【本編完結】サツマンゲリオン ~ 碇シンジが預けられた先が少しだけ特殊だった県/件 作:◆QgkJwfXtqk
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様々な思惑、願い、そして欲望などが入り混じった
死者行方不明者の名前を読み上げ、哀悼を捧げた。
そして使徒との戦いに於いて献身した人間が呼ばれて表彰される。
避難誘導その他で献身した
政府機関関係者。
NERV関係者。
そして
全員が等しく表彰されていく。
誰もが人類の英雄であると称えられていく。
だが一番に拍手と歓声が挙がったのは、言うまでも無く碇シンジと惣流アスカ・ラングレーへの勲章の授与であった。
事実上、たった2人でエヴァンゲリオン3号機以降のエヴァンゲリオンと
当然の反応と言えた。
勲章は
国連軍にあって事実上の最上位と言って良い勲章であった。
事前に知らされていなかったアスカは、鯱張った姿勢こそ崩さないものの、自らの胸に輝く
正規の
対してシンジ。
正規の軍人としての教育を受けていない為、与えられたモノがどの様なモノかと判らぬ為に自然体の、平素な顔をしていた。
そんな
キール・ローレンツすら、好々爺めいた笑みを浮かべていた。
それは正に
荘厳な空気。
呆れる程の快晴と日差し。
多くの列席者は、テントの下に座っているお陰で凶悪な程の暑さを感じる事は無かったが、主賓向けのステージ上は違っていた。
特設の壁と屋根が用意されてはいたが、列席者向けのテントによる照り返しが、その効果を無効化していた。
「暑いわね」
表情を崩す事無く、小声で愚痴を零すアスカ。
隣のシンジも首を動かす事無く同意する。
「暑いよね」
メイクが落ちそうな勢いで汗が出ているアスカ。
如何に軍隊式に鍛えられていたとは言え、元は常冬のヨーロッパ育ちなのだ。
常夏の日本で外に、夏用とは言え厚手な上着の第1ボタンまで締めて居続けると言うのは辛さがあった。
現在、
そして、辛さはシンジも同じだった。
常夏の日本で、更に暑い九州南端育ちとは言え、運動であれば適時水を飲めるし、休息も出来る。
そもそも、過度に暑い場合には冷所に逃げる様にしていたのだ。
微動だにせず耐えると言うのは中々に辛いものがあった。
「逃げたいわね」
「だよね」
背筋を伸ばしたまま、器用に嘆息を零す2人。
そんな2人の周囲には誰も居なかった。
最初に脱落したのはマリ・イラストリアスだ。
小さい身体だから体調不良になったのは仕方が無い。
そのマリ・イラストリアスを、
次に鈴原トウジが、洞木ヒカリに車いすを押されて退場した。
偽装として付けていた義足が、直射日光で熱を帯びて大変な事に成りかけたから仕方が無い。
そして体を鍛えていたとは言い難いマリィ・ビンセントと綾波レイが相次いで脱落した。
ある意味でDrストップだった。
そんな2人を優しく介抱しながら舞台袖に連れて行ったのが渚カヲル。
気が付けばシンジとアスカだけが居た。
鈴原トウジや女子陣は兎も角、リー・ストライクバーグと渚カヲルは
「終わったらビール」
「それ位はご褒美欲しいよね」
必死になって頷くのを我慢し合う2人。
実は最近、禁酒令が出されていたのだ。
無論、出したのは
渚カヲルやマリ・イラストリアスなどの新規編入組の生活状況を管理する上で、シンジ達も抜き打ちで生活環境が調査された結果だった。
シンジとアスカの
保護者役の葛城ミサトと赤木リツコ、余波で加持リョウジまで怒られて始末書と厳重注意となっていた。
尚、伊吹マヤと青葉シゲルに関しては、3人が責任を取ったお陰で叱責と反省文で終わっていた。
上役がやってれば止めづらいと言う点と、そもそも巻き込まれているだけと言うのが考慮されての微罪扱いであった。
兎も角。
葛城ミサトらが営々とシンジの家に蓄積していたビールや発泡酒、サワーの段ボール箱は
別段に2人ともアルコールへの嗜好が強いと言う訳ではないのだが、暑く喉が乾いた時の選択肢として、甘くない、切れ味の良い炭酸飲料というものは良いと、味を覚えてしまっていたのだ。
「キンキンに冷えたのを一気に飲むって想像したら__ 」
「止めてよアスカ。生唾を呑んだよ」
「シュワシュワで、甘くないのが重要よね」
「でも、精々がジンジャーエールだよ」
「………バカシンジ、夢を壊さないでよね」
正面から視線をずらす事無く、そして口を余り開く事無くグダグダと会話する2人。
暑さから頭が茹っている様子であった。
キンキンに冷えたビールが飲みたい。
この暑い日差しの下でそう思ってしまう程に、何とも
周囲の大人たちが
尚、次善の手段と言えるノンアルコールビールであったが、美味しくない、不自然な味だと2人は拒否していた。
困ったお子様2人であった。
そんな内面のおくびにも出さず、じっと背筋を伸ばしているシンジとアスカ。
尚、舞台の中央を挟んだ反対側に居る
7割もの人間が脱落しているのだから。
もはや非常時とばかりに子ども達を舞台から袖に退かせても良い筈なのだが、如何せんにも演台に立つ国連事務総長が自画自賛、そしてNERVと
天木ミツキを筆頭とした大人たちも、舞台の袖から休憩の
一般の来客者たちすら、櫛の歯が欠ける様に脱落していく
だが、止まらない。
何故なら、演説をしている国連事務総長はアフリカ出身であったからだ。
その出自故に暑さには大変に強くあったが為、演説に熱中して周りの状況を読めていないのだ。
何とも言い難い状況は、その後も20分も続く事となるのだった。
死屍累々といった塩梅になった
最終的に耐えられたのはシンジとアスカを含めて11名であり、全員が全員とも何らかの経験者であった。
後に、国連軍などで従軍経験のあるNERVスタッフは、この11人を
尤も、上手く逃げた子ども達も居るのだから、それが全ての評価となる訳ではない。
訳ではないのだが、見る上での一つの評価軸とはなるのだった。
『途中ではありますが、ここで
国連事務総長の演説後、司会進行役は途中休憩を宣言していた。
補水とトイレ休憩だ。
尚、そつの無いNERV広報部の人間は、近所のスーパーから急いで買って来たお茶のペットボトルを配っていた。
良く冷えたソレは甘露めいており、列席した人々からのNERVへの好感度に直結するのであった。
同時に、国連事務総長の評価は劇的に低下する事になるのだった。
現時点で使徒に唯一抗戦可能なエヴァンゲリオン、それを操る
その
評価が下がるのも仕方のない話であった。
舞台から降りた
シンジやアスカも含めて体調を崩してはいなくとも全員が軽い脱水症状になっていた為、この後の
そして、礼装を脱いで、支給された気楽な院内服を着て待機室で過ごす事となった。
夏用として薄手の、風通しの良い素材で出来ていた礼装であるが、日差しの下で2時間から居たのだ。
ある意味、
シンジとアスカも人気なのだが、
見ず知らずの人間に囲まれたマリ・イラストリアスはヒシッとばかりに綾波レイに抱き着いており、それが益々もって囲む子ども達を盛り上げさせていた。
とても可愛い仕草なのだ。
当然の話であった。
とは言え、頼られている綾波レイも、
「渚君_ 」
故に、相方を呼ぶのだった。
1番に仲が良いアスカはシンジと一緒に囲まれて、しかも一番の重包囲状態なので無理。
2番目な洞木ヒカリも居るが、流石にこの場では一歩下がっている。
それで鈴原トウジと2択となれば、綾波レイにとってソレは選択肢とはなり得なかった。
「ん、どうした?」
綾波レイの周りの女子陣が更に大きな声を挙げた。
コーカソイド系めいていて、常に笑みを浮かべている渚カヲルは、文字通りのアイドルめいていた。
歓声はシンジよりも大きい。
これはシンジが、NERVドイツ支部での
後、大多数の女の子にとっては
盛り上がっている待機室。
その歓声は隣に設けられた休息室にも届いていた。
体調不良となった
隣りに用意された理由は、警護の為である。
シンジ達
実際、報道関係者を自称する
立ち入り不能と言う意味では、より厳重な
NERV本部。
それなりの数の人間が所属してはいるが、如何せん、この様な大規模イベントを運営するには人手が足りなかった。
機密の無い事であれば
「大丈夫か?」
ベッドに寝込んでいる霧島マナ。
お見舞いとばかりに
霧島マナは、差し出されたペットボトルを取って1口は飲む。
飲むが、飲めたのはその1口だけだった。
温くなってきた額の
「おいおい大丈夫か?」
「怠い………」
「お前、よく頑張ったよ」
しみじみとした風に霧島マナを褒める相田ケンスケ。
シンジの前で無様は晒したくないとばかりに、体調が悪化しても我慢していたのだ。
その結果が、今のベッドでのダウンであるのだから、世の中、儘ならない。
「煩い。褒められたいのは相田じゃ無いもの」
「判ってるって」
不貞腐れた様に言う霧島マナ。
それを相田ケンスケは笑って受け入れる。
だから1つ、お見舞いとしての情報を告げる。
「だから、シンジの奴は囲まれ過ぎてて無理だったけど
「うそっ!?」
「マジだ」
「馬鹿、こんなザマなのに!!」
「頑張った勲章だろ? 奴も、お前が頑張ってたってのを見てたからな。二つ返事だったよ」
実際問題として霧島マナは体が強いとは言い難いが為、
にも拘らず、最後の方まで耐えていたのだからリー・ストライクバーグとしても見舞ってやれと言われれば、それはもう反論する迄も無いというものだった。
「化粧も崩れているのに!」
「ま、頑張れよ。俺、他の連中の見舞いをしてくるから」
「馬鹿っ!!」
そして
途中、国連軍関係者がシンジとアスカに挨拶がしたいと言い出し、慌てて歓談の場を用意するといった小さな出来事はあったが、こればかりは仕方が無い。
何故なら、言い出したのがノーラ・ポリャンスキー少将を筆頭とした、シンジとアスカと共に戦った経験者だったのだ。
そんな人々が、折角NERV本部まで来たのだからと
とは言えシンジにせよアスカにせよ礼装は既に洗濯に出していた為、NERVの
2人の勇気と献身を褒め称え、そして
勲章自体の価値よりも、己を見知っている人々からの混じりっけなしの敬意と称賛にシンジもアスカもこそばゆくするのであった。
記念撮影も行われた。
部外秘とする事を前提に、シンジもアスカも
そんな微笑ましい
使徒が襲来する事も無く終わったのだ。
「よっしゃーっ!!」
思わずといった声。
だが第一発令所に居るスタッフ、この、延長した分も含めて8時間にも達した緊張する時間を共に過ごした人間は誰も奇異の目を向ける事は無かった。
「諸君! 今日の配置が終わったら飲むぞ!!」
「おぉっ!!!!」
力強く拳を作り、天に掲げるその姿は、日頃の日向マコトとは別人めいていた。
日向マコトの宣言後、好き勝手に飲みたい店を言い合うスタッフ達の姿を見た葛城ミサトは、この1日のストレスに思いを馳せた。
故に、今日の飲み分は
そんな事を考えていた。
「けぷっ」
懇親会で飲まされたビールで可愛らしく喉を鳴らしながら。
濃密なアルコール臭を漂わせながら、自分も気楽に飲みたいと思って居た。
尤も、
それはもう、酔える様な話では無かった。
家に帰ったら、礼装を全部脱ぎ捨てて、シャワー浴びてビールを飲みたい。
だから、だからどうか頼むから使徒よ、今日だけは来ないでくれ。
そんな個人的欲望のままに