私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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017 謁見ぴょん

日も落ちてきた夕暮れ時。

ワタシと月ちゃんは慎重に周囲を窺いつつも素早く進む。幸い変身しているワタシ達を視認している人はいないね。

 

それにしてもおかしい。

佳織のマンションにこれだけ近付いてるのに鏡面世界に入らないなんて。もしかしてイプレ、もうデーモンにやられちゃったとか……いやでもあのイプレが殺される画が思い浮かばないんだよね。『遅いぴょん!危うく死ぬ所だったぴょん!』とか言って普通にその辺から出て来るイメージしか浮かばない。

 

「変ですね。もしかして何処かに隠れてるんでしょうか?それともイプレの悪戯だったり……」

 

「分からないけど注意して行こう、月ちゃん」

 

物陰で周りから身を隠しつつ、ワタシは月ちゃんと顔を見合わせる。何処に居るのか分からないし、取りあえず佳織の部屋に行ってみよう。何か手掛かりがあるかも。

 

『………………まだかかるぴょん!?早く部屋の中に来……は?いや違うぴょんそんなわけないぴょんボクがそんな事するわけないぴょ……ファッ!?……マジスミマセンデシタ

 

どうやらイプレは無事で部屋の中に居るみたい。でも何か誰かと話してるみたいだね。佳織……はまだ学校だし誰だろう?兎に角部屋の中へ……。

 

「ここはボクが先行してクリアリングします。陽里先輩は安全を確認してから来てください」

 

「いや、ワタシも一緒に行くよ?」

 

「駄目です!中に何か潜んでるか分からないんですから!近接武器のボクなら何かあっても対処できますし!もしも陽里先輩の身に何かあったらどうするんですか!陽里先輩は一人で突っ走ってデーモンに殺されかけたばっかりなんですからね!泣きますよ?万が一陽里先輩に何かあったらボクは盛大に泣きますからね!?(早口)」

 

うっ……そう言われると弱いなぁ。これ以上月ちゃんに心配掛けるわけにもいかないし……前世の歳も含めると二回りも歳下の子に心配されるワタシ……うーん、我ながら情けないというか。まあ仕方ない、ここは月ちゃんの優しさに甘えよう。

 

「分かった。でも月ちゃんも油断しないでよ?」

 

「任せて下さい!じゃあ先に入りますね」

 

そう返事した月ちゃんはドアノブに手を掛けてゆっくりと扉を開く。鍵は掛かってないみたい。佳織が掛けてない……わけは無いからイプレが開けたのかな?

 

先に中へと入って行った月ちゃんの「へ?」って声が聞こえて。月ちゃんの身に何かあったのかと慌てて部屋へと飛び込んで真っ先に視界に入ったのは、空中に浮かんだA1サイズの魔法のウィンドウと。そのウィンドウに映るエメラルド色の髪とウサミミの、ワタシ達人間と同程度の頭身の美少女。は?え?美少女?何で美少女??

 

『二人とも遅いぴょ……ヒェッ』

 

そのウィンドウの右下、テーブルの端にイプレが座ってる。何かウィンドウに映る美少女に睨まれて焦ってるみたいだけど……ちょっと説明して欲しいなぁ。いや、何となく予想はつくんだけどさ。だってウィンドウ内の美少女ちゃん、ウサミミだしドレス着てるし頭に宝石の付いた銀色のティアラ着けてるんだもん。

 

『御呼び立てまでしてしまい誠に申し訳ありません。本来ならばワタクシ自らそちらへ足を運ばねばならない事態なのですが……なにぶんにもここから離れるわけにはいかない状況でして』

 

あ、随分丁寧に謝ってる……この美少女ちゃんは常識人っぽいね。何処かの変態妖精とは大違いだね。

 

「あ、いえお構い無く」

 

だからついついワタシもそう口にして頭を下げた。

 

まーテンプレといえばテンプレだね。多分妖精の女王様とかだよね、この美少女ちゃん。ははーん、成る程。魔法少女がワタシと月ちゃんの二人揃ったから挨拶しに出て来た、って所だねきっと。魔法少女ものとかによくあるやつだ。

 

『申し遅れました。ワタクシはトア・クローディアス・ファーレンハイツ。妖精国第二王女……いえ、もうこの肩書きは必要無いかも知れませんね。現在は国王代理をしています。歳は……人間でいえば御二方と同世代、といった所です』

 

あ゛ー、やっぱりそういう感じかぁ。でも国王代理とか第二王女とかこの際色々聞いておきたい事があるよね。こっちは妖精の国の事情詳しく聞かされてないし……イプレじゃ上層部の情報とか知らないだろうしね。

「王女様登場とかテンプレでしたね」って右隣の月ちゃんが小声でワタシに話し掛けてるし、月ちゃんも同意見か。

 

「あー……御初にお目に掛かります、えーっと、王女様?ワタシは芦田陽里、隣の子が伊集院月子って言います」

 

「伊集院月子です。宜しくお願いします、王女様」

 

『御二方のお話は伺っております。ワタクシの事はトア、と呼んでくださって大丈夫です。御二方の事は陽里様、月子様、とお呼びしても?』

 

様付け!?あ、いやそうだよね。妖精の国からしたら救国の勇者だもんね、ワタシ達の立ち位置。にしても出来た王女様だね。普通なら種族は違えど平民なワタシ達……あ、いや月ちゃんは平民じゃ無いや……にも上から目線じゃなくてなるべく対等に見ようとしてるみたいだし。ドコゾの馬鹿イプレとは大違いだね。

 

「あの、トア様。妖精って王族は見た目が人間と同じ頭身なんですか?ほら、イプレは人形みたいですし」

 

ちょっと月ちゃん、その疑問はワタシも思ったけどもう少しこう、ほら、打ち解けてからにしようよ?流石に失礼……あーそうか、家柄は兎も角として月ちゃんってまだ誕生日来てないから13歳にもなって無いもんねぇ……あまりにも助けられ過ぎてて時々忘れるけど。

 

『あの、月子様。質問の意味が…………』

 

一呼吸置いて、トア様がイプレを睨む。『ぴょん!?』って狼狽して冷や汗をダラダラ流してる所を見るに、イプレ何か重大な事隠してる?ってまだ言って無い事あるの?

 

『まさか言っておられなかったのですか?』

 

ギロリ、とイプレを睨むトア様。『ちちち違うぴょん!言い忘れてただけぴょん!マスコット形態の方が陽里にエッッッな事しても許されるし何かと便利……いいいいや今のは違うぴょん!言い間違えたぴょん!?』って余計な事まで喋って勝手に自滅してるイプレ。へぇー、ふぅーん、そっかそっかぁ。これはやっぱりお仕置きが必要だよねぇ。っていうかその言い方だとマスコット形態以外の姿も取れるって事になるんだけど……。

 

「イプレ、陽里先輩に何ですって?ちょっと聞こえなかったのでもう一度言ってくれませんかね?妖精なんてボク達の世界に存在しないモノを一匹殺した所で法には触れませんしね

 

っと。隣の月ちゃんが!見たこと無いくらい怒ってらっしゃる!いや顔は笑ってるんだけどさ、目が!目が今にもイプレを殺そうって目をしてる!ちょっと落ち着いて!ワタシの為に怒ってくれるのは凄く嬉しいけど!制裁はワタシがするから!……月ちゃんってこんなに過激だったっけ?魔法少女になった影響?

 

『はぁ……説明不足で本当に申し訳ありません。ワタクシ達妖精は通常はそちらの人間と同じ頭身なのです。人間界は妖精に必要なマナが薄く、省エネ形態で生活する必要があるのです』

 

成る程成る程。トア様の説明通りならイプレもこっちの人間と同様の姿を取れ……ちょっと、ちょおーっと待って。確かイプレって大学生か新卒社会人くらいの世代って言ってたよね?え?待って。つまり佳織は成人男性と同棲してるって事にならない?

 

『陽里様と月子様に本来の姿を御見せしていただけませんか?』

 

トア様がイプレを威圧する。イプレは『いや、その……ぴょん』って言い澱むけど、トア様は更に笑顔で『御見せして下さい』って圧力を掛けてる。ってか何でだろ。さっきから何か違和感があるような。

 

『分かったぴょん。でも辛いからちょっとの間だけぴょん』

 

そう言うとイプレが光に包まれる。光が収まった時に現れたのは、着ている服こそ普段のそれと同じデザインなものの身長は多分170中盤から180センチいかないくらい、エメラルドの髪は肩までのロングだけど爽やかイケメンがそこに立っていた。

……は?爽やかイケメン?何それ聞いてないんだけど?今までそんな危険人物を佳織の傍に置いてたの!?これは……絶対、絶対許すまじ。月ちゃん、協力しよっか。コイツ●すわ。

 

『ちょっ!?だから嫌だったんだ!陽里まで殺気立ってるじゃないか!』

 

へぇ、へぇー。本来の姿になると『ぴょん』って言わなくなるんだぁ?へぇー、そうやって佳織にバレないように同棲してたんだね。佳織と同棲するだけでも羨まけしからんのに。どんなお仕置きがいいかなぁ?

 

数分で元?のマスコット的な姿に戻ったイプレ。でもこのまま佳織の所に置いてはおけないよね。だって、イプレが大人の姿になって佳織の事を、おっ、おっ、襲ったりしたらどうするのさ!その時は去勢してやるけど!

 

「その姿を見るとボクにはイプレが先生と同棲してるって危険に思えるんですけど?」

 

おっ、月ちゃんナイス!そうだよ!イプレは別の場所に隔離しなきゃ!

 

『大丈夫だぴょん。ボクのストライクゾーンは妹と同世代、つまり人間界でいう所の中学生だぴょん。「高校生はなァ、ババァなンだよォ」ってヤツぴょん』

 

そうなの?それならまぁ……いや良く無いよ!やっぱりワタシと月ちゃんがターゲットって事じゃん!この変態!■リコン!

……ん?そういえば今さ、妹って言った?イプレって妹いるの!?中学生の妹の同世代に欲情する兄とか最悪だよ!何かいうか……心中お察しするよ、まだ見ぬ妹さん。

 

『全く……お陰で幾ら王女とはいえ同年代の女性に避けられているワタクシの身にもなってください』

 

『無理ぴょん。ボクの性的嗜好は今更変えられないぴょん』

 

『ですから御兄様。ワタクシは王族としての自覚をもう少し持ってください、と言っているのです』

 

………………いや。いやいやいや。今のトア様とイプレの会話おかしくない?なんかトア様がイプレの事『御兄様』って呼んでたように聞こえたんだけど?

 

「待ってくださいよ、イプレって王族なんですか?」

 

あー、やっぱりワタシの聞き間違いじゃなかったみたいだね。月ちゃんが同じ疑問をぶつけてるもん。

その直後。『御兄様……まさかそれも言っておられないのですか?』ってイプレを見て流石にもう呆れるしかないトア様の姿が。

 

『テヘペロ☆ぴょん』

 

『御兄様……テヘペロ、ではありませんよ……。陽里様、月子様。ワタクシが改めて紹介させていただきます。御兄様の本名はイプラエット・アドリアン・ファーレンハイツ。これでも我が妖精国の第四王子です』

 

『これでも、って酷いぴょん!』

 

『ですからもう少しですね…………はぁ。ワタクシに万が一があった場合は御兄様が跡を継がねばならないというのに……』

 

天を仰ぐトア様。ワタシと月ちゃんはその場で口をあんぐりと開いて一時停止してたよ。だってあのイプレが王子様とか……いや嘘でしょ?え?本当に?

 

 




イプレ、王子様だった。
次回に続く。


アドリアン・ファーレンハイツ:イプレの本名。悪魔の城の主である吸血鬼の息子では決して無いし自分の名を冠する剣も持ってないし有角という名字を名乗った事も無い。
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