くとも葉月型Bモジュールとディートリッヒ型Bモジュールは量産可能であり、極論すればその何れであれども、国連安全保障理事会の要求する能力を備えている為、大きな問題となる事は無かった。

 

 余談ではあるが真希波マリである。

 主の消えた部屋に残されていたのは「あと1片で完成する」と「ユイさん」とだけを書きなぐった1枚の紙だけであったと言う。

 ユイと言う文字は言うまでも無い。

 真希波マリが心から慕っていた碇ユイの事であろう。

 そして完成したと言う言葉。

 それが指すのはNERVアメリカ支部で開発していたエヴァンゲリオン8号機、その専属操縦者として()()された人造適格者、開発コードBMであった。

 真希波マリの遺伝子を使用して生み出されたBMは、真希波マリの失踪に前後して完成 ―― 自意識が覚醒していたのだから。

 NERVアメリカ支部の人間が最後に真希波マリを見たのは、目覚めないBMの沈むシリンダー(円筒培養槽)の前であったと言う。

 疲れ果てた顔でシリンダーに額を付けて、何かを呟いていたのだと言う。

 完成(覚醒)しないBMにノイローゼになってしまったのではないかと噂されていた。

 NERVアメリカ支部は機密保持の為、100㎞四方を荒野に包まれている場所に作られた陸の孤島であった。

 そして、人間が自分の足で出る事は不可能。

 自動車や車などは偵察衛星とUAVによって監視されている。

 そもそも、出入りは輸送機に限られているのだ。

 そんな場所で行方不明(失踪)と言う

 その意味を誰も誤解しなかった。

 かくして葉月コウタロウとNERVアメリカ支部は、BMを真希波マリの遺産にして遺児として受け入れたのだった。

 

 話を戻せば、葛城ミサトが評価していたのはエヴァンゲリオン3号機とBモジュールの組み合わせであった。

 火器管制能力とも言える。

 間違っても、海のモノとも山のモノとも判らない群狼戦闘能力(ウルフパック)では無かった。

 大量の火器を同時に操り、支援射撃を行う能力。

 牽制にもなる。

 又、鈴原トウジと言う操縦者が過度な攻撃意欲を持っていないと言う事も評価していた。

 支援を主軸とした場合、戦闘意欲と言うものは前のめりを産みやすい(撤退命令を拒否し易い)為であった。

 様々な意味において、第1第2の2個小隊を支える戦闘団の女房役は鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機しか居ないと考えるに至っていたのだ。

 

 

 

 

 

 NERV本部地下、エヴァンゲリオン格納庫(ケイジ)の直ぐ近くに設けられた操縦者待機室。

 その名の通りシンジ達の待機場所であり、同時に休憩場所であった。

 ある程度であれば各人の要求に応じた設備が整えられる様になっていた。

 壁紙も明るいクリーム色でありソファなどやTVも完備。

 ジュースは勿論、珈琲紅茶の準備もあり、菓子や軽食などまで切らされる事無く用意されている快適空間であった。

 

 一応真面目な空間である作戦伝達室(ブリーフィングルーム)の役割部分はパーテッションで区切られている。

 その真面目な側の入り口から入って来る葛城ミサトと赤木リツコ。

 先のデジタル演習での分析結果と、第2小隊に関する説明の為であった。

 

「お待たせ!」

 

 軽い調子で声を出す葛城ミサト。

 だが扉から入った操縦者待機室の空気は控えめに行っても酷かった。

 立ったままアスカと渚カヲルが睨み合っているからだ。

 正確に言えば違う。

 顎を引いて睨んでいるのはアスカだけであり、渚カヲルはアルカイックスマイル(胡散臭い笑み)を浮かべていた。

 何と言うか、空気が重い。

 何があったのかと周りを見れば、我関せずとばかりに離れたソファに座って紅茶を飲んでいる綾波レイと、天を仰いでいる(アチャー と言う顔をしている)鈴原トウジ。

 シンジは居なかった。

 

「どったの?」

 

 思わずと言った風に小声で尋ねる葛城ミサト。

 答えたのはアスカと渚カヲル、同時であった。

 

「コレがヴァカを言っただけよ」

 

「僕は正論を言っただけですよ」

 

 尚、視線はお互いからずらしていない。

 何とも言い難い雰囲気となる。

 

「おっけー ナンかトラブルってのは判ったわ。んじゃ悪いけど、トウジ君、説明してくれる?」

 

「ワイでっか!?」

 

「こういう時は当事者以外が得てして冷静で俯瞰的なものだからよ」

 

 赤木リツコも合いの手を入れる。

 無慈悲な宣告。

 綾波レイであればと見れば、目を閉じて顔を隠す勢いで紅茶の紙コップを傾けていた。

 どうみても中身が零れている角度。

 その意味を鈴原トウジは誤解しなかった。

 貴方がやれと言う意味だ。

 

「はぁっ」

 

 溜息をする鈴原トウジ。

 最近、感情豊かになっているとのアスカや洞木ヒカリの評はこういう所かと思いながら、渋々と口を開いた。

 

「始まりはカヲルん奴やった__ 」

 

 フト、思いついたように口を開いたのだと言う。

 それはシンジの相棒(パートナー)を自分に変わって欲しいと言う要望であったと言う。

 当然ながらもアスカは拒否した。

 自分とシンジは最高のコンビなのだと言い放った。

 だが、それを渚カヲルが否定した。

 否定したと言うよりも、自分がもっと上手く出来ると言ったのだ。

 笑顔で。

 

「…………あー あぁ、あー うん」

 

 頭を掻く葛城ミサト。

 コメカミに指を当てて俯く赤木リツコ。

 

「アタシとシンジの連携に敵うって思うなら、笑えるわね」

 

「おっと、僕はシンジ君の動きに完全に合わせられたからね」

 

 全く違う武器で攻撃のタイミングを合わせているのがアスカ。

 対して渚カヲルは、類似の武器で攻撃を全く同じに行えていた。

 

「あ”?」

 

「僕にもやらせて欲しいな」

 

「却下」

 

 渚カヲルの懇願を、一刀両断とばかりに容赦なく拒否するアスカ。

 1mmとて妥協の余地はない。

 そういう態度(塩対応)であった。

 

「アスカの気持ちは了解したけど、何でカヲル君はシンジ君とペア(小隊)を組みたいの?」

 

「あんなに優しい人と会ったのは初めてだからですよ」

 

「やさ__ 」

 

「__しい?」

 

 思わずな異口同音となった葛城ミサトと赤木リツコ。

 思わず顔を見合わせる。

 否、それ以前に海外組(非日本語ネイティブ)なのにシンジの言葉が判るのかと言う顔となる。

 

「シンジが優しいのはその通りとして、でも、だからってアンタに譲ってやる義理は無いわ」

 

 シンジが褒められる事には満足な顔をしつつ、でも妥協はする積りの無いアスカ。

 実に見事な態度(彼女面)であった。

 

「少しは譲ってくれても良いと思うんだ。惣流さん、今までシンジ君と一緒に居たんだから。そのまま独占と言うのはズルいかな」

 

「何を言ってんだか判らないわよ」

 

 葛城ミサトらを脇にして、バチバチになったアスカと渚カヲル。

 鈴原トウジが天を仰いでいた気持ちも良く判ると言うモノであった。

 

「うん、色々と判った。で、トウジ君。肝心のシンジ君は?」

 

「センセは機付きさん(吉野マキ技術少尉)に呼ばれて出っとりますわ」

 

「整備方針の事ね。良いわ、帰って来るまで待ちましょう。私らも息抜きしてれば良いわ」

 

「そうね」

 

 勝手知ったる何とやら。

 そんな勢いでソファに座る葛城ミサトと赤木リツコ。

 先ほどまで会議などをやってたのだ。

 少しは息抜きも良いだろうと言う事であった。

 

「リツコ、珈琲飲む?」

 

「お願い」

 

「エエんですか? アレ、放っておいて」

 

 無論、アレと睨み合いと言い争いを継続中のはアスカと渚カヲルだ。

 鈴原トウジの心配を軽く流す葛城ミサト。

 

「気に入らない事はトコトンやってた方が後腐れが無いってものよ」

 

「拗れませんやろか?」

 

「気にする必要は無いわ。その時はその時。それがミサトの信条だもの」

 

「酷いわねぇリツコ。私の経験則って言っといてくれない」

 

「どうだか」

 

 極一部(2人)を除いて穏やかな空気となった操縦者待機室。

 葛城ミサトが呑気にしているのも、1つにはアスカと渚カヲルの対峙が決定的(深刻)なモノでは無いと見ればであった。

 渚カヲルは兎も角、昔から知るアスカに関しては判っていた。

 全力拒否ではあっても嫌悪感は出していないのだ。

 気持ちの詳細などは詳細は家に帰った時にでも、ビール片手に突撃すれば良い。

 そう思って居たのだった。

 

 喫茶タイム。

 暫しの時間が経過した頃、シンジが戻って来た。

 

んだもしたん(ごめんなさい)もへ葛城サァたっもきとったとな(もう葛城さん達も来てたんですね)

 

「気にしないでシンジ君。私たちが早く着いただけでしょ」

 

 軽い調子の葛城ミサト。

 だが空気が緩かったのも、そこまでであった。

 甲高い、他人の不安を書き起こす音。

 警報音だ。

 

 スイッチが入る。

 

「総員、第一種戦闘配置!」

 

 裂帛の気合で号令を発する葛城ミサト。

 シンジ、アスカ、綾波レイの3人は真っ先に更衣室へと駆け出す。

 

「えっ!?」

 

 初めてっと言う事で空気の変化に置いてけぼりになった渚カヲル、その肩を鈴原トウジは軽くたたいてみせた。

 

「務めの時間っちゅーこっちゃ。行くで」

 

「あっ、うん」

 

 そして葛城ミサトと赤木リツコも、第一発令所へ向けて走り出していた。

 第14使徒の襲来であった。

 

 

 

 

 

 


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