ホームルームが終わって、椅子に座ったままの姿勢でンーっと大きく伸び。
いやー、今日も無事学校終了。勉強は前世で一度やった内容とはいえ忘れてる所もそこそこあるからね。特待を剥奪されないように予習復習は欠かせない。って言っても陽里としてのこの体は優秀でさ、少しやった程度でも勉強身に付くんだよね。ホント、産んでくれた今世のママに感謝だよ。
「陽里が伸びするなんて珍しいね、何かあった?」「別に何も無いよ。ワタシだってたまにはそういう時もあるって」「……ははーん、陽里、アンタさては彼氏出来たね?」
なーんて他愛もない会話を周りに座ってるクラスメートの女子達としてると、何故かガタガタッて椅子の音が周りから聞こえる。
「何でそうなるかなぁ?変な事言わないで、ワタシ好きな男の子なんて居ないよ。妙なウワサになったら困るよ。それより二人とも部活があるんでしょ?」
……って言うとクラスの何人かの男子がホッとしてるのが視線の端に映る。やれやれ、まだまだ子供だよね。本人がココに居るんだからそういうのは分からないようにやらなきゃ駄目だよ?まーワタシは見なかった事にしてあげるけど。
「なーんだ」「じゃー陽里、また明日ね」って言って彼女達は部活へ行く為に教室を出ていった。ワタシは部活入ってないから直帰……ゴホンッ、じゃなくて寮に戻ろうかな。今日はバイトも無いし。
あ、バイトはちゃんと学校の許可を貰ってやってるよ。せめて高校くらいは行こうと思ってるからね。この学校の特待生はお小遣いも支給(!)されてるんだけど、ワタシの場合寮の管理費を引くと日々の食事代くらいしか残らないんだよね。一応パパとママの遺産もあるにはあるけど何があるか分からないからホイホイ使っていいものでは無いし。だから高校入学の為に少しでも多く貯金はしないとなんだ。大学進学は……まあ無理かなぁ。奨学金を借りるって手もあるけど奨学金って結局は借金だからね。それに学費以外も色々掛かるだろうし。
高校さえ卒業すれば就職出来るから。ホラ、勉強頑張れば役所とか安定した所にも行けるし。
あ、因みにバイトはコンビニだよ。オーナーさんが良い人でね、廃棄品貰えたりするんだ。ワタシには凄く有り難いよ。
荷物を纏めて、学校指定の鞄を持って教室を出る。今日は夕飯どうしようかな……寮でも食べられるんだけど安いスーパーで食材見繕って自分で作ったほうがちょっとだけ安く済むんだよね。どうしても疲れてる時とかは寮のご飯食べるけど、今日は自炊かな。それに今はイプレも居るし……えーっと今日はそういえば特売あるんだった……対象は確か鶏肉と卵と玉葱と……なら親子丼?でもなぁ……うーん……。
「こら芦田、ちゃんと前を見て歩け」
考え事をしながら廊下を歩いてたら、そう声を掛けられた。思わず「ふぇっ……」って間抜けな声が漏れちゃった。
「かお……じゃなかった……神谷先生、ご免なさい、ちょっと夕飯どうしようかなって考えてて」
神谷 佳織先生。生徒会の顧問で、26歳。セミロングヘア、170センチの眼鏡属性美人教師だよ。男子にも女子にも人気なんだ。因みに胸はBカップだよ。
「考えるのは構わないが歩きながらは止めておけ。要らぬトラブルに巻き込まれる事もあるからな」
「はい、申し訳ありませんでした」
ワタシは頭を下げる。別に優等生だからとかそーゆーのじゃなくて、
「芦田は物分かりが良くて助かるが……もう少し歳相応の……ん?」
佳織の視線がワタシの頭へ。ヘアピンを見てる。もしかして駄目だったのかな?校則に違反はしてなかった筈だけどなぁ。
「……いや、済まない。芦田も歳相応な所もあるのだな。少し安心したよ」
良かった、セーフだったみたいだね。いやー、これが駄目だったらどうしようかと思っちゃった。それにしても佳織、ワタシの事心配してくれてたのかな?まーお洒落とかそれらしい事は殆んどしたこと無いからなぁ。最後の記憶だと……七五三の時にママが凄く張り切って化粧してくれた時だから。……そっか、あの事故からもう6年以上も経つんだね。
「いえ、その……昨日荷物を整理してたら見つけたんです。母の形見で懐かしいなー、って」
佳織には悪いけどワタシのカバーストーリー作りに協力して貰おう。こうやってこのヘアピンが自然な物ですよー、って少しずつ浸透させていこう。
「そうか…………。そういえば芦田は高校はどうするつもりだ?お前の成績なら県立のトップ高にも入れるだろうが……やはり特待制度のある所に行くのか?」
「そうですね、そうしようかと思ってます。何処にするかはこれから考えますけど」
「これは提案なんだが、中学を卒業したら私の所に下宿する気はないか?特待といえども高校生ともなれば何かと出費はあるだろう。私の所に住めば家賃ぶんが浮くしお前も助かるだろう?」
やだ、佳織ってば男前……。
『ヒュー、カッコイイー、惚れちゃいそうだぜアクセ●レーター!ぴょん』
イプレ脳内でうるさい。てか何でそーゆー事ばっかり知ってるかなぁ……。
『ところでアクセラ●ーターて何ぴょん?』
知らないで言ってたの?
…………ってそれは置いといて、流石に下宿は悪いよねぇ。幾らワタシの境遇に同情した、って理由でもさ。家族でも親戚でもないワタシと住むってのはね。
「それは流石に先生に申し訳ないかなーって。ワタシみたいなのが一緒に居たら先生のプライベートだって制限されますし、彼氏さんにも悪いですし」
「子供が要らん遠慮などするな。それに私に彼氏など居ない」
「……意外です」
えっ、彼氏居ないの?絶対出来てると思ってた……ちょっと嬉しい。実際好きだったんだよね、佳織の事。あ、言ってなかったけど佳織って前世のワタシの幼馴染みなんだよね。で、そんな佳織の事を前世のワタシはずーっと好きで片想いしてたの。ワタシさ、どうやら死んで13年くらい時間巻き戻って転生したみたいなんだよね。…………は?どどっ、どどど童貞じゃないし!
「そんなに意外か?……まあ無理に一緒に住め、とは言わん。どうしても上手く行きそうになくて困ったら言ってくれれば良いさ。私に助ける用意があるって事だけ覚えておけ。そうでなくとも何かあれば気軽に相談しろ」
まあ実際問題さ。佳織と住むとかワタシが無理だよ。だって一緒に住むって事はさ、四六時中佳織と居るんだよ?寝顔の佳織とか、お風呂上がりの佳織とか、下手したら佳織と一緒に入浴とか。佳織と一つのベッドで寝るとか。いやいや、ワタシの理性が保てない。絶対暴走して襲う自信あるよ。生徒が同性の教師を性的に襲うとかどう考えてもアウトでしょ。すごーく魅力的な御誘いだけど涙を飲んで遠慮させてもらうよ。
でもまあ相談には……少しずつ乗ってもらおうかな。佳織に会える口実ができるし。エヘヘヘ。
「分かりました。ありがとうございます」
ペコリともう一度頭を下げて。「それでは先生、さようなら」って言ってその場を後にする。佳織は「ああ、気を付けて帰れよ」って声を掛けてくれた。
よーし、ちょっと元気出た。食材買いにスーパーに急ごうっと。
☆★☆★☆★
結局今日は夕飯カレーにしたよ。卵はまた明日使う。
少し大きめの青色の買い物用マイバッグ(イプレ入り)を持ってパタン、と静かにかつ慎重に扉を閉めて鍵を掛ける。
周りをキョロキョロと伺う。よし、誰も居ないし見てないね。
時間は夜の11時。中学生ならとっくに眠ってる筈だから他の寮生の誰かに見られる事は無いとは思うけど念の為。問題は寮の入口に付いてる監視カメラだけど……そこは心配無し。何せ今のワタシは魔法少女に変身済み。あ、言っておくけど第一形態だよ。第二形態みたいな格好で夜中に彷徨いてたら完全に痴女だからね。
ジャンプして、カメラの撮影範囲外から壁の外へと大きく跳躍。身体能力が上昇してるからこのくらいは造作もないね。
『もう少し揺れないようにして欲しいぴょん!』
ちょこん、とマイバッグから顔だけを出してイプレが抗議してくるけど無茶言わないで欲しいな。こうでもしないと夜中にイプレ連れて外出なんて出来ないよ。
「それじゃ、警察に見付かって補導されないうちに行こっか」
『林の中みたいな周りから見にくい場所が理想ぴょん』
「そうだね。認識阻害とか無いし知り合いに顔見られたらワタシって分かっちゃうからね」
走るってるけど相当速い。これなら自転車どころかバイクや車も要らないね。欠点は人前に出られない事だけど。
寮から遥か南の、郊外にある雑木林。ここがいいかな。ブレーキブレーキ、と。勢いで地面が結構抉れたね。これはちょっとアスファルトの上では急ブレーキはアウトだね。今後は気を付けよう。
林の奥へと入っていく。一応周りに誰も居ない事を確認……ほっほら、夜中だし発情したカップルとか居るかもだし。
どうしてこんな所まで来たかっていうと、ワタシの部屋だと不味いんだよね。鏡面世界を作る魔法陣がかなり大きいみたいでさ、隣の隣の部屋くらいまで広がっちゃうみたいなんだ。そうなったら絶対バレる。だから広くて人気が無くて目立たない所へ移動するしか無かったんだ。
『じゃあ展開するぴょん。インプレメンターレ!』
イプレの右手が紫色に輝いて、同時に地面に同じ色の五芒星の魔法陣が。直径は数メートルどころじゃないよコレ。ていうかさ、かなり光っちゃってるけど周りにバレない?コレ大丈夫?
なんて思ってたら急に浮遊感が来た。気付くとワタシとイプレは昨日みたいな色の無い世界に居た。勿論周りは白黒の、見た目はさっきまで居た雑木林の中。
「わわっ」
『成功ぴょん。それじゃ昨日出来なかったんだからそのぶん練習するぴょん』
昨日は出来なかったのはイプレが逃げたせいだよね??まあやるけど。先ず最初に試しておきたい事があるんだよね。
「ねえイプレ、最初に第二形態のデータを取っておきたいんだけど」
『!!…………そっ、そそそそうぴょんね。強化形態の能力把握は大事ぴょん!あんな画像からこんな画像まで保存しまくるぴょん』
「何か言った?」
『ななな何も言って無いぴょん』
なーんか引っ掛かるけど、まあこれは把握しとかないとね。ほら、強化形態って色々制限があるのがお約束でしょ?展開時間とか魔力砲の使用回数とかクールタイムとか確認しておかないと、いざって時に困るからね。
「じゃあ早速……デフォルマーレ!でもってデフォルマーレ!」
ワタシの手の中にあるカードが一度グレネードランチャーへ変形、そのあとワタシごと光に包まれグレネードランチャーはロケランへ、ワタシは衣装が第二形態へと変化。分かってはいたけどやっぱり恥ずかしいよこの格好。
顔も赤くなってるけど今だけ我慢。何かイプレの動きが妙な気がするけど……。よし、さっさと終わらせよう。
陽里の追加スペック
お小遣い貰えるレベルの特待生←new
料理一応出来る←new
コンビニでバイトしてる←new
両親は七五三に事故に……?←new
前 世 は 童 貞←new
次回は戦闘します。