【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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様々な意味で阿鼻叫喚としか言いようのない惨状を残した第15使徒戦。
第15使徒と、エヴァンゲリオン初号機とエヴァンゲリオン弐号機のA.Tフィールドの衝突の余波はそれ程に酷い状況を生み出したのだ。
A.Tフィールド。
その全てを人類が解明できていない、使徒とエヴァンゲリオンが持つ力が原因であった。
今までの14体の使徒 ―― これまでの13回に及んでいる使徒との戦いで発生しなかった事態であったが、その原因に関して赤木リツコは1つの仮説を報告していた。
場所は、
要するには非公式なのだ。
分析の公表と言う前の作戦局と技術開発局、その他関連部署での
故に、居るのは赤木リツコと葛城ミサトだけでは無い。
パウル・フォン・ギースラーは当然として伊吹マヤに青葉シゲル、珍しい所では特殊監査局の諜報課から剣崎キョウヤなども、手の空いたNERVの主要メンバーが居た。
只、正式な会議をすると議事録などの形式的な部分が億劫になる為、休憩中の雑談と言う態が取られているのだった。
故に、めいめいの参加者は平素よりはラフな ―― 状況相応には疲れた顔をして、人によっては力なくソファに背中を預けている人間もいた。
だが、その目だけは一様に真剣な力がみなぎらせていた。
兎も角。
赤木リツコによる
と云う事であった。
「攻撃的?」
第15使徒戦の日の夜。
責任者としての仕事がひと段落し、シャワーと着替えを済ませたお陰でさっぱりとなった顔を傾げた葛城ミサトが、訳が分からないと眉を顰める。
人類は使徒と戦っている。
それ以上の攻撃的な事態と言うモノは無いだろうに、と考えていた。
だが、赤木リツコは頭を掻きながら否定する。
状況としての話では無く事象、運用としての話である、と。
「従来の使徒はA.Tフィールドを能動的には使って居なかったわ。あの第12使徒レリエルであっても、自己の保持の延長線上でしかなった」
「……A.Tフィールドそのものを武器としている訳では無った。そういう理解で宜しいでしょうか?」
珈琲ではなく
「ええ。その認識で十分よ」
「正直信じられませんが………」
「状況証拠から考えれば妥当、か。マヤちゃん?」
「はい。第12使徒戦での
「だが、接触を試みたと言う報告もあった筈だ」
伊吹マヤの補足に反論する日向マコト。
使徒によるエヴァンゲリオン、そして
アレを持って攻撃的でないと判断するのはおかしいのではないかと言う主張だ。
だが、赤木リツコはソレを否定する。
「話がズレるわ。私は言ったわよね、
「………確かに」
不承不承として頷く日向マコト。
不要不急を口にする事の多い人柄をしていたが、反論の為の言葉を口にしないだけの知性は持っていた。
「で、話を戻すと、A.Tフィールドを攻撃的に使ったから、惨劇に繋がったと言う事でいい訳ね」
「ええ」
惨劇と言う強い言葉を使った葛城ミサトに、頷く赤木リツコ。
惨劇である。
第15使徒のA.Tフィールドによる精神への打撃、そして嘔吐や失禁などを発生させた体調不良を指している訳では無い。
第15使徒戦から約半日の時点では判明している死傷者の件であった。
126名の精神失調者。
そして41名の死者だ。
但し、この41名は
何故なら検視は勿論、死体の確認すら出来ていないからだ。
公式には行方不明として処理されるだろう。
だが、MAGIが管理する監視カメラには明確な証拠が残っていたのだ。
「
「第3新東京市に居た、或いは第15使徒のA.Tフィールド干渉圏内に居たと言う事を除けば、ね」
「そうなります」
沈黙が舞い降りる。
各人の机の上には、[部外秘]と赤く印の打たれた幾枚かの画像があった。
どれもこれも、オレンジ色の水に濡れた服や靴の集まりであった。
「どうせいっちゅうの」
葛城ミサトの嘆息。
それが参加者全員の心境でもあった。
剣崎キョウヤが居る理由は、この情報が欺瞞されたモノでは無い事の確認であった。
NERV本部の誇るMAGIであるが、それが何らかの情報工作をされた可能性が無いのかと警戒しての事であった。
それだけ、人間がL.C.Lの様なモノに身が変わった事は衝撃的であったのだ。
無論、その結果は白 ―― MAGIへの違法アクセスは勿論、現場でL.C.L化した人間の情報も事実であった。
救いが無い状況であった。
沈黙が部屋を支配する。
「今後もこの事象が発生する可能性は?」
葛城ミサトが気が重いと言う顔をしながら言葉を紡ぐ。
このL.C.L化、使徒との戦いと言う意味で今後は重大なファクターとなりえるのだからだ。
どうすれば良いのか。
どう対処するべきなのか。
誠にもって悩ましい話であるのだ。
対して、赤木リツコの言葉は明確であった。
判らない。
ただそれだけなのだ。
「不明ね。使徒がA.Tフィールドによる攻撃を行わない限りは、発生しないと見て良いとは思うわ」
「………エバーによる抵抗が惹起した事態の可能性は?」
「葛城さん!?」
感情を排した葛城ミサトの言葉に、日向マコトが思わずといった態で声を上げた。
だが葛城ミサトも、問われた赤木リツコも視線を動かさない。
非常に繊細な、大きな問題を孕む質問であった。
エヴァンゲリオン弐号機が抵抗した結果では無いのかと言う事なのだから。
だが、それを赤木リツコは否定する。
判らない。
そう言う
「エヴァンゲリオンの抵抗によって圧を上げた可能性は否定しないわ。だけど、それはそもそも、使徒が有している能力の可能性が高いわ」
何故、第15使徒がエヴァンゲリオンに対してA.Tフィールドによる攻撃を行ったのか。
その意味、或いは意図は不明。
最初に標的となったエヴァンゲリオン弐号機のレコーダーにも、使徒の意図を明確化できるものは残されていなかった。
同じ様な被害を後から受けたエヴァンゲリオン初号機、そして余波が酷いことになったエヴァンゲリオン3号機とエヴァンゲリオン6号機も同じであった。
使徒の目的を推測する根拠となる様なモノは何1つとして残されていなかった。
「戦闘に必要だから干渉し、そして攻略しようとした。それ以上の事に論拠は無いわ。憶測、或いは妄想の域の話にしかならない」
「そうね」
「只、救いがあるとすれば、使徒は同じ攻撃手段を使う個体は居ないって事かしらね」
「………そう願いたいわ」
第2東京に存在するSEELEの管理下にある高級ホテル。
SEELEメンバーが国連などに参加する際に定宿としており、その為の通信ネットワークや機密保持その他、高度な設備が整えられている欧州系の企業が経営していた。
その最上階、スイートルームに居るキール・ローレンツは優雅とはとても言えない一時を過ごしていた。
碇ゲンドウを連れて来て、SEELEとのデジタル会議を行っていたのだから。
議題は、葛城ミサトらと同じ、人のL.C.L化についてであった。
L.C.L化自体が理解出来ない葛城ミサトらと違い、SEELEには1つの情報があった。
人類補完計画である。
行き詰った
その過程にあったのだ。
L.C.L化と言う事態が。
Lilithの子たるリリンがAdamの子たる
その為に、一度、リリンとしての人類を解かねばならないのだ。
それがL.C.L化であった。
L.C.L化に於いて鍵となるのはA.Tフィールドであり、その意味においては第15使徒の攻撃は人類補完計画にも似ていた。
だからこそ、問題となったのだ。
問題点は2つ。
1つは、L.C.L化した人間が戻って来れていないと言う事。
こちらに関しては、人類補完計画が想定しない形でのL.C.L化である為、出来ないのではないかと言う想定は可能であった。
問題はもう1つの側。
L.C.L化せぬままであった人々も受けた圧倒的なまでの圧、であった。
真っ黒な何か。
自分の心を、魂を塗りつぶしていくような恐ろしい経験。
それは雑多な、万を超えていた第3新東京市の人々の心 ―― 他人の心が見えた様な感覚であった。
疑う余地は無い。
名も知れぬ他人の感情が、人生が、記憶が、断片的に感じられたのだ。
そういう判断以外出来る事では無かった。
只の個人の脳、魂、或いは心では処理しきれない情報の津波であったのだから。
キール・ローレンツは感じていた。
あの恐るべき時間、耐えられなければ自分は
L.C.L化した人々は、耐えられなかった人々の末路なのだろう、と。
人類補完計画。
果たして、人はその重大な過程足るL.C.L化に耐えられるのか。
そういう疑念であった。
「ゲンドウ、貴様はどう見る」
「はっ、全ては憶測の上となりますが………」
強張った顔のまま、言葉を濁す碇ゲンドウ。
仕方のない話であった。
人類補完計画の提唱者であったが、ソレは裏死海文書その他の資料や
SEELEは凋落しつつある欧州を再度、輝かせる為に人類の再誕を願っていた。
だからこその人類
それが間違いで、人類集団自殺計画になってしまっては話にならぬと言う事であった。
実際に第15使徒との戦いの現場に居て、L.C.L化と言う状況を見聞きしたキール・ローレンツの言葉は、重くSEELEメンバーの胸に響いていた。
『だが、簡単に結論を出す事はできますまい』
その通りであった。
14年の歳月を掛けて用意された人類補完計画。
それを簡単に破棄する事は出来ない話であった。
『慎重な検討、熟慮が必要でしょう』
『左様。幸いと言うには語弊があるが、人類補完計画は現在、足踏み状態だ』
『或いは、神の思し召しかもしれん』
「良い。であれば結論は変わらぬな。我らSEELEは熟慮を重ねよう。碇。君はNERVを指揮し、使徒を打ち払いたまえ」
「正直な話として、
アレ。
即ち、他人の心を見ると言う行為だ。
1人2人であれば兎も角、千と万と億とと言う人間と一時的とはいえ合一しようと言うのだ。
短時間であっても、耐えがたい不快感を与え、狂いそうな程の衝撃を与えて来た。
それがL.C.L化 ―― A.Tフィールドの弱体化による、人と人との垣根の消滅なのだ。
「或いはエヴァンゲリオンと言う器であれば__ 」
反論の為の反論めいて言葉を咄嗟に言う碇ゲンドウ。
咄嗟の言葉。
だがそれも当然であった。
人類補完計画の中止、或いは破棄は、
流石に、その本音は読めなかったキール・ローレンツは、苦笑と共に言葉を返す。
「慌てるな碇。例え人類補完計画が破棄される事となっても、この14年もの貴様の献身をSEELEは忘れぬ」
「………有難く」
キール・ローレンツの恩情。
それを碇ゲンドウは、何とも言えぬ顔で受け入れるのであった。
大人たちの苦悩、苦労。
それとは別に子ども達も惨状を見せていた。
失神した渚カヲルと綾波レイの入院は勿論ながらも、惣流アスカ・ラングレーも又、検査入院していた。
第15使徒によるA.Tフィールドの標的とされていたのだ。
如何にエヴァンゲリオン弐号機から降りる際、問題の無いことをアピールしていてもNERVとしては安全策を取りたいと言うのが本音であった。
だからこそ病院に誘導された。
その際、アスカは黙って碇シンジを見た。
少しだけ暗い顔に浮かぶ蒼い瞳。
その気持ちをシンジは間違えずに理解していた。
だからこそ、アスカの病室にシンジは居るのだった。
深夜。
少し大きめの、セミダブルベッドな病床に横たわるアスカ。
シンジも同じベッドに上がっている。
同じ布団に包れている。
生まれたままの姿などと云う事は無い。
共に病院の院内服を着ている。
「……………」
何も言わず、只、シンジを抱きしめているアスカ。
そっと抱きしめ返しているシンジ。
怖かったのだろう。
辛かったのだろう。
痛かったのだろう。
苦しかったのだろう。
アスカの気持ちが、少しなりと第15使徒のA.Tフィールドによる攻撃を受け持ったシンジも理解していた。
あるとあらゆる人から責められる事を幻視した。
それはアスカからのモノもあった。
義父のものもあった。
葛城ミサトのものもあった。
義母のものもあった。
綾波レイのものもあった。
義姉のものもあった。
赤木リツコのものもあった。
義兄のものもあった。
知る全ての人から責められ、否定される事を幻視した。
心が凍るような恐怖とは何かというのが良く判った。
だからこそ、なのだ。
言葉にしない。
唯々、力強くアスカを抱きしめるのだ。
腕の中のアスカは、目を閉じて寝ている事を装っている。
だが、小さく震えているのだ。
我慢強いアスカ。
誇り高いアスカ。
だからこそ弱音を、例えシンジであっても他人に言う筈はないと理解していた。
だからこそシンジはアスカを抱きしめている。
頬と頬を寄せ、涙を吸うかの様にキスをし、或いは頭を撫でている。
味方は此処にいる。
アスカを信じている人間が此処にいる。
アスカを好きな人間が居るのだと証明する為に、ここに居るのだった。
好きになった女性を護れずして何が男だ。
そんな事を考えながら、眠れない夜を過ごしていくのだった。
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病室での18禁√ですか?
おせっせですか?
其処に無ければありません(笑顔
いや、真面目な話としてサツマンで紳士なシンジ君なので弱った乙女を手折ろうとする様な不埒な真似は致しませんですぞー
と言う訳で(お
ま、傷のなめ合いックスって割と好物ですけどね!
我慢する
した
大体、感想欄でも言われてた第15使徒アラ公戦
もうね、考える余地と言うか手段が無いのでこーなった
もう少し物理的相手だったら良かったのにね!
仕方ないね!!!
何時ものHappyなEpilogueとは違う、少しビター(※子どものみ(大人組? 大変だね(老人組? 血反吐を吐いてどうぞ