私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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033 イプレ『急いで帰ったのに酷いぴょん』

「コォ〜レは前提から考え直さないと駄目みたいだな」

 

ちょうど生ビールの樽程度の大きさの四角柱の石に腰掛けて、ボクは周囲を見回す。端が見えないくらい広い空間に、整然と並ぶ大量のメタル●アREX……じゃなくて魔導戦車。ヨツコブツノゼミの一匹が人型形態で周辺警戒を請け負ってくれている。

 

ボクの右手には、スマートフォン程度の大きさのデバイスが2つ。所狭しと魔法陣の紋様が刻まれ、中央に丸い翡翠が埋まっている。

アレコレ試した後、もしや魔導バリアと同じでは?と思って翡翠にボクの血を付着させて魔力を注いでみるとビンゴだった。魔力を注いだ直後、周囲……否、全ての魔導戦車が光って待機状態に。もう一度血を付けた後に魔力を注ぐと全ての機体が停止。オーケーオーケー、成程コレは王家の血と魔力で動く起動スイッチってわけだ。

 

となると。

『トアが黒幕説』は非常に怪しくなってくる。何せ『真実を知ったら妖精界を裏切って魔法少女側に付く可能性が高い』ボクがこうして起動デバイスを入手しているからだ。トアがそんな下手を打つとは思えない。敵になる可能性があるボクの手に間違っても渡らないよう、自身の手元に置いておく筈だ。

ボクがこのデバイスを入手しても何のアクションも起こらない所をみるに、コレを餌にして裏切ったボクを誘き出して……って線も無さそうだしな。

魔導戦車無しに魔法少女に勝つのは無理だ。事実としてヴィエティ1人に攻め込まれてボッコボコにやられて追い詰められてるし。

 

態々魔法少女を増やしてヴィエティとぶつけるのは賭けにしても分が悪過ぎだ。今のボク同様、ソアレルイとルニも真実を知ればヴィエティ側に付く可能性が大。というか現に付いてるし。トアは対抗策無しに魔法少女と敵対しようとするような馬鹿ではない。魔導バリアもルニの固有魔法である自己強化で一刀両断できるらしいし……怖っ、月子の事は怒らせんとこ。

 

となると、トアは本当に知らなかった、もし一枚噛んでいたとしても精々ヴィエティの復活を感知してあの馬鹿兄共を排除するのに利用したとかその程度だろう。そう考えた方が自然だ。

 

馬鹿兄共もヴィエティに攻め込まれても魔導戦車を使わなかったのを見るに真実を知らなかったと考えるのが自然。何せ今ボクが居るこの魔導戦車の格納庫ハンガーは王城の城壁内ギリギリの端にある涸れ井戸の底にある横穴の先に在ったのだから。

 

なら黒幕など居なくてボクを含めた全員が伝わっていた御伽噺しか知らなかった?それはそれでおかしい。

ヴィエティはあくまでも長期間の活動不可状態だったのは御伽噺で誰でも知ってるし、いつか復活するのは自明の理。なら復活して妖精界に侵攻してきた時の対抗手段として魔導戦車の場所を明示しておくのがベストだろ。何なら『人間界が妖精界を侵略してきた。ソアレルイとルニは倒したし、魔王ヴィエティも何とか封印した。いつか復活した時は魔導戦車使って魔王ごと人間界滅ぼしてくれ。子孫達頼んだ』的な内容にした方が早いし子孫も安泰だ。態々妖精達を危険に晒してでもソアレルイとルニの復活を促すような噺にしたのは何故だ?別の思惑があるのか?

 

……まあトア黒幕説はシロ寄りの灰色になったわけだし、直接トアに聞いて確かめるわけにもいかない。一先ず人間界に戻って陽里達と話し合ってみるか。早く戻らないとアイドルプ●キュアとnin●の続きを見逃しちゃうしな!

 

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

 

『シクシクシクシク』

 

夕方。ワタシの部屋。横になって不貞腐れているイプレを指さして、ワタシの右隣に座る司彩つかさちゃんは肩にヨツコブツノゼミを乗せつつ呆れ顔で尋ねた。

 

「お姉ちゃん、アレ何?」

 

「いや、なんか見たかったアニメが最終回終わってたらしいよ」

 

人間界に戻って来たイプレは、ワタシの部屋に入った途端この様子だった。妖精界で何かあったのかと聞けば、戻って来たらアニメが終わっててショックだとかリアタイで見てナンボだとかほざいた。それより重要な報告がまだなんだけど。あ、因みに月ちゃんはまだ学校。日直だって。

 

「アニメの事なんて私の知った事じゃ無いよ。それに報告ならこの子達に大体聞いたから。おい王族、早く起動デバイスを私に渡して」

 

『ボクがこんなに打ちひしがれてるっていうのにぴょん!ボクが可哀想だと思わないのかぴょん!?』

 

「全然。ていうか私とお姉ちゃんの部屋にお前が居ると穢れるんだけど。何も報告無いなら早く出てって」

 

『酷いぴょん!陽里も何か言ってくれぴょん!』

 

司彩ちゃんも一切容赦がない。まあコレまでの事を考えれば直ぐに切り替えるのは無理なのは分かるけど、少しは譲歩してあげてもいい気もするんだよね。こんなだけどイプレは味方なんだし。

 

『知らない間にFG○も2部終わってたぴょん!酷いぴょん!ボクもレイドバトル参加したかったぴょん!』

 

今は一応まだ人間界と妖精界の危機の最中だってのにコイツは。

 

「イプレさぁ……人間界と妖精界の危機とサブカル、どっちが大事なの」

 

ワタシの問いに『陽里に言われる迄もなくサブカルだぴょん!』って即答。コイツ本当さぁ。

 

「『変身トランスフォールマ』んでもって『変形デフォルマーレ』」

 

第一形態に変身したワタシは、グレネードランチャーに変形したデバイスの銃口を無表情でイプレに向ける。

 

〈さあイプレ。お前の罪を数えろ〉

 

一拍遅れてナビの声が続く。ってナビはそういうのいつ学習してるのホント?

 

『ちょっ!?ジョーク、ほんの妖精ジョークだぴょん!だから銃口向けるの止めろくださいぴょん!?』

 

「お姉ちゃん……やっぱり血だけ採取しとけばコイツ要らなくない?」

 

『ちょーっ!?待つぴょん早まるなぴょん!?ボクもまだ役に立てるぴょん!?助けてウル●ラマンぴょん!?』

 

はははは。また暫くは騒がしくなりそうだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………それで。

 

「ふうん……つまりトア様はシロ、って事?」ってワタシに、イプレが『確定は出来ないけど多分、ぴょん』って答える。まあ確かにイプレの推理通りならトア様が黒幕はちょっと無理があるというか、司彩ちゃんを倒すのがワタシ達魔法少女頼りってのは無謀だよね。

 

「お前の言う事も一理あるけど、じゃあ黒幕は誰なの?返答によってはお姉ちゃんに止められてもお前を消すけど」

 

「ストップストップ。司彩ちゃん、もう少し冷静に」

 

「だってお姉ちゃん!」

 

「……ルネル?」

 

ワタシが少しだけ語気を強めてそう呼ぶと、司彩ちゃんは「ごめんなさい」ってシュンとなった。うんうん、ちょっと静かにしててね。話が進まないから。司彩ちゃんの頭を優しく撫でながら、イプレに続きを促す。

 

「じゃあ当時の妖精は何の為に事実を改竄して御伽噺にしたんだろう?魔導戦車の事隠してもメリット無いよね?」

 

『陽里の言う通りぴょん。防衛って観点からしてデメリットしか無いぴょん』

 

危険を冒してワタシ達魔法少女を揃える理由ってなんだろ?魔法少女が揃う事で何か強力な兵器が動かせるとか?いやそれはどっちかっていうとワタシ達側にあり得る事か。妖精側がワタシ達を揃えたい理由って……?

 

「どうせ私達全員を捕まえて滅茶苦茶にしたい、とかでしょ。下らなくて邪な自尊心のあの糞王の事だし」

 

司彩ちゃんがボソッとそう零した。糞王、って当時の妖精の王様の事?会った事あるんだ?っていうか流石に死んだ人(妖精)には今のワタシ達にどうこうするのは無理でしょ。

 

〈成程。ルネルの言も一理あります。マスターアッカリーン、貴女と同じように奴も当時の記憶を持って生まれ変わる事が出来るなら〉

 

ナビが口を挟む。いや、そうか。もしも当時の記憶を持ったまま転生する魔法とかがあるならその王の個人的復讐も可能か。例えば司彩ちゃんの復活に呼応してソイツも復活するような魔法が有れば。

あとアッカリーンはやめようね、ワタシの影が凄く薄くなりそうだし。

 

『成程、王の個人的復讐かぴょん。可能性はあるぴょんね。陽里や月子、司彩なら捕まえて滅茶苦茶に………ふぅ』

 

ふぅ、じゃないがクソイプレ?あと司彩ちゃんも「黙れ淫獣。ホントにコロスよ?」じゃないよ、ムカつくけど落ち着こう。

 

『でもこの時代にタイミングよく生まれ変われるとは思えないぴょん。何かに魂を封印しておいて結界の消滅に呼応して誰かを乗っ取る、とかの方が自然ぴょん』

 

あー、言われてみれば。結界が消滅したタイミングに生きてるとは限らないもんね。ならイプレが言った通り誰かを乗っ取る、みたいな方法が無難か。それなら魔法少女が揃って、かつ魔導戦車の事は王しか知らない今がワタシ達に直接復讐する絶好のタイミング…………いや待って。

 

「イプレ、それだと」

 

『……いや、王族以外の妖精を乗っ取った、とかなら魔導戦車を起動出来なかったのも分かるぴょん。多分、本当なら父さんを乗っ取る予定だったんだぴょん。でも父さんは死んでるから無理だったぴょん』

 

イプレ、それってどういう?

 

『この起動デバイスは王族の血と王族の魔力の両方が必要ぴょん。だから乗っ取るなら確実に王族の誰かぴょん。だから転生の仕掛けを施すなら王笏とかの王家代々のモノぴょん』

 

イプレ……ひょっとして黒幕が誰か分かったの?

 

『この起動デバイスも取りに来なかったんじゃなくて多分取りに行けなかったんだぴょん。24時間体制で監視されてて、しかも監視員は自身の部下じゃなくてトアの部下。動けるわけ無いぴょん。つまり、母さん。多分、妖精国の王妃が黒幕……というか乗っ取られてるんだぴょん。きっと婚姻の儀で受け取ったあの翡翠のネックレスにも転生の魔法が仕込んであるんだぴょん』

 

王妃様か……確か病気で床に臥せってるんだっけ。そっか。病気だから24時間体制で監視……。

 

「でもお前の言う事には証拠ないよね?」

 

『司彩の言う通り証拠が無いぴょん。でもトアが正式に戴冠する前にどうにかしないと不味いぴょん』

 

そっか。王妃の方は王族の血が入ってないから保険で、本命が王笏か。だとしたらトア様が王笏を手にしたらトア様が乗っ取られて王族の血も魔力も手に入れちゃう……?不味くない?

同じ王族だから乗っ取られる危険を考えるとイプレが王笏を回収するわけにもいかない、と。

 

休戦協定の機会は早い方が良さそうだね、これは。

 




ちょっとばかし忙しかったので。ホント投稿遅れて申し訳ございません。

イプレ、気が付きました。
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