私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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010 邂逅、ぴょん

ホント特撮の怪人みたいだなぁ、なんて考えながら上空の人型の緑色のカマキリモドキを睨む。なんであんな珍妙な姿なんだろう。本当の特撮みたいに中に人が入る必要なんて無いんだからもっと怪物染みた格好になってもいい気がするのに。顔とかまんまカマキリだから余計にそう思う。

 

先手必勝、グレネードランチャーを構えて魔力を銃口に収束。そのカマキリモドキに向かって放った。

ワタシの放った魔力弾は右へと大きく曲がり、弧を描いて進む。カマキリモドキは避けるような気配は無いね。逃げた所で魔力弾は追尾するから意味無いけど。

 

よしっ、当たっ……ん?カマキリモドキが左腕の鎌で……魔力弾を払い除けた!?カマには傷一つ付いて無いっ!

 

『あわわ、あわわわわ……効いてないぴょん。ヤバいぴょん』

 

イプレも慌ててるみたい。

クッ、思った以上に防御が硬い。これは大出力で薙ぎ払うか一ヶ所にダメージを蓄積させて脆くしてから撃ち抜くかしないと駄目かも。

 

「うん、やるしか無いか」

 

狙いは人型の体ではなくカマキリの見た目そのままの頭部にある複眼。それが駄目なら鎌部分にある節狙い。どっちかでも突破できるくらい装甲を薄く出来れば第二形態に変身して一気にケリをつけられる。

 

グレネードランチャー……魔法の杖?を強く握り締めて、上空のカマキリモドキに再び向ける。そのまま魔力を収束させようとした所で……ワタシの視界の右端に青色が映った。モノクロのこの世界で色を持ってるのはワタシとイプレ、それに上空のカマキリモドキだけの筈。つまりあの青色は新たなデーモン、もしくは巻き込まれた人間か妖精って事になる。デーモンでも人間でも放っては置けない。

 

幸いカマキリモドキはまだ動く気配を見せない。今のうちに青色の正体を確認して、もしも人間なら避難させないと。

カマキリモドキに注意は向けつつもワタシは青色の何かに視線を向けた。

 

ワタシの瞳が捉えたのは。

腰まで伸びるロングストレートの綺麗な青髪に銀のティアラ。青色に緑を全体の3割程あしらった、装飾が少なく肩から先の肌を露出したロングドレスを身に纏った女性……だった、多分。その女性?が遠方の、白黒の道路の真ん中に立っていた。

多分っていうのは肌が人間の肌色をしているしドレスを着ていてウエストがくびれていて(悔しいけどワタシより)胸もある女性らしさのある体型だったからで、顔には真っ白で何の飾りも無く目の部分に穴が空いているだけの仮面を被っていたから。当然人相や年齢も不明……いや、肌の感じからしてかなり若いかも。見た感じワタシより身長は無いように見えるけど。

青髪ロングドレスの彼女の右手には柄が茶色、頂点にテニスボール程度の大きさの赤い球体の付いた杖?王笏?を持ってる。

 

人間……?いや妖精のお偉いさんとか?それとも新たな魔法少女?いやでもあの仮面がどうも嫌な予感がするんだよね。

 

「イプレっ、あの人知ってる人?妖精?魔法少女?」

 

ワタシはそう問い掛けるもイプレからの返事は『知らないぴょん!陽里、アイツには気を付けるぴょん!アイツからデーモンと似た魔力を感じるぴょん!』って。あー、最もあって欲しく無い方向に向かいそう。

 

未だに上空で静止してるカマキリモドキを視界の端に置きつつ、ワタシはゆっくりとグレネードランチャーを彼女?の方へと向ける。そういえば魔法少女モノとかプリ●ュアとかだと割りと早い段階で敵幹部が出てきたりするんだよね、現実じゃ本ッッッ当にそういう展開はお断りなんだけどさ。

 

 

 

『Lumina……soarelui……何故に妖精の味方をする?』

 

彼女?が発したその声は、どう考えてもボイスチェンジャーを通したようにしか聞こえない性別不明の声。ワタシを見てソアレルイって断定してる所をみるに完全に関係者だよね、アレ。

 

「何故って……デーモンが妖精界を滅ぼそうとしてるからだよ!貴女何者!?」

 

『何者……か。我が名はVieții(ヴィエティ)

 

ヴィエティか…………いや誰だよ!?名乗られてもワタシが知ってるわけないよ!

けれど。ワタシは知らなくともイプレは知ってた。いやまあそういう次元ではなかったね。イプレは一目で分かるくらいに全身をガタガタ震わせ、その顔は恐怖一色に染まっていたんだもん。

 

『ヴィ……ヴィ……ヴィエティ!?って魔王ヴィエティぴょん!?もう駄目だ……おしまいだぁ、ぴょん……』gkbr

 

アレが、彼女?が魔王……?どっちかっていうと女王様って感じじゃ……それにワタシより余程魔法少女っぽい……いや今はそうじゃない、幹部どころがラスボスじゃん!?

今のワタシが勝てる!?只でさえあのカマキリモドキにすらダメージ与えられないってのに!

 

『Lumina soareluiよ。お前に私に仇なす資格があるか見せてもらおう』

 

フワリ、と地面から浮いたヴィエティがカマキリモドキの所へと急速に昇っていく。カマキリモドキの右隣で静止したヴィエティが『アレの相手をしてやれ』って言った直後、カマキリモドキがワタシに向かって降下してくる。デーモンが言うことを聞いたって事はやっぱり魔王なのか。

ヴィエティはそのまま遥か彼方へと後退していく。自分は高みの見物ってワケか。魔王直々に襲って来られるよりかはマシだけどさ、ワタシの相手を任せたって事はあのカマキリモドキは相応の力の持ち主って事だよね。だってソアレルイは過去に魔王を倒してるんだから。いや倒したのはワタシじゃ無くて先代だけど。だから少なくとも先代のソアレルイでも苦戦するような相手って事で……今のワタシに勝てるかどうか……。

 

背中に冷たい嫌な汗が流れる。グレネードランチャーを持つ右の掌も汗ばんで来た。これがゲームのRPGとかだったらイベント戦闘で勝てる、或いは負けイベントでも死なないで生き残れるとかなんだけど生憎現実だからね、負け=死、なんだよね。これが命のやり取りなんだって改めて思い知らされる。ワタシの奥に潜んでいた恐怖が重くのし掛かってくる。

 

さっきまでより重く感じる体に力を入れ直して、右足で地面を強く踏み抜いて両足の震えを無理矢理振り払う。魔王にあてられるな、弱気になっちゃ駄目だワタシ。まだ死ねない。今度こそは簡単には死んでたまるか。絶対生きて帰って、それで今度こそ(多分いつかきっと)佳織に告白するんだ。

前世の記憶が戻る前までのワタシが持ってしまった人並みの恐怖心を、前世のワタシの蛮勇で無理矢理抑え込む。

 

うん、やれる。熊モドキの時と違って今のワタシには魔法がある。

幸いワタシの攻撃は遠距離。カマキリモドキはカマキリなだけに恐らく近距離攻撃タイプ。近付かなければ何とかなる筈。魔力と体力の続く限りはどれだけ時間が掛かってもいい。……尤も、それも魔王が戦わないって前提だけど。

 

カマキリモドキが両手の鎌を振り上げてワタシの方へと螺旋を描きながら急降下してくる。先ずは落ち着いてアレを避けた後に反撃しよう。まともに食らったらどれだけダメージ貰うか分からないし。

ワタシは努めて冷静に、カマキリモドキの鎌が振り下ろされる直前に後方へと大きく跳躍。的の無くなった鎌は2本ともモノクロのアスファルトに突き刺さって、そこを中心に大きなクレーターが出来た。ああ、やっぱりかぁ。

 

地球上の生物を諸々の影響を無視して一様に同じ大きさにしたとしたら最強は昆虫、って話を何処かで聞いた事あるけど、目の前の光景はまさにその通りだな、って思うよ。例えばカマキリだけど、体長2m程度の大きさまで拡大したら鎌の力は約3tになる。あのカマキリモドキはデーモンなうえに魔力も持ってるからそれを遥かに上回る、って考えた方がいいよね……ってこうやって考えただけで嫌になってくるよ。

 

『近付いたら駄目ぴょん!カマキリが餌を鎌で捕獲するスピードは脅威の0.05秒だぴょん!』

 

イプレのヤツ、日本のサブカルしか勉強して来なかったのかと思ってたけどそうじゃ無かったみたい。0.05秒か……見てからでも避けられるだろうとか思ってたけど絶対アレの間合いに入らないようにしなきゃ。捕まってあの大顎で噛まれたら……いやゾッとする。

 

『因みにバッタの蹴る力は体長2mなら一跳びで2~3km相当ぴょん!だからバッタのデーモンが現れたら必殺技は当然ラ●ダーキッ』

 

「それ以上はいけない!色々アウトだよ!」

 

何で今バッタの話持ち出したの!?やっぱりイプレはイプレだったよ(即堕ち2コマ感)。

 

でもイプレの阿呆のお陰で少しだけ冷静になる事が出来た。

ゆっくりと息を吸い込んで、吐き出す。

銃口に魔力を収束させると同時に、ワタシは距離を取るべく大きく右方向に走り出した。勝手知ったる地元だもん。地の利はこっちにある。遮蔽物を上手く利用しながら狙撃していくだけだ。

 

「お前の装甲が壊れるのが先か、ワタシが力尽きるのが先か、勝負といこうか」

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

『はぁ』

 

()()()()()()()()()()()()()()()を風に靡かせ青色の髪を揺らし、戦場から高速で後退しながら。ヴィエティは小さく溜め息をついた。仮面の下の表情は窺えない為、溜め息の意図は分からない。落胆か、面倒が増えた故か、或いは……。

 

『まあ、暫くは探りを入れつつ様子見って所か』

 

ソアレルイもデーモンも見えない程に充分に離れた所で急停止。右手に持つ王笏の柄で歩道のコンクリートをコンコン、と2度程突くと、地面には彼女を中心に2m程の海色の魔法陣が広がった。

 

『ありがとう』

 

ヴィエティの言葉を受けて、彼女の背中に張り付いて飛行を可能にしていた鳩……型のデーモンが離れてその右肩に留まった。先程ソアレルイに見せていたような敵意とは程遠い視線をその鳩へと向ける。2、3度程鳩の頭を撫でた後、ヴィエティは改めて戦場の方を睨んだ。

 

『糞妖精のヤツら……よりにもよって……』

 

独りごちたそのボイスチェンジャーで変換されたような彼女の声からは、確かに怒りの色が滲んでいた。直後、彼女は展開していた魔法陣と同じ色に包まれて鏡面世界からその姿を消した。




イプレ『次回、『魔法も奇跡もあるんだぴょん』、だぴょん』

陽里「死亡フラグやめて!」
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