「なんで最初にそれ言わないかなぁ。学校行ってる間どうしようか悩んじゃったよ」
『優先順位の問題ぴょん』
4月だし今日は平日。当然ワタシは学校があるから制服であるブレザーを来て登校中。これでも一応特待生だし品行方正にしないといけないからスカート詰めたりはしてないよ。
因みにワタシがイプレに指摘したのは、今ワタシが髪に着けてる少し大きめのシルバーのヘアピンについて。イプレが居ないとデーモンが現れても鏡面世界を展開出来ない、でもイプレを学校に連れてくるわけにはいかない。そこでこのシルバーのヘアピン。これはドコに居てもワタシとイプレが会話出来る魔道具。24時間常に通話繋がりっぱなしのスマートフォンのようなもの。それでいてイプレからの声はワタシの脳内に直接聞こえる。ワタシは直接声出して話さないといけないけどね。何かあったら直ぐに連絡取れるのは便利だよね。
イプレにもスマートフォン持たせればいいんじゃ?って思うかも知れないけど、ワタシそういう金銭的余裕ってあんまり無いから。
「そろそろお喋りは終わり。独り言喋ってるように見えるから」
『分かったぴょん。何かあったら話すぴょん』
さてと。今日は普通の1日だと嬉しいんだけど。
学校の校門へと続いている大通りを真っ直ぐ歩いていく。ん?反対車線から信号渡って歩いて来たのは田中(♂)だね。あ、因みに田中は身長普通、成績普通、運動神経普通、顔面偏差値普通のザ・モブ君。特別な感情とか一切無い、只のクラスメートだよ。どうでもいい情報かも知れないけど、うちの中学は男子もブレザー。
ワタシはそんな田中に声を掛ける。
「おはよう田中君」
「おっ芦田じゃん。今日は一人とか珍しいな。いつも伊集院と登校してるじゃん」
「そうかな?それより田中君はゆっくりしてて良いの?今日って日直じゃなかった?」
「…………やっべえ忘れてた!サンキュー芦田!」って言って田中は慌てて走って行った。
うちの学校、日直は早く登校しないといけないんだよね。間に合うといいね、田中。
そんな田中の背中を苦笑いで見送りつつ歩いてると、不意に後ろから声を掛けられた。
「陽里せーんぱいっ」
「ん?おはよう、月ちゃん」
この子は伊集院 月子。ワタシは『月ちゃん』って呼んでるよ。
薄く茶が混じる黒髪をツインテールに纏めてて、碧眼。美人系というよりは可愛い系で背は低い。前にちょっと言った、ワタシに懐いてくれてる中学一年生の後輩ちゃん。因みに(ワタシより数カップも!)おっぱいが大きい。
月ちゃんは正義感が強くて凄く良い子なんだ。もしワタシに適正が無かったらきっとこの子が魔法少女やってたんじゃないかな。
ワタシ、小学校の時にイジメられててさ。ワタシって自分でいうのも何だけどホラ、両親が他界してて施設育ちなのに美人でスポーツ出来て勉強も出来るから他の女の子達にとって気に入らない存在だったんだろうね。前世の記憶が戻る前だったからイジメも凄く辛かったよ。そんなワタシをイジメから救ってくれたのが月ちゃん。月ちゃんはワタシの他にもイジメに遭ってる子を何人も助けてあげてたりしてるんだ。
あ、ワタシと月ちゃんの名誉の為に言っておくけど、幾らワタシが前世男だったからって月ちゃんと付き合ってるとかじゃ無いからね?そもそもワタシの好みは前世から変わって無いからJD以上の女性がストライクゾーンです!!だからJCの月ちゃんはね……ワタシはロリコンじゃ無いから。
「おはようございます!偶然陽里先輩の後ろ姿が見えたので。一緒に登校しませんか?」
「そうだね、一緒に行こうか」
ワタシがニコリと微笑みかけると、月ちゃんも微笑み返してくる。前世もあるワタシから見ると月ちゃんは娘とか姪っ子とかみたいに見えるけど、同級生の男の子達は放って置かないだろうね。月ちゃんの同級生、性癖とか拗らせちゃってそう……。
うーん、月ちゃんには将来良い旦那さんと結婚してもらいたいね。
「あれっ?陽里先輩、そんなヘアピン持ってましたっけ?」
「え?……ああ、昨日部屋を整理してたら出てきたんだ。多分マm……母さんのだと思う」
「ふぅん…………そうなんですか」
あれ?なんか月ちゃんが考え込んでる?ヘアピンに何か良くない思い出でもあったのかな?
「……月ちゃん?何かあった?」
「いえ!とっても似合ってますよ。陽里先輩は素材が良いんですからもっとお洒落をするべきですよ」
「あはは~、ありがとう」
何事も無かったように何時もの月ちゃんに戻った。でもさっきの様子はちょっと気になるよね。覚えておこう。
そんな話をしている間に校門に到着。二年生のワタシと一年生の月ちゃんでは昇降口が違うからここでお別れだね。
「それじゃ月ちゃん、またね」
「はい陽里先輩!また後程!」
月ちゃんと別れると人がまばらになった。今の時間、たまたま二年生の登校者は少ないみたいだね。
昇降口に着くまでにもクラスメートの子達に会って「おはよう陽里」「うん、おはよう」って笑顔で挨拶を交わしながら歩く。
『……おかしいぴょん。アカリが他人と仲良くしてるぴょん。同級生や後輩からも人望ありそうな雰囲気ぴょん。アカリはてっきりキツい言い回しでキレやすい暴力女だと思ってたぴょん。ボクを相手にする時と態度が違い過ぎるぴょん』
人が少ない、って言っても昇降口には全く居ないわけじゃないから返事はしないけど、なーに失礼な事言ってくれてるのかなイプレは。ワタシのクラスメートや後輩と
☆★☆★☆★
朝、登校時間。
ボクの名前は伊集院月子。
ボクは何時ものように細い路地へと入って、大通りの様子を伺います。
息を潜めて暫く観察…………来ました!
陽里先輩が通り過ぎるのを確認、満を持して大通りへと歩みを進めました。少しの間は陽里先輩から距離を取って後方に待機。
すると信号を渡って来たモブ♂が陽里先輩に話し掛けているのが見えました。モブ♂の分際で
あ、モブ♂が走って行きました。どうせ何か用事があったのを思い出して慌てているんでしょう。ちゃんと前日の予定を確認してないからです。陽里先輩と話せないなんて自業自得ですね。
さて、邪魔者も消えましたしそろそろ声を掛けましょう。
「陽里せーんぱいっ」
「ん?おはよう、月ちゃん」
ボクの声に振り返った陽里先輩……ああああ陽里先輩好きです陽里先輩今日も可愛いです陽里先輩今日も素敵です陽里先輩とキスしたい陽里先輩陽里先輩陽里先輩……。
……我慢です。今は努めて冷静に、いつも通りに。
「おはようございます!
「そうだね、一緒に行こうか」
ふふ、ふふふふ。定位置ゲットです。やはり陽里先輩の隣はボクの指定席!このまま人生の伴侶もボクの指定席にしてみせますよ!与党の幹事長である祖父の権力でそのうち同性婚も可能にしてあげますね、陽里先輩。
……!?!?!?
陽里先輩がシルバーのヘアピンを着けてますっ!?有り得ません!あまりお洒落に興味を持たず、あまつさえ学校に行くのに何かするような人じゃないのは他ならぬボクが一番知っています。それに陽里先輩の持ち物の中にあんなヘアピンは無かった筈です!!
「あれっ?陽里先輩、そんなヘアピン持ってましたっけ?」
「え?……ああ、昨日部屋を整理してたら出てきたんだ。多分マm……母さんのだと思う」
「ふぅん…………そうなんですか」
嘘、ですね。陽里先輩の眼が嘘をついている時の眼です。ボクに隠し事をするなんて…………ハッ!?まさか男!男からのプレゼントですかっ!!許せません。ボクの陽里先輩に手を出そうなんて……良いですか?陽里先輩はいずれボクの奥さんになるんです!ボクの子供を三人くらい孕んでもらう予定なんです!
だから陽里先輩の貞操はボクが貰……もとい先輩の貞操はボクが守らなくては!中学生が不純
「……月ちゃん?何かあった?」
ふぁぁぁぁあ!?ボクの顔を覗き込んで、陽里先輩の顔が目の前にぃぃぃい!!思わず狼狽してしまいました。オーケー、落ち着きましょう。ここは怪しまれないように。ヘアピンも取りあえず褒めておきましょう。
いえ別に陽里先輩に似合ってないわけではなくて寧ろ似合ってて凄く可愛いし今すぐにでも抱き締めたくなったりするくらい破壊力がヤバいんですけどボクならもっと先輩の魅力を引き出すような最高のヘアピンをプレゼント出来ますよフフンッ、って意味です(早口)。
「いえ!とっても似合ってますよ。陽里先輩は素材が良いんですからもっとお洒落をするべきですよ」
「あはは~、ありがとう」
さてと。じゃあ早速今日から陽里先輩の交遊関係を洗いなおす必要がありますね。父の権力を乱用するわけにもいきませんし、ボクが出来る範囲でですけど。
そうだ、それもストーカーにならない程度に留めておかないと。警視監の父に迷惑を掛けるわけにはいきませんからね。
後輩のクレイジーサイコレズさん。
……違ったボクっ娘後輩の月子さん、登場。やベーヤツに権力を持たせてはいけない。
陽里の身の上が出る度に重くなっていく。
更新は恐らく来月。