街の中心に近い位置に存在する、ワタシが通う私立藍院中学校の寮。ワタシが入った経緯は後で話すとして、ここの寮は遠くから来てる子が入る為の場所なんだ。一応県内の有名中学だからね。あ、因みに藍院って名前の由来は確か学園長が『タウンページの一番最初に載るから!』って言ってた筈だよ。
で、本来寮生は二人部屋なんだけどワタシは訳あって一人で住んでるんだ。フローリングの1K。一人なぶん他の子達のよりはだいぶ狭い部屋だけどワタシには充分。ワタシが育った施設では自分の部屋なんて無かったしね……。
っと。いやぁ、でも一人部屋でホント良かった。なにせ他の子にこのエロウサギモドキを見られなくて済むんだから。自分の部屋に戻るまでコイツを誰かに目撃されないかヒヤヒヤしたよ。
自分の部屋へと帰宅したワタシは着替えもせずに備え付けのベッドに座って、エロウサギモドキは床に置かれたクッションにポフン、って座った。
「取りあえずワタシの名前は芦田陽里。あー、えーと芦田が名字で陽里が名前ね。エロウサ……貴方は?」
『アカリ、ぴょんね。覚えたぴょん。ボクはイプレ。この世界の人間には妖精って呼ばれる種族だぴょん』
妖精……だと……。
二次元ならまだしもリアルのJCに欲情してるこの変態エロ魔人が?妖精って呼ばれてる全ての存在に失礼じゃないかな?
「妖精かどうかは置いといてさ、色々説明して欲しいんだけどな」
『こっちは女の子の憧れの魔法少女にしてやったぴょん。だから別に詳しく話さなくても問題無いぴょ痛だだだだだだ!?』
イプレがふざけた事を言い始めたから両方の頬っぺたを思いっきりつねってやった。
さてはイチから話すの面倒になったなコイツ。こっちは無理矢理魔法少女やらされてあんな恥ずかしい格好させられたっていうのに。
『暴力!暴力反対ぴょん!』
「ワタシの同意無しに色々やったのはそっちだよね?じゃあコレ返すね。別の子を当たってくれるかな?」
マーブル模様の変身カードをイプレの目の前の床に置いてあげた。よく考えたらさ、ワタシが魔法少女続けてあげる義理も無いんだよね。中学に上がってやっと人並みの生活が出来そうなのに特大の厄介事に首を突っ込むのも、ね。きっとワタシより正義感に燃えた他の誰かが魔法少女してくれるよ。
『それは無理ぴょん。この世代ではアカリにしか適合しないぴょん。アカリがやらないならボク達妖精は全滅、そのあと襲われるのは人間達だぴょん。あーあ、アカリがやらないせいで何の罪も無い人達がデーモン共に沢山食い殺されるぴょん』
このエロウサギッ!
ワタシのせいで沢山の人が襲われるっていうのは後味が悪すぎるしグヌヌヌ。
……うん?待てよ?そういえばイプレって初登場した時にあの熊モドキデーモン?の攻撃を魔法で受け止めてなかった?ワタシじゃ無くても妖精だけでも戦えるんじゃないの?
「でもイプレって防御魔法?みたいなので攻撃防いでたよね?妖精がデーモン?と戦えばいいんじゃないの?」
『無理無理無理ぴょん。ボク達妖精じゃ攻撃一回受け止めるのがせいぜいだぴょん。攻撃に至っては全くダメージ与えられないぴょん』
そうなの?うーん、そうなるとやっぱりワタシがやらないといけないのか……あの格好で……そういう系では割とある認識阻害みたいなのが掛かればまだマシなんだけど。帰り道で『認識阻害……?なにそれ美味しいぴょん?そんな都合の良いものなんて無いぴょん。魔法は万能じゃ無いぴょん』とか言ってたからなぁ。
それからイプレは魔法少女の歴史?みたいなのを教えてくれた。なんでも最初にデーモンの中でもとりわけ強力な個体、魔王?みたいなのが現れて、それに伴って他のデーモンが出現、妖精界も必死に抵抗したけど歯が立たなくて、そのうちに別の世界の住人であるワタシ達人間の中に妖精を遥かに上回る魔力を持った子が居る事が分かって、それで当時の魔法技術の粋を集めてその子用に作ったデバイスが今ワタシの目の前にあるこのカードなんだって。紆余曲折あってその子はなんとかその魔王?を倒したんだってさ。
「それが1900年以上前っていう話?」
『そうだぴょん。だからアカリは多分その時の子と魔力の波長が同じなんだぴょん』
それだとますますワタシ以外の子にやらせるっていう選択肢は取れないかぁ。やっぱりやるしかないみたいだなぁ。
このカードが妖精の魔法技術の粋、か。
「それにしてもデーモンみたいなのに対抗したり別の世界を行き来したり出来るなんて妖精の魔法って凄いんだね?」
『当時の詳しい文献は残念だけどあんまり残って無いぴょん。それと別の世界の行き来は、鏡面世界を生み出す魔法のせいぴょん』
「ん?そうなの?」
『そうぴょん。デーモンから妖精界を守る為に何回も鏡面世界を作ってたせいで他の世界との境界が薄くなって本来行き来出来ない筈の人間界と繋がっちゃったらしいぴょん。プププッ、全くドジぴょ痛だだだだだ!?』
「つまりワタシ達の危機ってイプレ達のせいって事だよね!!」
またイプレの両頬を思いっきりつねる。ワタシから逃れようと涙目で暴れるイプレを押さえつけて更につねる。
『痛い痛い、暴力反対ぴょん!』
「他に隠してる事って無い?今ならまだ許してあげるよ?」
『本当にぴょん?』
ワタシはニッコリと笑顔を作る。当然目は笑ってない筈だよ。
はい、許してあげるなんて勿論嘘だよ。このぶんだと叩けばワタシに都合の悪い事実がまだまだ出てきそうだからね。ぜーんぶ吐き出してもらうよ。
「ホントホント」
『……デーモンを統べる魔王は復活の兆しがあるぴょん。だから手下のデーモン達も復活しだしたぴょん。今の妖精界はデーモン達の侵攻を受けててそこそこ危機だぴょん。妖精界のシェルターに避難してたりボクみたいに人間界に避難しに来てる妖精も居るぴょん』
「魔王って復活するの?さっき倒したって言ってたよね?」
『正確にはルミナ・ソアレルイは魔王を倒したんじゃなくて長期間活動不可能にしたぴょん。ソアレルイがその命と引き換えにした大魔法で消滅寸前まで追い込んだお陰で魔王は回復に2000年近く掛かったぴょ痛だだだだだ!?』
さっきより一層強くつねってやったよ。だって仕方ないよね?命を引き換えにしなきゃ使えない大魔法でも完全消滅出来ないんだよ?つまり普通に戦ってもワタシには最初から勝ち目なんて無いって事だよ?
「そっかぁ。つまりワタシに死ねって事かな?ねぇ?」
『痛いぴょん、つねるの止め……とびっきりの笑顔なのに目が笑って無いぴょん!?怖いぴょん!!ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ』
……はぁ。仕方ない。そろそろつねるの止めてあげようかな。流石に少しは反省してるみたいだし。ワタシだって確かに色々と怒りはあるんだけどさ、全部が全部イプレのせいでは無いわけだし。冷静に考えれば、無理無理魔法少女にされた事だってそのお陰でワタシも死なずに済んだんだし。
「分かった。ワタシもムキになって悪かったよ。ちょっと恥ずかしいけど魔法少女、やるから」
『ありがとうぴょん。ボクも頑張ってソアレルイの相棒の魔法少女を探してみるぴょん』
ん?相棒?いま相棒って言った?魔王とは一人で戦ったんじゃ無いの?ちょっとその辺り詳しく!なにせワタシの命が懸かってるからね!
「相棒って?」
『1900年前の時は結局見つけられなかったらしいけど、当時の妖精達はルミナ・ソアレルイのカードの他にもう一枚魔法少女のカードを作ったぴょん。アカリと一緒に行動しながらそっちに適合する子も探すぴょん』
おおっ!これは朗報だよ!その子さえ見つかれば死なずに魔王を消滅させられるかも知れない!
……で?どうやって探すんだろ?ワタシも手伝えれば良いんだけどな。
『鏡面世界を作りまくればアカリの時みたいにその子もきっと何処かで引っ掛かってくれるぴょん』
それって手当たり次第しかないって事かな?ていうかワタシの時もホントに偶然だったんだね……そんなんで大丈夫なのかな?不安しかないよ。
「はぁ。まぁなるようにしかならないよね」
『そうだぴょん。前向きに考えてやるしかないぴょん。それとアカリは魔法の練習が必要ぴょん。次スレ立てろって連中もうるさいから夜にでもやるぴょん』
「あー、そうだよね。ワタシも自分の魔法のスペックとか把握しておきたい…………待った、今何て言った?」
イプレはビクッ、って明らかに狼狽した。『きっ、きききき聞き間違いぴょん』って声も震えてる。ははーん成る程、これはワタシにバレたらヤバいやつだね?イプレの足元にあるカードを素早く回収して、と。
「
一瞬で変身したワタシ。「
「見せなさい」
『何も隠してなんか無……ちょっ、目がマジぴょん!?魔力収束させるの止めるぴょん!?見せる、見せますぴょん!?』
イプレは渋々、といった様子で空中にA4の大きさの半透明のウィンドを開いてみせた。へぇ、魔法ってこんな事も出来るの?便利だね。
『怒らないで欲しいぴょん』
「内容次第かな?」
イプレがウィンドを操作すると妖精語?で意味が分からなかった文字が日本語へと変換された。妖精の技術凄いね。
【英雄】ルミナ・ソアレルイ戦闘実況スレ【爆誕】ってスレッド名がついてる……。どの辺が見られたら困るんだろ。コメント見させてもらおう。
『まさかイプレが見付けるとはこのリハクの目をもってしても』『流石俺達のイプレ!そこに痺れるッ!憧れるゥ!』
とか書いてある……アンタらホントに妖精?
……で、ワタシが魔法少女になる辺りでワタシの画像が貼られてる……
『美少女JCキター!』『JC!JC!』『スリーサイズうpはよ、はよ』『全裸待機』『パンツ脱いだ』
…………。
まっ、まああるよねこういうノリなら。うん、ワタシも前世では良く見たよ、こういうの。
……あっ、ロケランの例の第二形態?のワタシの全身画像が貼られてる。レスは……
『第二形態エッッッッッ』『あーだめだめエッチ過ぎます』『…………ふぅ』『……アッ……アッ……』『ソアレルイチャーン』
いざ自分が言われる立場になると……ちょっと吐き気が。
「…………やっぱりギルティ、だね」
あのエロウサギ!今度という今度は……あれっ!?居ない!?イプレは何処行ったの!?絶対許さないからね!!!
性癖を隠そうともしない妖精の面々。