私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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025 ジーっ(バレないように静かに観察する音ぴょん)

 

「疲れてるのにありがと、お姉ちゃん」

 

「へーきへーき。そこまで疲れてないし」

 

「でもお姉ちゃん、さっきも欠伸してたよ?」

 

「あー、最近ちょっと読書し過ぎて夜更かししてるせいだよ」

 

今は司彩ちゃんと2人、ワタシの部屋。

バイトを終えて寮に夕方に帰ってきた後。司彩ちゃんにせがまれて宿題を見ていて、丁度終えた所。幾らレベルの高い私立って言っても中1の宿題くらいならなんて事無い。今のワタシ……陽里の頭なら余計に。それにバイトって言ってもコンビニだし体力的にそこまで辛いわけじゃ無いしね。ワタシ目当ての面倒で残念な□リコンなお客さんもタマに来るけど。

ただちょっと糖分は欲しくなる。

 

「司彩ちゃん、廃棄品で良ければロールケーキ食べる?ちょうど2つ貰って来たんだ。あ、ちゃんと期限はまだ切れて無いよ?」

 

「うん!」

 

司彩ちゃんの表情が、ぱぁ、っと華やいだ。うん、可愛い(妹分的な意味で)。今日は手作りじゃ無くて申し訳ないけど、やっぱり甘いものは正義だよね。前世の男だった頃でも甘いものはわりと大丈夫だったけど、今世はそれに輪を掛けて好きになってる。

 

ワタシは司彩ちゃんと隣どうしで座っていたテーブルから離れて、冷蔵庫へ。ホラ、対面より隣に居た方が勉強見やすかったからね。

 

ロールケーキ2切れを各々皿に移し替えて、フォークを乗せて運ぶ。対面に座ろうとしたんだけど、司彩ちゃんは右手で元々ワタシが座っていた司彩ちゃんの右隣にある座布団をポンポンと叩いて主張してる。宿題終わったのに隣に座る必要ある?まぁ良いけどさ。司彩ちゃん、ワタシの事『お姉ちゃん』って呼び始めてから随分甘えん坊になったなぁ。

 

皿を並べてストン、と司彩ちゃんの隣に座って。淹れてあった紅茶を一口。司彩ちゃんはワタシの動きに合わせるかのように紅茶に口を付けながら、顔をコッチに向けつつ。

 

「さっきの話だけど、読書って何読んでるの?」

 

「あー、えっと、あれだよ」

 

ワタシの視線の先にあるのはベッドの上に雑に重ねられた、古代ローマの歴史関連、神話関連の本が数冊。あれからワタシも読み漁ってみてるけど、参考になりそうな記述は今の所見当たらない。

 

「……古代ローマ?」って口にして首を傾げる司彩ちゃん。あー、あんまり興味無い感じ?司彩ちゃんは考古学者のお父さんと違って別に歴史好きとかじゃ無い感じなのかね。

 

「うん、その時代の神話とかちょーっと気になってね」

 

「ふぅん………………古代ローマと言えば私、ちょっと変わった民間伝承なら知ってるよ」

 

……お?

これは一応聞いておくか。もしかしたら本に載ってないような魔法少女に繋がるような何かがあるかも知れないし。

 

「ホント?司彩ちゃん、その話聞かせて貰ってもいいかな?」

 

「うん。じゃあえっと……コホン。『昔々。皇帝ティトウスの時代。悪魔の軍勢が何処からか現れてローマを襲いました。ローマの人々は逃げまどい、或いは殺され、ある者は悪魔達の奴隷にされました。』」

 

……なんか全く聞いた事無い話。そんな神話あったかなぁ?ホントに書物に残って無い民間伝承っぽい。

 

「『困り果てた皇帝ティトウスは建国の父たるロムルスに祈りました。ロムルスはローマを憂い、国民の中から3人の巫女を選んで、彼女達に力を与えました。』」

 

おお、なんかホント神話っぽいなぁ。ロムルスってローマ帝国だと神格化されてるんだっけ?この場合は神に祈った的なやつだよね。ワタシの脳内イプレが『グランドなランサーぴょん!ローマッ!ぴょん』って喚き散らしてる気がする……駄目だ、だいぶイプレに毒されてる。

 

「『1人目は、太陽の巫女。陽光を集めて悪魔を穿つ光の弓矢と、癒しの力を与えられました。』」

 

……ん?

 

「『2人目は、月の巫女。月光を凝縮して鍛えた、悪魔を切り裂く光輝く剣を与えられました。』」

 

ちょっと、ちょっと待って。それってまさか……偶然にしては……。

 

「『3人目は、大地の巫女。あらゆる生物を味方にして従えさせる力を与えられました。』」

 

…………えっ?

 

「『巫女達は傷付きながらも幾日も悪魔と戦いました。月の巫女が死に、大地の巫女が倒れましたが、太陽の巫女がその身を生贄に捧げ、悪魔達は漸く撃退されました。』……って話なんだけど。お姉ちゃん、参考になるかな?」

 

思わずワタシは「うんうん」と勢い良く首を何度も縦に振った。

ルニのカードは明らかに月だし、ソアレルイのカードは多分あれ太陽の表面。あの時遠目とはいえ見たヴィエティの衣装、言われてみればあのカラーリングって地球だよね……。

もしもその伝承が合ってるとすると……。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

「……って話なんだよね。月ちゃん、どう思う?」

 

翌日の夜。佳織の家のキッチンで。下味を付けた豚と鳥の合挽きのミンチをこねながら。ワタシは月ちゃんに問う。もしもこの伝承が真実を捉えてるとすれば……。

 

「陽里先輩……昨日司彩と一緒だったんですか…………!」

 

餃子の皮でミンチ肉を巾着のように包んで頂点にグリーンピースをチョンと乗せる手を止めて、ワタシの隣に立ってる月ちゃんが戦慄していた。いやあの月ちゃん、反応して欲しいのはワタシと司彩ちゃんの話じゃ無くて司彩ちゃんの話した伝承の方だからね?あとショック受け過ぎだよ?大丈夫?

 

皮で包んだシューマイモドキを、底に笹を引いた竹製の蒸し器に乗せていって火にかけて蒸す。餃子と違って雑に包んでも出来るし市販のより大きいサイズに出来るから、施設のチビ達には好評だったんだよね、シューマイモドキ。包むの簡単だからみんなで楽しくお手伝い出来るのも高ポイント。

 

「いや月ちゃん、問題なのは伝承の中身だよ。本当ならヴィエティってワタシ達と同じ魔法少女側だったって事になるんだよ?」

 

『ハッ!?つまりヴィエティはフレプ●のイ●ス様……いやあの胸的には闇堕ちキュ●スカイの方ぴょん』

 

ワタシの後ろに座ってニンニクを摺りおろしてるイプレ、まーたそんな事言ってる。てか敵まで胸で判断するなっての。

 

いやでも本当に闇堕ちとかだとするとヴィエティの後ろに更なる強敵が居るって事になるんだよね。ヴィエティ相手にも苦戦してるのに、更に強い敵とか出てきたりしたら……ワタシ達コレ詰まない?

 

「ボク達と同じ魔法少女、ですか。そうするとあの夢に出てきた3人目がヴィエティって事になるんですかね?そうすると真の敵ってどんな奴なんでしょうか?」

 

「どんななんだろうね?」

 

『ちょっ、2人ともボクを無視するなぴょん!?』

 

ま、ここで悩んでも分からないよね。さーてそろそろ蒸し上がるし夕食の準備しよっと。他のオカズに、シューマイモドキ用のお皿と、醤油と…………あれ?カラシどこ?リビングにいる佳織に聞いてみよっと。

 

「佳お……じゃなかった先生!カラシが見当たらないんですけどどこですか?」

 

危うく『佳織』って呼び捨てにする所だった。危ない危ない気を付けないと。あ、佳織キッチンまで来た。

 

「済まない。カラシはどうしても食えなくてな。置いてないんだ」って苦笑いの佳織。え?カラシが食べられない?何で?前は普通に使ってたよね?ワタシが前世で死ぬ直前だってカラシ買って来てって頼ん……まさか、いや、そうか。

 

「カラシが嫌いって意外ですね」って何気なく月ちゃんが口にしてる。月ちゃん違うんだ、佳織はカラシが嫌いなんじゃなくて、半年前から食べられなくなったんだ。ワタシのせいで。

 

「あの、先生。他に食べられない物とかあります?ホラ、今後のワタシが作る時の為に一応」

 

「後はオデン、だな。あれだけはどうしても無理だ」

 

『そうなのかぴょん。佳織は酒飲みなクセにオデン食えないぴょん?』

 

やっぱり。ワタシのせいでトラウマになってるんだ。ワタシがあの時勝手に助けに入って勝手に死んだせいで。あとイプレ余計な事言うな。ぶっ飛ばすよ?

 

「ああ。半年前に駅前であった無差別殺傷事件で幼馴染みが亡くなってな。それから食えん」

 

「……もしかして、家の所々にある男物ってその幼馴染みさんの遺品ですか?」って月ちゃん。え、トレーナー以外にも置いてあっ……うわ、本当だ。改めて周り見渡してみたら前世のワタシの私物そこそこあるじゃん!佳織、それだけショックだったって事だよね……。

 

「そうだ。どうしても捨てられなくてな」

 

「先生、もしかしてその幼馴染みさんの事好きだった、とかですか?」

 

月ちゃん、なんって事聞いてるかなぁ!そんなわけ無いで……自分で言ってて悲しくなってくる……佳織、絶対答えなくていいからね!聞きたくない!

 

「向こうはどうだったのか分からんが。いや、1人暮らしの私の家に来ても何も無かったんだ。アイツにとっては幼馴染みの腐れ縁って所だったんだろうな」

 

ぐぎゃあ!?違う!全っ然違うよ!ただヘタレなだけだったんだよ!好きじゃなきゃあんな頻繁に来て世話焼かないってば!

……あっ。いや、ちょっと待てよ?その言い方って事は。

 

「私は好意があったんだがな。まあ、もう終わった事だ」

 

マジで両想いだったの……何でワタシ、前世で告白しなかったんだ……。

思わずガクッと項垂れた拍子にキッチンの台にゴンッて頭をぶつけた。痛い。「大丈夫ですか陽里先輩!?」って慌ててる月ちゃんに、「いや、ちょっとヤな事思い出しちゃって」って言って誤魔化してみる。

 

「嫌な事?今の話の流れで嫌な事……まさか陽里先輩が誰かに告白してフラれたとか?陽里先輩をフるとか万死に値し……いやでもお陰で野郎の毒牙にかからなかったと思えば……」

 

何か月ちゃんがブツブツ言い始めたよ。何言ってるかは良く聞こえないけど。

 

「月ちゃん?」

 

「…………はい?陽里先輩、何か?」

 

あ、戻って来たみたいだね。良かった。

 

「2人とも、良いか?さっきの大地から聞いたという民間伝承の事だがな、ティトウスはヴェスヴィオ火山噴火当時のローマ皇帝だ。関連が無いというには偶然が過ぎる。大地は元々イタリア人らしいからな。現地で誰かに聞いたんだろうな」

 

オッホン。佳織のお陰で元の話題に戻ったよ。ワタシが負った心の傷は甚大だったけど。

 

って、え?司彩ちゃんって日本人じゃ無かったの?イタリア人って?

 

「それと大地の事だが。今は平気そうにしているが気に掛けてやってくれ」

 

気に掛け……?

佳織が言うには。前世でワタシが無差別殺傷犯から庇った女子小学生、どうやら司彩ちゃんだったみたい。目の前で人が刺殺されてるからトラウマになっててもおかしくなくて、前世のワタシ……あ、前世の名前は雲川(くもかわ)(るい)っていうんだけど……が死んだ直後は司彩ちゃん、心身共に憔悴しきっててワタシの後を追って自殺でもしかねない程だったんだって。

 

そっか。司彩ちゃんの事、助けられて良かったって思う反面、トラウマになっちゃったかも知れなくて申し訳なく思うよ。

……おい誰だ今『くもかわ るい』の事『運が悪い』って思ったヤツ!

 

 

 

それと何かイプレがさっきから変に大人しいような。振り返ってみたらイプレのヤツ、ワタシの方見上げてボーっとしてるや。何かあったん……んん?この角度ってもしかしてワタシのキュロット見てる……って隙間から中の下着覗いてるじゃんコイツ!!

 

「ふざけんなこのエロウサギ死ねっ!!」

 

『ちょっバレたぴょブゲラッ』

 

思い切り踏んづけてやったよ。悪は滅んだ。

 




イプレ、最後に見つかる。


次回は多分来月。
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