私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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023 司彩「半年前、あの日」

 

それは……そう、約半年前。()()()()()()()()()()お姉ちゃんの時間封印結界が消滅してから約1年半経った、秋の始まりの頃。

 

ブレザータイプの制服にスカート、背中には赤いランドセル。当時まだ小学六年生だった私は、先生に頼まれた手伝いを終えて夕暮れ時の駅前の道を急いで……いや、ゆっくりと家へと帰っている所だった。インナーのみだけどヴィエティの兵装も展開してるし、いざとなっても暴漢ごときに遅れは取らない。日本のことわざで何だっけ……転ばぬ……先……。

 

〈転ばぬ先の杖、です〉

 

「むぅ……ナビ、うるさい」

 

一見すれば独り言にも見えるけど、私の左耳には電源は入っていないもののBluetoothイヤホンが装着されてる。これならスマホで誰かと話しているように見えるから不自然ではない筈。私の耳小骨を直接振動させるという方法で音を伝えているナビの声は当然周りには聞こえていない。

スマホに、イヤホン。それから他にも他にもetc……。二千年も経つと文明も随分と進む。正直な話、ナビのサポートが無かったら今でも全くついていけてなかったと思う。私が拾われた現地のイタリア語や、今話してる日本語だってすんなり覚えられたのはナビのお陰だ。元々私が使っていた言葉は今の区分では古典ラテン語、というらしいし。

 

大地・ルネル・司彩。それが今の私の名だ。

名字は私を拾ってくれた今の義理の父親である大地教授の。司彩はお義父さんが付けてくれた日本名。ルネルは本当の両親が付けてくれた名前。対外的にはルネルは名乗らず大地司彩、と言ってる。顔立ちも日本人とそう変わらないし。

 

「それで、ほら。この前の話」

 

〈マスターの姉、ルテルの前世についてでしたね〉

 

私の実姉にしてソアレルイのマスターだったルテルお姉ちゃん達の前世については、共に戦っていた二千年前はナビから聞きそびれちゃってたんだ。

 

私の前前……どの程度前世かは分からないけど、その超古代文明の時代の私の父親が、魔法少女システムの開発者。彼は魂の力を解明し、それを魔力と名付け……いや逆だ。いつか来るであろう異次元からの侵略者に対抗する為の力である魔力を紐解いていったらそれが魂の力だったんだっけ。

ルテルお姉ちゃんの前前……前世は、私の2歳歳上の従姉妹だったらしい。当然のようにレヌちゃん……月子の前世でルニのマスター、の前……世の子も居た。

 

〈ヴァルキュリヤ隊隊長エイル。それがルテルの当時の彼女の呼称です。当時最強の兵器であり抑止力だった軍事衛星『オーディーン』の責任者に抜擢された若き天才でした〉

 

「ヴァルキュリヤにオーディーンって……北欧神話じゃあるまいし」

 

〈北欧神話は史実を元に作られたと推測されます。ユグドラシルは当時の言葉で地球、という意味ですし、ラグナログも単に世界大戦という意味です〉

 

「……じゃあフェンリルとグレイプニルは?」

 

〈フェンリルはオーディーンを撃ち落とした対衛星兵器の名称。グレイプニルは当時の二大超大国間の停戦条約の名称です〉

 

「……お義父さんが聞いたら狂喜乱舞しそうな話だね」

 

そうか。時々見てたあの夢はやっぱり……。

 

〈ですが証拠は何一つ残っていません。北欧神話からの推測ですが、ユグドラシルを燃やし尽くした巨人スルトの炎の剣に該当するであろう広範囲殲滅兵器で当時の文明ごと跡形も無く消滅したものと思われます〉

 

そんな話をしながら歩いていると、駅前のロータリーに人だかりが出来ている事に気付いた。

何だろうと思って近付いてみると、血が付着した刃物を持った男が立っていて、周りには何人か血を流して倒れている人がいた。

 

「はぁ……この国は呆れる程楽観的で平和だけどさ、どうしてもこういう輩も現れるよね」

 

溜め息をつく。ナビは〈対処はどうしますか?〉って聞いてくるけど、幾ら凶悪犯が相手でも衆人環視の中魔法を使うわけにもいかない。一応左手の拳にはシャコの力を宿したままだけど……これを振るったら只の人間なんてミンチになっちゃう。

 

「ヴィエティの装甲で適当にガードして、偶然足でも引っ掛けた感じにして転ばせれば良いんじゃないかな?」

 

〈了解しました〉

 

()()と戦う事に比べたら児戯にもならない。さっさと片付けて帰ろう。ヘイトが私に向くように。刃物を持った男が私に視線を向けた瞬間、敢えて小馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべてやった。よしよし。これであの男を転ばせて、救急車と警察が来れば解決だね。

 

男が刃物を振り上げて私の方に向かって歩いてくる。でも残念、魔力を帯びた攻撃じゃないと私の装甲には傷一つ付けられないよ。

 

もう少しで接触する、って所で。あろう事か誰かが私と犯人の間に割って入って。庇うように私に覆い被さった。その直後、ズブリ、という嫌な音がその誰かの背中から聞こえた。「ヤッベェな」ってその人の呟きも。

 

頭の中が真っ白になって。〈落ち着いてくださいマスター、人命救助を〉ってナビの声で漸く我に返ったけど、動揺は抑えられない。

…………やらかした……やらかした!!私が慢心したせいで関係無い人が刺された!?

混乱してその場にへたり込んだ私に、その人は引き攣った笑みを浮かべながら「俺は……大丈夫だから……逃げろ」なんて言ってくる。全然大丈夫に見えない……そうだ、ルテルお姉ちゃんが残してくれたリクペラーレの魔法が込められた石を……ああでもここだと人目が……でも早くしないとこの人が……。

 

私に覆い被さったこの人の、刃物が刺さった背中からは止まる事無く血が溢れ続けている。凶器を失った犯人は周りの大人の人達に取り押さえられていた。

 

私のせいで、この男の人が。ああ、魔力……魂の力が、この男の人から漏れだしてる……。魔法少女にしか視ることが出来ないけど、人間は死ぬ時、魔力をこうやって周りに漏れさせながら亡くなる。こうなったらもう助けられない。ほら微かにだけど、綺麗なオレンジ色の魔りょ……オレンジ……色?ルテルお姉ちゃんと……同じ色?嘘……だよね?

 

〈魔力パターン一致しました。その男性の魂はルテルと同一です〉

 

この人が……私のせいで死んでいってるこの人が、ルテルお姉ちゃんの生まれ変わり……?

 

嫌だ。折角、折角この時代でもお姉ちゃんに逢えたのに。こんな……こんなの嫌だ!死んじゃ嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

『嫌アアアアアア!!死んじゃヤダ!!私を一人にしないで!死んじゃヤダよお姉ちゃん!お姉ちゃん!!』

 

母国語で泣き叫んでいたから全く通じていなかっただろうけど。それでも私はお姉ちゃんに呼び掛け続けていた。酷いよ。あんまりだよ。お姉ちゃんと折角再会できたのに。また私の目の前で死んじゃうの?また私を庇って死んじゃうの?何で?お姉ちゃんが何をしたっていうの?私が何をしたっていうの?

 

『起きてよ!目を開けてよ!もう私を置いてかないで!死んじゃヤダァァァアァァアァ!!………………お姉ちゃん……』

 

 

──

───

────

 

あれから私は誓った。

半年以内に私が魔力を注げばあと二千年は維持出来たであろうお姉ちゃんが張った次元封鎖結界の消滅を見届けて。

 

〈結界が消えれば後戻りは出来ませんが、本当に宜しいのですか?〉

 

「うん。だって、二千年後にはどっちみち結界は消えちゃうんだよね?ルテルお姉ちゃんがその時に生まれ変わって、奴らが侵攻してきたら殺されるか奴隷にされるか……最低な未来にしかならないなら。今、私が、アイツらを滅ぼさないと」

 

 

 

先手を打って。危険な王族を滅ぼして。もう一息という所で魔導バリアに阻まれ。

逃げ延びた残党を狩る為に一時的に人間界へと戻った私が見たのは、一匹の糞妖精がお姉ちゃんの魔法である鏡面結界を使う所。込み上げたのは当然怒り。糞畜生の分際で、お姉ちゃんの魔法を使うなんて。絶対、絶対許さない。嬲り殺しにしてやる。

 

「『マニプラ』」

 

熊を魔法で強化して、鏡面結界内に放った。あの糞妖精程度ならブチ殺すのには充分。熊に両手足を喰らわせて、ボコボコにして生まれてきた事を後悔させてやる。

 

 

 

 

私が目を離した隙に糞妖精を一時的に見失った直後。聞いた事のある声が。

 

「ひっ……ひぃぃぃい」

 

「誰か!誰か助けて!」

 

芦田先輩!?何で鏡面結界内に!?まさか芦田先輩、一定値以上の魔力を持ってる?不味いな、この状況じゃ誤魔化し切れない……いや、気絶させて夢でしたって事に出来ないかな……?

 

なんて考えている間に。

 

 

 

『このままだとボクもキミも死んで喰われるぴょん!ゴチャゴチャ言ってないで黙って魔法少女になれぴょん!『変身(トランスフォールマ)』!!』

 

 

 

あの糞畜生が。芦田先輩を魔法少女に変身させた。忘れもしない、あの時のルテルお姉ちゃんと同じ姿。あの時死んだ筈のあの男の人と全く同じ魔力。ルミナ・ソアレルイがそこにいた。

 

「ねえナビ……なんで……芦田先輩が……」

 

だって。ルテルお姉ちゃんは。あの男の人は。あの時私を庇って死んだ筈だ。

 

〈推測ですが、魂の力を使い果たして死んだ事によるバグの類いでしょう。魂が一時的に二つに別れて別々の時間に生まれて、より若い方に回収されて一つに戻った、という所でしょう〉

 

自分と同じ姿の人間に会ったら近いうちに死ぬ、というドッペルゲンガーの話は元はここから生まれたのかも知れない、とナビは続けて。

 

「撤退しよう。計画を練り直さないと。私は……私はもう、お姉ちゃんを巻き込みたくない。お姉ちゃんが死ぬなんてもう、嫌だ」

 

〈了解しました。個体名『熊』はどうされますか?〉

 

「ソアレルイはあの程度には負けない。ひとまず放置しても大丈夫。それより芦田先輩……ううん、お姉ちゃんに気付かれてない?」

 

〈問題ありません〉

 

動揺したまま。私は撤退を選び。

 

 

★☆★☆★☆

 

夜中。アオダイショウは3匹とも倒されたと報告を受けて。私はフラフラと部屋を出た。目的は勿論。

 

「…………お姉ちゃん?何してるの?」

 

「ウゲッ、司彩ちゃん!?ちちちちょーっと外で星が観たくなっちゃってね!アハ、アハハハ」

 

帰ってきたばかりで寮の玄関で狼狽えるお姉ちゃんの姿。怪我は……うん、してないみたいだね。でももう少し上手く戻って来ないといつかバレちゃうよ?

 

「…………そっか。ねぇお姉ちゃん。私も一緒に観ても、いいかな?」

 

「もっ、ももも勿論だよ!一緒に観よっか!」

 

もう見るからにあからさまに怪しいお姉ちゃん。見つかったのが私で良かったね。

努めて気付いてないフリをして、私はお姉ちゃんと一緒に玄関から外へ出た。今この時がずっと続けばいいのに。

 




いやあ、やっと書く余裕が。

次回は今月中に……書ければいいな
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