サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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12-epilogue

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 勝利で終わった第14使徒戦。

 だがその対価は決して軽いものでは無かった。

 NERV本部と第3新東京市の被害は尋常では無かった。

 そしてエヴァンゲリオンの被害は甚大と言う言葉ですら生ぬるい有様であった。

 被害が最も軽かったのはエヴァンゲリオン6号機。

 最前線に立たず、慎重な運用が行われたお陰もあって消耗品の交換や一部の装甲の補修で済んでいた。

 次に被害が軽かったのはエヴァンゲリオン弐号機とエヴァンゲリオン4号機だ。

 極端な被害を受けなかったものの、派手な戦闘機動と大きな打撃(衝撃)を受けていた為に重検査が必要であると判断されてはいたが、逆に言えばその程度で済んでいた。

 問題となってくるのは、先ずはエヴァンゲリオン3号機。

 第14使徒の攻撃によって胴体を貫かれており、その復旧は容易では無いと判断されていた。

 幸いな事に制御システム周りへの被害は軽微であったが、胴体と言う事で付帯する部分が多すぎていた。

 事実上の大破状態である。

 そして言うまでも無く最も被害が大きかったのはエヴァンゲリオン初号機だ。

 元より左腕の無い大破状態であったのが、右の腕迄も融解している。

 大破と言う言葉すらも生ぬるい状態であった。

 

 

「いっそ現行の初号機は廃棄して、シンジ君向けに1から新造した方が良くない?」

 

 呆れた様に言う葛城ミサト。

 エヴァンゲリオン弐号機に抱かれる様にしてケイジへと戻って来たエヴァンゲリオン初号機の姿は、そういう感想を抱くに相応しい惨状であった。

 実際、全く悪い提案と言う訳では無い。

 エヴァンゲリオン初号機からコアを分離して新しい素体、新しい機体に移植すると言うのは、手間と言う点からすれば妥当であるからだ。 

 とは言え、はいそうですかと簡単に頷ける話では無かった。

 

「そうも行かないわよ」

 

 嘆息する様に赤木リツコが言う。

 素体の成長の問題があるのだ、と。

 

「成長?」

 

「そ。素体も、今までの戦績に基づいてコアと共に成長しているわ。一番わかりやすいのは目であり口ね。素体の最初の培養状態ではソレらの器官は存在していないわ」

 

「あ、そう言えば初号機が顎部ジョイントを開いて吠えたって時、大騒動してたものね」

 

「そう言う事。そしてその成長、進化と言っても良いわ。ソレをコアは記憶している。けど、換装した場合___ 」

 

「ある筈のモノが無い、と」

 

「多分、何時かは新しい素体も馴染み、そしてコアに相応しい形へと進化するわ」

 

 これまでの各エヴァンゲリオンの修復と、その後の経過観察から赤木リツコは言う。

 でも、それは直ぐにでは無いのだ、と。

 

「似た外見、コアも同じなのでシンクロする感覚も同じ。だけど操作しても素体 ―― 機体は追従しない。そう言う可能性が高いわ」

 

「………そうなると実戦で死命に関わる可能性があるわね」

 

 厳しい顔で頷く葛城ミサト。

 赤木リツコも頷く。

 

 出来る積りで動いた。

 だが、機体がソレに追随しなかった。

 実に危険な話であった。

 一発(出たとこ)勝負の使徒との戦いで、そういうリスクは負いたくないと言うのが正直な話であった。

 

「修復、どれくらい掛かりそうなの?」

 

「1月は見ていて」

 

「………その間、使徒が来ない事を祈るしかないわね」

 

「とは言え、手が無い訳では無いわよ?」

 

「ナニそれ?」

 

 少しばかり人の悪い笑みを浮かべる赤木リツコ。

 それから説明する。

 1月と言う期間は、エヴァンゲリオン初号機用の部品を1から製造した場合だと言う。

 だが、ほぼ類似の部品が今、建造中だと続ける。

 

「第2次計画分って事?」

 

「そう言う事」

 

 今現在、NERV本部では製造が行われていないが、各支部では建造が進んでいるのだ。

 そこから仕上がっている備品を徴発すれば、2週間程でそれなりの所まで仕上げる事が出来ると断言していた。

 赤木リツコは、狩人の目をしていた。

 既に、徴発する部品は目星をつけてあり、その辺りは碇ゲンドウに提出済みでもあった。

 今日に、では無い。

 非常時徴発用リスト、としてである。

 何か在ったら、ここから部品を取ってこいと言う上申(命令)であった。

 情人としての力(尻に敷いて搾り取っているから)ではない。

 気迫、或いは迫力勝ちしていたのだ。

 第2次E計画が国連安全保障理事会で審議していた頃から、何時のまにかエヴァンゲリオンの維持に関してNERV随一の強権者となっていたのだ。

 各支部の関係者と顔を繋ぎ、折衝し、そして時折は強権発動をして第2次E計画をまとめ上げた結果、とも言えた。

 

 全てを察した葛城ミサトも、悪い顔で返す。

 

「作戦局としては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「了解したわ。後で、書類を回しておいて」

 

「お安い御用よ」

 

 美味そうに煙草を吸う赤木リツコ、そして葛城ミサト。

 それはそれは見事なまでの作戦局と技術開発局の提携(コンビ打ち)であった。

 

 

 しばしの休息。

 一服の一時。

 そう言えば、と思い出す葛城ミサト。

 

「シンジ君、今回は入院の必要性は無さそうね」

 

「バイタル、精神状態、共に平常だったから検査入院の必要も無いと言う事でアスカがお供に連れて帰ったわよ」

 

「あの娘も………そう言えば今夜はドイツ式晩御飯とか言ってたわね……」

 

 命がけの1戦が終わったら、即、切り替えて日常に帰った碇シンジと惣流アスカ・ラングレー。

 実に神経が太いとも言えた。

 綾波レイも含めて実戦経験豊富と言う事なのかもしれない。

 念のためとして入院している鈴原トウジや、少しだけ寡黙になっている為に観察の為に入院処置となった渚カヲルとは比べ物にならないと言えた。

 とは言え、であった。

 溜息をつく葛城ミサト。

 

「……あの痛みを受けて変調しないってのも凄いけどね」

 

「そう、ね」

 

 葛城ミサトが遠い目で、煙草の煙を追った。

 その耳で、エヴァンゲリオン3号機が被害を受けた際に鈴原トウジが上げた悲鳴が蘇っていた。

 訓練などでは弱音の1つも吐かない我慢強い鈴原トウジが上げた、身も世も無いとばかりの勢いの悲鳴。

 耳をふさぎたくなる程の声。

 耳をふさぐことを許されない声。

 

 今までシンジとアスカ、そして綾波レイが上げる事の無かったソレは、どんな言い訳をしても許されない、大人の罪を示す声であった。

 仕方が無い。

 他に選択肢が無い。

 幾らでも言い訳めいた事は言える。

 だが、幾らでも言葉で誤魔化せたとしても自分の心までは騙せないのだ。

 最初の3人に慣れ過ぎていた大人にとって、改めて実感(直面)する事になった大人の責任()であった。

 

「カヲル君の方も含めて、心療内科の方、宜しく」

 

「ええ」

 

 葛城ミサトと赤木リツコ。

 2人が吸う煙草は余りにも苦かった。

 

 

 

 

 

 NERV総司令官執務室の席に座り、受話器を持っている碇ゲンドウ。

 相手はSEELE、キール・ローレンツ、SEELEメンバーの最高責任者であった。

 

『碇、SEELEの総意として今回の第14使徒戦役に関するNERVの行動、それに伴って発生した被害を批判する事は無い』

 

「はっ、有難う御座います」

 

 だが、それも当然であった。

 使徒の情報公開に伴って、NERVは対使徒戦役 ―― 戦闘に関する情報を人類補完委員会(SEELE)に対して全て(第1次情報)を上げる様にしていた。

 故に、第14使徒が余りにも強大である事、そしてNERV全力での抵抗が余すことなく伝わっているからであった。

 従来は、情報を秘匿する必要性からネットワーク(インターネット)を介して報告は行っていなかった。

 専用の閉鎖回線が1つは用意出来ては居たが、それはSEELEとの直通回線であり、表の看板である人類補完委員会との業務用として使えるモノでは無かったのだ。

 だからこそ、SEELEとしても迅速な情報の把握が出来るのであった。

 かつては碇ゲンドウもNERVの内幕を余すことなくSEELEに晒す事には抵抗があった。

 当然である、SEELEの人類補完計画とは別の、碇ゲンドウの人類補完計画を進める積りであったのだから当然である。

 だが、度重なる国連安全保障理事会への対応で忙殺されるが為、そして人類補完計画がSEELEや碇ゲンドウのモノを問わず少しも進捗し無いのだから、そんな事よりも自分の身の安全だとばかりに業務の簡素化を行ったのだった。

 NERVの運営。

 国連安全保障理事会人類補完委員会との折衝。

 SEELEへの報告。

 そして、時々発生する情人(赤木リツコ)による搾り取りがあるのだ。

 仕事量を減らすしかなかったのだ。

 

『だが、安全保障理事会への報告書は早期の提出を願おう』

 

「期日としては?」

 

『無理は言わぬが可能な限り早く、来週には頼む』

 

「畏まりました」

 

『では碇、無理をせぬ範囲でな』

 

「はっ」

 

 通話が終わる。

 散文的な、仕事の通話となった碇ゲンドウとキール・ローレンツの会話。

 そこにはNERVとSEELEのトップによる腹の探り合い等と言う雰囲気は無かった。

 仕事に疲れた仕事人の業務連絡と言う風情であった。

 

 傷だらけとなっている受話器を机に入れる碇ゲンドウ。

 そして大きくため息をついた。

 

「SEELEも大変な様だな」

 

 何時ものソファに座り、揶揄する様に言う冬月コウゾウ。

 それを否定せぬ碇ゲンドウ。

 それは実に疲れた男の姿であった。

 

「此方よりはマシだ」

 

「そうかもしれん」

 

 空を見上げる冬月コウゾウ。

 天井では無い。

 ()()()()()

 NERV総司令官室は、その上部が丸っと消し飛ばされていたのだ。

 第14使徒の粒子砲による影響であった。

 逆に、よくぞ原形を留めていたなと言う話であった。

 

 執務机にある、別の電話を取る碇ゲンドウ。

 

「私だ。現時刻をもってNERV本部中枢施設の全凍結作業を開始したまえ」

 

 第14使徒が作り上げた開口部によって、今のNERV本部ジオフロントは侵入者を阻止しきれないのだ。

 であるが為、このNERV総司令官執務室を含む中枢施設は全凍結は止む無しと言う話であった。

 NERV総司令官公室も、地下の予備施設に移動する事とされていた。

 そして、現NERV総司令官公室の資料群は全てが現場所で焼却処理される事となっていた。

 機密性の高いが故に、移動と言う数多くの人間の目に触れさせる事が認められないのだ。

 全てはデジタル保存されているからこその乱暴な処置でもあった。

 

 問題はSEELEとの秘密回線であった。

 電子化された会議を開くだけの設備が用意出来ていないのだ。

 故に、先ほどの様な電話での協議となったのだ。

 

「さて、行くぞ冬月」

 

「ああ」

 

 過去を振り捨てるかのように、NERV総司令官公室を出ていく碇ゲンドウ。

 冬月コウゾウを連れ、振り返る事は無かった。

 

 

 

 

 




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デザイナーズノート(#12こぼれ話)
 仕事量でメンタル死んでる大人組
 割と艶々に生きてる子ども組(※新規参入の子どもは慣れるまでガンバ!

 いやはや、酷い事になってまする
 ま、次の第15使徒が更にゲテモノなので、本当に、どうしろとというのかとありおりはべり
 つか、第16使徒が来て第17使徒
 第17使徒ダブリス君、君、コレと闘うの?(汗
 メンタル絶好調&戦績積みまくりのスペックカンストよ?
 つら、ラスボス役はどうしましょう
 カヲル君、もといダブリス君
 がんばれー
 SEELEもがんばれー
 ゲンドー君もがんばれー

 尚、頑張ったから結果が出ると言うナイーブな考えは捨てろ(無慈悲







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