【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
+
第15使徒の襲来によって延期されていた
幸いにして第15使徒による物理的被害は少なかったお陰もあって、極端に内容が変更となる事は無かった。
だが政治面は別であった。
民心慰撫と言う面から順次完成していた
第15使徒の物理的ではない被害 ―― 人が
特に第15使徒戦直後は、TVなどでは連日に渡って使徒の脅威が宣伝され、深刻そうな顔をした
それは日本だけでは無く世界中でも起きていた。
だからこそ日本のみならず各国政府も無策では無く宣伝を行って民心慰撫に勤め、又、報道機関に対しても報道制限を
言論の自由、報道の自由を口にする人間も一部には居たが、各国政府などが現実と
実際問題として使徒を口実にした暴動が、アジアアフリカなどを中心とした未だ不安定な地域で多発する事になったのだ。
無辜な被害者が大量に、それこそ各暴動で3桁単位で発生しているのだ。
その資料に生々しい死者の写真を添えて行われた
無論、鞭だけでは無く飴も与えていた。
硬派な人間には、現時点で判明している使徒の情報 ―― NERVと国連安全保障理事会が出して良いと判断した内容となったモノが与えられた。
無論、資料を基に記事を作れるのは
そして、そうでない大多数の人間には
今まで公開されていた4人の
これは
この情報に大多数の
かくして
改めて行われる事となった
その会場は、第3新東京市に設けられている。
何故、第3新東京市で開催されるかと言えば、地盤が理由であった。
総重量500tを越えるエヴァンゲリオン、その重量が2つの脚に掛かっているのだ。
並の場所では地面に穴が開くと言うものであった。
そんなエヴァンゲリオンを複数、配置しようと言うのだ。
戦闘中ならまだしも、そうでなければ出来れば遠慮したいと言うのが日本のみならず世界のイベント施設などの本音であった。
NERVが裏で手を回しているソレは、特にNERV外部の重要人物が第3新東京市に来た時の定宿であった。
安全確保と特別扱いの為、最上階には通常宿泊客は使えない特別なエレベーターで行き来する様にされていた。
そんな一般人では立ち入れない、豪奢なホテル最上階。
防弾能力も付与された厚いガラス越しに見下ろせる会場は、準備万端といった有様である事が手に取る様に判るのだった。
特設されたステージ。
天幕。
そしてエヴァンゲリオン。
10機ものエヴァンゲリオンが並び、その脇を固める
壮観と言う言葉すらも生ぬるいナニカであった。
「いやはや、何とも迫力のある眺めですな」
軽薄な感じでそう述べたのは加持リョウジ。
着ているNERVの制服も、何時もの着崩しておらず
無精ひげも無い。
NERV本部スタッフと言う
尤も、表情だけは何時もと違いは無かったが。
「人類の総力、或いは本気を示していると言えるでしょう」
加持リョウジの居る場所からは見えないが、全高40m級と言うエヴァンゲリオンの足元には、エヴァンゲリオンと共に使徒と闘い抜いている
日本のみならず、世界中から集められた装備の群れ。
正に
「そういう話を私は聞きたい訳ではない」
だが、加持リョウジの言葉を聞いている恰幅の良い日本人 ―― 日本の国会議員は、不満足であると言う感情を隠そうともせずに言う。
国連との折衝などを担う外務省の大臣補佐官であり、そして国粋主義者であった。
国連本部が日本に来た事や、旧列強たる欧米が影響力を低下させている事が、彼彼女らに
日本にとっても世界にとっても幸いであったのは、その様な人間は日本の政府関係者にあってごく一握りであると言う事だろう。
とは言え、この外務省大臣補佐官の様に影響力を発揮できる場所に居る場合もある為、国際協調派である日本国総理大臣としては油断出来ない話であったが。
兎も角。
政治指向としては問題児であっても能力も相応に高い為、総理大臣に首輪を嵌められて使われている外務省大臣補佐官は、その政治的指向からNERVの保有するエヴァンゲリオンが強力過ぎる事が問題であると考えているのだった。
日本国内に日本政府以上の
しかも、NERVの管理下に無いエヴァンゲリオンも日本の管理下には入らないのだ。
この類の人間が感情的にならない筈がない。
そんな条件が揃ってしまっていた。
「この光景こそ、NERVの持つ驕りの表れだ」
エヴァンゲリオンと言う決戦兵器を10機も揃え、自分たちの権力を誇示している。
そう喚いている。
加持リョウジは肩を竦めて返事とした。
そんなにNERVは傲慢じゃありませんよ、と。
「10機の中でNERV本部管理下にあるのは6機だけですし。ま、今回、ここまで派手にヤる理由だって、世界の人達に対するアピールだって企画書に書いてますよ」
NERVの予算は国連安全保障理事会でも審議される。
特に額の大きい場合には、監査が行われ問題が無い事の確認をした上で決済される。
NERVが何らかの
それだけの権限を国連安全保障理事会は有しているのだから。
そもそも、今回の
NERV側として、開催に対する意欲など欠片も無い所か、第15使徒戦を理由に延期では無く中止したかったというのが本音だった。
少なくともNERV内部に居る加持リョウジは、その空気を存分に理解していた。
「君は誰の味方だ! 加持リョウジ
飄々とした加持リョウジに、思わずといった塩梅で声を荒げる外務省大臣補佐官。
加持リョウジの本業、その1つである日本国内務省の
この部屋が
何とも迂闊な行為と言えるだろう。
ま、一事が万事で
そんな内心をおくびにも出す事無く、
全ての発言は記録されている。
それがNERV総司令官たる碇ゲンドウの
「私は日本の、日本の利益の味方ですよ」
「………ならば何故、あのエヴァのパイロットを日本に引き抜こうとしない! あの2名こそがNERVの権威を支えているではないかっ!!」
2名のパイロット。
即ち、NERVエヴァンゲリオン戦闘団
とは言え、この外務省大臣補佐官にはシンジとアスカの個人情報の詳細は与えられてはいなかったが。
「両名共に我が国と縁が深いと言う。ならば何とでもなる筈ではないか」
なんとかしろ、と言外に言う外務省大臣補佐官。
内心で嘲笑しつつ、だが表面的には慇懃な態度を崩さずに答える。
「仰る事は判りますけどね。とは言え
「そこを融通を利かすのが有能な人間と言うモノではないのか。君は同期で一番の有望株だと聞いているぞ」
「評価は有難いのですが、何分にも私も宮仕えですから」
「………だから出せるのはこの写真が精一杯だと?」
顎でテーブルを指す外務省大臣補佐官。
そこに在るのは、隠し撮り風に荒く加工された人物写真だ。
無論、シンジとアスカの。
とは言え判るのは男の子は短髪で、女の子は長髪と言う程度。
白黒なのだから念が入っている。
それぞれが01と02と描かれたプラグスーツを着ているからこそ誰であるかは判るが、だがシンジとアスカを知らぬ人間には判り兼ねる。
そういう写真だった。
「NERVの防諜能力は決して侮れませんから。持ち出せたのはこの1枚だけです」
「持って帰っても良いな?」
「出来ればご勘弁頂きたい所ですが__ 」
「私は日本の衆議院議員であり、外務省大臣補佐官でもあるのだぞ」
「まだ内務省にも送る事の出来ていない奴ですので、ええ」
恐縮すると言った風に言う加持リョウジ。
だが実際の話としてシンジとアスカの個人情報は、NERVと関係の深い
エヴァンゲリオンが第3新東京市の域外で運用した際、万が一に機体が撃破され、
「構わんだろ。私が責任をもって届ける」
「仕方ありませんな」
渋々っといった態で受け入れる加持リョウジ。
ある意味で外務省大臣補佐官は良い道化であると言えた。
「で、だ。この2人、どちらかでも良いが日本に引き入れる事は本当に難しいのか?」
後生大事にといった仕草で、ハンカチに包んでポケットに仕舞いながら、外務省大臣補佐官は先の話を蒸し返した。
シンジとアスカの移籍。
誠にもって馬鹿馬鹿しい話だった。
最優の、使徒を最も撃破して来た2人。
だが、だからこそ政治はNERVから離す事を許さない ―― その事を理解できていないのだから。
デジタル演習での
余りにも強い2人であるが故に、国連直轄のNERVから、何処かの
アメリカの影響が強いアメリカNERVにせよ、ヨーロッパ各国の影響が強いエウロペアNERVにせよ、日本や中国の影響力が強いユーラシアNERVにせよ、2人しか居ないのだ。
その配置で納得も同意も取れる筈が無かった。
NERVの、国連と言うどの国からも建前として等距離である組織に居る事が強いられる立場とも言えた。
エヴァンゲリオンと言う
ある意味で当然の話であった。
その程度の政治が理解出来ない外務省大臣補佐官は、そして国粋主義者の派閥は、その程度の相手と言う事であった。
「そちらは、ええ。正直、この使徒との戦争が終わってからではないと、何とも無理な話だと思いますよ」
「君、有能かもしれんが愛国心が不足しておらんかね?」
「いやはや、私なりに故郷は愛しているんですけどね」
「なら、努力不足だな」
何とも傲慢な態度の外務省大臣補佐官、さて何と答えようかと加持リョウジが内心で首を捻った頃、丁度、携帯電話が時間を知らせた。
「失礼」
電話でNERVの
答えは移動をお願いしますとの事であった。
「準備も終わっているみたいですので、移動をお願いします補佐官殿」
馬鹿馬鹿しい会話を打ち切る事の喜びを隠し、加持リョウジは慇懃に頭を下げるのであった。
元々は会議室と思しき、広い
最も、晴れの舞台と言う事で着こんでいる礼装の窮屈さが、気楽とまでは言わせなかったが。
基本的なデザインはNERVの
尚、徽章なども全員、エヴァンゲリオン搭乗員徽章だけは縫い付けているが、それ以上のモノ ―― 例えば
勿論ながらも歩兵課程修了者用飾緒や飾緒付射撃優等徽章も無い。
勲章も無い。
先ずはエヴァンゲリオンに乗れる事。
エヴァンゲリオンに慣れる事。
それだけを目的として促成されているからだ。
とは言え徽章以外のモノを付けている
第13使徒戦役と刺繍された
相田ケンスケだ。
紛う事無き実戦経験者の証と言えるだろう。
この部屋に居る29名の
最終的に31名が選ばれた
その中で唯一の実戦経験者の為、2人の元
とは言え、当の本人は痛い思いをしただけと笑っていたが。
「何も出来なかったのに、痛いだけだったんだぜ? これで尊敬されるって言われてもジョークかよってしか思えないよ」
紙コップの珈琲を飲み、そして返す。
「
褒められる事を喜ばない必要は無いと言うのが、素直なヨナ・サリムの感想だった。
評価されると言う事は給料に関わる。
給料が上がれば、故郷への仕送り額も増やせる。
誠にもって素直な少年の感想であった。
「
もう少し、派手に使徒を倒したりして褒められたい。
口には出せない相田ケンスケの本音だった。
第13使徒に乗っ取られ、エヴァンゲリオンとの闘いも経験した。
戦う事の恐ろしさを知った。
だが、だからといって憧れが消える訳じゃない。
立派になりたいと言う思いが消える訳でもない。
此方も又、素直な少年らしい気持ちであった。
だからこそ、大人たちから暗に勧められた傷病による退役と言う道を選ばず、
とそんな2人の所へと霧島マナがやってきた。
一分の隙も無い位に身だしなみを整えている。
「
「
「あ、うん、
微妙な顔で頷き合う相田ケンスケとヨナ・サリム。
さもありなん。
そこまで本気で身だしなみに気を配った理由が
第1目標が
曰く、いい男をゲットしようとするのは乙女の本能なのだと言う。
相田ケンスケなどから見れば、
「リー君は兎も角、サード君は久しぶり。この一瞬をもって私は刻み込まなければならないのよ!」
「が、頑張れ?」
無理だと思うけども、と言う言葉を飲み込みながら相田ケンスケは頷いていた。
立場の差と言う訳では無いが、別の待機室が用意されていた。
とは言え内装などに差はない。
同じ位の広さと調度。
違いは人口密度だろう。
正規の
元は
エヴァンゲリオンの開発と建造と言う、言わば裏方であったがその功績は大であるが為、この際に表にだして称揚しようと言う話になったのだ。
胸には、作戦経験は無くともエヴァンゲリオンとNERVを支えたと言う事で特例と言う形で
尚、今後の配置に関して言えば機動展開部隊であり、それぞれの元からの配置である
そんな8人の部屋は、新しい顔合わせと言う部分からの探る様な距離感があっても、それなりの騒がしさがあった。
コミュニケーション能力と言う意味で強者と言って良い鈴原トウジがおり、そしてそれぞれにそれなりの面識があったからだった。
新任と言って良い鈴原トウジと製造されたばかりのマリ・イラストリアスは兎も角、シンジやアスカ、そして綾波レイも直接では無いにせよエヴァンゲリオンの開発時に電話にて会話した事があったのだ。
尚、渚カヲルは初対面の側だった。
本人曰くの、NERVドイツ支部の秘蔵っ子だったから、と。
「スカしてるのよね」
「
「
アスカは英語が出来ない訳ではない。
マリィ・ビンセントはドイツ語が出来ない訳ではない。
だが、何となく意地を張っていた。
昔からの知り合いと言う甘えもあったが、何よりアスカにとってはシンジがマリィ・ビンセントに割と親し気に挨拶をして見えたのが気に障っていた。
シンジからすればNERVイギリス支部で顔を合わせた相手と言う程度であったが、恋する乙女と言う事であろう。
尚、マリィ・ビンセントからすれば、NERVの公用語は英語なのでドイツ語に合せて堪るかと言う、何と言うか微妙に稚気めいた英国人心の発露であった。
そんな、英語とドイツ語が
隙を見れば膝枕を強請って来るマリ・イラストリアスが、横にならぬ様に注意しながらであった。
尚、
対して男衆。
此方は声を潜めた鈴原トウジがシンジを詰問していた。
「センセ、嫁はんを実家に連れてったんや、進展したんやな!? Aはやっとるって聞いたが、Bまで行ったんか! それともCまでもかっ!?」
声は小さいが目の色が違う。
嗚呼、思春期だ。
シンジはその勢いに圧され、思わず両手を前に出す。
防護の姿勢だ。
「
「声が大きいわっ!!」
「
誠にもって
そしてリー・ストライクバーグは、
「
「
「何を気取っとるんや!?」
「はははははっ、僕はそこにあるだけで気取って見えるのさ」
「わ、今日のはウザッ」
バカ話。
バカな男の子の会話。
いつの間にかリー・ストライクバーグも巻き込まれていた。
めいめいが、のんびりと時間を待っていた。
NERV本部地下施設、第一発令所。
NERV本部の中枢と言って良い其処に、緩みは無かった。
誰もが真剣であった。
「第1索敵ラインの情報に異常は無いか」
「ありません」
「レーダーは?」
「綺麗なままです」
打てば響くと返って来るやりとり。
重圧に耐え、背筋を伸ばして中央に立っているのは日向マコトであった。
作戦第1課の序列第3位として、今、NERV本部の指揮系統を預かっているのだった。
これ程までに緊張している理由は前例であった。
或いはジンクスとも言える。
今までNERVが関連する形で行ったイベントは、その悉くで使徒が出て来たと言う。
馬鹿馬鹿しい話ではあったが、決して無視出来る話でも無かった。
だからこそNERV本部は真剣に使徒の接近に注意しているのだ。
「目視部隊との連絡に齟齬は無いな」
「確認実施します…………31カ所の全てから返事が入りました」
長いとも言える。
短いとも言える。
日向マコトは、この3時間に全てを掛けるが如く集中する意気であった。
敬愛する葛城ミサトに任されたのだから、と。
日向マコトにとって人生で最も長く感じる6時間が始まる。
2023.09.17 文章修正