「また避けられた!」
『もっと良く狙うぴょん!』
後方で瓦礫に隠れながら簡単に言ってくれるウサギモドキの小人。
ワタシ実銃なんて当然撃った事無いし前世でもゲームのFPSすらやった事無いんだよ?さっきはまぐれだったのか上手く当たったけど、熊モドキはアレでワタシへの認識を獲物から敵へとランクアップ。今度はワタシが放つ魔力弾を避けてくる。動いてる相手に当てるなんて芸当、初心者には難し過ぎるよ。しかもあの熊モドキ凄く機敏だし。こっちも攻撃避けつつ走りながらの射撃だしね。
「他に攻撃手段って無いの?」
『伝承が古くて詳しい魔法は分からないぴょん!なにせ記録では1900年以上前の話ぴょん!』
1900年以上!?酷い骨董品じゃん!兎に角、熊モドキに魔力弾を当てない事には……ムムム。
「グォォォオ!!」
咆哮をあげて目の前へと突進してきた熊モドキの右手の爪が灰色に光った。ヤバっ、って思って慌てて後ろへと大きく飛び退く。爪が直撃した地面には大きなクレーターが。あんなのまともに食らったら大怪我……いや、実際どうなんだろ。
「ねえ、もしも攻撃食らい続けるとどうなるの?」
『痛みはあるけど最初のうちは怪我もしないぴょん。代わりに装甲が徐々に壊れて剥がれてくぴょん。装甲が無くなると身体に直接ダメージが入るぴょん。幾ら変身して身体能力が上がっててもそうなったら危険ぴょん……おっと想像したら鼻血が、ぴょん』
装甲が壊れて……?それってつまり今着てる衣装がひん剥かれるって事?
「ワタシはエロソシャゲのキャラかっての!このスケベ!変態!」
まさかそれ狙ってワタシを魔法少女にしたんじゃ……美少女JC!とか言ってたし……。
「グォォォオン!!」
駄目だ、後にしよう。今はアレに集中しないと。
熊モドキ、今度は爪の先に魔力を宿してワタシに向かい振りかぶる。灰色に光る爪が数十メートルくらいに伸びて、頭上からワタシの方へと迫って来た。ワタシは右に大きく飛んで避ける。
あっぶなっ。やっぱり遠距離から慎重に攻撃しないとやられそう。近付くなんてもっての他。でも離れるとワタシの腕じゃ当てられないし……何か無いの?あ、そうだ魔法なんだよねコレ。ならイメージとかで何とか出来ないかな?こう、ほら、誘導ミサイル?みたいな感じとか。
走りながら、誘導弾をイメージして杖??に魔力を送り込む。お?これいけそう?
「くらえ!」
さっきまでと同様に、右手に構えたグレネードラン……魔法の杖から魔力弾を撃った。馬鹿め効かぬわ、とばかりに熊モドキは颯爽と左へと一人?一匹?ぶん避ける。でも今度はワタシの放った魔力弾が野球のスライダーのように曲がって、熊モドキの頭に直撃。大きくよろけた。やった、上手くいった!
「……グォオオオオンッッ!!!」
頭の左側から血を流してる熊モドキはかなりご立腹の様子。これさ、ワタシの魔力でアイツの事倒せるの?まだまだ健在なんだけど?もっとこう、強力な攻撃って出来ないの?
なんて思ってたワタシの隙を見逃す筈もない熊モドキの両足が何か光ってる。それに気付いてアレ?って思った瞬間、地面を蹴った熊モドキが一瞬で数十メートルあったワタシとの距離を詰めた。灰色に光った両手の爪が振り下ろされる。回避出来ない。ワタシは顔を庇うように左腕を前にして、右半身を後ろへ引いた。
左半身、特に上半身に衝撃と痛みが走って、ワタシは後方へと大きく吹き飛ばされて。何度も地面を転がって漸く止まった。
「いったたた……」
ドレスの左半分が腰の辺りまで無くなってて、中のインナーも所々破けてる。左手のグローブも消失。胸の辺りの破けた所や左腕にはあちこち傷が。左腕の直撃を受けた部分はさっきからジンジンと痛みが消えない。
もしもアレをあと何度か受けたら……ゾッとする。
ワタシの様子を見たウサギモドキの小人は『アワワワワ……ヤバいぴょん』って相当焦ってる。本当に何か無いの?額から嫌な汗が流れる。このままだと押し負けて……。
「小人さん!何か無いの!?」
『しっ、知らないぴょん!伝承にはさっきの起動ワードと強力な魔法が使えるとしか書いてなかったぴょん!』
それだけでワタシに魔法少女を任せたの!?幾らなんでも無責任過ぎるよ!本当にどうしよう!?
「ホントに何か無いの!?さっきのデフォルマーレみたいな……」
そう呟いた直後だった。突然グレネ……魔法の杖が光りだした。同時にワタシも光に包まれて……気が付いたら衣装が変わってた。さっきまでみたいな魔法少女っぽいのとは違う……さっきのインナーからスパッツ部分を外しただけの相変わらずな競泳水着モドキな格好、そこに申し訳程度に金色のビキニタイプの金属パーツが。これホントに最低限の急所保護って事?
それとさっきまでグレネードランチャーだったものはどう見てもロケットランチャーの形に変わってた。
……ナァニコレェ。
すっごい恥ずかしいんだけど?
突然の事に呆気に取られてたワタシは、熊モドキの接近に気付けなかった。熊モドキはさっきと同じ爪攻撃でワタシを殺しにかかってくる。我に返った時は既に目の前。ヤバいっ!!
ガキィンッ、て音と共に、熊モドキがワタシの数センチ手前で何かに弾かれた。もしかして目には見えて無いけど防御結界魔法みたいなのが発動してる?
『眼福眼福……じゃなくてチャンスだぴょん!』
「はっ!?そうだった!」
ロケットラン……魔法の杖を両手で構えて、熊モドキに向ける。さっきまでとは比べものにならない量の魔力が収束していくのが分かる。
「食らぇぇぇえ!」
杖の先端から放たれたのは巨大な光の柱。直撃を受けた熊モドキは……光が収まった後には完全に消滅していた。
な……何とか乗り切った……。その場にへたり込んだワタシ。終わったと知ってエロウサギモドキが近寄って来る。
『良くやったぴょん!』
「良くやった、じゃないよ!何この粗製濫造エロゲの即堕ちヒロインみたいなコスチューム!?女児アニメのヒロインがこんな格好してたら親御さん達から苦情が殺到するよ!!」
前世では男だったし悪と戦うヒーローみたいなのに憧れてた時期だって確かにあったよ?でも望んでたのはこーゆーのではない!
『対●忍みたいでエッッッッッ(きっとそれこそ伝説の勇者の真の姿だぴょん)…………ふぅ』
「本音と建前が入れ替わってるよ!対魔●じゃ無いから!てか何で対魔●まで知ってるの!?あと『ふぅ』、じゃないよ、このエロウサギ!」
☆★☆★☆★
「
キーワードを教えてもらったワタシは、当然ながら速攻で変身解除。元の中学校のブレザー姿。ホッ、ちゃんと戻れて良かった。髪も元に戻ってるね。あ、傷が無くなってる。自動回復とかも掛かってるのかな?ロケットラ……魔法の杖もカードに戻った。
それで、ここは何処なんだろう。周囲は変わらずモノクロの世界のままなんだよね。
キョロキョロと周りを見渡すワタシの様子を見てか、エロウサギモドキは説明を始めた。
『合わせ鏡をすると中に無限に鏡が映りこむのは分かるぴょん?ここはボクが大・魔・法で生み出したそういう鏡面世界の一つだぴょん。だから暴れても現実世界には影響は無いぴょん』
「鏡面世界……まーたありきたりな設定だね」
『ありきたりとか設定とか失礼ぴょん!この魔法が使えるのはほんの一握りの超エリートぴょん!術者の一定範囲内のさっきのデーモンとかボクとかみたいな一定以上の魔力を持つ者を強制的に引き込む魔法ぴょん』
成る程ね。つまりそれでワタシも巻き込まれてこの世界に引き込まれた、って事か。じゃあワタシ完全に被害者だよね?慰謝料を要求する!!
「ワタシ巻き込まれ損じゃない?」
『そんな事無いぴょん。さっきも言ったけどルミナ・ソアレルイに適合する人間は決まってるぴょん。つまり運命だぴょん。それにデーモン共をこの鏡面世界で抑えられなかったら現実世界に出てくる事になるぴょん』
って事はワタシ、これからもあんなのと戦わなきゃいけないって事?あんな恥ずかしい衣装で?……はぁ。
「取りあえず元の世界に戻してくれる?ワタシの寮で詳しい事は聞くよ」
『分かったぴょん』
…………天国のパパ、ママ。前世の父さん、母さん。どうやらワタシは転生しても前途多難なようです。