私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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032 学名ぴょん。何の問題も無いぴょん

いやあ、やっぱり元の等身の姿はいい。マナも充分だし身体も楽だし。

 

……まさかこんな形で妖精界に戻って来る事になるとはボクも思ってもいなかった。まさか妹を疑わなきゃいけないとは。

 

見えて来たのは血のような赤色の魔導バリアにすっぽりと覆われた王都。

 

「じゃあ少しの間隠れていてくれ」

 

ボクの言葉に反応し、右肩に乗っていた虫……和名:ヨツコブツノゼミが2匹、ボクの服の中へと移動。それを確かめてから改めて歩みを進める。因みに学名の方を口走ろうと思って()()()()()()()()()()()()瞬間、陽里にキャメルクラッチをキメられた。いやー死ぬかと思ったよ、はっはっはっ。流石に『勃◯チン◯ン嬲りフェ◯虫ぴょん!』って言ったのは露骨過ぎたかな。「月ちゃんや司彩ちゃんの前で何口走ってんの糞イプレぇぇ!」ってキレられたからなぁ。

 

さて、正門が見えて来たか。バリアの内側に、ミスリルの鎧を着た門番が立ってるな。今は1人か。

 

「………やあ、ご苦労」

 

「ハッ!お帰りなさいませ殿下!よくぞご無事で!」

 

敬礼したこの門番、急にボクが戻って来た事に何の疑問も持たないのか。成る程、つまり鍵付きの方のスレ民だな?

 

ボクは両手を胸の高さまで上げる。右手と左手の人差し指の先を合わせ、同じように親指同士の先を合わせて左胸の前でハートマークを作って、笑顔で決めゼリフを吐く。

 

「『キラッキランラ〜ン☆』」

 

「ぶっはっ……殿下そのナリでキュアア◯ドル……くひいっ……クフフフフっ……腹痛い……ぶはははっ」

 

「笑い過ぎだろ、ボクじゃなかったら不敬罪でしょっ引かれてる所だぞ……大体オマエラがやる事指定したんだろ」

 

「ぶっひひひぃ……殿下が……プクククっ……殿下が安価したのが原因でしょう……ぶはははっ、お陰でスレも草生え散らかしてますよ」

 

ボクも一応王族なんだが。まぁこんな事でスレ民の気が紛れるなら安いものか。

 

そうしてひとしきり笑い転げていた門番は一度姿勢を正して敬礼して『どうぞお通りください』と彼の首に掛けられたネックレスの先端に付けられた石……翡翠に魔力を込めた。次の瞬間、バリアにボクが通れる程度の大きさの穴が出現。ボクは問題なく中へと入った。

 

この翡翠も。

言われてみれば翡翠ってこの妖精界じゃ何処を探しても見つけられないんだよな。魔力を蓄えたり増幅したりする効果がミスリルを遥かに凌ぎ、代々王家にのみ伝わって来た素材。亡き父さんの持っていた王笏とか、母さんのネックレスなんかにも使われてる。

過去の文献ではヴィエティが現れる前から使われてたみたいだし。成る程、人間界から略奪してきた物だったってワケか。通りで妖精界をどれだけ探しても見つからない筈だよ。

大昔の日本では翡翠の勾玉とかあったらしいけど、もしかすると古代の彼等は魔法使えたのかもな。

 

「ところで殿下。今回はどのような要件でお戻りに?」

 

おっと、今は置いておくか。そういう考察は余裕がある時にしよう。……返答は適当にはぐらかしておくか。

 

「ちょっと野暮用でね。ああ、トアには連絡しなくていいよ。彼女も忙しいだろうし」

 

「畏まりました。それと殿下、1つだけお願いが」

 

「何かな?」

 

「人間界行くの私と代わっていただけませんか?」

 

「……人間界行きたいか?」

 

「行きたいです行きたいです」

 

「陽里達とキャッキャウフフしたいか?」

 

「したいですしたいです」

 

「…………駄目だなッ」

 

「チクショウこのクソハーレム野郎がぁぁぁあ!!」

 

全員脈無しだけどな!「あっはっは、それじゃ門番頑張れ」と手を振って、ボクは王都の中へと歩みを進める。

 

陽里がボクに依頼した任務は2つ。

1つ目は歴史改竄の真偽を明らかにする事。その為に現状有力な容疑者であるトアには知られないように探らなきゃならない。

もう1つは単独作戦行動が可能な魔導砲搭載2足歩行戦車、メタルg……じゃなくてルネルの時代に主力だったであろう魔導戦車?の格納庫を探す事だ。

魔導バリアが今こうして動いている以上、魔導戦車も何処かにあると思っておくのは当然。黒幕がそれらを稼働させるよりも先にボクが掌握する為だ。ボッキディウム・チンチンナブリフェルム(学名)のこの2匹は探すのを手伝ってもらう為に司彩に付けてもらったってワケ。ま、司彩からすればボクの監視も兼ねてるんだろうが。

 

しかしまさか魔王ヴィエティが本当に陽里達と同年代とはね。嘘から出たまこと、或いは瓢箪から駒とはこの事か。陽里と一緒に出会った時にスレに貼ったヴィエティの姿の画像じゃ遠過ぎて年齢判別は不可能だったし、何より大昔の魔王だからボクはてっきり年寄りだと思ってたからなぁ。ヴィエティを生で見たことないトアや母さんが『実は魔王はトアと同年代の少女だった』って知ったら驚くだろうな。トアが黒幕じゃ無きゃ、だけど。

 

出来るなら実の妹を疑いたくは無いんだが……事実として伝わってる歴史は間違ってるし馬鹿兄共はまんまと排除されてトアが王位継承権第一位になるし。トアなら今までの実績のお陰で多少強引な策でも民衆は付いていきそうだしな……それが人間界への侵略とかでも民衆は『何か理由があるんだろう』とか都合よく思ってくれそうだし。

 

あの時ボクが生き残ったのは単なる偶然。黙って城を抜け出して王都の郊外の地下に内緒で作ったミニシアターで有志と一緒に『絶対魔獣戦線バビ◯ニア』を鑑賞してたお陰だからなぁ。あの時城を抜け出してなかったらボクもあの馬鹿兄共と一緒に殺されてただろうし。

もしや王位継承権がトアよりも低いから見逃されてる……とかなのか?

馬鹿兄共に睨まれたくなくて道化を演じてたのが功を奏したって事になるのか。ま、演じてたのは最初の頃だけで今じゃ沼にドップリ浸かってるんだけど。

 

っと、駄目だ。疑い出したらキリが無い。まだそうと決まったワケじゃないんだ。決めつけずフラットに判断しないとな。

 

さて。

 

「それじゃ宜しく頼むよ」

 

ボクの言葉に返答するように、服から顔だけ覗かせる2匹。さてさて、なるべく早く見つけられるといいんだけど。じゃないとni◯eとプリ◯ュアが見れないからな!(血涙)

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「……御兄様が、ですか?」

 

行政館の地下。すっかりワタクシの執務室となった部屋で。「はい、王女殿下」と侍女長がワタクシに答える。

何故御兄様が戻って来られたのか。しかもお一人で。

もしや魔王を倒した?

いえ、それなら真っ先にこちらに連絡をしてくる筈。ならば戻って来なければならない何か重要な案件が発生した?陽里様や月子様の側を離れる必要がある何かが?戻る道中魔王に襲われる危険があるにも関わらず?

 

「それで、御兄様は何時頃此方に?」

 

「いえ、それがその……戻ったその足で何処かに出掛けてしまわれたようで。門番を締め上げ……ゴホンッ。話を聞いた所、王女殿下には連絡するなと仰られたとか」

 

つまりワタクシに言えないような内密に処理する必要がある何か、とか。

 

「イプラエット殿下には本当に困ったものです。戻ったなら王女殿下への報告が優先でしょうに。殿下の事です。どうせくだらない理由でしょう」

 

侍女長は「御自身の趣味の為に私物を取りに来ただけとか女性に囲まれてるからアレやコレが出来ないとか」とブツブツ愚痴っているけれど。本当にそれが理由?確かにそれならワタクシには言えないだろうけど。趣味の私物とかなら命を張って戻って来るようなモノでは無いから当然ワタクシが知れば怒る、というか呆れるし。女性が近くに居ると出来ないのは……あ……えっと……オ……オナ……コホンッ。

 

兎に角、それでも一応の理屈は通るけれど。それでも態々妖精界に戻って来ているのだからもっと重要な案件の可能性の方が説得力がある。例えば、例えば……なんだろう……。

…………歴史の真実を掴んだとか。でもそれなら情報を共有する筈。なら確証を得るために妖精界に証拠を探しに戻って来たとか?それで確証を得次第ワタクシ達と共有する?

それとも……共有するとワタクシや側近が危険な状況になる情報だから言えずに御一人で動いているとか?例えばそう……側近の中に魔王のスパイが紛れ込んでいるとか。

 

スパイの線はあり得る。この間侵入した虫は結局確保出来ていない。魔導バリアに通ずる通路一帯は厳重警戒体制が敷かれたまま。ならば警戒網をすり抜ける為にスパイを使っていても不思議ではない。

 

となるとスパイは何時でもワタクシを狙えるような位置に配置されている?でもそれならワタクシをさっさと殺せば魔導バリアは消滅……いや御兄様が生きているからワタクシを殺してもバリアはまだ稼働出来るから……だから御兄様は此方のスパイに気付かれないように動いている?念の為ダナスティにも確認しておこう。

 

「王女殿下?いかがなされました?」

 

考え込んで停止していたのを侍女長に心配されてしまった。

 

「何でもありません。それよりダナスティを呼んでもらえますか?」

 

「近衛隊長を、ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

呼ばれて駆けつけたダナスティも知らなかったらしい。「殿下が、であるか?いや、掲示板にも何か書いたりはしてなかっ…………いや、鍵付きスレの方かも知れないであるな」と答えてくれた。

 

御兄様からパスワードを教えてもらわないと利用出来ないスレッドの方なら何か書かれているかも知れない、と。ダナスティはパスワードを知らないらしい。御兄様が何か(くだらない)事を実行する時に使うらしいので、ワタクシ……若しくは侍女長に近いダナスティは敬遠されているのだろう。御兄様は全く……。

 

「何かあれば殿下もコチラに話を持って来るであろう。暫くは様子見であるな」

 

ダナスティの言う通り、結局今は待つしか無い。「そうですね」と返し。ワタクシはハァ、と小さく溜め息。

 

「殿下は魔王に関して何か掴んだのであろうか?現状は糞ババァという事しか分からないであるが……」

 

ダナスティの言葉に「近衛隊長、もう少し言い方ってモノがあるでしょうに」と侍女長が呆れ顔。

 

「ジジイでは無いのであるからババァであろう?」

 

「そうかも知れませんけれど、仮にも王女殿下の御前なのですから」

 

侍女長の言う事ももっとも。確かに御兄様の撮った画像を見る限り恐らく女性型だろうから相当年増の女性(控え目表現)なのだろうけれど、言い方が。もしも此処に居るのがワタクシでは無く御兄様達の誰かだったら問題になっていたところ。

 

……………………今、何か。何か違和感が。なんだろう……。

 

まぁ、もし重要な事ならそのうち気付くだろうし後にしよう。今は御兄様が動いている間にも出来る事をしなくては。




あっ(察し)



学名:ボッキディウム・チンチンナブリフェルム
和名:ヨツコブツノゼミ
(小学生男子並感)
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