私コレ絶対主人公の相棒ポジションだよね?   作:アイリスさん

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06 陽里「バレました」

「うーん……」

 

『……思ってたよりヤバいぴょん?』

 

肝心の第二形態なんだけど、何もせずに待機してても15分で強制的に第一形態へ戻される。更に光の柱みたいな魔力砲5発撃つとこれまた強制的に第一形態へ。それとその魔力砲5発分の魔力を込めたチャージ砲?も撃てるけどそれ撃つとこれまた強制解除で第一形態に。更にクールタイムがなんと一時間。コレだと常に第二形態って訳にはいかない。日曜日にテレビでやってるヒーロー物みたいにココッ!って時の必殺技枠で使わないと危険だね、これは。

 

「……これさ、チャージ砲一発で倒せないくらいの敵が出てきたらワタシ詰むよね?」

 

『だだっだだだ大丈夫ぴょん、クールタイムの間を何とか粘って倒せるまで何度もチャージ砲撃ち込めばいいぴょん。大体そんな強力なデーモンなんてそうそう出て来るわけ無いぴょん(震え声)』

 

何でそういうフラグ立てるような事言うかなイプレは。もし今とか出てきたらどうするの?クールタイム中だから第二形態にすらなれないんだよ?

……駄目だ、ツッコミ入れるのも億劫だ。もう少し検証したいけどもう夜中の2時近いし流石にワタシも眠いんだよね。クールタイム終わるの2時半回るし待ってられない……明日、というかもう今日か……学校だってあるし……。前世の大人の時みたいに遅くまで起きてられない……。

 

「ふァ~あ…………ねえ、他の検証は明日にしない?ワタシそろそろ限界……」

 

『それじゃあ今日は終わりにしておくぴょん。アレなお宝画像も大量だし切り上げぴょん

 

じゃあ早いとこ帰ろうよ。寝坊だけはするわけにはいかないもん。

 

ワタシの方へと歩いて来たイプレをマイバッグに入れようと手を伸ばした時だった。「……もしかして芦田か?」って聞き覚えのある声が。ハッとして顔をあげて声の方へと視線を向けると……佳織がいる……うそ、なんで……。

 

「やはり芦田か。その格好といい髪といい色々言いたい事はあるのだが……先ずは一面白黒のこれは一体どうなっているんだ?何が起きている?」

 

慌ててイプレの方へと視線を下げる。『ボクのイタズラとかじゃないぴょん。多分一定以上の魔力持ちぴょん』って言ってる。じゃあ少女って歳じゃないけどまさか……。

 

「かお……神谷先生が?」

 

『違うぴょん。彼女はちょっと魔力が高いだけで適合者じゃないぴょん。鏡面世界内ならカードに触れなくても適合者かどうか判別可能だから間違いないぴょん』

 

魔法少女じゃ無いんだね、ちょっとだけ安心した。だって好きな人を戦いに巻き込みたく無いし……いや、広い意味では巻き込んじゃったけど。

 

「おい芦田、何だその生き物は!?」

 

「あ、いや、えーっと」

 

答えに窮している最中、空から何かが降って来るのが視界の端に映った。それは佳織の左腕に当たって、勢いのまま佳織は地面に倒れる。

 

「なんだこれは!?取れない、どうなってる!?芦田!」

 

佳織の左腕、二の腕辺りに頭くらいの大きさの、まるで ()きたての餅のような白い物体がくっ付いていた。何これ、まるで鳥黐(とりもち)みたい……強力な粘着力があって、佳織は完全に左手を地面に拘束されて起き上がれそうにない。

 

『上だぴょん!』

 

イプレに言われて上を見上げた。杉の木のてっぺんに何か居る……目測だからハッキリとは言えないけど、ワタシの倍くらいの大きさの青い蜘蛛?

……って蜘蛛!?

 

「イプレ!神谷先生を頼んだよ!」

 

『任せろぴょん!……今日も早速スレ立てぴょん

 

イプレの右手が紫に光って、佳織とイプレを覆う紫色のドーム状の防御結界が出現。直後蜘蛛が出した白い物体が飛んで行ったけど、防御結界に弾かれて二人は無事。よし、暫くは大丈夫そうだね。じゃあワタシは蜘蛛退治と行くよ!

 

「当たれっ!」

 

グレネードランチャーを構えて木の上へと魔力弾を放つ。大きく上へと上がっていく魔力弾は、丁度フォークボールのようにガクンと急激に角度を下げて大蜘蛛に迫る。よし、当たる……って思ったけど、大蜘蛛は口から大きめの糸の塊を吐き出してワタシの魔力弾を相殺した。

 

向こうも飛び道具なんて厄介だね。でもこっちはコントロールできるんだ、あのくらい何とでも出来……って、待った待った!卑怯!それは卑怯だよ!

 

大蜘蛛は口やお尻の先から、糸を幾つも連射。2、3発ならまだしも数十発の糸が次々ワタシに襲い掛かってくる。もし当たったら拘束されちゃうし避け続けるしかない。もぅ!こっちは一発ずつしか撃てないのに!

 

前後、左右にと動き回りながら避ける。地面にはネズミ取りの罠のようにアチコチに鳥黐のような糸が引っ付いていて、当然ワタシが避ける度に数が増えていく。不味いよ、このままだとまともに移動する事すら出来なくなっちゃう。何処かで仕掛けないとジリ貧だよ。かといって上に飛べば的になるだけだし……一度隠れて大蜘蛛がワタシを見失ったのを見計らって背後にある木の上から攻撃してみる?くっそー、第二形態がクールタイム中じゃなかったら魔力砲でごり押しも出来るのに!

 

木の幹に身を隠しながら、少しずつ大蜘蛛の居る木へと近づく。よし、ワタシを見失ったのか探してる探してる。これなら上手くいきそうだね。相手が蜘蛛なら皮膚?も柔らかいだろうし魔力弾でも当たれば何とかなるよきっと。

ワタシは大蜘蛛の背後の木の幹を一気に駆け上がる。これでっ……。

 

「わっ!?わわっ、なに!?」

 

木のてっぺんが直ぐそこ、って所でワタシの体はガクンッ、って何かに引っ張られるように上昇を止めた。同時に体じゅうに何かがくっ付いていて全然動かせない。髪にも何か白いのか付いて……あ……これ……。

 

「蜘蛛の巣だコレ!?」

 

ワタシは大きな蜘蛛の巣に大の字に両手足を広げた格好で引っ掛かっていた。大蜘蛛はワタシの方を向いて、まるで嘲笑うかのように顎をカチカチと鳴らしている。まさか罠!?巣に突っ込むように誘い込まれたの!?

 

『折゛角゛の゛エ゛ッッッッッな゛体゛勢゛な゛の゛に゛どう゛じで第゛二゛形゛態゛じゃ゛な゛い゛ん゛だびょ゛ん゛!(血涙)』

 

「こんな時に何言ってるの!?そんな事言ってる暇があったら助けてよ!?もうっ!無事勝てたら覚えてなよ!!」

 

逃れようと必死に藻掻いてはみるけど駄目だ、多分力では抜け出せない。幸い右手にはグレネードランチャー持ったままだし魔力弾が大量に用意出来ればどうにか脱出出来そうだけどそんな時間は……。

 

勝ちを確信したらしい大蜘蛛が、ワタシに向かって細い糸を何十と吐き出して来た。アレを浴びちゃったら何も出来なくなってアイツの餌にされちゃう……何か無いの?何か……。

いや待てよ?佳織が食らってもダメージを受けてなかったって事はこの糸、拘束用であって攻撃力はほぼ無いって事だよね?なら魔力弾もほんの少しの威力で相殺できるんじゃ……魔法は想像力だ、やるしかない!

 

全く動かせない右手の中のグレネードランチャーの先端に魔力が収束していく。ワタシの頭くらいの大きさになった魔力の塊から、竹串くらいの細さの数十本の魔力の線が飛び出して大蜘蛛の放った糸へと一斉に走る。

全ての魔力の線が、アチコチからワタシに迫ってくる蜘蛛の糸をまるで生き物のようにバラバラにホーミングして撃ち落としていく。ぐるっと向きを変えた数々の魔力線は今度はワタシを拘束している蜘蛛の巣の糸一本一本を正確に撃ち抜いて、やっとワタシは解放された。

 

「ふぅ……魔法は後で練習で色々試さなきゃ駄目だね」

 

木のてっぺんまで登り切ったワタシはグレネードランチャーにもう一度魔力を装填。今度も先端に収束した魔力弾から幾つもの魔力の線が飛び出てその全てが大蜘蛛へと走る。大蜘蛛もありったけの糸を吐くけどその悉くを相殺、ワタシは更に幾つもの魔力線を撃ち出す。

相殺し切れなくなって、大蜘蛛はワタシの魔力線を大量に被弾。予想通り外皮は柔らかいみたいで大蜘蛛は数十本の魔力線に貫かれて、汚い体液を撒き散らして消えた。

 

……封神●十七式●光流星乱舞、なーんてね。厨二っぽくて恥ずかしいから口には出さないけど。

いやー、第二形態にならなくてもどうにか勝った。装甲が薄いヤツで助かったね。

 

『はっ、今のは封●八十七式烈光●星乱舞ぴょん!?』

 

だーかーらー、イプレは何でそういうのばっかり知ってるの!?全く。

 

ワタシは木のてっぺんから飛び降り、ストン、と無事着地。左手でブイサイン。あ、蜘蛛が消えたら鳥黐みたいな糸も消えたみたいだね。

 

「勝ったよ二人とも!いやー、ちょっと危なかっ……」

 

「芦田」

 

あっ……そうだった。必死で忘れてたけど佳織は部外者だったんだっけ。どうしよう……魔法少女として戦ってる事もそうだけど色々説明が……。

 

「聞いているのか芦田」

 

「……ハイ、先生」

 

ううっ、佳織ってば凄く怒ってるよね。そりゃそうだよね、生死の懸かった戦いしてます、なんて絶対不味いし。昼間だってあれだけワタシの事気遣ってくれてたのに。

 

「どうやら助けられたようだな。礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

あれ?もしかして怒ってない?そっか……ハハハッ、そっかー、そうだよね!ワタシ佳織のピンチを救ったんだもんね!佳織からしたらヒロインを助けてくれたヒーローって事だもんね!いやー、良かった良かった。

 

「いえ、大した事じゃないですよ!あっはははー」

 

「それはそれとしてだ。今何時だと思っている?まさかお前が深夜外出とは……取りあえず今から私の家に一緒に来い。どうやら説教が必要らしいからな」

 

……あれぇ、やっぱり怒ってらっしゃった!?こういう時の佳織は完全に生徒指導の先生モードだからなぁ。ううっ、通常なら家に行くのは魅力的だけど今は行きたくない……佳織怖い……ワタシはその場でガックリと項垂れる。

 

「返事をしろ、芦田」

 

「…………ハイ。行かせて頂きます……」

 

「イプレ、とか言ったな?お前もだ、謎生物」

 

『ボクもぴょん!?とばっちりぴょん!?』

 

イプレも道連れだね。二人ならお説教少しはマシになるかなぁ……。

イプレが鏡面世界の魔法を解くと、モノクロの世界から元の深夜の雑木林に戻った。

 

「やれやれ、人が残業で深夜まで働いていたらコレか。二人とも一先ず私の車に乗れ」

 

変身を解いて佳織の車の後部座席に乗り込んだワタシは……戦闘中は興奮してて忘れてた睡魔が一気に押し寄せてきて、糸が切れたように眠りに落ちていた。

 




よく考えたら来月って12月なんですよね、あんまり時間取れなさそうなので今月に投下。

るーしぇクンって何年前だっけ……。

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