私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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027 あれ?なんか風向き変わったぴょん……?

「スゥ……スゥ……」

 

ワタシの胸に顔を埋めて静かに寝息をたてている司彩ちゃんの頭を、起こさないように注意しながら左手で優しく撫でる。

 

夜中。

寮のワタシの部屋のベッドの上。

司彩ちゃんとは向かい合うようにして横になっている。

 

どうやらワタシの部屋に泊まる旨をルームメイトに伝えてきたらしい司彩ちゃんは、明日着ていく制服やら着替えやら、少なめだけどその他お泊りセットを持参してきた。

こうやって可愛い女子中学生と一緒のベッドで抱き合ってるとか、前世の男の時だったら完全に事案だったね。今世は同性だから何の問題もないし邪な気持ちも全く無いけど。相手が佳織だったらちょっとヤバかったかも知れないけどね。

 

月ちゃん達とヴィエティ戦の話を終えたワタシが少しだけ遅く寮へと帰って来ると、何故か部屋の前で司彩ちゃんが待っていて。ワタシの顔を見るなり泣き出した時はもうどうしようかと思った。

司彩ちゃんは啜り泣きながらワタシの右手を……正確には右手首を掴みながら、ワタシの存在を、生きてる事を確認するかのように抱き着いてきて。手首も、どうやら脈がある事を確認するように指を当てていた。

 

それでワタシは佳織の言ってた事を思い出して。司彩ちゃんはきっと半年前の事件の事を思い出してしまったんじゃないかって思って。

ワタシの存在を確認しているあたり、もしかしたら雲川塁とワタシの魂が同一だって無意識に感じ取ってるのかも知れない。若しくは、司彩ちゃんの本当の家族は死に別れていて、だから今現在『お姉ちゃん』って慕ってるワタシの存在が不安になったのかも知れない。

 

どっちにしても放っては置けないし、落ち着くまでは一緒に居てあげる事にして、今に至る。

 

「おねえ……ちゃん……」

 

寝言とはいえワタシの事を呼ぶように呟く司彩ちゃんの頭を、再度優しく撫でる。明日には少しは落ち着いててくれたらいいんだけど。佳織に言われたのもあるけど、これはちょっと本当に暫くは司彩ちゃんからは目を離せないかも知れない。

 

「『ルテル……お姉ちゃん……』」

 

また何か寝言。でも今度のは何語か、意味不明だった。まあ寝言だしね。さて、ワタシもそろそろ寝ようかな。司彩ちゃんの体温が程良く温いから直ぐに眠れそうだし。

 

「お姉…………だめ……」

 

……悪い夢でも見てるのかな。少しでも安心してくれたらと思って、苦しくないように司彩ちゃんを少しだけ緩めに抱き締める。まあこのままでいっか。オヤスミ、司彩ちゃん。ワタシもゆっくりと瞼を閉じて…………。

 

「ソアレルイ……は……もう辞めて……」

 

目を見開いた。まっ、待ってよ。今確かに司彩ちゃん、『ソアレルイ』って言ったよね?何?何で司彩ちゃんがソアレルイの事知って…………ッ!

一瞬、空気が凍った。発生源は、司彩ちゃんが持ってきたお泊りセットの中だ。

 

落ち着けワタシ。偶々偶然ソアレルイって単語を口にしただけ、って可能性はある。確か司彩ちゃんはイタリア系、だった筈だしあっちにそういう単語があるってだけかも知れない。

 

でも、司彩ちゃんのさっきの寝言を繋げると『お姉ちゃん駄目、ソアレルイはもう辞めて』になるんだよね。

 

……………………。

 

もしも。もしもそうなら。

いつ何が起こるかは分からないからワタシなら手の届く場所に置いておく。だから多分……ごめん、司彩ちゃん。

 

司彩ちゃんを起こさないように細心の注意を払ってベッドから抜け出して、ワタシはテーブルの傍に置かれたお泊りセットのバッグの中へと手を伸ばした。ワタシの残念な勘違いであって欲しいと願いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「説明を、してもらえるかな?喋れる、んだよね?」

 

自分でも恐ろしい程に底冷えしたような声で。ワタシはバッグの中から見付けた、宇宙に浮かぶ地球が描かれたカードに語りかけていた。ヘアピンが無いせいで月ちゃんともイプレとも連絡が取れないのが惜しい。場合によってはこの場でコイツを破壊しなくちゃいけない。司彩ちゃんはコイツに操られているだけの可能性も…………。

 

〈はじめまして、ソアレルイの現マスターたる陽里様。対異次元生物決戦兵装・魔法少女システムプロトタイプ・ルミナシリーズ第三号機ルミナ・ヴィエティ、その自立型ナビゲーションシステムです。長いのでナビ、とお呼びください〉

 

そのあまりに淡々とした物言いに、一瞬で沸点に到達したワタシは思わず「フザケないでよ!」と怒鳴ったあと我に返って司彩ちゃんの方へと視線を向ける。良かった、まだ眠ってる。此処からはもう、司彩ちゃんは巻き込ませない。

 

「答えてよ、お前が司彩ちゃんを誑かしたの?」

 

〈いいえ。ナビゲーションたる我々の役目はマスターのサポートです〉

 

サポートって、それじゃ司彩ちゃんが自分の意思で妖精界を襲ったりワタシを殺そうとしたりしたって事?冗談は止してよ。司彩ちゃんがそんな非道な……非道………………そもそもデーモンって一体だけしか出せないわけじゃないし、強力な個体多数で袋叩きにすればワタシなんてひとたまりもなく死んでた筈で……。やっぱりあんな特撮みたいに都合よく一体ずつとかで出て来たのって。

 

〈マスターは陽里様に戦場から引いて欲しかっただけです〉

 

つまり。司彩ちゃんは単にワタシに妖精に加担して戦うのを辞めて欲しかっただけって事?ワタシの戦意をへし折るのが目的……。

 

いや、でも。

 

「ワタシを巻き込みたくないのはわかったけど、ワタシ本当に死にかけた事もあったよ?それに妖精界を滅ぼしていいわけじゃないよね?そもそもアナタ達って妖精が作ったんだよね?」

 

〈それに関しては問題ありません。リクペラーレの魔法が込められた翡翠を幾つか所持していますので回復は可能でした。それと、ルミナシリーズの制作者はDr.ドヴェルグ。遥か昔の人物ですが、れっきとした地球人です〉

 

はい?地球人?え?じゃあイプレやトア様の話は?

……なんか急にキナ臭くなってきた。寧ろヘアピン、壊されてて良かったかも知れない。

 

正式名称が対異次元生物決戦兵装、だっけ。司彩ちゃんの行動を合わせて考えるとそれってつまり……ワタシの前提が間違ってた?ワタシを戦線から離脱させるけどそれはそれとして変身カードを奪ったりしなかったのって……もしかしてワタシが変身出来なくなった隙に殺されないようにって事?

 

「…………お姉……ちゃん……?」

 

起こしちゃったか。

横になったままの姿勢で目を擦りながらワタシの事を探す司彩ちゃん。うん、やっぱり司彩ちゃんの口からちゃんと全部聞こう。そもそも今回の戦い、妖精側の事情しか聞いてない。やっぱり両方から聞かないとフェアじゃないからね。正義ってのは相対的なものだし。立場が変われば善悪だって変わる。某魔法少女の孵卵器だって、魔法少女にとっては悪だけど宇宙全体から見たら悪とは断定出来ないもんね。だから何をしてもいいってわけじゃないけど。

 

「ここだよ、司彩ちゃん」

 

出来る限り笑顔を貼り付けてはみたつもりだけど、上手く笑えているかは分からない。声色だって多分。

 

パジャマ姿でヨタヨタとベッドから降りて来た司彩ちゃんは、やっぱりワタシの存在を確認するように抱き着いて来た。これは、そうか、そういう事だったんだね。

 

「大丈夫だよ司彩ちゃん。ワタシはちゃんと生きてるよ。死んだフリなんてしてゴメンね」

 

「ホント……?あの時お姉ちゃんの魔力が霧散して、また私のせいでお姉ちゃんが死んじゃったって…………」

 

これはまだ頭が起きてないみたいだね。司彩ちゃん、自爆してるよ?そろそろ気づいて?

 

「人が死ぬ時って魔力を霧散させながら消えてくから……だから私……私……わた…………」

 

あ、気付いたみたい。司彩ちゃん、サァーッと青褪めてく。ついでにワタシがヴィエティのカードを持ってる事にも気付いたね。

 

「なん……で…………。ちが……違うの……お姉ちゃん、違うの……」

 

「うん、落ち着いて。ちゃんと順番に話してくれないかな?」

 

今にも泣きそう、ではなく既に泣いてしまっている司彩ちゃんをあやすようにその背中をポンポン、と優しく叩いてあげる。これは完全にメンタル破壊しちゃったみたいだね。あの時はワタシも必死だったとはいえ、結果論だけど死んだフリは悪い事したかなぁ。

 

「あのねお姉ちゃん。お姉ちゃんはね、私の本当のお姉ちゃんなの」

 

〈色々と言葉が足りていません、マスター〉

 

えっと…………司彩ちゃんこれ本当に大丈夫?ちょっと幼児退行とかしてない?え?これもワタシのせい?

 

「ええっと……先ずね、お姉ちゃん。魔力っていうのは魂の力の具現でね?指紋みたいに一人一人違ってるの」

 

あー、成る程成る程。某リリカルでマジカルな魔法少女みたいな波長とか色とかが個人個人で違う、って事ね、オーケーオーケー。

 

「それで、ソアレルイのデバイスにマスター登録されてるのは私が生まれた時代の、私の本当のお姉ちゃんの『ルテル』の魔力なの」

 

……あ、そっか。つまり司彩ちゃんは本物の古代ローマ人?って事で、先代ソアレルイはその実のお姉さんって事か。いや待って。そのお姉さんの魔力が登録されてるんだよね?なんで別人で魔力が違う筈のワタシが……あ、いや、そうか、まさか……。

 

「落ち着いて聞いてね。だから。お姉ちゃんがソアレルイに登録された魔力と同じって事はね?芦田陽里は私の実のお姉ちゃんのルテルと同じ魂、生まれ変わりって事なの」

 

やっぱりか。じゃあ前世のワタシ雲川塁が無意識かつ反射的に司彩ちゃんを守ろうとしたのも、それが理由だったんだね。あの時きっと、魂レベルで、お姉ちゃんとして妹を守ろうとしたんだ。

 

そっか。ワタシの魂が、司彩ちゃんを妹だって認識してるから、こんなに親身に感じるんだ。本来ならワタシや月ちゃんと協力してる妖精達の敵の筈でワタシも殺されそうになったりしてるのに。確かに司彩ちゃんのやった事には思う所は沢山あるけど、それでもこの子に寄り添わないとと思ってしまう程に。前世の記憶を引き継いでるせいもあってか、割とすんなり納得できた。

 

けど。

例の月ちゃんの夢に出てきたのが司彩ちゃんだったなら。ワタシは前世と昼間の2度に渡って司彩ちゃんのトラウマを抉ったって事になるんだ。目の前で姉を失うってトラウマを。そりゃあメンタルもやられるよね。

 

「今まで気付けなくてごめんね。司彩ちゃん、2000年前に何があったのか。話してくれる?」

 

「ヒック……エグッ……信じて……くれるの?」

 

「勿論だよ」

 

 

 

 




次回は(多分)過去編。

ドヴェルグといえば北欧神話でグングニルやらミョルニルやらグレイプニルやらの制作者ですね。

また来月。
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