サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件   作:◆QgkJwfXtqk

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 MAGIによる機械的判定によって戦闘規範(レギュレーション)への違反による反則負けとされた鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機。

 その判定の是非でデジタル演習の管制室が盛り上がっていたが、当人たる鈴原トウジは苦笑と共に頭を掻くだけであった。

 目論見通りにエヴァンゲリオン8号機を掴まえる事に成功し、決定的な勝利が確定したので気持ちよく、そしてBモジュールが出した選択肢を確認せずにトリガーを引いたのだ。

 正に『やってもうた』であった。

 それに実戦、使徒との生存戦争となれば話は別 ―― 全ては勝利こそ優先されると理解している事も、心の余裕に繋がっていた。

 エヴァンゲリオン8号機とのデジタル演習は、所詮は遊戯(ゲーム)の範疇との認識であるからだ。

 

「とは言え、あそこから手を離して攻撃するんも悪手ゆーもんやし、難しいわ、ホンマ」

 

 デジタル演習の終了後、操縦者待機室で休憩を兼ねた雑談(ディスカッション)の場で肩を竦めた鈴原トウジ。

 対して渚カヲルは仕方が無いからね、と応じた。

 エヴァンゲリオンとして見た時に概ね同じである以上、エヴァンゲリオン同士で相手を抑え込むのは簡単な話ではないのは、渚カヲルも経験のある話であったのだから。

 デジタル演習として行われる、機体運用習熟訓練などで組手を行い、エヴァンゲリオンが出来る事や出来ない事を教え込まれているのだ。

 相手が鈴原トウジであれ綾波レイであれ、或いは碇シンジであれ惣流アスカ・ラングレーであれ、究極的に言えば、エヴァンゲリオンの素的な意味での能力であれば違い無い。

 違ってくるのは、その使い方であるからだ。

 或いは、今回のエヴァンゲリオン3号機とエヴァンゲリオン8号機を言えば()()()()()()であった。

 

「多分、シンジ君や惣流さんだと__ 」

 

「膝で1発か、或いは頭突きやろな」

 

 手に負えないと笑う鈴原トウジに、全くだと肩を竦める渚カヲル。

 よく見れば、渚カヲルも張り付けた笑み(アルカイックスマイル)ではなく、苦笑に口元を歪めている。

 痛い思い出。

 共に、シンジとアスカの両名から、同じ様な目にあっていたからだ。

 抑え込んだと思った瞬間に、予想外の一撃を喰らって沈む、と言う経験が近接格闘戦のデジタル演習で多々あったのだ。

 

「あそこまで自由に動かせるのって、ホンマに凄いわ」

 

「僕の6号機が額を割られた時、弐号機の足の動きは本当に芸術的だったよね」

 

「せやな」

 

 それは、エヴァンゲリオン6号機でエヴァンゲリオン弐号機と戦った際の事だった。

 取っ組み合いめいて両腕同士で相手を抑え込んだ瞬間、最短にして最小の動きでアスカはエヴァンゲリオン弐号機で膝蹴りをやってみせたのだ。

 しかも、組み合った瞬間に間髪入れずにである。

 アスカは頭がオカシイ(レベルが違う)と、渚カヲルと鈴原トウジも認める手際の良さであった。

 尚、シンジの場合には、頭突きが来る。

 来た。

 そう、鈴原トウジは思い出す。

 掴み合った、その動きを予備動作にして叩きつけたのだ。

 判定は、相手機 ―― 鈴原トウジの乗ったエヴァンゲリオン3号機の頭部全損であった。

 痛かったが、同時に、シンジのエヴァンゲリオン初号機も同じ全損だろうと思って居たら違っていたのが実に理不尽だったとも思い出す。

 エヴァンゲリオン初号機は小破で済んでいたのだ。

 シンジの行う戦闘行動は、雑に見えても良く計算しているのだと理解した。

 角度とか、強度とかを。

 シンジとアスカ。

 共に、常日頃から戦闘時の体の動きを考え、そして体に染みつかせている人間であったと言えるかもしれない。

 戦意過多と言う言葉も生ぬるい、何かであった。

 そして、だからこそ第1小隊(エースのツートップ)だとも思うのだった。

 

 男子とは別にして、女子 ―― マリ・イラストリアスは3人掛けのソファで綾波レイにベッタリと引っ付いていた。

 綾波レイのお腹に小さな額を押し付けるようにして抱き着いている。

 とは言えマリ・イラストリアス。

 勝ち誇った顔をしているかと言えばさにあらずで、両方の頬っぺたを膨らましての不貞腐れ顔だった。

 

「私は負けてない」

 

 判定勝ちと言う言葉に騙される程、マリ・イラストリアスは先のデジタル演習の内容を理解出来ない戯けではないのだ。

 勝ったと言いつつも、その実、正しく、自分が勝てなかったのだと自覚しているのだった。

 その背中を綾波レイは優しく撫でていた。

 勝てない悔しさと言うのは、儘、判るからだ。

 自信と自負を持つからこその悔しさは、同時に、自分の限界を知る事でもあるのだから。

 自分は1人の人間であり、1人である限りには出来る事にも限界がある。

 それを学ぶ事は挫折では無いと思えばこその態度だ。

 

「なら、学ぶと良いわ」

 

「うん。アイツを知る。そして次は勝つ。次の次は完璧に勝ってやる」

 

「それでは駄目」

 

「何で!?」

 

「それは、練習の勝ち方だもの。それでは実戦には勝てないわ」

 

 相手を知る事は大事だ。

 だが、使徒との戦いに於いて同じ姿の使徒、或いは同じ能力の使徒が来た事は一度として無いのだ。

 常に初めての相手と戦う事を強いられる。

 だから、と綾波レイは続ける。

 

「知るべきは自分が出来る事を知る事。そして相手を観察する事を学ぶべき」

 

 マリ・イラストリアスは顔を上げて綾波レイを見た。

 否定されていたにもかかわらず、そこに不貞腐れた色は無い。

 

「相手の能力を見て、そこで自分が出来る勝ち筋を見つけろって事?」

 

「そういう事ね。理解した自分の強みを如何に使うかが大事」

 

「退く事も?」

 

「それも選択肢」

 

「判った」

 

 幼子の様な見た目を裏切るマリ・イラストリアスの理解力に、綾波レイは褒める様に頷く。

 少しばかり過剰めいた自負、自信はあれども愚かでは無いのだと。

 1つずつ学んで行けばよい。

 そう思って居た。

 だからこそ綾波レイは喉元まで上がって来た、例外めいた2人(シンジとアスカ)の例を挙げる事は無かったのだ。

 

 全身全霊全力で、相手に喰らいついてくシンジとアスカ。

 敵の能力を理解した上で、自らの力の限りで使徒の能力をねじ伏せ、叩き潰そうと前に進んでいく。

 自分の被害を度外視する事も儘、見られている。

 だが、と綾波レイは思う。

 アレは、あの2人であればこそだろう、と。

 第9使徒や第14使徒との戦いを見て居れば判る。

 己が倒れても、自分と同じ事の出来る相手 ―― 相方が居ると信じる事が出来るからこその闘いである、と。

 それは第2小隊である綾波レイと渚カヲルでは出来ない事でもあった。

 信用は出来る。

 だが、戦意と言う意味で、シンジとアスカ程の()()を出す事は難しいのだ。

 コレは性格的な問題だろう。

 だからこそ、例外だと綾波レイは思うのだった。

 

 葛城ミサトは、マリ・イラストリアス(エヴァンゲリオン8号機)鈴原トウジ(エヴァンゲリオン3号機)と組ませて第3小隊を新設する積りだと綾波レイは聞いていた。

 鈴原トウジとエヴァンゲリオン3号機がG型/H型装備に高い親和性を持ち、支援射撃を得意としているが、同時に近接戦闘も不得手としていない事からの判断だと言う。

 勿体ないとの考えである。

 同時に、エヴァンゲリオン8号機を、第1小隊や第2小隊に組み込むよりも、前線を支えれる手札(ユニット)を増やしたいとの考えでもあった。

 頼れる第1小隊であるが、やはり1枚看板は危険すぎるのだ。

 例えば第12使徒の様に、無力化を図られてしまった場合でも、同格では無いにせよ準じる戦闘力を持った(ユニット)があれば、打てる手は広がるのだから。

 尤も、この話はまだ口外禁止(オフレコ)と葛城ミサトに言われていた。

 鈴原トウジとマリ・イラストリアスの相性を見てからの事だ、とも。

 無理に(ペア)を組ませて、上手く行かなかったら、そこから何かの問題が発生しては困るからであった。

 悩んでいる葛城ミサト。

 だがそれは、幸せな話であった。

 ある意味でNERV本部の戦力が充足したが故の、贅沢な悩みであるからだ。

 

 ま、何とかなるでしょ。

 綾波レイは何となく、そう言う風に思うのだった。

 

「喉が渇かない? オレンジジュースもあるわよ」

 

「飲む!!」

 

 なら準備してくると立ち上がる綾波レイ。

 ここにシンジが居れば、美味しい紅茶もあったのだけれども。

 そんな事を考えながら。

 

「あ、手伝うよ」

 

「そっ」

 

 そつのない感じで手伝いを申し出た渚カヲルを、軽くあしらいつつも受け入れる綾波レイ。

 

「紅茶が良いの?」

 

「いや、僕は通だからね、緑茶をストレート(砂糖・ミルク無し)で頼むよ」

 

「………そう。良かったわね」

 

 自慢げ(ドヤァ顔)の渚カヲル。

 何も言うまいと背中で言う綾波レイ。

 そんな2人の姿に、鈴原トウジは見事な凸凹コンビだと感心するのだった。

 第壱中学校名物めいたシンジとアスカの関係と似て非なる関係。

 だが女性が強い(レディファースト)な所は同じだ等と鈴原トウジは笑っていた。

 尚、その脳裏に自分が洞木ヒカリに全く勝てない事が浮かぶ事は無かった。

 

「そう言えばセンセたちどうしとるんかのう」

 

 シンジとアスカ。

 療養と言って鹿児島に連れ立って行って既に1週間が経過している。

 元気に過ごしているし、少しづつ回復しつつあるとは甘木ミツキも教えてくれていたが、実際に会話などしていなければ、どんな感じかも判らない。

 

「センセって誰の事?」

 

 ポツリと漏らした嘆息。

 それをマリ・イラストリアスが拾った。

 興味津々と言う顔だ。

 

「ん? シンジのこっちゃ、後、惣流の奴もじゃがな。ジブン、判るか?」

 

「知ってる! パープルオーガー(3rd チルドレン)マッドレッド(2nd チルドレン)だよね!!」

 

 NERVアメリカ支部からNERV本部に向けての()()()()()()由来な、余り綺麗とは言えない綽名を口にするマリ・イラストリアス。

 そこに隔意など無かった。

 だから、鈴原トウジは聞き流して笑う。

 

「そや、知っとったか」

 

「アメリカでも有名だったよ!!!」

 

 無論、それはマリ・イラストリアスに与えられた、超えるべき目標としての教育であった。

 勿論ながらもNERVアメリカ支部からNERV本部への、と言うか碇ゲンドウに対する根深い感情に起因したモノであった。

 とは言え、そこら辺の事をマリ・イラストリアスが気にする事は無かったが。

 

「早く会ってみたい! スゴイんでしょ、2人とも!!」

 

「せや。あの2人はホンマにヤバいで」

 

 色々な意味で、と深くため息をつく鈴原トウジ。

 気分転換に行うデジタル演習の対抗戦で、せめて1度は1本取りたい。

 そういう気分であった。

 

 と、そこで気づいた。

 自分にとってアレが、シンジのエヴァンゲリオン初号機とアスカのエヴァンゲリオン弐号機が基準なのである、と。

 物理的な速さだけで言えば、2人にマリ・イラストリアスは匹敵する所がある。

 だが、気迫と言うか怖さ(凶気)が段違いなのだ。

 或いは()意。

 普通に速いだけでしかなかったマリ・イラストリアスに鈴原トウジは怖さを感じなかった。

 本人に自覚は無いが、鈴原トウジも戦火を幾たびも潜り抜け、使徒も撃破して(星を挙げて)いるのだ。

 肝が据わるのも当然の話だった。

 

「いつ帰って来るの!?」

 

「判らんわ」

 

「何で、何処かに行ってるの?」

 

「そやな、鬼の霍乱ゆー奴や。だが大丈夫や。そう遠くない頃には帰って来るやろ」

 

「たのしみー!!!」

 

「そら良かったな」

 

 それは何とも兄妹めいた雰囲気であった。

 

 

 

 

 

 話題となったシンジとアスカ。

 2人は鹿児島での日々を堪能していた。

 シンジにとって隼人碇家は魂の故郷(精神の回復ポイント)であり、そんなシンジに引きずられる形でアスカの心も回復基調に乗っていた。

 さもありなん。

 アスカにとって初めての、NERVもエヴァンゲリオンも関係のない場所での生活だ。

 肩書は1つ。

 シンジのガールフレンドと言うくすぐったくも嬉しいモノであったのだ。

 シンジの家族はアスカを簡単に受け入れてもくれた。

 そんな、心の負担と言うモノの無い生活は、アスカにとって最高のリハビリ環境であった。

 温泉や神社など観光にも行った。

 だが何より、自由に散歩が出来たりすることが良かった。

 隼人碇家のある一帯は幹線道路などからは少し離れており、村めいた規模の城下町(ゲーテッドコミュニティ)と言う構造になっているお陰だった。

 大災害(セカンドインパクト)の余波によって道路が寸断され、そして意図的に復旧させなかったのだ。

 同時に、共同で対人センサーなどを道路以外に用意しており、周囲の山々を利用しての不審者の侵入を許さない構造となっていた。

 この辺りは、北欧から来たSEELEゆかりの家々による、身に付いた自衛行動(金持ちの身の処し方)であった。

 

 1990年代辺りであれば、元からの住人 ―― 普通の日本人からすれば奇異な行動に見えていただろうが、2000年代前半は九州も中国からの武装難民()の襲撃を受けていたのだ。

 自衛は大事だと言う点で合意が出来ており、特に金満家たちの行動を異常だと見る動きは無かった。

 コレは、1つには北欧を主としてヨーロッパから移住してきた人々が、碇家と言う介在人を上手く使えたというのがあった。

 そして何より、周辺住人との軋轢回避の為、地元に金を大きく落とし続けたと言うのが大きかった。

 元からの旧家などの顔も立てつつ、地域の復興予算に寸志(安くないポケットマネー)を出すなどしていたのだ。

 何より、地元に仕事を齎したというのが大きかった。

 北欧系企業共同体(碇グループ)は、霧島市のみならず鹿児島でも有数の企業群として成長を続けており、地元に職と金を配り続けているのだ。

 嫌われる筈が無かった。

 又、世相が安定してからは祭りなどにも積極的に参加したし、神社仏閣を詣でる事も厭わなかったというのも決して小さくない。

 無論、教会は立てたりもしたが、少なくとも先住の日本人を下に見る事はなかった。

 だからこそ、隼人碇家周辺(ゲーテッドコミュニティ)もだが、1000人に迫ろうかと言う規模でのヨーロッパからの人の流入も安定して行えたと言えた。

 言葉は違うが礼儀正しい(法治に従順な)、そして大災害(セカンドインパクト)で荒れてしまった故郷を共に汗水流して立て直そうとして協力してくれる新しい隣人である、と受け入れたのだ。

 尚、自衛の一環めいた鹿児島で復活した郷中教育(課外授業)にも子弟を参加させており、有志で作られている自警消防団にも少なくない若手が加わっている辺り、この新しい隣人の、地元に溶け込もうと言う努力は本気であった。

 

 閑話休題。

 兎も角として安全である隼人碇家周辺(ゲーテッドコミュニティ)を自由に散策しているアスカ。

 勿論、隣にはシンジが居る。

 田舎らしく、車などの生活雑音よりもひぐらしの鳴き声が大きい。

 調水機能維持の観点から残されている田んぼ、或いは小川。

 一部の趣味者の畑。

 閑静な住宅街と言うよりも、正しく田舎の情景であった。

 

 歩いているアスカ。

 カランコロンと音を立てている。

 真っ赤な下駄を履いている。

 それ故に、と言う訳では無いが格好もスカートなどの洋装ではなく、碇アンジェリカ発案で街に買いに行った浴衣姿であった。

 シンジは勿論、碇アイリも一緒になって選んだソレは、涼し気な白味の強い赤を基調に藍色の(アサガオ)が描かれていた。

 紫色の帯も相まってアスカに良く似合っていた。

 だから、と言う訳では無いが実に上機嫌であった。

 シンジが少しだけ顔を赤らめながら、帯に上品な紫基調のモノを提案してきたのだ。

 紫、即ちエヴァンゲリオン初号機色だ。

 独占欲めいたモノを感じてアスカが上機嫌になるのも当然と言えるだろう。

 だからこそ浴衣が届くや否や、着付けをしてシンジと散歩に出かけたのだ。

 手には日傘を持ち、髪は結い上げている。

 実に和装な魅力があった。

 尚、シンジも今日は和装だった。

 碇アイリが、アスカが浴衣なのにシンジが洋装では格好がつかないと声を大にして主張し、碇アンジェリカが賛同。

 そしてアスカが期待に満ちた目を見せてしまえば、後はもう決まっていた(カカァ天下の碇家である)

 シンジは昨年に仕立てていた藍色の甚平は、大島紬であり、上品さも相まってシンジに良く似合っていた。

 流石に足元は下駄では無く、和柄のコンフォートサンダルであった。

 シンジだけでは無く隼人碇家の男衆は皆、甚平や浴衣は持っていても下駄は持っていなかった。

 下駄を履く女性陣に何かあったら、おぶったりする為、足に負担を与えない様にと言う考えであった。

 ソレを碇アイリは、こっそりとした態で、小声でアスカの耳元で教えたのだ。

 長女らしい感じで、負ぶってもらえたりするんだよ、と。

 そして小悪魔(ニヘラっとした)顔で、佳い女って佳い男の背中に体を預けるものよっとも続けた。

 それを聞いたアスカ、ポンっとばかりに真っ赤になったのはご愛敬と言えるだろう。

 

 

「平和ね」

 

「だね」

 

 何となくの散策。

 集落(ゲーテッドコミュニティ)の中に流れる小さな川から、子ども達の歓声が上がっていた。

 地元の子、肌の白い子や黒い子など色々と居る。

 魚とりか何かの、水遊びをしている様だ。

 綺麗な小川は、水辺に遊び場も用意されている。

 小川だけでは無く、小さな公園や林などの全てが集落(ゲーテッドコミュニティ)の庭園と言う意識で手入れがされているのだった。

 

 と、2人に気付いた子どもが手を振った。

 皆して笑顔だ。

 見知った子(薬丸自顕流の鍛錬仲間)も居る。

 この最近で顔見知りとなったアスカの名前を叫んで手を振ってる子も居る。

 皆して元気な、良い子ども達であった。

 

「こういうのをさ、アタシ達って守ってるのよね」

 

「そうだね」

 

「エヴァのパイロットに選ばれて訓練漬けだったから、人類を護るって言われても、正直ピンと来なかった。エリートだから護るんだっていう義務感? ふんわりとしたイメージで見てた」

 

「………」

 

「だけど、シンジの故郷に来て、違うわね。第3新東京市、あの中学校に通う様になって漸く、護るべき人達を見て、そして今、繋がった。今を護りたいって気付けたような気がする」

 

 4歳の頃にエヴァンゲリオンを動かす適格者(チルドレン)に選ばれたと言う事。

 そこからはNERVで訓練漬けの日々を送って来た。

 大人の中でもまれて来たのだ。

 10歳を超えてから、頭の良さも相まって、社会経験も必要だとか言われて大学にも通った。

 だがそこに、普通の人の生活は見えなかった。

 学友(クラスメート)も又、大学だけの関係であり、そして幼くともVIP(エリート)として特別待遇で来たアスカに誰もが隔意を抱いていたのだから。

 

 だがシンジは違った。

 出会った時からアスカに真っ向からぶつかって来た。

 正面からアスカを見ていた。

 そしてシンジを通して出来た第壱中学校の友達との関係。

 洞木ヒカリや対馬ユカリと言った女子だけでは無い。

 男子たちも大事な友達と思えるようになったのだ。

 

「ありがとうシンジ」

 

「………アスカ。僕もアスカに有難うって言いたい」

 

 シンジも又、アスカを真剣に見ていた。

 

「僕がエヴァに乗ったのは頼まれたからだ。他人を、人間を守って欲しいって言われたからだ。ある種の義務感だった。だけど__ 」

 

 シンジはそっとアスカの手を握った。

 日傘を持たないアスカの左手を、両手で捧げ持つ様に握った。

 

「アスカに逢えて、アスカと一緒に戦えて、僕は自分の意志で戦いたいって思う様になったんだ」

 

 アスカと競い合う事が楽しく、そしてアスカの自負と自信が眩しかったと続ける。

 だから、と続ける。

 

「有難う、アスカ。出会ってくれて。一緒に居てくれて、一緒に戦ってくれて。そして、その、あの、恋人になってくれて」

 

 アスカと恋人になり、キスをする仲となったが、それでもシンジは恋人と言う言葉を口にする時、果てしなく照れを感じていた。

 育ってきた地元だと言う事が大きかったのかもしれない。

 その、ある種のいじましいシンジの姿に、アスカも可愛く(ニヘラっと)笑うと、その顔にそっと自分の顔を近づけた。

 が、その前にそっと日傘で子ども達の視線を遮った。

 興味深々と言う塩梅であるのが、目の端に見えたからだ。

 

 藍色の日傘がシンジとアスカの顔を隠す。

 えーっだの、あーっだのと子ども達が文句を上げるが、アスカにとって知った事じゃない。

 子どもにはまだ早いのだから。

 と、シンジの手がそっとアスカの体を引き寄せる。

 

「シンジ」

 

「アスカ」

 

 互いに、相手の名前を呼ぶ際にくすぐったさを感じ、照れ笑いをする。

 キス。

 

 影で見えたのか、子ども達が歓声を上げた。

 だからアスカは日傘を畳んで1つ、投げキッスをするのだった。

 

「こういうのは大人の特権よ!」

 

 そんなアスカをシンジは眩しそうに見るのだった。

 

 

 

 

 

 




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デザイナーズノート(こぼれ話)#14(Ⅰ)
 登場予定の一切なかったマリ・イラストリアスのエントリー
 いや、第15使徒のアレでメンタルやられないのって嘘だヨネ?
 ならシンジ君の実家エピソードだね!!
 なら、療養期間が長めにカウントしないとね___

 シンジとアスカがNERV本部不在?
 前衛(アタッカー)不在ってこと??
 ヤヴァス!!!
 と言う事でゲンドー君がドナドナしてきましたったったー
 ま、なるよね?

 尚、本14(Ⅰ)の目的はアスカの和装です。
 浴衣姿のアスカってカワユスですよね!
 とねー
 浴衣の色
 黄色はアスカのドレス色ってな塩梅でも考えたけど、某ハチオーグと被るので止めますた
 チョイと見てて、和装系で鮮やか過ぎる黄色は色味が重すぎてナァ
 などと(お
 重ねた黒色とかの影響だろうけど、イメージが悪いのでぱーーす である
 本当は夏祭りとか、そういうモンにも参加させたかったけど、現在に身分だと駄目(アカン(警備班が死ぬ(主にストレスで
 と言う事で散歩になりますた。
 隼人碇家の元ネタは、家族構成から察して下さい(お
 とは言え、気付いたら旗派との悪魔合体ですけどね(トオイメ
 ま、気にするな!!






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