私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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030 陽里「昔話後編、そして自爆」

気付いて駆け寄って来たレヌちゃんが私とお姉ちゃんに抱き着いた。

あんな恐ろしい爆音と揺れの中、今まで独りでこの場に隠れてたんだ。お姉ちゃんがずっと傍に居てくれた私と違って恐怖だったに違いない。

 

「ルテル、ルネルちゃん…………他のみんなは?お父さんとお母さんは?」

 

不安そうにそう言うレヌちゃん。

お姉ちゃんは少しだけ目を閉じて深く呼吸をして。目を開けて私の方を見て。レヌちゃんの希望を打ち砕く言葉を口にした。

 

「あのねレヌ。あの怪物達がみんなを…………。だから、もう誰も……」

 

「そんな……」ってその場にへたり込んだレヌちゃんは。両目いっぱいに涙を湛えながら、ここに隠れた時の状況をポツリポツリと話してくれた。

 

轟音と大きな揺れが何度も起きてすぐ、レヌちゃんの両親はレヌちゃんに地下倉庫の奥に隠れているように厳命したらしい。『安全が確認出来たら直ぐに迎えに来るからそれまで大人しくしているように』って。

それでレヌちゃんはその言葉を信じて待っていたんだけど、轟音は止まないどころか段々近付いてくるし両親は一向に迎えに来ないしで、不安になって倉庫から出ようとしたら真上でもの凄い音が響いて。恐怖でその場にしゃがみ込んで震えてたらしい。そうして暫くしたら音も揺れも止んで。出ようとしたら入り口の蓋が全然開かなくて途方に暮れてたって。

 

「さっきワタシが見て回った感じだと今のところは怪物達は見当たらない。でももう少しココに隠れてた方が良いと思う」

 

「うん、ルテル」

 

お姉ちゃんも今の村の様子や見た怪物達の姿なんかをレヌちゃんにも話して情報を共有する。それでレヌちゃんは隠れる前に少しだけコッソリ怪物達の姿を見たらしくて。

 

「私が見た感じだと、頭のアレ……角じゃなくて多分耳だと思う。獣の耳」

 

「レヌ、それ本当?獣の耳……じゃあ本当に人間じゃなくて怪物なんだ」

 

「あと、あの四角くて二本足の大きな怪物。倉庫に隠れる寸前だったからチラッと見ただけだけど、アンニアとアクィリアが服を全部脱がされて怪物の前に座らされてた」

 

「あの大きな怪物は人食いって事……?」

 

アンニアとアクィリアは2人ともレヌちゃんと同い年の女の子。ああ、2人は食い殺されちゃったんだ、って私は恐怖で震えた。お姉ちゃんもレヌちゃんもきっと怖い筈だけど、私と違って生き残る為に努めて冷静に考えようとしてるみたい。

 

「もう少ししたらパパが帰ってくる筈だから。そしたら執政官様が何とかしてくださる。だからワタシ達とココで待ってよう?」

 

「分かった。ありがとルテル。…………何か飲み物持ってくる」

 

レヌちゃんは立ち上がって倉庫の奥へと歩いて行って……騒音と共に奥の床の部分が抜けて現れた穴に落ちた。

 

「レヌ!」

 

「レヌちゃん!?」

 

お姉ちゃんと私は慌てて穴の方へと近付いてみると、抜けた床の先は坂道になっていて地下に更に直方体の形にくり抜いたような空間があった。

 

「痛たたた……大丈夫、私は無事だけど……なんだろう、ここ」

 

転がり落ちたレヌちゃんの視界いっぱいに、淡い乳白色の壁。天井も、床も。肌触りはビックリするくらいツルツルで、石みたいに硬い。タイルとは明らかに違う。一辺が10メートルくらいの空間。

 

「え……何これ……」って絶句しているお姉ちゃんの背中に隠れながら覗いた私の瞳に、奥の壁にある切れ込みが見えた。長方形で、横が私の身長くらい、縦が私の身長の3倍くらいの長さの溝が壁に彫ってあるように見える。

 

〈ーーーーーー、ーーーー〉

 

っと。何処からか謎の音が聞こえて。その溝のところがスーッと右にスライドして奥に部屋が現れた。当然その時代に自動ドアなんて概念がある筈も無くて。何で壁が動いたのかとか、もしかしてあの怪物達の仲間が潜んでたのかとか、そうじゃなくて何か別の者がいるのかとか、私達は兎に角混乱した。

 

「わひゃあ!?ルルルテル!なんか!なんか居る!?」

 

「えっ!?なっ、何!?おっ、おっ、お姉ちゃん!?」

 

「だ、だだだ大丈夫だよルネル」

 

絶賛混乱中の私達を他所に。奥の部屋?から再度音が響いてきて。

 

〈ーーー、ーーーーーーーーーーー………言語解析完了。ようこそマスター各位。奥へお進み下さい〉

 

「進めって言われてるけど……どうするルテル」

 

「もう行くしかないよ。ワタシ達気付かれちゃったみたいだし」

 

2人に手を引かれて、私は奥の部屋へと足を踏み入れた。

同じ乳白色の壁の狭い部屋の中には誰も居なくて、真ん中に私の身長の半分くらいの高さの乳白色の台があって、その上に全面透明な箱が鎮座していた。

 

中が透けて見える箱の中には、3枚の板。金属……でも木でも無い、正体不明の板には、黒い背景に青に緑や茶色の模様が描かれた丸の絵が描かれた板、黄色や白や赤なんかがグチャグチャに混ざったような模様の板、黒い背景に黄色い丸が描かれた板の3枚が収められていた。

 

透明の箱が真ん中から真っ二つに分かれて、中の板が現れる。〈1番身長の高い貴女は右のカードを〉〈1番身長の低い貴女は左のカードを〉〈最後の貴女は真ん中のカードを〉って何処からか指示されて、私達は呆気にとられる暇も無く言われるままにカードを手に取った。

 

起動インチェプト

 

って声と共に、私達の手の中のカードが光る。お姉ちゃんのはオレンジ色に、レヌちゃんのは金色に、私のは青色に。

 

 

 

〈はじめまして、今世のマスター。対異次元生物決戦兵装・魔法少女システムプロトタイプ・ルミナシリーズ第三号機ルミナ・ヴィエティ、その自立型ナビゲーションシステムです。長いのでナビ、とお呼びください〉

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

「………………それで。少しずつローマに近付きながら。私達は来る日も来る日もヤツらと戦った」

 

司彩ちゃんは静かに語った。魂と魔力の関係の事。ナビの手ほどきを受けながら初めて戦った時の事。3人で協力して妖精達の進軍を何とか食い止めていた事。ソアレルイの魔法で傷は回復出来ても疲労はそうはいかず、少しずつ疲弊していった事。ポンペイを包囲されて、止むなく3手に分かれて戦ってレヌが殺され、司彩ちゃんも瀕死の重傷を負ったうえ100年は解けないであろう治癒阻害魔法を受けた事。ルテルが命を賭して妖精界と人間界を繋げた大穴を塞ぐ結界を張った事。その際に司彩ちゃんの時間だけを停止する結界を張って治癒阻害魔法の時間だけを経過させて司彩ちゃんの命を助けた事。

 

「成る程……つまりボクはそのレヌって子の生まれ変わりで魂が同じだからルニに成れたって事ですか」

 

「うん、月子。……黙っててごめん」

 

俯く司彩ちゃんをじっと見つめてた月ちゃんが、おもむろに立ち上がる。司彩ちゃんの目の前まで来て……その胸倉を掴んだ。

 

「だったら何で……何で陽里先輩を殺そうとしたんですか?イプレを殺すのは別に構いませんけど、陽里先輩を殺す理由は無いですよね?」

 

月ちゃんは無表情で、けど目だけは殺気が籠もったものを司彩ちゃんに向けてる。ちょっと不味いかな……間に入った方が良さそうな……。

 

「待て伊集院。大地が芦田と一緒に来たという事は少なくとも今の大地にはその気は無いという事だ。落ち着け」

 

ワタシが動くより早く、そう佳織が口を挟む。うん、助かる。流石は先生してるだけの事はある。

 

「でも先生!司彩は先輩を攻撃して傷を負わせてるんですよ!」

 

「だから落ち着け伊集院。大地が話し難くなるだろう」

 

佳織は月ちゃんを司彩ちゃんから引き剥がす。佳織の視線がワタシに向いたので、コクリと頷く。ワタシが許してるって事は司彩ちゃん側にも攻撃した理由があったんだよな?って意味の視線だと思うし。

 

「芦田に攻撃したのは何故だ?」

 

穏やかな声色で聞いた佳織に、司彩ちゃんは涙目になりながら答えていく。

 

「…………圧倒的に負けて『絶対勝てない』って思ってくれたら、戦いから身を引いてくれると思って」

 

「怪我はどうするつもりだったんだ?」

 

「……回復……魔法が込められた石があるから……それで……」

 

「最初に芦田に相談する事は出来なかったのか?」

 

「お姉ちゃんが……生まれ変わりだって知らなくて……最初に変身した時に初めて知って……出来るだけ巻き込みたくなくて……」

 

「じゃあ何故こうして全部告白する気になった?芦田に説得されたのか?」

 

「それは……」

 

ジワ、って司彩ちゃんの両目から涙が溢れ始める。あ、限界っぽい。助け舟出すか。

 

「待って先生。司彩ちゃんが妖精界に攻め入ったの、半分ワタシのせいみたいなものなんです。多分ワタシが司彩ちゃんを庇って刺されて死んだせいで、それまで静かに暮らしてきた筈の司彩ちゃんの二千年前のトラウマを思い出させちゃったからだと思うし。それにこうして司彩ちゃんがワタシと来る気になったのも昨日ワタシが死んだフリをしたせいでまたトラウマで心を折っちゃったせいだし…………」

 

 

 

 

 

 

…………あれ?なんでみんな固まってるの?ワタシそんなに変な事言ったかな?

 

「えっと……あの……陽里先輩?庇って死んだ、って……」

 

……ん?

 

「…………お姉、ちゃん?もしかして……覚えてるの?」

 

覚えて……?何の話…………。

 

「お姉ちゃん…………私、雲川さんの魂の事お姉ちゃんに話してない…………」

 

……………………あっ…………。

 

グギギギギ、と錆びた機械のように首ごと視線を回して佳織の顔の方へ。

案の定佳織は表情が抜け落ちて「芦田が塁の?いやしかしそれだと時系列が」って何かブツブツと呟いていた。

 

 

 

 

 

ヤッベェ、やっちゃった。

 

 




後編。前世バレしました。


年末年始忙しかったんですよ。
別に、そ〇いろそらうたそらのおと久々にやってたから更新遅くなったわけじゃ無いですよ?本当デスヨ?
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